ヤブカ


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ヤブカ(ヒトスジシマカ)

ヤブカとは?

ヤブカは、ハエ目・糸角亜目・カ科・ヤブカ属に分類されるカ(蚊)の総称です。総称なので「ヤブカ」という名のカがいるわけではありません。

ヤブカとして日本で一番有名なのは「ヒトスジシマカ」です。白と黒の縞々模様をしていて一般的には「シマカ」とも呼ばれます。夏場であれば北海道以外のどこでも見かけることができるので、このカを見たことがないという人はいないでしょう。

このページではこのヒトスジシマカを「ヤブカ」として扱っていきます。以降このページでは「ヤブカ」という表記があれば、全てヒトスジシマカのことを指していると思ってください。

ヤブカ

 

ヤブカの身体的特徴

ヤブカは、体長は4~5mm程度になります。見た目に対して体重は2mg程度とびっくりするぐらいに軽く、ちょっとしたそよ風でも大きく影響を受けて、まともに飛べないほどです。

一番の特徴はやはりその白黒の縞模様をした体色。その縞模様は胴体だけでなく、足にまで及んでいます。なぜこのように目立つ模様に進化してしまったのかは、確かなことはわかっていません。シマウマの場合は、群れていれば捕食者が個体の識別がしづらくなるという理由がありますが、カに関して言えば縞々であることのメリットはいったいなんでしょうね?

あと他の種類のカとの識別の際に目印になるのは背中の模様。一本の綺麗な白線が縦方向に入っています。これがヒトスジシマカという名の由来にもなっています。

ヒトスジシマカ

 

ヤブカの生活と繁殖

ヤブカは基本的には昼間に行動していて、直射日光が当たらない、湿度の高くて水場が近い場所を好みます。

ヤブカが成虫として活動するのは主に4月~11月頃。この期間中は常に交尾・産卵を繰り返していて、1年間の間に7、8世代がサイクルすると言われています。あまり知られていませんが、ヤブカの成虫の寿命は実は1ヶ月程度しかありません。

交尾を済ませた成虫は水面のすぐ側に80個前後の卵を産みつけます。この卵は乾燥などの環境変化に非常に強く、水位が上がって卵が水に触れると孵化します。孵化した幼虫(ボウフラ)は水中で植物や微生物を食べながら10日間ほど過ごし、3日間程度のさなぎの期間を経て羽化し、成虫になります。

暖かい時期はこのサイクルを繰り返していますが、冬になると卵の状態を保って越冬に臨みます。この卵は冬が過ぎて温かくなると孵化してボウフラになり、またサイクルを繰り返すわけです。

蚊の幼虫時代の姿ボウフラ
↑幼虫期のボウフラの姿

 

ヤブカの吸血行動と天敵

ヤブカといえば吸血行動ですが、実はオスは花の蜜などを摂取して生きています。吸血行動を行っているのは、産卵のために多くの栄養が必要なメスのみ。

その吸血対象は、人間はもちろん、哺乳類全般、鳥類、そして爬虫類や両生類・魚類にまで及びます。動物の体温、分泌される代謝物の臭いなどを嗅ぎ取って近寄り、長いストローのような針を垂直に差し込んで、血を吸い上げていきます。

このとき血液の凝固を妨げる役割を果たす唾液を注入するのですが、これがヤブカに刺されたときの腫れと痒みの原因になっています。

ひとしきり吸血を終えると、カは注入していた唾液を回収して飛び立って逃げていきます。このとき腹にはかなりの血液が溜まっているので、飛行能力は著しく低下しています。この状態のカを両手で叩いて潰すと血が飛び散って、ちょっとしたスプラッター状態に。

ヤブカにとって天敵となるのは成虫時代はクモやトンボ、小鳥など。幼虫時代はヤゴなどの水棲昆虫やフナなどの肉食性魚類です。中でもトンボはヤブカの成虫を食べ、トンボの幼虫であるヤゴはヤブカの幼虫であるボウフラを食べるという、ヤブカにとっては本当にイヤラシイ相手ですね。

