オオムカデ

オオムカデ

オオムカデとは?

オオムカデとは、オオムカデ目・オオムカデ科に属するムカデ全般のことをいいます。「オオムカデ」という名のムカデがいるわけではありません。

日本でオオムカデ科に属するのは、全国的にはトビズオオムカデ、アカズオオムカデ、アオズオオムカデなどがいて、沖縄限定ではハブオオムカデ、タイワンオオムカデなどがいます。

生息範囲、知名度、数的に考えるとトビズオオムカデが圧倒的に多く、日本でオオムカデといったら、トビズオオムカデのことだと考えて特に差し支えありません。このページでもトビズオオムカデのことをイコール「オオムカデ」として解説しています。

トビズオオムカデは赤足と黄色足がいる

 

オオムカデ(トビズオオムカデ)の身体的特徴

トビズという呼び名は、頭部が鳶色(赤褐色)であることからきています。足は基本的には黄色の場合が多いです。しかしオオムカデは個体によって体色に大きく差があって、鮮やかな朱色の頭を持つものもいれば、毒々しい濃厚な赤色の足を持つものもいたりします。ペットとして飼育する人にとっては、体色はその価値が決まるかなり重要な要素になっているようです。

体長はだいたい8cm~15cm程度。21個の体節から長い足が1対ずつ生えていて、しかも蛇行するように動くために、実際に目にしたときは数字以上の大きさを感じます。

ちなみにオオムカデの足の数は42本。ムカデは漢字では「百足」と書きますが、実際100本ということはなくムカデの種類によって数はまちまちです。ゲジ目では最少で30本、ジムカデ目では最多の346本の種がいます。あと足が多い種ほどその足の長さは短くなる傾向にあります。

オオムカデの足は42本

 

オオムカデの生態

オオムカデは北海道から沖縄まで日本全土に生息していて、活動時期は冬以外。基本的には落ち葉・石・コケの下などの湿った場所に生息しています。

夜行性なので夜になると活発的に移動して、昆虫や小動物を捕まえて食べています。オオムカデはトノサマバッタやゴキブリはもちろん、小型のネズミまでもを捕まえるぐらいに獰猛です。触覚で獲物の体温を感知し、急激に接近しその鋭い牙で攻撃して毒を流し込みます。毒を流し込まれた獲物はその作用によって動くことができなくなり、そのまま鋭いアゴの餌食になります。

冬は樹木の隙間の奥や、土の中などに潜って寒さをしのいで過ごしています。温かい隙間を狙って入り込んでいくので、その結果として人が住む屋内に紛れ込むこともしばしば。かなり狭い隙間にまで入り込むことができるため、古い木造建築の家屋などは簡単に侵入されてしまいます。

オオムカデの捕食。大型の個体であればネズミも食べる

 

オオムカデの生殖方法

オオムカデの生殖行動が活発化するのはだいたい5月から6月の間。この時期にオスとメスが出会って意気投合すると、オスは自分の精子が詰まった精筴という袋を排出します。メスは自分の生殖器でそれを体内に取り込んで保存しておきます。そして産卵の際にその精子を使用して受精卵を作り、卵を産み出すわけです。1度精筴を受け取れば半年ぐらいの間、数回に渡って産卵が行えるというから驚きです。

狭くて湿度のある小さな空間を巣穴とし、一度に50~80個程度の卵を産みます。メスは自分の体で卵を包み込むようにして、地面に触れないようにしたり、舌で舐めてカビや乾燥から守ったりします。このメスの行動がないと卵は無事に孵らないそうです。これは卵が孵っても幼体がある程度成長するまでは続きます。

幼体は2、3ヶ月程度で親離れしてそれぞれ散っていきます。生殖行動が可能になるまでは3年かかると言われており、その間に何度も脱皮を繰り返して成長していきます。ちなみに寿命は7~10年程度です。

オオムカデの子供と卵

 

人間にとってのオオムカデの危険性

前述したとおり、オオムカデはよく人家に侵入してきます。夜行性でしかも狭くて温かいところに潜り込む習性のために、寝ている布団の中に入ってこられるケースもしばしば。ぐっすり寝ていて無抵抗であってもムカデは容赦なく咬みついてきます(涙)

かなり鋭い牙を持っているので咬みつかれると非常に痛く、しかもその毒は強烈です。血球溶解作用を持つ毒で、その成分はスズメバチのものに非常に近いもの。咬まれた箇所は大きく赤く腫れあがって熱を持ち、電流が走るようなピリピリした激しい痛みがあります。この症状が数時間続いて非常に苦しい思いをすることに。筆者も膝を咬まれたことがありますが、精神的にも肉体的にもかなりしんどいです。

いちおうオオムカデの毒で命を落とすことはありませんが、乳幼児が首などを咬まれた場合は重症に至ることもあります。あとごくわずかな確率ではありますが、アナフィラキシーショックの可能性もないわけではありません。(※アナフィラキシーショック・・・毒に対して免疫反応が過剰に働いて重篤な症状を引き起こしてしまうこと)

 

もし咬まれてしまったら

寝ているときに咬まれた場合、もしくは乳幼児がいつの間にか咬まれた場合は、咬んだ相手がムカデだったかどうかもわかりません。まず咬まれた部分を確認してみましょう。

2本の牙によって挟まれるので傷が2箇所ある場合が多いですが、咬まれ方によっては1箇所しかないときもあります。蚊に刺された痕のパワーアップ版みたいな大きな腫れあがり方をして熱を持っています。そして時間の経過とともに毒が反応を起こして、痛みが傷のまわり半径5cmぐらいに広がっていきます。

処置としては、まず咬まれた場所を43℃以上のお湯で温めつつ洗い流して下さい。このとき指を使って傷口から毒が出ていくように押し出します。熱くて大きな痛みを伴うかもしれませんが、ここは我慢してください。オオムカデの毒にはポリペプチドやヒスタミンといった、熱に弱い成分が含まれているので、これらの毒を熱で無効することで後々の苦しみをかなり軽減することができます。

その後はもし常備していれば虫刺され薬を塗ります。キンカン、もしくは抗ヒスタミン剤やステロイド成分の入った塗り薬が効果的です。塗布後はアイスノンなどで冷やして安静にしましょう。

これらの処置を済ませて数時間安静にしていれば症状は治まってくると思いますが、どうしても症状が引かずに苦しみが続く場合は病院へ。特にオオムカデに咬まれるのが初めてでない方はアナフィラキシーショックの可能性もあります。大事をとるに越したことはないでしょう。

オオムカデの毒牙

 

オオムカデに咬まれないために

咬まれた後の処置のことを知っておくことも大切ですが、やはり理想は咬まれないことです。ここではオオムカデに接触しないための心がけをいくつか紹介しておきます。

 

1.オオムカデが好きな環境を知る

オオムカデはじめじめした湿気のある狭い空間が大好きです。家の周りにそういった場所はありませんか?庭の置石、積み重ねられた落ち葉、老木、屋外に雨ざらしになった木材、プランター、放置ゴミなど、人家のまわりにはオオムカデが住処として好むものがいっぱいあります。さらにこういった環境にはオオムカデの餌になる生き物までもが集まってきます。これらを処分したり、整理・整頓・掃除をしたりすることによってオオムカデを人家から遠ざけることができるわけです。

またそういった環境で作業などするときは、不用意に隙間や放置物の下に手を突っ込まないこと。オオムカデは何かに接触されると反射的に咬みついてくる生き物です。必ず厚手の軍手などを装着して、オオムカデの存在を意識しながら作業するようにしましょう。

オオムカデ

 

2.屋内に侵入させない

これが何より一番大事なことでしょう。どんなに普段気をつけていても寝ているときに近寄って来られればアウトです。オオムカデに屋内に侵入させない工夫を考えましょう。

まずは戸締りの徹底から。トイレやお風呂の小窓なんかは常時少しだけ開けておくなんて家庭も多いでしょうが、昼間はともかく夜間の間は閉めるようにしてください。湿気を求めてオオムカデが入ってきてしまいます。その窓が2Fや3Fにあったとしても、オオムカデは垂直な壁を平気で登っていけるので同じことです。

次に屋内と屋外を結ぶ隙間を塞ぎましょう。木造家屋なんかだと、長い生活の内に家屋が劣化して縁の下や天井へ通じるような隙間が出来がちです。あからさまな隙間はオオムカデの侵入経路になってしまうので、壁材やパテなどできっちり塞いでください。

仕上げに防虫剤を使います。ムカデよけの薬としていろんな商品が出回っていますが、自分の経験といろんな方の話、Webでの口コミから判断するに一番効果があると考えられるのはナフタリンです。よくタンスの防虫剤なんかに使われているので、そういった商品をそのまま利用します。玄関、床下、天井裏などの侵入経路として怪しい箇所に配置しましょう。

ただしナフタリンはムカデを追い払うほどの強力なゆえに、人体にも害を及ぼす成分です。滞在時間が長くなる居間や寝室などに過剰に配置することは控えましょう。常識的な量の配置ならば問題はありません。ただし幼児やペットがいる家庭は、誤って口に入れないような配慮は必須です。

ナフタリン

 

3.オオムカデが部屋の中に現れた!倒し方は!?

ムカデ専用のスプレー系殺虫剤を使うのが一番ベターです。使用方法は商品によって違うのでそれぞれ取り扱い説明を熟読しておいてください。

しかしありがちなのは、いざオオムカデが現れたときにスプレーが手元にないパターン。スプレーを取りに行っている間に見失うのが必至ってときには、しょうがない、打撃戦です。スリッパや太い雑誌を丸めたような武器で戦いましょう。

しかし大ムカデはその見かけどおり、硬い鎧で体が覆われていて頑丈です。おそるおそる叩いてみたって程度では、奴ら全くひるみません。「粉々に粉砕してやるッ!」ってテンションで思いっきり全力で叩いてください。それで動きが止まったのを確認したら、ここで大事なのはもう1回思いっきり叩くことです。オオムカデは刺激を受けた際に、死んだように動きを止める場合があります。ここで油断すると突然素早く動き出して一目散に逃げていくので、死んだふりであろうが、本当に死んでいようが、もう一度叩いて確実に息の根を止めましょう。

万が一逃がして見失ってしまった場合、ナフタリンを使いましょう。オオムカデが隠れたと思われる隙間に投入すれば、嫌がって出てくることが多いです。それでも発見することができなかった場合はナフタリンを一時的に部屋中に重点配置します。そうすればオオムカデはその部屋から出ていくか、弱ってそのまま死んでしまいます。

 

野生の子持ちオオムカデの動画:

 

ムカデ対策アイテム

ムカデコロリ

ムカデコロリ
ベイト型のムカデ駆除剤です。プラスチックケースの中にムカデを引き寄せる毒餌が入っており、仕掛ける場所によっては短期間で何匹ものムカデが罠にかかってくれます。かなり効果的であると評判も高く、山に面した地域で過ごしていてムカデの被害に毎年困っている人にはオススメのムカデ対策アイテムです。

ムカデブロック 10個セット

ムカデブロック 10個セット
設置型のムカデ忌避剤です。袋の中にはヒバ由来の精油が含まれており、この成分が少しずつ空気に溶け出していくことで忌避効果を発揮します。ムカデが侵入しそうな経路にあらかじめ設置しておくのが効果的です。

フマキラー アリ用殺虫剤 アリ・ムカデ粉剤 1kg

フマキラー アリ用殺虫剤 アリ・ムカデ粉剤 1kg
粉末型のムカデ・アリ用の薬剤です。殺虫効果と忌避効果の両方が期待できます。天然由来の殺虫成分ピレトリンを使用しており、健康面や安全面の心配がありません。

キンカン

キンカン
ムカデに刺されてしまったときに効果的な塗り薬です。アンモニア水を主成分としており、虫刺されによる炎症もちろん、肩こり、腰痛、打撲、捻挫などの消炎作用も持っています。

ワニガメ

ワニガメ

ワニガメとは?

ワニガメは、爬虫綱カメ目カミツキガメ科ワニガメ属のカメのことです。

名前のとおりワニのように大きな口を持ったカメで、英名もAlligator snapping turtle(ワニのように咬みつくカメ)となっています。映画「ガメラ」に似ていると思った人、正解です。 そのモデルになったカメがワニガメなのです。

元々日本には生息していなかった種のカメで、原産は北アメリカ大陸。ペットとして輸入されて日本国内に持ち込まれていました。しかし成長すれば1メートルほどにもなるその大きさから飼育は困難で、その飼育放棄により野生化してしまった個体が定着してしまい、現在大きな問題になっています。

オオワニガメ

 

ワニガメの身体的特徴

ワニガメは甲羅の大きさが80cm程度、全長だと120cmほどに成長します。体重は大きな個体では100kgを超えることもあり、カメの中でもかなり大きな種類だといえます。

最大の特徴は頭部。ほかのカメに比べて非常に頭部が大きく、アゴ先が鋭く尖っています。このアゴは非常に強靭で、人間の指ぐらいなら簡単に数本まとめて咬みちぎってしまうほど。その力は300kg~500kgといわれていて、他のカメや貝類をいとも簡単に噛み砕いて食べてしまいます。しかしそれだけ攻撃に特化してしまったせいか、その頭が大きすぎて甲羅の中にしまうことができません。まぁ、天敵がほとんどいないワニガメにとっては頭部を隠すことに意味はないかもしれませんが。

また口の中には小さくて細い、鮮やかなピンクをしたミミズのような舌があります。ワニガメは水中でこれをまるで小さな生き物かのように動かして、近寄る魚を捕食しています。

首の周りにはトゲのような突起物が並んでいます。これで水の流れを感知して、獲物の位置を把握したりします。嗅覚も遠くの死肉を嗅ぎつけるほど非常に敏感。ワニガメは見た目よりも遥かに高度な捕食能力を備えたハンターなのです。

甲羅にはごついトゲ状のものがいくつも重なるようについています。水の抵抗が死活問題になる海ガメなどはつるつるした凹凸のない甲羅になりますが、ワニガメは基本的には水の流れがない、池や沼地に住んでいます。岩に擬態するため、ワニなどに捕食されないために独自に進化した結果だといえるでしょう。

ワニガメの舌と甲羅
↑擬似餌の役割をする小さな舌(左)と、アリゲーターをも退ける丈夫な甲羅(右)

 

ワニガメの主食と天敵

ワニガメは雑食性で、とくに動物性のものは何でも食べてしまいます。魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、それぞれ生きていようが死んでいようがお構いなし。ほかには貝類や果物なんかも食べたりします。

狩りの方法は待ち伏せと、夜間の積極的な索餌行動の2つ。待ち伏せの際は前述したとおり舌を疑似餌に見立てて捕食する手法をとることがあり、まだ幼い個体であるほどこの手法に頼る傾向が強いようです。体が小さい間はむやみに動き回るより、岩のようにじっとして餌を待ったほうが自分の身の安全にもなるからでしょう。

逆にワニガメにはこれといった天敵はいません。大型の亀にとっての天敵は通常はワニですが、ワニガメの甲羅はそのワニの顎の力を持ってしても砕くことができません。そもそも日本にワニいませんしね(笑)。ただし前述のとおり、生まれて間もないような小さな個体であれば、肉食性の鳥類・哺乳類に食べられてしまうことはあります。

ワニガメの捕食と天敵

 

ワニガメの住みかと繁殖

ワニガメは爬虫類の中でもかなり水に依存して暮らしています。水の流れの少ない池や沼、それも植物が生い茂っていて泥で濁った水質を好みます。生活のほとんどを水の中で過ごし、自ら陸に上がることはまずしません。

逆に自ら陸に上がる日。それは3年に一度の産卵のときです。

春に交尾を済ませたワニガメは夏前ぐらいの時期に陸に上がり産卵巣を作ります。土の中に産み付けられる卵は6個~50個程度。秋には卵から孵化して、その子供たちは水の中に帰っていきます。

ワニガメは繁殖できるまで成長するのに10年から15年かかるといわれています。繁殖速度がそれほど早くないため、乱獲が横行したアメリカではレッドリストに登録されてしまいました。

ワニガメ
↑ワニガメの子供

 

人間からみたワニガメの危険性

ようやく本題へ。ワニガメの人間に対しての危険性についてです。

近年ペットとして飼育されていたワニガメが捨てられて、野生化していることが問題になっています。大人の指でも簡単に咬みちぎるような危険なカメが近所の池にいるなんて信じられない!なんてヒステリックになってる親御さんなんかもいるでしょう。

しかし結論から言います。普通に生活していればワニガメに咬みつかれる可能性はまずありません。

ワニガメは産卵の時以外は常に水中にいます。しかも綺麗な川ではなく、池や沼のような濁った場所を好みます。つまり、人間のほうからそういった池や沼の中に足を入れなければ、絶対に接触しないわけです。池のそばで遊ぶことはあっても、いまどき池の中に入って遊ぶ人はいないでしょう。

しかもワニガメは水中で自分より大きな生き物に遭遇するとまず逃げます。そもそも水中ではほとんど咬みつくことはしないとも言われています。

唯一自ら陸地に上がってくる産卵時ですが、産卵自体3年に一度しかなく、運悪くそのときに遭遇しても、産卵を控えたワニガメの攻撃性は低く、ワニガメのほうから逃げていきます。

これらのことをふまえて、人間がワニガメに咬みつかれるケースがもしあるとすれば、それは人間のほうからワニガメにちょっかいを出したときです。ワニガメをわざわざ陸上にあげて、面白がって指を差し出したりすれば、びっくりするぐらいのスピードで咬みつかれて見事にその指を失うことでしょう。そんなんはもはや自己責任ですね。

もしワニガメを見かけたなら絶対に手を出さず、警察に連絡するようにしてください。

ワニガメの攻撃性

 

ワニガメの飼育放棄問題

人間が咬まれるトラブルはまず起こりえないだろうということを書きましたが、だからといって「じゃあ飼育放棄してもいいや」と簡単に思ってもらっては困ります。

ワニガメは自分の体より大きなワニ以外に天敵がいません。つまり日本では完全に無敵というわけです。濁った水中でおとなしくしていれば、唯一の脅威である人間の目に止まることもありません。さらにワニガメの寿命は30年~100年。これが日本の自然に放たれればどれだけ生態系を崩してしまうか、その想像は容易でしょう。

2016年現在、ワニガメの新規飼育はかなり厳しくなりました。多数の書類申請を行い、何万円もする申請料金を払い、これまた高額なマイクロチップを埋めなければなりません。またこれだけ大きな、しかも水棲のカメを飼育するとなるとその設備投資も多大な金額になります。
そして初期投資以上に、継続飼育していくには精神的にも金銭的にもたくさんの苦労が発生していきます。

「そこまでしてでも飼いたい!」というアツい気持ちは否定しませんが、安易な覚悟でとりあえず飼ってみようなんてのは控えてください。「何十年も生きるワニガメと一緒に人生添い遂げるんだ!」っていう覚悟はやはり必要です。

追記:
ちなみに飼育放棄に関して言えば、ワニガメ以上にタチが悪いのは実はミドリガメ。正式にはミシシッピアカミミガメという学名なんですが、彼らは食欲が旺盛で繁殖力が強く、しかも意外なことに体長30cmという大きさまで成長します。小型の鳥類さえも集団で襲って食べる彼らは、生態系の壊すという点ではワニガメに劣りません。ワニガメはもちろんそうですが「ミドリガメぐらいなら池に捨ててもいいだろう」なんて甘い考えは絶対に持たないようにしてください。
→鳩を襲って食べるミドリガメの動画

ワニガメの生態

 

日本国内での主なワニガメ捕獲事件

国内でのワニガメ騒ぎを何件か紹介します。ここで紹介しているのはあくまでたくさんの事例の中のほんの一部です。

 

1.2006年6月 東京都 上野公園不忍池

東京都台東区の上野公園不忍池でワニガメのメスが発見されました。通行人が穴を掘っている大きなカメに気付いて警察に通報したそうです。甲長37cmの比較的若い小さな個体でしたが、驚きは産卵した卵と一緒に見つかったこと。ワニガメが野生化して適応したことはあっても、繁殖に成功している例はまだ確認されていません。

この件では最初に6個、またその後に9個と合計15個の卵を回収しています。有精卵だとすれば池の中に別にオスがいて繁殖している可能性がありますが、その卵が有精卵だったかどうかは不明。

しかしこの不忍池にはかなりの数のワニガメが生息しているとの噂があって、公園に詳しい地元民やホームレスにとっては、その存在は有名であったようです。可能性としてはすでに繁殖に成功しているとみたほうが自然のような気が。噂レベルではありますが、水を飲んでいる鳩を大きなカメが襲って食べたという目撃談も確かに存在します。

不忍池のワニガメ

 

2.2009年6月、9月 愛知県 堀川

愛知県を流れる堀川の筋違橋付近で4年ほど前からワニガメの目撃情報が相次いでいました。調査の結果2匹の個体を確認し、2009年6月にそのうち1匹のオスの個体の捕獲に成功しました。甲長53cm、体重は37kgだったそうです。
→捕獲者のブログ「どようさんのオケラみち」

その後同年9月にもう1匹(♀)を捕獲しましたが、事前に撮影されていた個体とは違う可能性が高いと判断されました。「普通のカメとは明らかに違う子ガメを見た」という目撃情報もあって、残念ながら堀川では繁殖に成功してしまったという見方が強まっています。トゲスッポン、ブルーギル、アリゲーターガーの姿も確認されている堀川は外来種のメッカになってしまいました(汗)

 

3.2009年8月 福岡県 福岡競艇場

福岡市中央区の福岡競艇場のボートレース場にて発見されました。レース前に待機中だった乙藤智史選手(当時24歳)が水面にプカプカと浮かぶワニガメを発見して職員に通報、
まさかの怪物の出現に職員たちは大慌ててながらも捕獲したそうです。甲長は50cm、全長は70cm程度。

上流の那珂川から、もしくは数日前の大雨の際にどこか近場の水場から紛れ込んだ可能性が高いとみられています。なおペットとして飼育する際に義務付けられているマイクロチップは埋め込まれていなかったそうです。

 

4.2010年6月 大阪府 大阪港

こちらはなんと大阪港での発見例。泳いでいるワニガメを船舶点検していた大阪府警水上署の男性署員が発見したそうです。汽水域(淡水と海水が混じる場所)でも住むことができるワニガメですが、港というと限りなく海水のはず。好んでそんなエリアに侵入するとは思えないので、水の流れに逆らえずに紛れ込んでしまったものと考えられます。全長は70cm程度だったようです。

オオワニガメ

 

5.2011年10月 東京都 渋谷区鍋島松濤公園

通行人からの「ワニガメらしきカメが、ほかのカメの頭を咬みちぎって食べている」との通報を受けて警察が出動。渋谷署員13人が出動して、甲長30cm程度の個体が捕獲されました。付近の小学生がインタビューで「夏休みぐらいからいた」と証言しています。こらっ!早く通報しろよっ(苦笑)
→ANNニュース動画

 

6.2013年2月 沖縄県 嘉手納町屋良ムルチ(比謝川)

2012年12月に釣り人から目撃情報が寄せられました。釣り人と警察官たちが協力して釣り上げようとしましたが、糸を切られて逃げられてしまいました。その後対策本部が設置され、翌年2月に無事捕獲されました。甲長は50cm程度だったそうです。

 

飼育されているワニガメの動画:

 

ワニガメ関連アイテム

ワニガメハンドブック

ワニガメハンドブック
大久保 智哉氏がワニガメについて書いたガイドブック。内容は写真が多く、特別ワニガメマニアでなくても楽しめる内容になっている。

ワニガメハンドブック2

ワニガメハンドブック2
大久保 智哉氏がワニガメについて書いたガイドブックの第2弾。ワニガメ大好き人間によるワニガメ大好き人間のためのガイドブック。

カメのすべて (カラー図鑑シリーズ)

カメのすべて (カラー図鑑シリーズ)
大人から子供まで楽しめるカメ図鑑。カメ124種の生息地域や生態をカラー写真にて紹介している。飼育可能なカメについてはその飼育方法についても解説。

カメが好き! かめ亀KAME図鑑

カメが好き! かめ亀KAME図鑑
カメのかわいい部分を追求したカメ図鑑。100種類ほどのカメを紹介しており、身近なカメや、ウミガメに会うための体験記など親しみやすい内容となっている。

イエカ

イエカ

イエカとは?

イエカは、ハエ目・糸角亜目・カ科・イエカ属に分類されるカ(蚊)の総称です。総称なので「イエカ」という名のカがいるわけではありません。

イエカの仲間は日本だけでも30種類ほどいます。主に有名なのは「アカイエカ」「チカイエカ」「コガタアカイエカ」あたり。それぞれ種類によって多少生違いはありますが、ほとんど同じような生態をしていると考えても支障はありません。

このページではこのアカイエカを「イエカ」として扱っていきます。以降「イエカ」という表記があれば、全てアカイエカのことを指していると思ってください。

イエカ

 

イエカの身体的特徴

イエカは、体長は5~5.5mm程度になります。ヤブカ属よりは比較的大きくなる傾向が多いです。

体色は薄い茶褐色で、若干透明がかっています。アカイエカという呼称の割にはそこまで赤い印象はありません。どちらかというと茶色。

アカイエカ

 

イエカの生活と繁殖

日本で代表的な蚊であるヤブカ(ヒトスジシマカ)は基本的に昼間に行動していますが、イエカは夜行性です。なので昼間はあまり行動せずに暗い場所でじっとして過ごしています。そして夜になると家屋などに侵入し、人間の血を狙って近寄ってくるわけです。

部屋の電気を消して寝ようとした途端にどこからか蚊が現れて、耳元をプーンという耳障りな羽音で飛ばれた経験は誰にでもあるかと思いますが、これはこのイエカによるものなのです。

イエカの活動が活発な季節は春と秋です。意外にもイエカは夏はそれほど活動的ではありません。蚊といえば夏のイメージが強いですが、それはヒトスジシマカのようなヤブカ属によるもの。イエカは暑過ぎる夏は逆に行動力が低下します。

逆に寒さに強く、イエカは成虫のままで越冬することができます。さすがに冬に飛び回ることはありませんが、軒下や木の穴の中に隠れてじっとして寒さを凌ぎ、春の到来を待ち続けます。

そして春が来るとまた繁殖のための栄養を求めて活動を開始するわけです。暖かい時期のイエカの寿命は一ヶ月程度にも関わらず、この冬眠の際だけは半年も生きるから驚きです。

交尾を済ませた成虫は水面に卵舟と呼ばれる産卵コロニーを作ります。その名前のとおりまるで船のように水面に浮いており、この中には大体100個前後の卵が含まれています。

卵は2日間ほどで孵化してボウフラになります。ボウフラは水中で植物や微生物を食べながら1週間ほど過ごし、3日間程度のさなぎの期間(オニボウフラ)を経て羽化し、成虫になります。

ボウフラと卵舟とオニボウフラ
↑イエカの卵舟(左)、幼虫ボウフラ(中)、さなぎのオニボウフラ(右)

 

イエカの吸血行動と天敵

イエカといえば吸血行動ですが、実はオスは花の蜜などを摂取して生きています。吸血行動を行っているのは、産卵のために多くの栄養が必要なメスのみ。

その吸血対象は、人間はもちろん、哺乳類全般、鳥類、そして爬虫類や両生類・魚類にまで及びます。イエカの場合は特に鳥類を好み、家畜のニワトリなどを一番の標的にしている傾向があります。動物の体温、呼吸で吐き出される二酸化炭素、分泌される代謝物の臭いなどを嗅ぎ取って近寄り、長いストローのような針を垂直に差し込んで、血を吸い上げていきます。