血を吸った後の状態のヤブカとアリグモに食べられる蚊
↑血を吸う前の状態(右)、血を吸った後の状態(中)、アリグモに食べられるカ(右)

 

ヤブカの繁殖を防ぐために

ヤブカは、山間部であろうと都市部であろうと、ところ構わず生息しています。産卵・孵化して繁殖するには本当に少量の水しか必要としておらず、完全な根絶はなかなか難しいものがあります。しかしちゃんと手段を講じれば繁殖を抑制することは可能です。

 

1.自宅の周りから繁殖場所をなくす

とにかく自宅の周りから水場をなくすところから。空きタイヤや放置バケツ、空き缶などの水が溜まるものをできる限り除去しましょう。ヤブカはこういった場所に産卵してその数を増やしていきます。

生い茂った雑草もヤブカの隠れ家になるのでできる限り綺麗に刈り取りましょう。ドブがあるならば、そこが発生源になる可能性もあります。定期的に清掃して水はけが良い状態を保ってください。溜まる水さえなくなればボウフラは生息できません。

 

2.ダミーの産卵場所を用意して一網打尽に

また、あえてトラップとしてこちらで水場を用意し、ボウフラが現れたところで水を廃棄して駆逐するという手段も有効です。

ボウフラは誘引フェロモンを持っていて、自分がいる水場に成虫のメスを引き寄せる能力があります。成虫に「ここに産卵できる水場あるよー」とボウフラが教えているわけです。これはこれですごい能力ですね。

それを逆手にとって、近辺のヤブカの産卵場所をそのトラップ水場に集中させます。そしてボウフラが羽化する前にその水をぶちまけて一網打尽にするわけです。水をぶちまけるのはコンクリート舗装の道路の上がいいでしょう。ドブや側溝などに捨てると水がはけきらずに羽化を許す可能性があります。

ヒトスジシマカが繁殖しやすい場所

 

ヤブカの成虫の接近を防ぐために

まずは屋内への侵入を防ぐところから。窓を開ける場合は必ず網戸にしましょう。

あとは蚊取り線香やべープマットなどの設置。これらは目に見えて大きな効果があります。設置すると、目の前を飛んでいるヤブカがフラフラしだして突然ポトリと地面に落ちるぐらい。ただし、ものによっては臭いがあったり、ペットに良くない影響がある場合があるので、使用するときは取扱説明書を熟読してからにしてください。
ベープマット 蚊取り器 セット 本体+取替(30枚入)
ベープリキッド 蚊取り器 液体式 60日セット 本体+取替(60日)

屋外で蚊が気になるときは虫除けスプレーなどの忌避剤を肌や衣服にかけておきましょう。ディート(DEET)という成分が入っている製品ならば、ヤブカに対してはまず間違いがないです。成分をみて確認しておきましょう。
蚊がいなくなるスプレー 蚊取り 12時間持続 200日分 無香料 (防除用医薬部外品)

余裕があるなら屋外に出かける前にシャワーを浴びておくのも意外に効果的です。ヤブカは人間の皮膚から出る代謝物と臭い(特に足の臭いなど)を感知して近寄ってくるので、そういったものを一度洗い流すことでヤブカの接近を少なくすることができます。ただし、あまり熱いシャワーを浴びてしまうと汗をかいてしまって逆効果なのでご注意を。

基本的にはこれらの対処でヤブカの接近はだいたい防げるはずです。

ヤブカ対策

 

ヤブカに刺されてしまったら

ヤブカは水さえあれば大抵の場所に適応することができます。ドブ川はもちろん、放置ゴミが溜まった場所、地下鉄の中にだって生息していたりします。そのため普通に都心部で暮らしていても、ヤブカに刺される機会は多々あるでしょう。

刺されたときの対処のひとつとして、まず一般的にはムヒやウナコーワなどの虫刺され薬を塗ることを思いつくでしょう。ただし刺された患部にはできる限り早く塗るようにしましょう。そのほうが効果が圧倒的に大きいです。
【指定第2類医薬品】液体ムヒS2a 50mL
【第2類医薬品】新ウナコーワクール 30mL