このとき血液の凝固を妨げる役割を果たす唾液を注入するのですが、これがイエカに刺されたときの腫れと痒みの原因になっています。

ひとしきり吸血を終えると、カは注入していた唾液を回収して飛び立って逃げていきます。このとき腹にはかなりの血液が溜まっているので、飛行能力は著しく低下しています。この状態のカを両手で叩いて潰すと血が飛び散って、ちょっとしたスプラッター状態に。

イエカにとって天敵となるのは成虫時代はクモやトンボ、小鳥など。幼虫時代はヤゴなどの水棲昆虫やフナなどの肉食性魚類です。中でもトンボはイエカの成虫を食べ、トンボの幼虫であるヤゴはイエカの幼虫であるボウフラを食べるという、イエカにとっては本当にイヤラシイ相手ですね。

イエカの血を吸った前と後、イエカの顔のアップ
↑血を吸う前の状態(右)、血を吸った後の状態(中)、イエカの顔のアップ(右)

 

イエカの繁殖を防ぐために

ここからの内容はヤブカとほぼ共通です。

イエカは、山間部であろうと都市部であろうと、ところ構わず生息しています。産卵・孵化して繁殖するには本当に少量の水しか必要としておらず、完全な根絶はなかなか難しいものがあります。しかしちゃんと手段を講じれば繁殖を抑制することは可能です。

 

1.自宅の周りから繁殖場所をなくす

とにかく自宅の周りから水場をなくすところから。空きタイヤや放置バケツ、プランター、空き缶など、水が溜まるものをできる限り除去しましょう。イエカはこういった場所に産卵してその数を増やしていきます。

生い茂った雑草もイエカの隠れ家になるのでできる限り綺麗に刈り取りましょう。ドブがあるならば、そこが発生源になる可能性もあります。定期的に清掃して水はけが良い状態を保ってください。溜まる水さえなくなればボウフラは生息できません。

 

2.ダミーの産卵場所を用意して一網打尽に

また、あえてトラップとしてこちらで水場を用意し、ボウフラが現れたところで水を廃棄して駆逐するという手段も有効です。

ボウフラは誘引フェロモンを持っていて、自分がいる水場に成虫のメスを引き寄せる能力があります。成虫に「ここに産卵できる水場あるよー」とボウフラが教えているわけです。これはこれですごい能力ですね。

それを逆手にとって、近辺のイエカの産卵場所をそのトラップ水場に集中させます。そしてボウフラが羽化する前にその水をぶちまけて一網打尽にするわけです。水をぶちまけるのはコンクリート舗装の道路の上がいいでしょう。ドブや側溝などに捨てると水がはけきらずに羽化を許す可能性があります。

イエカのすみか

 

イエカの成虫の接近を防ぐために

まずは屋内への侵入を防ぐところから。窓を開ける場合は必ず目の細かい網戸にしましょう。なんと目が粗い網の場合は、イエカは体を入れて潜り抜けようとする習性があることがわかっています。窓のさんには隙間がある場合もあるので一度チェックして、もし発見した場合は塞ぎましょう。換気扇なども旧式の場合は防虫網の目が粗いときがありますので注意してみて下さい。

それでもイエカの侵入を100%防ぐことはできません。人が出入りがある玄関や、洗濯などで開ける窓からの侵入は気をつけていても完全阻止は不可能です。もし侵入されてしまった場合は、蚊取り線香やべープマットなどを設置するしかありません。これらは目に見えて大きな効果があります。設置すると、目の前を飛んでいるイエカがフラフラしだして突然ポトリと地面に落ちるぐらい。

ただし、ものによっては臭いがあったり、ペットに良くない影響がある場合があるので、使用するときは取扱説明書を熟読してからにしてください。
ベープマット 蚊取り器 セット 本体+取替(30枚入)
ベープリキッド 蚊取り器 液体式 60日セット 本体+取替(60日)

「イエカが部屋のどこかにいる、でもべープマットなんか常備してない!」なんて場合は、部屋の電気を明るくしたまま寝るという手段も地味に有効です。イエカは夜行性であるため、明るい部屋にはあまり近づかない傾向があります。ただしあくまで傾向があるだけなので、完全な対策とはいえません。

屋外で蚊が気になるときは虫除けスプレーなどの忌避剤を肌や衣服にかけておきましょう。ディート(DEET)という成分が入っている製品ならば、イエカに対してはまず間違いがないです。成分をみて確認しておきましょう。
蚊がいなくなるスプレー 蚊取り 12時間持続 200日分 無香料 (防除用医薬部外品)

余裕があるなら屋外に出かける前にシャワーを浴びておくのも意外に効果的です。イエカは人間の皮膚から出る代謝物と臭い(特に足の臭いなど)を感知して近寄ってくるので、そういったものを一度洗い流すことでイエカの接近を少なくすることができます。ただし、あまり熱いシャワーを浴びてしまうと新たに汗をかいてしまって逆効果なのでご注意を。基本的にはこれらの対処でイエカの接近はだいたい防げるはずです。

べーぷマットや蚊取り線香でイエカの対策をする

 

イエカに刺されてしまったら

イエカは水さえあれば大抵の場所に適応することができます。ドブ川はもちろん、放置ゴミが溜まった場所、地下鉄の中にだって生息していたりします。そのため普通に都心部で暮らしていても、イエカに刺される機会は多々あるでしょう。

刺されたときの対処のひとつとして、まず一般的にはムヒやウナコーワなどの虫刺され薬を塗ることを思いつくでしょう。ただし刺された患部にはできる限り早く塗るようにしましょう。そのほうが効果が圧倒的に大きいです。
【指定第2類医薬品】液体ムヒS2a 50mL
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あとは熱でイエカの唾液成分を無効化する方法があります。個人的にはこれが一番効果的な対処法だと思っていて、刺されてすぐに熱湯で患部を45~50℃程度に温められれば、痒みと腫れは驚くぐらいに軽減されます。ただし温める熱湯をすぐに用意できないケースが多いのが難点。お湯が出る環境ならばいいですが、屋外や外出先だとさすがに難しいでしょう。

逆に冷やす方法も。これも炎症を抑える効果がありますが、炎症の原因そのものを除去する効果はありません。冷やしている間は一時的に痒みは治まりますが、それをやめるとすぐに腫れて痒みが戻ってきます。あまりおすすめできません。

石鹸で患部を洗い流す方法もあります。痒み成分は酸性なので、アルカリ性の石鹸で洗い流せば中和されて毒性がなくなるという理論です。すでに痒み成分は体内に入ってしまっているので、外から患部を洗うだけで中和されるのかが疑問ですが、実際に自分の経験でも効き目は感じますし、ネット上でも好意的な意見が多い方法です。

意外に知られていないのがテープを貼る方法。絆創膏、極端な話セロテープでもガムテープでも構いません。患部が空気に触れなくなるので外部からの刺激を受けず、痒みがほとんどなくなります。外部刺激がなくなれば無駄に患部が腫れあがることもなくなり、かなり効果的な処置といえるでしょう。

ヤブカ

ヤブカ(ヒトスジシマカ)

ヤブカとは?

ヤブカは、ハエ目・糸角亜目・カ科・ヤブカ属に分類されるカ(蚊)の総称です。総称なので「ヤブカ」という名のカがいるわけではありません。

ヤブカとして日本で一番有名なのは「ヒトスジシマカ」です。白と黒の縞々模様をしていて一般的には「シマカ」とも呼ばれます。夏場であれば北海道以外のどこでも見かけることができるので、このカを見たことがないという人はいないでしょう。

このページではこのヒトスジシマカを「ヤブカ」として扱っていきます。以降このページでは「ヤブカ」という表記があれば、全てヒトスジシマカのことを指していると思ってください。

ヤブカ

 

ヤブカの身体的特徴

ヤブカは、体長は4~5mm程度になります。見た目に対して体重は2mg程度とびっくりするぐらいに軽く、ちょっとしたそよ風でも大きく影響を受けて、まともに飛べないほどです。

一番の特徴はやはりその白黒の縞模様をした体色。その縞模様は胴体だけでなく、足にまで及んでいます。なぜこのように目立つ模様に進化してしまったのかは、確かなことはわかっていません。シマウマの場合は、群れていれば捕食者が個体の識別がしづらくなるという理由がありますが、カに関して言えば縞々であることのメリットはいったいなんでしょうね?

あと他の種類のカとの識別の際に目印になるのは背中の模様。一本の綺麗な白線が縦方向に入っています。これがヒトスジシマカという名の由来にもなっています。

ヒトスジシマカ

 

ヤブカの生活と繁殖

ヤブカは基本的には昼間に行動していて、直射日光が当たらない、湿度の高くて水場が近い場所を好みます。

ヤブカが成虫として活動するのは主に4月~11月頃。この期間中は常に交尾・産卵を繰り返していて、1年間の間に7、8世代がサイクルすると言われています。あまり知られていませんが、ヤブカの成虫の寿命は実は1ヶ月程度しかありません。

交尾を済ませた成虫は水面のすぐ側に80個前後の卵を産みつけます。この卵は乾燥などの環境変化に非常に強く、水位が上がって卵が水に触れると孵化します。孵化した幼虫(ボウフラ)は水中で植物や微生物を食べながら10日間ほど過ごし、3日間程度のさなぎの期間を経て羽化し、成虫になります。

暖かい時期はこのサイクルを繰り返していますが、冬になると卵の状態を保って越冬に臨みます。この卵は冬が過ぎて温かくなると孵化してボウフラになり、またサイクルを繰り返すわけです。

蚊の幼虫時代の姿ボウフラ
↑幼虫期のボウフラの姿

 

ヤブカの吸血行動と天敵

ヤブカといえば吸血行動ですが、実はオスは花の蜜などを摂取して生きています。吸血行動を行っているのは、産卵のために多くの栄養が必要なメスのみ。

その吸血対象は、人間はもちろん、哺乳類全般、鳥類、そして爬虫類や両生類・魚類にまで及びます。動物の体温、分泌される代謝物の臭いなどを嗅ぎ取って近寄り、長いストローのような針を垂直に差し込んで、血を吸い上げていきます。

このとき血液の凝固を妨げる役割を果たす唾液を注入するのですが、これがヤブカに刺されたときの腫れと痒みの原因になっています。

ひとしきり吸血を終えると、カは注入していた唾液を回収して飛び立って逃げていきます。このとき腹にはかなりの血液が溜まっているので、飛行能力は著しく低下しています。この状態のカを両手で叩いて潰すと血が飛び散って、ちょっとしたスプラッター状態に。

ヤブカにとって天敵となるのは成虫時代はクモやトンボ、小鳥など。幼虫時代はヤゴなどの水棲昆虫やフナなどの肉食性魚類です。中でもトンボはヤブカの成虫を食べ、トンボの幼虫であるヤゴはヤブカの幼虫であるボウフラを食べるという、ヤブカにとっては本当にイヤラシイ相手ですね。

血を吸った後の状態のヤブカとアリグモに食べられる蚊
↑血を吸う前の状態(右)、血を吸った後の状態(中)、アリグモに食べられるカ(右)

 

ヤブカの繁殖を防ぐために

ヤブカは、山間部であろうと都市部であろうと、ところ構わず生息しています。産卵・孵化して繁殖するには本当に少量の水しか必要としておらず、完全な根絶はなかなか難しいものがあります。しかしちゃんと手段を講じれば繁殖を抑制することは可能です。

 

1.自宅の周りから繁殖場所をなくす

とにかく自宅の周りから水場をなくすところから。空きタイヤや放置バケツ、空き缶などの水が溜まるものをできる限り除去しましょう。ヤブカはこういった場所に産卵してその数を増やしていきます。

生い茂った雑草もヤブカの隠れ家になるのでできる限り綺麗に刈り取りましょう。ドブがあるならば、そこが発生源になる可能性もあります。定期的に清掃して水はけが良い状態を保ってください。溜まる水さえなくなればボウフラは生息できません。

 

2.ダミーの産卵場所を用意して一網打尽に

また、あえてトラップとしてこちらで水場を用意し、ボウフラが現れたところで水を廃棄して駆逐するという手段も有効です。

ボウフラは誘引フェロモンを持っていて、自分がいる水場に成虫のメスを引き寄せる能力があります。成虫に「ここに産卵できる水場あるよー」とボウフラが教えているわけです。これはこれですごい能力ですね。

それを逆手にとって、近辺のヤブカの産卵場所をそのトラップ水場に集中させます。そしてボウフラが羽化する前にその水をぶちまけて一網打尽にするわけです。水をぶちまけるのはコンクリート舗装の道路の上がいいでしょう。ドブや側溝などに捨てると水がはけきらずに羽化を許す可能性があります。

ヒトスジシマカが繁殖しやすい場所

 

ヤブカの成虫の接近を防ぐために

まずは屋内への侵入を防ぐところから。窓を開ける場合は必ず網戸にしましょう。

あとは蚊取り線香やべープマットなどの設置。これらは目に見えて大きな効果があります。設置すると、目の前を飛んでいるヤブカがフラフラしだして突然ポトリと地面に落ちるぐらい。ただし、ものによっては臭いがあったり、ペットに良くない影響がある場合があるので、使用するときは取扱説明書を熟読してからにしてください。
ベープマット 蚊取り器 セット 本体+取替(30枚入)
ベープリキッド 蚊取り器 液体式 60日セット 本体+取替(60日)

屋外で蚊が気になるときは虫除けスプレーなどの忌避剤を肌や衣服にかけておきましょう。ディート(DEET)という成分が入っている製品ならば、ヤブカに対してはまず間違いがないです。成分をみて確認しておきましょう。
蚊がいなくなるスプレー 蚊取り 12時間持続 200日分 無香料 (防除用医薬部外品)

余裕があるなら屋外に出かける前にシャワーを浴びておくのも意外に効果的です。ヤブカは人間の皮膚から出る代謝物と臭い(特に足の臭いなど)を感知して近寄ってくるので、そういったものを一度洗い流すことでヤブカの接近を少なくすることができます。ただし、あまり熱いシャワーを浴びてしまうと汗をかいてしまって逆効果なのでご注意を。

基本的にはこれらの対処でヤブカの接近はだいたい防げるはずです。

ヤブカ対策

 

ヤブカに刺されてしまったら

ヤブカは水さえあれば大抵の場所に適応することができます。ドブ川はもちろん、放置ゴミが溜まった場所、地下鉄の中にだって生息していたりします。そのため普通に都心部で暮らしていても、ヤブカに刺される機会は多々あるでしょう。

刺されたときの対処のひとつとして、まず一般的にはムヒやウナコーワなどの虫刺され薬を塗ることを思いつくでしょう。ただし刺された患部にはできる限り早く塗るようにしましょう。そのほうが効果が圧倒的に大きいです。
【指定第2類医薬品】液体ムヒS2a 50mL
【第2類医薬品】新ウナコーワクール 30mL

あとは熱でヤブカの唾液成分を無効化する方法があります。すぐ患部を50℃程度に温められれば痒みと腫れは驚くぐらいに軽減されます。個人的にはこれが一番効果が高いのではないかと思う方法です。ただし温めるための道具をすぐに用意できないケースが多いのが難点。お湯が出る環境ならばいいですが、屋外や外出先だとさすがに難しいでしょう。

逆に冷やす方法も。これも炎症を抑える効果がありますが、炎症の原因そのものを除去する効果はありません。冷やしている間は一時的に痒みは治まりますが、それをやめるとすぐに腫れて痒みが戻ってきます。あまりおすすめできません。

石鹸で患部を洗い流す方法もあります。痒み成分は酸性なので、アルカリ性の石鹸で洗い流せば中和されて毒性がなくなるという理論です。すでに痒み成分は体内に入ってしまっているので、外から患部を洗うだけで中和されるのかが疑問ですが、実際に自分の経験でも効き目は感じますし、ネット上でも好意的な意見が多い方法です。

意外に知られていないのがテープを貼る方法。絆創膏、極端な話セロテープでもガムテープでも構いません。患部が空気に触れなくなるので外部からの刺激を受けず、痒みがほとんどなくなります。外部刺激がなくなれば無駄に患部が腫れあがることもなくなり、かなり効果的な処置といえるでしょう。

ヤブカ

 

ヤブカが媒介するデング熱

デング熱はデングウイルスによる感染症で、発熱、頭痛、目の痛み、関節痛、皮膚の発疹などが主な症状です。通常デングウイルスは日本国内には存在しません。これまでは海外旅行先で蚊に刺されて国内で発症するパターンが多かったのですが、2014年8月に国内で海外に渡航していない人の発症が確認され、それがヒトスジシマカの媒介によることがわかりました。

つまり、

1. 海外に行った日本人が旅行先で蚊に刺されてデングウイルスに感染する
2. 国内に帰ってきてから新たに蚊に刺され、その蚊がデングウイルスを保持する
3. その蚊がほかの人を刺してウイルスに感染させる

という流れで国内でのウイルス感染が起きたわけです。これは非常に大きなニュースになり、メディアでも大きく取り上げられました。しかし、メディアはすぐに「殺人ウイルス日本上陸!」みたいな過剰な騒ぎ立て方をします。正しい知識を持って対応していきましょう。

 

1.デング熱とはどんな病気なのか

デングウイルスは3日~7日程度の潜伏期間を持って発症します。症状は前述したとおり、高熱、頭痛、目の痛み、関節痛、筋肉痛、皮膚の発疹など。個人差もありますが発熱は40度近くになるときもあり、関節痛や筋肉痛の痛みはかなり大きいと言われます。ごくまれに発熱後に血漿漏出に伴うショックと出血傾向が確認される患者がおり、その場合は「デング出血熱」という病名にあたり命の危険があります(デング出血熱も医療機関にかかって正しく治療を行えば死亡率は1パーセント以下)。

デングウイルスに対する予防接種やワクチンなどは現在では存在しないため、予防はできず、治療も対症療法になります。だいたい1週間程度で回復に向かう傾向にあります。

 

2.デング熱の感染について

デングウイルス感染者の血を吸ったヒトスジシマカが新たに他の人を刺すことによって感染します。人と人同士では感染しません。ヤブカの卵がウイルスを保持する確率は10パーセント程度で、越冬した卵についてはウイルスを保持できた例はまだ確認されていません。そのため一度国内の蚊に入ったウイルスが年をまたいで流行することはありません。

 

3.デング熱の予防と治療について

デングウイルスには予防接種のようなものはありません。蚊に刺されないことが一番の対策になります。蚊取り線香や虫避けスプレーを使う、蚊が繁殖する環境をなくす、などの地道な行動が、デング熱の一番の対策になるといえるでしょう。

ヤマカガシ

ヤマカガシ

ヤマカガシとは?

ヤマカガシは、爬虫綱有鱗目ナミヘビ科ヤマカガシ属のヘビの仲間です。

日本国内では北海道や小笠原諸島以外ならどこにでも住んでいて、アオダイショウやシマヘビと並ぶ、生活の中で比較的よく見られる日本の代表的なヘビの一種です。近年まで全く毒蛇だと認識されていなかったという、なんとも稀な経歴を持っています。

ヤマカガシ

 

ヤマカガシの身体的特徴

ヤマカガシは、全長が70cm~150cm程度の大きさになります。日本に生息するヘビとしては中型サイズでしょうか。

鱗はキール(鱗一枚一枚についている隆起)が強く、触るとかなりザラザラした手触りを感じることができます。これはヤマカガシが生活の中で水中を泳ぐ機会が多く、うまく泳ぐためにそのように進化したのではないかと考えられています。

よく『毒蛇といえば頭が三角形』なんて言葉がありますが、ヤマカガシの頭部は、マムシハブのように三角形ではなく比較的細い丸型をしています。目がクリッとしていて愛嬌がある顔をしているのも特徴のひとつ。ペットとしてもなかなか人気があるようです(※飼育には許可が必要)。

首周りには黄色いリング状の模様がついており、褐色地に黒・黄色・赤が交互に重なった鮮やかな体色をしています。とくに若い個体はこの模様が鮮やかである傾向が強いようです。

しかしこの模様は個体差・地域差が非常に多く、全体的に黒褐色が強かったり、鱗に赤い部分が全くなかったり、黄色のリング模様さえなかったりと、ときに他のヘビとの判別が非常に難しい場合があります。この場合は頭部の鱗の粗さや鱗のキールの強さなどで見分けるのがベター(※判別に自信がないときは触ろうと思わないでください)。

ヤマカガシの身体的特徴。全然色が違っていてもどちらもヤマカガシ
↑(左)と(右)で全然色が違いますが、どちらもヤマカガシ

 

ヤマカガシの住みかと主食

ヤマカガシは平野部、もしくは山間部の低い標高地域の水場に住んでいます。人間の生活圏に近い場所でいえば河川敷や田んぼなど。都心部ではなかなか見かけられませんが、田舎では普通に見かけるメジャーなヘビです。

水場に住んでいる理由は、好む餌がカエルや小型魚類であるためです。オタマジャクシも食べます。ほかのヘビと違ってあまりネズミなどは狙わないようです。あ、鳥の卵は食べるときがあるそうですが。

ヤマカガシの食事の大きな特徴は、毒を持っているヒキガエルさえ食べるということ。マムシやハブのような攻撃性の強いヘビでさえヒキガエルは避けるというのに、なんとヤマカガシは逆に好んでヒキガエルを狙う傾向にあります。しかもそのヒキガエルの毒を体内で取り込んで、自分の毒牙用の毒に使用するというから驚き(実際、ヒキガエルが生息しない地域のヤマカガシは毒を持っていないそうです)。

あと普通のヘビは獲物を頭から食べることが多いのですが、ヤマカガシは何故か獲物をお尻から食べることが多いようです。確かな理由はあきらかになっていません。食べられているカエルには気の毒ですがヤマカガシがカエルを飲み込んでいる途中の状態は、全く新しい生物みたいに見えて、見ため的にはちょっと面白いことになっています。

大きなヒキガエルを丸呑みにする途中のヤマカガシ
↑大きなヒキガエルを丸呑みにする途中のヤマカガシ

 

逆に天敵になるのは、人間、猛禽類、イタチ、テン、タヌキ、大型のヘビなどです。特に生息域が重なるシマヘビやアオダイショウなどの大型ヘビはヤマカガシにとっては脅威で、大型ヘビが多い地域ではヤマカガシは少ないと言われています。

アオダイショウVSヤマカガシ
↑大きなアオダイショウに捕食されるヤマカガシ

 

ヤマカガシの生活サイクルと繁殖

ヤマカガシは明るい時間に活動することが多く、夜間はあまり積極的には動きません。冬場は土の下などで冬眠をし、寿命は自然環境下では5年程度までと考えられています。

ヤマカガシは基本的に冬眠直前の秋頃に交尾をします。秋に交尾の機会に恵まれなかった個体は、冬眠から覚めた春先に交尾を行う場合もあります。そして妊娠したメスは夏に10~20個程度の卵を産卵します。

産卵場所は石や落ち葉などの下で、卵が孵化するのは30日~50日後。幼蛇は最初は20センチ程度ですが、3年ほどかけて約1メートルぐらいの大きさまで育ちます。

河原にいるヤマカガシ(左)、飼育下で産卵されたヤマカガシの卵(右)
↑河原にいるヤマカガシ(左)、飼育下で産卵されたヤマカガシの卵(右)

 

ヤマカガシの毒

ヤマカガシは毒を持つ部位が2箇所あります。毒牙と、首の付け根あたりの表皮です。

まずは毒牙のほうですが、実はこれは最近までその存在があまり認知されていませんでした。一般的な毒蛇は大抵、口の中で一番前にある大きな牙に毒腺がありますが、ヤマカガシは奥歯のみに毒腺があります。普通に人間に噛み付いたときにこれが皮膚に食い込むことはほとんどないため、ずっとヤマカガシに毒牙はないと思われていました。

その毒牙の知名度を上げたのは1972年の中学生の死亡事故です。指のような細い部位であればヤマカガシの毒牙が届いてしまうケースがあり、それ以降は30件以上の重症例と4件の死亡例があります。

ヤマカガシの毒は、マムシやハブと同じで出血毒です。毒牙によって毒を注入される危険性はほかのヘビよりも少ないものの、その毒性の強さは実は国内最強で、マムシの3倍とまで言われています。

毒が注入されても、しばらくは表面的な症状は出てきません。マムシと違って咬傷部は腫れませんし、ジンジンとくる熱い痛みもほとんどありません。しかし毒が体内を回り始めると、血管内の血小板に異常をきたして体内出血が起こります。全身に皮下出血、歯茎出血、内臓出血、腎機能障害、血便、血尿などが起こり、最悪の場合は死に至るケースがあります。

しかも困ったことにヤマカガシの血清は限られた場所にしかないため、処置が後手に回ってしまうことが多いです。血清が手に入らない場合は輸血や透析処置をすることになりますが、
それらは血清投与ほどの大きな効果は得られないのです。

ヤマカガシの牙と骨

 

次に、首の付け根あたりの表皮にある毒腺のほう。ちょうどこれは体色の中でも一番鮮やかな部分にあたります。派手な部分をあえて見せることで『自分は毒を持った生き物である』ことをアピールするのは毒を持つ動物ではよくあることで、自然界では常識になっていますね。

実際、ヤマカガシは威嚇の際にはコブラのようにこの部分を平たく広げて、なんと相手に背中を向けてこれをアピールします。ヘビの威嚇としてはかなり特殊な部類。普通のヘビの威嚇は『咬んでやるぞ!』ですが、ヤマカガシの場合は『毒あるぞ!』なわけです(笑)

この毒は、ヤマカガシ自身が力を込めることで液状の状態で多少の距離を飛ばすことができます。肌に付着するぐらいではとくに影響はありませんが目に入ったりすると、結膜炎や角膜混濁、最悪失明してしまう危険もあります。

イタチなどがヤマカガシを狙うときに誤ってこの毒腺部分に噛み付いてしまい、返り討ちにあって死んでしまうケースもあるため、ペットをヤマカガシがいそうな環境に連れて行くときは注意が必要です。

ヤマカガシの毒

 

ヤマカガシに咬まれないために

ここまでヤマカガシの毒の恐ろしさについて説明してきましたが、執拗に恐れすぎる必要は全くありません。この50年でヤマカガシによる死亡事故は5件程度。交通事故で死ぬ確率のほうがよっぽど高いぐらいです。

ヤマカガシは臆病な性格をしていて人間を見つけるとすぐに逃げていくこと、危険が迫っても積極的に咬みついてこないこと、咬まれてもそのほとんどのケースで毒牙が皮下にまで届くことがないこと、これらを考えるとヤマカガシの危険性というのは非常に低いといえます。

ただし、絶対に最悪の事故が起こらないとは限りません。それを避けるためのちょっとした心構えだけここで記述しておきます。

 

1.ヤマカガシがいそうな場所では警戒心を持つ

前述したとおり、ヤマカガシは水場にいます。田んぼや河川敷でヤマカガシに遭遇する可能性は十分にあります。

基本的には出会ってもヤマカガシのほうから逃げていくので問題ないのですが、怖いのは、誤って不意にヤマカガシを踏んでしまったときや、何気なくふと手を置いたところにヤマカガシがいたとき。この場合は咬まれてしまう可能性が極めて高いです。

「そこにヤマカガシがいるかもしれない」という心構えだけは持っておきましょう。これはマムシやハブに咬まれないための認識にも繋がります。

 

2.ヤマカガシで遊ばない

ヤマカガシは滅多に人を咬みません。子供の頃に普通に素手でヤマカガシを掴んで遊んでいた人も多かったかと思います。しかし興味本位でちょっと捕まえてみようなんて思わないでください。