あとは熱でヤブカの唾液成分を無効化する方法があります。すぐ患部を50℃程度に温められれば痒みと腫れは驚くぐらいに軽減されます。個人的にはこれが一番効果が高いのではないかと思う方法です。ただし温めるための道具をすぐに用意できないケースが多いのが難点。お湯が出る環境ならばいいですが、屋外や外出先だとさすがに難しいでしょう。

逆に冷やす方法も。これも炎症を抑える効果がありますが、炎症の原因そのものを除去する効果はありません。冷やしている間は一時的に痒みは治まりますが、それをやめるとすぐに腫れて痒みが戻ってきます。あまりおすすめできません。

石鹸で患部を洗い流す方法もあります。痒み成分は酸性なので、アルカリ性の石鹸で洗い流せば中和されて毒性がなくなるという理論です。すでに痒み成分は体内に入ってしまっているので、外から患部を洗うだけで中和されるのかが疑問ですが、実際に自分の経験でも効き目は感じますし、ネット上でも好意的な意見が多い方法です。

意外に知られていないのがテープを貼る方法。絆創膏、極端な話セロテープでもガムテープでも構いません。患部が空気に触れなくなるので外部からの刺激を受けず、痒みがほとんどなくなります。外部刺激がなくなれば無駄に患部が腫れあがることもなくなり、かなり効果的な処置といえるでしょう。

ヤブカ

 

ヤブカが媒介するデング熱

デング熱はデングウイルスによる感染症で、発熱、頭痛、目の痛み、関節痛、皮膚の発疹などが主な症状です。通常デングウイルスは日本国内には存在しません。これまでは海外旅行先で蚊に刺されて国内で発症するパターンが多かったのですが、2014年8月に国内で海外に渡航していない人の発症が確認され、それがヒトスジシマカの媒介によることがわかりました。

つまり、

1. 海外に行った日本人が旅行先で蚊に刺されてデングウイルスに感染する
2. 国内に帰ってきてから新たに蚊に刺され、その蚊がデングウイルスを保持する
3. その蚊がほかの人を刺してウイルスに感染させる

という流れで国内でのウイルス感染が起きたわけです。これは非常に大きなニュースになり、メディアでも大きく取り上げられました。しかし、メディアはすぐに「殺人ウイルス日本上陸!」みたいな過剰な騒ぎ立て方をします。正しい知識を持って対応していきましょう。

 

1.デング熱とはどんな病気なのか

デングウイルスは3日~7日程度の潜伏期間を持って発症します。症状は前述したとおり、高熱、頭痛、目の痛み、関節痛、筋肉痛、皮膚の発疹など。個人差もありますが発熱は40度近くになるときもあり、関節痛や筋肉痛の痛みはかなり大きいと言われます。ごくまれに発熱後に血漿漏出に伴うショックと出血傾向が確認される患者がおり、その場合は「デング出血熱」という病名にあたり命の危険があります(デング出血熱も医療機関にかかって正しく治療を行えば死亡率は1パーセント以下)。

デングウイルスに対する予防接種やワクチンなどは現在では存在しないため、予防はできず、治療も対症療法になります。だいたい1週間程度で回復に向かう傾向にあります。

 

2.デング熱の感染について

デングウイルス感染者の血を吸ったヒトスジシマカが新たに他の人を刺すことによって感染します。人と人同士では感染しません。ヤブカの卵がウイルスを保持する確率は10パーセント程度で、越冬した卵についてはウイルスを保持できた例はまだ確認されていません。そのため一度国内の蚊に入ったウイルスが年をまたいで流行することはありません。

 

3.デング熱の予防と治療について

デングウイルスには予防接種のようなものはありません。蚊に刺されないことが一番の対策になります。蚊取り線香や虫避けスプレーを使う、蚊が繁殖する環境をなくす、などの地道な行動が、デング熱の一番の対策になるといえるでしょう。

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