ちょっとした遊び心で咬まれて大事故になるのは損です。実際これまでに亡くなったのは、遊び心で自分からヤマカガシに接触した人ばかりです。

ヤマカガシに咬まれないための対策

 

3.ヤマカガシに咬まれてしまったら

まず何より大事なのは落ち着くことです。パニックになると冷静な判断ができませんし、血流が早くなって毒が早く回ります。とにかく落ち着きましょう。

最初に困るのは『毒が注入されたかどうか』の判断。仮に毒が注入されていたとしても、ヤマカガシの毒は自覚症状が出るまでには時間がかかります。しかし自覚症状が出てから処置をしたのでは、最終的に重症化する危険性が高まってしまいます。『咬まれたけど平気そうだ』なんて考えずに、毒が入ってしまったとして行動するべきです。

まずは咬まれたヘビの確認。咬まれて振り払ったときにはすでにヘビは逃げ始めていると思われるので難しいかもしれませんが、もしそのヘビがヤマカガシ(もしくはマムシ)であるとはっきり判断できたなら、その後の処置が非常にスピーディーになります。

次に毒の吸引。吸引器を持っていればそれを使いたいところですが、まず携帯していることはないでしょう。しかしヤマカガシの毒は、素人が口を使って吸い出すことはあまり推奨できません。流水で洗いながら血を絞り出すやり方で、少しでも毒を体外に追い出しましょう。後の症状が軽くなります。

さらに咬まれた場所から10cmほど心臓側の位置をタオルなどで強く縛ります。完全に血流を止めてしまうのかえって良くないので、指1本入るぐらいの余裕を持って縛りましょう。

そして病院へ向かってください。毒を受けているかどうかは病院で判断してもらえばいいことです。面倒くさがったり、恥ずかしがったりして判断を誤って命を落とすのは非常につまらないことです。

もし不幸にもヤマカガシの毒の症状がはっきり現れてしまった場合は、医者に相談の上でジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)に連絡してください。ヤマカガシの血清を常備している施設は日本でここだけです。必要とあらばヤマカガシの血清を輸送してくれます。
→ジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)HP

ヤマカガシ

 
カエルを丸呑みにしている最中のヤマカガシの動画:

 

ヤマカガシ対策アイテム

イヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット

ヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット
ヘビやムカデ用の忌避剤です。ナフタリン、木酢粒剤、硫黄などを使用しており、嗅覚に敏感なヘビやムカデを寄せ付けなくします。効果は一ヶ月程度。雨に濡れると効果が落ちてしまうためなるべく雨風の影響を受けにくい位置に散布すると長期間の効果を期待できるようになります。

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g
ヘビやトカゲ用の忌避剤です。大きめの固体錠剤タイプでヘビなどが現れる場所に仕掛けることでヘビの接近を遠ざけることができます。家の中への侵入路となりそうな場所にピンポイントで設置すると効果的です。天然成分を使用しているため健康面でも安心ができます。

ヘビレス

ヘビレス
ヘビ用の粒状をした忌避剤です。4種類の有効成分を配合しており、庭先に撒くことで1ヶ月程度の忌避効果が期待できます。粒状であるため雨にも強く、天候に左右されにくい効果が期待できます。

ヘビ捕獲棒

ヘビ捕獲棒
アルミでできているヘビ捕獲棒です。危険な毒ヘビに近寄ることなく捕獲作業を行うことができます。やや柄の長さが短めであるため、大型のヘビの捕獲を考えている場合はもう少し大型のタイプを購入したほうがよいかもしれません。

ポイズンリムーバー

ポイズンリムーバー
携帯用のポイズンリムーバーです。毒を持った生き物に刺されてしまった、もしくは咬まれてしまったときに毒を吸い出して被害を最小限におさえることができます。蚊に刺された場合でも吸い出すと効果があり、その後の炎症がかなり軽減されます。ただし圧力を下げて毒を吸い出す構造上、体の先端部の傷口に対しては容器がフィットせずに使用できない可能性があるため注意が必要です。

マムシ

マムシ

マムシとは?

マムシは、クサリヘビ科マムシ属に属するヘビの一種です。正式な標準和名はニホンマムシ。

気温変化には比較的強いほうで、日本では北海道から沖縄まで全ての地域に生息しています。平野部から山間部の水場が近い場所を好み、雑木林、落ち葉の下、山道のU字側溝、川辺の岩の隙間などでよく見かけることができます。

マムシ

 

マムシの身体的特徴

マムシの体長は40cm~100cmぐらい。頭は先端が尖っていて三角形に近い形になっています(若干個体差はありますが)。首が細い割には胴体はかなり太くて寸胴で、ヘビとしては特徴的なシルエットをしています。そしてその胴体の太さの割りにお尻に近づくと急に体が細くなっているのも大きな特徴。

模様は銭型の楕円形の斑紋が確認できます。これはよくメガネ模様と例えられます。個人的にはおっぱい模様のほうがピンとくるような気がするんですが(笑)

マムシはその牙に強力な毒を持っています。それは上あごの牙の先端部分にあって、獲物に噛み付いたときにその毒を相手の体内に注入します。

マムシ

 
この毒は出血毒で、蛋白質分解酵素によって血液凝固を阻害して細胞を破壊するタイプのものです。厳密には神経毒も含まれていますが、その量は小量なためにマムシの場合はほぼ出血毒だと思って構いません。咬まれた部分はすぐに腫れ上がり、場合によっては紫色に変色します。ほおっておくと意識障害、視力障害に発展して危険な状態になりかねませんので、もし咬まれてしまった場合は必ず病院へ行きましょう。

報告されているだけで日本国内で毎年3000件程度のマムシ被害があり、そのうち10人程度の人が命を落としています。つまり致死率は1%以下です。しかも命を落としたケースのほとんどは、マムシの毒を甘くみてまともな処置をしなかったことが原因。ちゃんと適切な処置さえすれば、まず命を落とすことはありません。なのでマムシに咬まれたからといって必要以上にパニックにならないようにしましょう。

マムシの毒が

 

マムシの主食と天敵

マムシの食事は動物性です。頭部に備わった体温感知器官を使って獲物を探し、ネズミなどの小型哺乳類、カエル、トカゲなどを食べています。捕食方法はもちろん丸呑み。元々胴体が太いマムシですが、丸呑みの最中はさらに体が大きく膨れ上がるため、一昔前のツチノコ目撃情報の大半は、この状態のマムシが正体なのではないかと言われています。

逆にマムシを捕食するのは、タカ、フクロウ、キツネ、ヒキガエルなど。しかしこれらの動物も毒蛇であるマムシの捕食にはそれほど積極的ではなく、これといった明確な天敵は存在しません。

マムシの天敵

 

マムシの生活・繁殖サイクル

マムシは基本的には夜行性で、夜になると積極的に獲物を探して徘徊します。逆に昼間は藪の中や岩場の隙間などの涼しく暗い場所に身を隠しています。水辺を好むだけあって泳ぎはうまく、積極的に水の中にも入っていく傾向があります。

マムシは夏に交尾を行い、それから約1年間の妊娠期間を経て、だいたい5~15匹程度の幼蛇を産みます。あ、マムシは蛇には珍しく卵胎生なので、体内で卵を返して直接子供を総排出孔から出産します。

妊娠したメスは栄養を多く必要とするために、昼夜問わずで餌を探して徘徊するようになります。また自らの代謝を上げて子供の発育を良くするために日向ぼっこも積極的に行います。普段は夜行性でおとなしいマムシですが、このときばかりは人間と接触する機会が多くなってしまい、咬傷事故などが起きやすくなっています。

またマムシは脱皮をして古い皮を脱ぎ捨てて成長します。幼少時は年に4回程度、成熟したあとは年に1回程度のペースで脱皮します。ただしこれは環境に大きく作用されるようで、地域や個体によってその回数は前後するようです。

マムシが脱皮した後の皮
↑マムシが脱皮したあとの皮の残骸

 

マムシに咬まれないために

キャンプ、渓流釣り、山に近い地域での農作業など、私たちがマムシに遭遇する機会は少なくありません。防ぎようのない不意の事故というのはありますが、その確率はしっかり下げたいところです。

 

1.マムシの住みかを理解する

マムシは明るい時間は、基本的に藪の中や岩場の影などに潜むようにじっとしています。そういった場所に立ち入るときは 『もしかしたらマムシがいるかもしれない』 という、『もしかしたら』の気持ちを持って行動するようにしましょう。

よく聞く事故の例は、昆虫を追いかけたり、キノコを探したりで足元を確認しないままで木の根元に近づいた、渓流釣りで沢を移動中に岩の隙間に不用意に手をかけた、キャンプ場の石垣に何気なく寄りかかった、倒木を足元の確認なく不用意にまたいだ、などがあります。マムシが潜んでいそうな場所では、常に『もしかしたら』の気持ちを大事に。

 

2.咬まれないような格好をする

なるべくマムシがいる可能性がある場所にいくときには肌の露出を避けましょう。マムシは毒牙が比較的短いため、たとえTシャツレベルの生地の厚さでもないよりはマシです。地肌をそのまま咬まれることに比べれば、毒が注入されるリスクとその注入量は大幅に軽減されます。ズボンも七分丈などは避けて、厚手のデニムが理想的。農作業であれば長靴などを着用すると安全です。

 

3.もし家屋に侵入されるようであれば

マムシは基本的に人の気配を嫌うので、人家には滅多に入ってきません。しかし好物のネズミを追いかけて事故的に屋内に侵入してしまうケースは考えられます。

まずはマムシの侵入路となる可能性のある隙間を埋めましょう。そしてとにかくネズミを減らすこと。ヘビ用の忌避剤も市販されていますが、効果はいまひとつのものが多いようです。ヘビの侵入阻止に頑張るよりは、ヘビが侵入する理由になるネズミを減らすことに頑張るほうが効率がいいです。薬剤やトラップなどを使って、まずはネズミの対策から施していきましょう。

マムシに咬まれてしまったら

 

もしマムシに咬まれてしまったら

マムシに咬まれると、上顎の牙×2本、下顎の牙×2本で、最大4つの穴状の傷がつきます。あくまで最大4つです。たまたま牙が食い込まなくて、傷穴が1~3個だけなんてこともよくあります。

咬まれた直後は針で突かれたような痛みで、その後は毒の作用によってじんじんとした痛みが強くなってきます。咬まれた場所より心臓側10センチの位置で、タオルやヒモを結んで圧迫しましょう。ただし強く縛りすぎて血行を完全に止めるのはかえってマズイので、指1本入る程度に縛ること。

もし毒を吸い出す専用器具を所持しているなら、それを使って毒を少しでも吸い出してください。よく耳にする口で直接毒を吸い出す方法は、口の中の傷から毒が侵入する可能性があるのでオススメできません。口の中にはできかけの口内炎など、自覚のない傷がある場合が多いです。

そしてすぐに病院へ向かってください。必ず病院へ行ってください。レジャーの最中であろうが、周りの人に迷惑がかかろうが、それは仕方のないことです。前述しましたが、死亡例のほとんどは病院に行かなかったパターンです。たとえ咬まれた直後は大した症状が出ていなくても、いずれ時間とともに毒がまわり、全身に異常をきたします。そうなってからでは手遅れになります。

また、このとき無駄に焦らないこと。マムシに咬まれたからといってその直後に死んでしまうなんてことはありません。パニックになって暴れたりすると毒が体内を早く回ってしまい、かえって状況を悪化させることになりかねません。

ただし、咬まれた場所が救急車の到着に時間がかかるような場所だった場合は、自らの足で動いて助けを求めにいくことは構いません。安静でいるのに越したことはないのですが、もし受診までに時間がかかり過ぎるようならそちらのほうが症状が重くなりリスクが高まってしまいます。

マムシに咬まれてしまった場合の腫れ方
↑マムシの顔のアップ(左)と、咬まれて腫れ上がった腕の比較(右)

 
野生のマムシの動画:

 

マムシ対策アイテム

イヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット

ヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット
ヘビやムカデ用の忌避剤です。ナフタリン、木酢粒剤、硫黄などを使用しており、嗅覚に敏感なヘビやムカデを寄せ付けなくします。効果は一ヶ月程度。雨に濡れると効果が落ちてしまうためなるべく雨風の影響を受けにくい位置に散布すると長期間の効果を期待できるようになります。

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g
ヘビやトカゲ用の忌避剤です。大きめの固体錠剤タイプでヘビなどが現れる場所に仕掛けることでヘビの接近を遠ざけることができます。家の中への侵入路となりそうな場所にピンポイントで設置すると効果的です。天然成分を使用しているため健康面でも安心ができます。

ヘビレス

ヘビレス
ヘビ用の粒状をした忌避剤です。4種類の有効成分を配合しており、庭先に撒くことで1ヶ月程度の忌避効果が期待できます。粒状であるため雨にも強く、天候に左右されにくい効果が期待できます。

ヘビ捕獲棒

ヘビ捕獲棒
アルミでできているヘビ捕獲棒です。危険な毒ヘビに近寄ることなく捕獲作業を行うことができます。やや柄の長さが短めであるため、大型のヘビの捕獲を考えている場合はもう少し大型のタイプを購入したほうがよいかもしれません。

ポイズンリムーバー

ポイズンリムーバー
携帯用のポイズンリムーバーです。毒を持った生き物に刺されてしまった、もしくは咬まれてしまったときに毒を吸い出して被害を最小限におさえることができます。蚊に刺された場合でも吸い出すと効果があり、その後の炎症がかなり軽減されます。ただし圧力を下げて毒を吸い出す構造上、体の先端部の傷口に対しては容器がフィットせずに使用できない可能性があるため注意が必要です。

ニホンイノシシ

ニホンイノシシ

ニホンイノシシとは?

ニホンイノシシは、鯨偶蹄目イノシシ科の哺乳類です。

日本国内ではニホンイノシシとリュウキュウイノシシの2種が確認されており、ニホンイノシシは北海道と沖縄以外、リュウキュウイノシシは沖縄のみに生息しています。しかしリュウキュウイノシシは非常に数が少なく、絶滅危惧のレッドリストにも記載されているぐらいです。なので日本でイノシシといえば、ニホンイノシシのことを指すと思って差し支えないでしょう。以下このページでは、ニホンイノシシを「イノシシ」と呼称して扱っていくことにします。


↑ニホンイノシシ(左)と、リュウキュウイノシシ(右)。リュウキュウイノシシのほうがひとまわり体格が小さい。

 

イノシシの身体的特徴

イノシシは成獣で、体長は100cm~170cm、体重は80kg~180kg程度の大きさになります。体毛は明るめの茶褐色~黒褐色をしていて、その色にはやや個体差があります。この体毛は非常に剛毛で、逆向きに触れたときにはかなりゴワゴワした感触を感じるでしょう。

またイノシシの子供の頃は綺麗な縞模様が体色に現れていて、それが瓜の模様に非常に似ていることから、幼いイノシシはよく「うり坊」と呼ばれます。この縞模様は木漏れ日の中では保護色の役目を果たすと考えられていて、成獣まで成長して天敵がいなくなるにつれて少しずつ消えていってしまいます。シマシマのままのほうが可愛いのに残念ですね(笑)

イノシシの下あごには牙が備わっており、オスの大きな個体であれば、その長さは15cmを超えるほどになります。下から生えて手前に湾曲している牙を下からアッパーカット気味に振り回すことによって、対象物の肉をえぐりとり、大きなダメージを与えることができます。人間にとってはこれがちょうど太腿の高さにあたるため、大怪我をさせられる危険性があります。

また意外に知られていないのがその身体能力の高さ。普段はゆっくり歩いて過ごしていますが、いざ敵と対峙するとなると、走れば時速40km、垂直ジャンプならば1m以上を飛ぶという脅威の身体能力をみせます。しかも大抵の生物は鼻先が急所ですが、イノシシの場合は鼻先は強靭な武器です。重さ70kgの岩さえも動かせるその硬い鼻先が、猛烈な加速をつけて突進してくるのはかなりの脅威。実際に人間が大怪我をさせられた例は数多くあります。

イノシシの身体的特徴
↑ニホンイノシシの牙(左)と、イノシシの子供「うり坊」(右)

 

また意外にも泳ぎが得意で、犬かきのような動きで池や川を、なんと時には海を泳ぐこともあります。その目的は定かではありませんが、毎年中国地方から四国まで瀬戸内海を泳いで渡るイノシシがいます。瀬戸内海ほどの距離を泳ぎきれる哺乳類は他にはなかなかいません。いったいどこで泳ぎ方とか覚えるんでしょうね。

うりぼう
↑瀬戸内海を泳いで渡るイノシシ(2012年11月撮影)

 

ニホンイノシシの主食

ニホンイノシシは雑食性です。普段は植物性のものを食べていることが多く、ドングリなどの木の実、果実、タケノコ、地下茎、芋などを好みます。動物性のものでは、ヘビやカエル、ネズミ、ミミズなども摂取します。また近年では人間が出した生ゴミや畑の作物を狙って人里に現れることが多く、人間との接触事故に発展してしまうケースが危惧されています(詳しくは後述)。

逆にイノシシの天敵となるのは、幼少期はキツネや野犬、フクロウ、カラスなど。成獣になってしまえば日本国内においては敵は存在しません。唯一クマがイノシシにとって危険ではありますが、クマは積極的に生きている大型哺乳類を狙うことはありませんので。

ニホンイノシシの主食

 

ニホンイノシシの住みか・習性

イノシシは山に住んでいる、というイメージが非常に強いですが、実はイノシシは山間部でも低山地域や平地、つまり人里にかなり近い位置に住んでいます。自分の体が隠れるような草木が生い茂った土地、それも河川が近い湿地帯を好みます。

水場付近に住むのは、給水のほかにも水浴びや泥浴びをする目的があるためです。イノシシはよく全身を塗らす様に水の中を転げまわり、ダニや寄生虫を落としています。

また理由はよくわかっていませんが、イノシシは小便を水の中ですることが多いようです。しかし大のほうは普通に陸上でプリッと(笑) どういう意図で小便だけ水中でしてるんでしょうね?

イノシシが夜間に人里にやってくるニュースなどのせいで夜行性のイメージが強いですが、実際は昼間のほうが活動的に動いています。夜間に人里に来るのは、そのほうが人間に見つからずにすむため。そう、イノシシは学習能力が高くしたたかな生き物なのです。

 

ニホンイノシシの繁殖サイクル

イノシシの発情期は冬です。この時期になるとオスのイノシシはメスを求めて徘徊し、意気投合したメスと生殖行動を行います。このとき一匹のメスを巡ってオス同士で争うこともありますが、もちろんここでは強い方のオスだけがメスを獲得することができます。

無事に生殖行動を終えたオスはそこで休むことなく次のメス探しへ。発情期が終わるまでオスは延々とメスを探し続け、生殖行動を何度も何度も行っていきます。

一方身ごもったメスのほうは草木で巣を作り、4ヶ月の妊娠期間を経て3~6頭程度の子供を生みます。そして子供がひとり立ちするまで一緒に暮らしていきます。子供が成獣となって繁殖機能を持つのが約1年半。そしてまたオスはメスを求めて徘徊を始めるわけです。

うりぼう

 

イノシシと出会ってしまったら

イノシシは生息域が山間の低標高地域であるために、野生動物の中でも人間と遭遇しやすい生き物です。基本的にはイノシシは臆病で警戒心の強い生き物であるため、人間を見つけてもイノシシのほうから距離をとって離れていきます。このへんはクマと同じですね。

ただし、いきなり角を曲がったら出会い頭に、というパターンは危険。興奮したイノシシは人間を倒さねばならない敵とみなし、突撃してくることがあります。前述した脅威の運動神経で突進されては人間はひとたまりもありません。

 

1.イノシシと出会わない工夫をしましょう

山登りなどをするときにクマ対策として鈴を鳴らしたり、
皆で談笑をしながら歩くという手法がありますが、これはイノシシにも有効です。
イノシシは聴覚が非常に発達した動物ですので、人間の位置をこちらから知らせてやれば、
むこうのほうから距離をとってくれます。

 

2.もしイノシシと出会ってしまったら

もしイノシシと出会ってしまったら、まずはパニックにならないこと。とにかく刺激をイノシシに刺激を与えないことを第一に考えてください。十分に距離があるならば、ゆっくりその場を離れましょう。

もし不幸にも出会ってしまった距離が非常に近くて、相手がすでに威嚇行動に入ってる場合は、目を見たままで決して背を向けずに後ずさりして距離をとっていきましょう。背を向けて走って逃げると本能的に彼らは追いかけてきます。これはイノシシに限らずクマの場合でも同じです。

ちなみにイノシシの威嚇行動は、背中の毛を逆立たせたり、挙動不審に動き回ったり、牙をカチカチと擦り合わせて音を鳴らしたり、後ずさりしながら前足で地面をガリガリ擦ったり、などがあります。これらの動きをみせているときは要注意。

 

3.もしイノシシが襲いかかってきたら!

もしイノシシが突進してくるという最悪の事態になった場合。真っ直ぐ走って逃げても、逃げ切るのは不可能です。なんせ相手は時速40km以上で追いかけてきます。高い場所に登る、遮蔽物を利用して逃げるのが一応の最善手です。

ただし、もし幸運にもジャンプ傘を持っていたならば目の前で勢いよく広げてやりましょう。目の前で突然視界をおおう未知の物体に、イノシシは驚いて逃げていってくれます。

イノシシが襲ってきたら

 

民家や畑にやってくるイノシシ

イノシシが家庭ごみや農作物を狙って人里に下りてくる行動が、近年非常に大きな問題になっています。ゴミ捨て場や畑を荒らされる被害はもちろん、人間に対して突進したり咬みついたりするような事例が多く起きています。ケガで済めばまだ良いですが、下手をすれば死亡事故にも繋がりかねません。イノシシが出没する地域に住んでいる場合は、やはりその対策が必要になってきます。

 

1.イノシシが近づかない環境作り

まずイノシシは自分の身を隠せる茂みのようなものが好きです。逆に言うと、隠れられるものがない場所を嫌がります。山から家・畑までの間に茂みがあるならば綺麗に刈り取りましょう。身を隠せそうな遮蔽物も取り除けばなおベストです。

あと餌を見える場所に置かないこと。畑で出てきた野菜クズなどは放置してはいけません。ゴミも夜間に屋外に出さずに、収集車が来る直前に出すなどしてイノシシが近寄る理由を断ちましょう。収穫時期になった農作物は後回しにせずに早めに収穫してしまいましょう。

イノシシ用の忌避剤を使用するのも有効です。オオカミの尿の成分を使用したウルフピーという商品があって、この臭いによってイノシシに限らず野生動物のほとんどが寄り付かなります。値段はそこそこしますが内容量が多くて持続性も良いので、かなり長期間の効果が期待できます。


【野生動物忌避剤 ウルフピー】

 

2.もしイノシシが何度も来るようになってしまったら

イノシシは学習能力が非常に高いです。そのためゴミ置き場や畑で一度オイシイ思いをするとそれを覚えてしまい、また再びやってきます。一度味を占めてしまったイノシシは、茂みを取り除いた程度では引き返してくれません。

ゴミ置き場であれば、金属製のダストボックスを使うなどしてイノシシが手を出せないようにしましょう。網やブルーシートを被せるだけではイノシシの前では全く役に立ちませんのでご注意を。

畑であれば、対策はちょっと大事(おおごと)になります。まずは先に紹介したウルフピーの設置。

それで解決しないようであれば、イノシシが越えれないような壁を設ける必要があります。柵でもいいですが、できればその場合は布などで目隠しを。イノシシから視覚的に中が見えないことが大事。

壁の高さは1メートル程度で十分ですが、その上部には網などを外側にせり出すように張ってください。よく刑務所の塀の最上部に有刺鉄線が内側にせり出すように張り巡らされていますよね?アレに近しいのものを作ってください。予算があるなら、網と言わずいっそ有刺鉄線でもいいです(笑)

理由は、イノシシが垂直ジャンプしかできないからです。彼らは助走をつけたジャンプをしません。手前に網(有刺鉄線)がせり出した壁であれば垂直ジャンプでは越えることができず、イノシシは上からの侵入をあきらめます。

 

次に壁の下方向の処理。イノシシはその強固な鼻で穴を掘ることができます。生半可な壁だとその下に20cm程度の隙間を掘って、そこを無理やり押し通って入ってきます。壁をより深く埋め込むように立てるか、杭などで地面にも網を固定して土を掘れない状況にしてやりましょう。

ちなみにこの壁ですが、完全に囲まないと意味がありませんのでご注意を。山側だけに設置してもイノシシは平気で回り込んできます。道路側であろうが民家側であろうとおかまいなしです。それだけ学習能力が高く、環境に慣れやすい生き物です。

 

3.どうしてもイノシシの被害を抑えられない、対策するのが経済的に難しい

この場合は最終手段としてイノシシを駆除しなければいけませんが、イノシシを勝手に捕獲・駆除することは法律で禁じられています。お住まいの自治体に相談してください。被害が深刻であることを報告すれば自治体・猟友会が駆除に動いてくれます。

イノシシとの付き合い方

 

イノシシと人間の付き合い方

基本的にはイノシシは臆病な生き物で、子供のうりぼうなどは非常に可愛いです。自然の中でその愛らしい姿を見つけた際には可愛がってあげたい気持ちもあるでしょう。しかし、絶対に餌を与えて餌付けしないでください。

人間慣れして人間を恐れなくなったイノシシは、近隣の町に出没するようになり、買い物袋をさげた人などを襲撃するようになります。最近では神戸市中央区で5日連続でイノシシによる人間への襲撃事件が続き、通学途中の女子生徒らを含む14人が怪我を負いました。幸い命には別状はありませんでしたが、運が悪ければ万が一が起きていてもおかしくありません。

あなたが餌をあげたイノシシが人を傷つけます。
あなたが餌をあげたイノシシはそのせいで殺処分されます。
それでもあなたはイノシシに餌をあげますか?

野生動物と愛玩動物は違います。その区別を考えずに可愛がると、人間もイノシシもどちらも不幸にすることになります。絶対に野生のイノシシに餌を与えないでください。

 

設置した金網を捻じ曲げて侵入していくイノシシの動画:

 

ビニールハウスを破壊して農作物を荒らすイノシシの親子の動画:

 

イノシシ対策アイテム

超音波 害獣撃退装置

超音波 害獣撃退装置
イノシシだけでなく哺乳類全般に効果がある超音波撃退装置です。庭先に設置すると赤外線で動物の動きをキャッチ。動物が嫌がる超音波を発して対象を遠ざける効果があります。ソーラー充電式なので電源の確保の必要はなく、対象となる動物の種類に合わせて超音波の強さを設定することができます。

押しバネ縦式 くくり罠 12cmサイズ

押しバネ縦式 くくり罠 12cmサイズ
イノシシや鹿を対象としたくくり罠です。害獣の通り道となっている場所に仕掛けることで効果が期待できます。原始的で手作り感が非常に強いアイテムですが、対象にも存在を気付かれにくく、捕獲の際には非常に効果的なアイテムです。

ファームガード

ファームガード
イノシシやタヌキ、ハクビシンなどを対象とした電気柵です。単1電池8本により24時間稼動で60日間の使用が可能です。こちらは比較的簡易型ですので、大きな農場などの広範囲をガードする場合は別の大型の規格の柵を購入すると良いでしょう。

フタワ 強力忌避一番

フタワ 強力忌避一番
液体型の忌避剤です。木タールの焦げついたような臭いが特徴で、哺乳類全般の接近を防ぐ効果が期待できます。できる限り雨風の影響を受けにくい場所に使用しなければいけない点と、畑など広範囲のガードは難しい点だけ注意が必要です。

ハブ

ハブ

ハブとは?

ハブは、クサリヘビ科ハブ属のヘビの総称です。マムシと並び日本ではとても有名な毒蛇。

 

ハブの種類

日本国内ではハブの仲間は沖縄のみに生息していて、ホンハブ、ヒメハブ、サキシマハブ、タイワンハブの4種類が確認されています。

 

1.ホンハブ

一番分布が広く、個体数も多いハブ。全長は大型になると2メートルを越える場合もあり、毒が強い。白~黄色地で、黒い細かい網目模様が特徴。特にネズミを好んで食べる。

 

2.サキシマハブ

八重島列島のみに住んでいたが、最近は本当南部や宮古島でも発見されている。 大きさは1メートル程度まで。体色は茶色く、鎖のような模様が入っている。毒は弱め。

 

3.ヒメハブ

全長はせいぜい80センチで小さいが、極端に胴体が太い。暗褐色で斑紋は比較的薄い。他の種よりも水辺を好み、カエルを主食にしている。ハブとしては毒性は最も低く、大きな事故になった前例はまだない。

 

4.タイワンハブ

元々は中国大陸や台湾に生息していた外来種だが、人により持ち込まれて本島の東部にて繁殖。最大1.2メートル程度で、灰褐色に黒い鎖の模様が入っている。牙が細長い上に毒も強いので、人間にとっては危険な種。ただし個体数は非常に少ない。ほかの種よりは木の上での生活を好む。

沖縄に生息するハブの種類
↑ハブ(左上)と、サキシマハブ(右上)、ヒメハブ(左下)、タイワンハブ(右下)

 

このページでは個体数が多くハブの咬傷事故の大半を占めるホンハブについて解説していきます。以下ここではホンハブのことをハブと称します。

 

ハブの身体的特徴

ハブは、全長は100cm~150cm、体重は1kg~2kg程度の大きさになります。ただし環境によりその大きさにはかなり違いがあり、2011年には全長250cm、体重3kgの個体が捕獲されてニュースになりました。天敵が少ない場所では大型の個体が育ちやすい傾向にあるようです。

ただし近年では小遣い目当てでハブを捕獲する人が多いため、駆除率が急速に高まり、あまり大きな個体は出現しにくくなったかもしれません(※捕獲すると県や市町村が報奨金として1匹4000円支払ってくれる)。

体色はお腹のほうが白~黄色で、黒い網目模様がついています。ウロコはほかのヘビに比べると非常に目が細かく、判別の際にはひとつの目安になります。

頭部はマムシと同じく鼻先が尖った三角形で、その槍のような形状から海外ではランス・ヘッド・シャークとも呼ばれています。目と鼻の間にあるピットという感覚器官は獲物の熱を感知することができ、餌を探す際にはレーダーのひとつとして使用して効率よく狩りをしています。

 

ハブの性格と攻撃性

ヘビというと比較的臆病な種類が多いのですが、ハブはどちらかというと気性が荒くて好戦的なほうです。もちろん積極的にハブが近寄ってくるようなことはありませんが、不用意に間合いに入ってしまうと、高い確率でその牙で攻撃を喰らうことになってしまいます。飛びつく間合いは全長の2/3程度でジャンプはしません。なので一般的には1.5メートルの距離をとれば安全だと言われています。

 

ハブの毒

ハブの特徴として見逃せないのが、その強烈な毒です。鋭い牙の先には毒腺があり、相手に噛み付いた際に直接その毒を体内に流し込みます。

毒の種類はマムシと同じく出血毒で、細胞を破壊して焼けるような強い痛みを相手に与えます。毒そのものの強さはマムシより弱いと言われていますが、注入される毒の量がハブのほうが多いため、結果的にはマムシに咬まれた場合よりも深刻な症状が出るケースが多くみられます。

血清が普及していない時代は、マムシの毒で亡くなる人の数は相当なものだったようです。1960~1970年ごろは毎年10人近くの人間の命がマムシによって失われていました。それだけ毒性が強く、危険なヘビだったということです。

近年では血清の普及やインフラの充実により、ハブによって命を失うケースはほぼなくなりました。1980年以降で死亡者はたった4人で、2000年以降は1人の死亡者も出ていません。しかし命こそ失わないもの、血清の投与が遅れた場合はその部位が壊死してしまったり、最悪切断するはめになってしまったりと、危険性の高い毒蛇であることは忘れてはいけません。

【追記】
2014年4月に男性が咬まれて死亡する事件が発生。奄美群島の加計呂麻島にて51歳の男性が手を咬まれ、1時間半後に血清治療をしましたが、その2時間後に死亡しました。

ハブの生態

 

ハブの生活サイクルと繁殖

沖縄の温かい気候もあってか、ハブは冬眠をせずに一年中活動を続けています。基本的に夜行性であるため、昼間はほとんど見かけることはありません。茂みの中や、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中などでじっとしています。

夜になると餌を求めて付近を徘徊します。行動範囲は一晩で約100メートル程度。

春頃にオスはメスを探して交尾を行います。1匹のメスを巡って複数のオスが巻き付き合いながら争うことも。無事に交尾に成功すると、メスは夏に卵を5個~15個程度出産します。そのメスが大きな体格をしていれば、それだけ多くの卵を一度に産むようです。

卵は一ヶ月半ぐらいで孵化し、30~40cm程度の幼蛇が誕生します。そして脱皮を繰り返して成長して、だいたい3年程度で1メートルを超す大きさになります。

ハブの大きさと頭部の様子

 

ハブの主食

ハブは肉食性です。普段はネズミ、トカゲ、カエルなどを食べていますが、大型の個体になるとなんとウサギやハト、ネコを食べた例も。

その中でもやはりネズミが一番の好物で、ハブの食事のほとんどはネズミであると考えられています。そのためネズミを追って家屋に侵入してしまうこともあり、人間に対しての咬傷事故の原因にもなっています。

ハブの主食

 

ハブといえばマングース

ハブといえば連想するのがマングースですが、マングースは元々1910年にインドから、ハブ駆除を期待して人間によって沖縄に持ち込まれたものです。

しかし夜行性であるハブと昼間に活動するマングースが遭遇することはほとんどなく、仮に出会ったとしてもマングースは強敵であるハブを避けて、狙いやすいヤンバルクイナやアミノクロウサギなどの天然記念物ばかり食べてしまうという皮肉な結果に。マングース投入作戦は、史上最悪レベルの失敗作戦であったと言わざるを得ないでしょう。ハブよりもマングースのほうが駆除の対象になっている現状はとても滑稽ですね。

一昔前は見世物で「ハブVSマングース」なんてものがやっていましたが、動物愛護上の問題から今では実施されていません。コブラさえも倒すマングースがハブに負けることはほとんどなかったようですが、前述したとおり、密室に閉じ込めでもしない限りマングースがハブを積極的に攻撃することはありません。「ハブVSマングース」というタイトルこそ知名度が高いですが、これは自然界ではありえない、人工的に作られた対決だったわけです。彼らは実はライバルでもなんでもなかったのです(笑)

ハブVSマングース

 

ハブに咬まれないために

血清が普及しているとはいえ、ハブが危険な生き物である事実は変わりません。沖縄に住むにしても、旅行に行くにしても、咬まれないための心構えだけは常に持っておきたいものです。

 

1.ハブのすみかに近寄らない

ハブは明るい時間は、茂みの中、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中でじっとしています。樹木の空洞や、放置されたゴミや木材の下、サトウキビなどの農作物の根元にいるケースもあります。そういった場所に不用意に近づかないようにしましょう。特に注意したいのは沖縄県内に非常に多い石垣。生活圏に近いうえにハブにとっては格好の隠れ場所です。

ハブは自分の間合いに入ってきた熱源に本能的に飛びかかります。ムチのようにしなるように素早く飛び掛ってくるため、飛び掛られてからでは避けることができません。怪しい場所に行くときには「この陰にはハブがいるかも」という心構えを持って、ハブより先にこちらが相手を目視・確認することが大切です。

 

2.ハブを自宅に近寄らせない

自宅の周辺からハブの住処になりそうなものを排除しましょう。草むらはこまめに手入れして、石垣は隙間をコンクリートで埋めるなどできればベストです。

後は1.5メートル以上のブロック塀を設置するのも効果的です。ハブはすすんでブロック塀を乗り越えようとしません。

手軽なのは照明器具の設置。夜行性のハブは灯りを避けるように行動しますので、ハブの通り道になりそうな場所を明るくしておけば寄り付きにくくなります。まぁ、そのぶん虫なんかが集まるようになってしまうので電撃殺虫灯なども必要になってしまいますが。

ちなみにハブが硫黄の臭いを嫌うっていうのは迷信です。科学的に実証されたガセネタですので、硫黄に頼ることはやめましょう。いまのところハブに対しての効果的な忌避剤というものは存在しませんので。

3.ハブに出会ったら

できればその場をやり過ごして立ち去りたいものですが、もし人家のそばで出会った場合は駆除するのが理想。
ここで逃がせばその個体が人や家畜に害を与える可能性が残ってしまうためです。「退治するなんて私ゼッタイ無理ーッ!!」って足がすくんじゃう人は無理しなくていいですが(笑)

一番無難なのは長い棒状のもので戦うこと。ハブ被害が多い奄美大島のほうでは家庭で常備していたり、道端に「用心ぼう」という棒が設置されていたりします。150cm以上の長さがあって、ある程度の重量があるものが理想です。

あらかじめ準備が必要ですが、ハブノックというハブ用の撃退スプレーも市販されています。これは遠い距離から噴射してハブを攻撃することが可能で、薬剤がかかったハブはすぐに苦しみ出し、数時間で衰弱死します。

ハブの毒と牙

 

4.ハブに咬まれてしまったら

まず何より大事なのは落ち着くことです。ハブに咬まれて死に至る確率はけっして高くありません。無駄にパニックになると血流が早くなって、症状を悪化させる原因になるだけです。

とりあえず相手がハブであるかどうかを確認しましょう。その蛇の見ためで判断がつく場合はいいですが、もし無理な場合は傷跡を見てください。ハブの場合、上顎の牙×2と、下顎の牙×2で、最大4つの穴状の傷跡がつきます(※咬まれ方によっては傷が3つ以下の場合もあります)。比較的早い段階で傷口からじんじんと焼けるような痛みが広がっていきます。

次に咬まれた位置より心臓側をタオルなどで強く縛って圧迫します。ただしこのとき力任せに縛り過ぎないように。指一本入る程度の力加減で縛るようにしましょう。

その後は、傷口に口をつけてできる限り毒を吸い出します。ハブの毒は口から含むぶんには人体にほとんど影響がありません。仮に飲んでしまっても、胃でその毒は分解されます。また口の中に傷があっても虫歯があっても構いません(多少炎症になるケースもあるようですが)。

そして走ったりせずにゆっくりと病院へ移動してください。ハブに咬まれたことを先に病院に連絡できれば処置もよりスムーズになります。甘くみずに、絶対に病院に行って血清を打ってもらってくださいね。血清を打たないと咬まれた部位から壊死して、本当に大変なことになりますので。

ハブに咬まれた人

 

ハブを生け捕りにすると報奨金がもらえる

先の項でもチラリと触れましたが、事実です。駆除して絶対数を減らすという面と、生きた個体で血清を製造するという面で需要があり、国や市町村が大きさに関係なく1匹あたり4,000円で引き取っています(2013年時点)。

不況もあってか、このハブ獲りは老若男女問わずで人気が出てしまい、報奨金の予算を使い切ってしまうほどの持ち込みがあって、大きなニュースになりました。たしかに1匹4,000円っていうのは大きなお小遣いですよね(笑) 生け捕りにするためには捕獲器具の準備も必要ですが、日常的にハブに接して暮らしてきた地元民にとって、器具の準備も捕獲作業自体も気軽で簡単なことだったようです。

このハブの報奨金については、スリムクラブの真栄田賢がトークのネタにしています。なんでも真栄田の父親がハブ捕りが上手いらしく、次々と市役所にハブを持ち込んで日銭を稼いでいたそうです。そうしたら、あまりの持ち込みの数の多さに市役所が怪しんで、「養殖してるんじゃないか」とあらぬ疑惑をかけられてしまったそうで(笑)

みなさん、間違っても養殖とかしちゃダメですよ。それで報奨金貰ってたら立派な詐欺罪になっちゃいますので(笑)

ハブVSマングースの動画:

 

ハブ対策アイテム

イヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット

ヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット
ヘビやムカデ用の忌避剤です。ナフタリン、木酢粒剤、硫黄などを使用しており、嗅覚に敏感なヘビやムカデを寄せ付けなくします。効果は一ヶ月程度。雨に濡れると効果が落ちてしまうためなるべく雨風の影響を受けにくい位置に散布すると長期間の効果を期待できるようになります。

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g
ヘビやトカゲ用の忌避剤です。大きめの固体錠剤タイプでヘビなどが現れる場所に仕掛けることでヘビの接近を遠ざけることができます。家の中への侵入路となりそうな場所にピンポイントで設置すると効果的です。天然成分を使用しているため健康面でも安心ができます。

ヘビレス

ヘビレス
ヘビ用の粒状をした忌避剤です。4種類の有効成分を配合しており、庭先に撒くことで1ヶ月程度の忌避効果が期待できます。粒状であるため雨にも強く、天候に左右されにくい効果が期待できます。

ヘビ捕獲棒

ヘビ捕獲棒
アルミでできているヘビ捕獲棒です。危険な毒ヘビに近寄ることなく捕獲作業を行うことができます。やや柄の長さが短めであるため、大型のヘビの捕獲を考えている場合はもう少し大型のタイプを購入したほうがよいかもしれません。

ポイズンリムーバー

ポイズンリムーバー
携帯用のポイズンリムーバーです。毒を持った生き物に刺されてしまった、もしくは咬まれてしまったときに毒を吸い出して被害を最小限におさえることができます。蚊に刺された場合でも吸い出すと効果があり、その後の炎症がかなり軽減されます。ただし圧力を下げて毒を吸い出す構造上、体の先端部の傷口に対しては容器がフィットせずに使用できない可能性があるため注意が必要です。

シロアリ

シロアリ

シロアリとは?

シロアリは、昆虫綱ゴキブリ目シロアリ科の昆虫の総称です。

名前とその見た目から、アリの仲間だという印象を抱きがちですが、実はシロアリはどちらかというとゴキブリに近い生物です。一般的なアリはハチと性質が非常に近く、ハチの羽と針がなくなったのがアリと考えてもハズレではありません。逆にシロアリは、社会性を持って階級制度の下で集団行動をとるようになったゴキブリと見ることができます。そう考えるとますます嫌悪感が増しますね(笑)

シロアリは世界中の温帯・亜熱帯・熱帯地域に生息しており、日本では22種類のシロアリの生息が確認されています。中でもわれわれの家屋に被害をもたらすのはヤマトシロアリと、イエシロアリの2種類が主。ヤマトシロアリは日本全域、イエシロアリは西日本の海岸沿いの地域に多くみられます。また、近年では外来種であるアメリカカンザイシロアリの被害も報告されるようになりました。

シロアリの種類
↑ヤマトシロアリ(左)、イエシロアリ(中)、アメリカカンザイシロアリ(右)
それぞれ左が兵隊アリで右が働きアリ。

 

ちなみに 『シロアリ=家屋を食い荒らす』 というイメージがありますが、全世界に2800種以上のシロアリがいる中で、家屋に害を与えるのは80種程度です。そのほかの種は森の土壌の中で、枯れ木や枯葉などを食べています。樹木のセルロースを分解する能力があるため、自然界の土壌の生物循環に大きな貢献をしており、地球視野で見た場合は非常に大切な生き物であるという一面も持っています。

しかし一部のシロアリの食害が我々にとって深刻な問題であることも確か。このサイトでは、人間の家屋への食害が顕著なヤマトシロアリとイエシロアリについて解説していきます。

 

シロアリの身体的特徴

ヤマトシロアリは、働きアリの大きさが大体4mm~6mm前後です。兵隊アリも同じぐらいの大きさですが、顕著に頭が大きくてその先端には強靭なアゴがあります。女王アリは15mm程度で、下腹部が大きく膨らみます。体色は乳白色から透き通るような淡い褐色で、羽を持った有翅虫(羽アリ)は黒い褐色をしています。

イエシロアリは、ヤマトシロアリに比べてサイズが全体的に大きいのが特徴です。働きアリ5~7mm、女王アリは40mmほどの大きさになります。ヤマトシロアリ同様に頭部が発達した兵隊アリもいますが、イエシロアリの兵隊アリの頭部は小さめ。体色も同様に乳白色~淡い褐色ですが、イエシロアリの場合は有翅虫も薄い褐色をしています。これらの点から、身体的特徴だけでも十分に2種の判別は可能です。

また、アリとの区別も容易です。以下の点を気にして観察すればすぐに判別がつきます。

・アリの触覚はくの字に曲がっているが、シロアリの触覚はまっすぐで連なった団子状
・アリはくびれがあるが、シロアリは寸胴
・アリの有翅虫の羽根は前羽根がかなり大きくなっているが、シロアリの有翅虫の羽根は前後とも同じ大きさ

ヤマトシロアリの兵隊アリ
↑ヤマトシロアリの兵隊アリと働きアリ(左)、イエシロアリの兵隊アリ(右)

 
ヤマトシロアリの女王アリ
↑ヤマトシロアリの有翅虫(左)、イエシロアリの女王アリ(右)

 

シロアリの階級と繁殖サイクル

シロアリは個体の階級がしっかりと分かれており、非常に社会性に富んだ生き物です。
・女王アリ・・・体長が非常に大きく、巣の中で繁殖活動に専念している
・王アリ・・・女王のそばで繁殖活動に専念している
・副女王/副王アリ・・・何匹かいて、女王達に何かがあったときに昇格して代わりを務める
・働きアリ・・・食事の調達や卵・幼虫の世話・巣作りなどをしている
・兵隊アリ・・・外敵から他のアリを守る
・ニンフ・・・いずれ羽アリになり巣立っていく将来の女王/王候補

シロアリはコロニーがある程度大きくなると、ニンフから羽アリに成長した個体が巣立っていきます。地域やシロアリの種類によって差はありますが、春から夏にかけての湿度が高い蒸し暑い日に飛び立つことが多いようです(結婚飛行)。飛行能力はそれほど高くなく、数十分の飛行でせいぜい500m以内の移動距離におさまることがほとんどです。彼らは着地するとすぐに羽根を落としてしまいます。そこでうまくパートナーを見つけたカップルは営巣と生殖活動に励みます。

最初は自分達も卵や幼虫の世話をしていますが、働きアリの数が揃う頃には完全に女王と王は生殖のみに専念するようになります。最初は一週間以上かけて数十個の卵しか産みませんが、生殖に専念したあとは1日数百個レベルでの産卵が可能に。そこからは爆発的にその個体数を増やしていきます。

シロアリの活動の時間は昼夜問わずです。季節的には暖かい時期のほうが活動が活発ですが、冬に特別冬眠をするわけではありません。冬場でも気温が高い日にはしっかりと活動を続けています。羽アリを見かける夏にしか活動していないイメージを持ってしまいがちですが、それは間違いです。

シロアリ
 

シロアリには目がありません。全ての行動はそれぞれが体から分泌する特殊なフェロモンによって行われています。階級を表すフェロモン、道標をあらわすフェロモン、危険を知らせるフェロモンなどさまざまなフェロモンを使い分けて社会的な集団行動を可能にしているのです。

なので何か不慮の事故で女王が不在になれば、彼らはそれをフェロモンで検知し、すぐに代わりの副女王が昇格して次の女王の役目を担ったりします。シロアリにとってのフェロモンは、我々にとっての会話と同等のものであると考えてもよいでしょう。

巣に選ぶ場所は、シロアリの種類によって様々です。枯れ木や土の中に巣を作る場合もあれば、海外で目にするアリ塚のように地上に作るケースもあります。

 

ヤマトシロアリの場合

非常に湿った場所を好みます。最初から湿っている朽木や木材などに目をつけて巣を張ります。巣を拡大するスピードは遅く、コロニーの大きさもせいぜい3万匹規模までと言われています。そのため家屋に侵入しても、トイレや風呂の床下までの被害で収まることが多いです。

 

イエシロアリの場合

ヤマトシロアリ同様に湿った場所を好みますが、なんとイエシロアリは自らの手で水分を持ち運んで、乾いた場所さえも湿った場所に変えてしまいます。そのため元々湿気がない場所にも積極的に進行していく傾向があり、被害は家屋全体に及ぶことも。侵食速度が早い上にコロニーも巨大で、100万匹クラスの巣を形成しているケースもあります。さらに地中奥深くに大元の巣を作っていることが多く、表面的な駆除では根絶が非常に難しいシロアリです。

シロアリの巣は基本的に湿っている木材
↑ヤマトシロアリ巣(左)、イエシロアリの巣(右)
ヤマトシロアリの巣は必ず湿っているため、木材が黒ずんで腐食していく場合が多い

 

シロアリの食事と天敵

シロアリは枯れて朽ちた木や葉を好んで食べます。その中に含まれているセルロースが主な栄養源であり、これを自らの消化能力と腸内菌により分解して摂取しています。

アリのように生きている生物を襲ったりはしませんが、木材、コンクリート、鉛などの柔らかい金属、プラスチック、動物の死骸、中には納骨された人骨までもを食害した報告もあります。非常に雑食性の強い生き物だといえます。

なんでも食べるシロアリですが、逆に天敵は生物界の中では多いほう。シロアリを捕食する代表的な生き物はクロアリ、クモ、小型鳥類、カエルやトカゲなどです。これらの生き物を不自然に多く見かける場合はシロアリの繁殖を疑ったほうが良いかもしれません。

シロアリの天敵になる生き物

あと意外に知られていませんが、シロアリは日光に非常に弱いです。強い日差しにさらされると数分で干からびて死んでしまいます。なので木材を食い荒らしても、外皮には手をつけずに内部にだけ侵攻してその姿を見せません。

 

シロアリへの対策・駆除方法

シロアリの駆除は専門業者に頼むのが一番効果的ですが、
その駆除費用はとんでもない金額になり(数十万円から~)どうしても尻込みしてしまいます。
決して簡単な作業ではありませんが、自力で駆除することも不可能ではありません。
予防・駆除に関して何かの参考になれば幸いです。

 

1.まずは身の回りの状況を確認する

シロアリは通常は人の目につく場所に現れません。羽アリが飛び立つ時期に初めて気付き、その時には既に深刻なレベルまで侵攻を許していることが多いです。以下の点にまず注意してみましょう。

・自宅やその周辺で羽アリを見かけたことがある
・自宅やその周辺で蟻道と思われる壁に付着した土の塊を見たことがある
・近所でシロアリ駆除をした話があった
・自宅周辺に朽ちた木や木材がある
・自宅に雨漏りや浸水などがある、もしくは過去にあった
・自宅の柱を叩くと空洞のような音がする
・自宅の床や畳がベコベコしてきた、軋む
・自宅の戸や障子のしまりが悪くなった
・自宅の特定箇所だけ妙に腐食が激しい場所がある

以上の点にいくつか該当するのであれば、一度しっかりとシロアリの有無をチェックすることをおすすめします。

蟻道
↑シロアリの通り道である蟻道(左)、蟻道を崩すとシロアリだらけ(中)、空中に塔のように形成された蟻道(右)

 

2.シロアリが侵攻していたら

シロアリは建材をスカスカに食い荒らして侵攻します。それにより雨漏りや水漏れの多い家になりますし、カビによる腐食も進行しやすくなります。さらには柱の耐震性能がなくなってしまい、家屋が中程度の地震で倒壊してしまった例もあります。出来る限り早急に対策を打ちましょう。

駆除は薬剤による方法になります。スプレー型、塗布型、土壌散布型、毒餌型(ベイト型)などのタイプがありますが、一つの方法だけでは完全な撲滅は難しいです。それぞれのタイプを複合して使用していくのがより確実な方法だといえるでしょう。

 

スプレー型:
殺虫成分を直接吹きかける、見た目にもわかりやすい方法です。発見した個体に直接吹きかけて殺すこともできますし、巣穴にノズルを挿し込んで注入すれば、狭い範囲に限って殺虫・長期間の忌避効果が望めます。即効性は一番ありますが、残念ながら巣の表層のシロアリにしか効果が望めず、シロアリ全体の根本的な根絶にはなりません。あくまで目に見える場所に現れたシロアリへの、その場しのぎの方法です。
アース製薬 シロアリアース 450mL
フマキラー 殺虫スプレー シロアリジェットプロ 450ml

 

塗布型:
シロアリに対しての食毒作用がある塗布型の薬剤です。他のアリやゴキブリの忌避剤としても効果があり、木材が燃えにくくなる作用もあります。またキノコ類の繁殖も抑えるので組み木型の木造建築などには非常に効果がある薬剤といえます。

薬剤は、木材などのシロアリの食害に合う場所に塗布して使用します。床下に潜り込み、むき出しになっている木材部分全てに塗布してください。キッチン下、風呂場下、トイレ下などは特に重点的に。また、すでにシロアリの通り道と化している木材にはドリルで穴を開け、木材の内部に直接薬剤を注入すると効果的です。
ハウスガード 10リットル 2倍濃縮
白アリスーパー21 低臭性クリア(2.5L) 白アリ防除剤

 

土壌散布型:
土の上に直接撒いて使用する乳剤です(液体)。これは自宅の周囲ではなく、床下の土壌に適量を撒いてください。これもキッチン下、風呂場下、トイレ下などを重点的に面上に散布するとよいでしょう。
シロアリ用土壌処理剤 粒状ネオターマイトキラー 5kg

 

毒餌型(ベイト型):
働きアリは1、2ヶ月ごとに脱皮を繰り返します。働きアリに脱皮を妨害する毒餌を食べさせて撲滅し、最終的には働きアリから餌をもらっている女王や兵隊も餓死させる方法です。
イカリ消毒 シロアリハンター 6個入

設置は簡単で、7cm×7cm×3cmぐらいの箱に毒餌が入っており、それを床下のシロアリの通り道近くに張り付けたり、自宅の周囲に等間隔で埋めるだけです。シロアリがいればその箱に向かって蟻道を作りますので、1ヶ月に一度掘り返して確認してみてください。もしシロアリが確認できればその周囲までコロニーを広げて食べに来ている証拠なので、その付近に毒餌箱を追加して効率を上げてください。

床下や自宅周辺に設置するだけなので非常に手軽な上、シロアリのコロニーを壊滅させることもできる非常に有用な方法だといえるでしょう。

唯一の欠点は、撲滅に非常に時間がかかることです。毒餌を口にしたアリが脱皮できずに死ぬまでに2ヶ月かかり、さらに女王が生み続けている子供が成長して毒餌を食べに来て死ぬまでの期間を考えると、かなり長丁場の戦いになります。

シロアリの群れ

 

巣が広大で個体の数が多いシロアリの完全な撲滅は本当に難しいです。忌避剤を塗ってもシロアリたちの巣を分断させるだけで終わってしまったり、殺虫剤を使っても見える部分のシロアリしか殺せていなかったり。自分で処置した場合は、当分の間はその後の経過を注意深く観測してください。どうしても自力で根絶が難しいと判断したときは業者に委ねるのも立派な選択肢です。

アルゼンチンアリ

アルゼンチンアリ

アルゼンチンアリとは?

アルゼンチンアリは、ハチ目アリ科カタアリ亜科アルゼンチンアリ属のアリの総称です。

名前から推測されるとおりアルゼンチン原産のアリで、本来は日本に存在しなかった外来種のアリ。南アメリカから生息地を広げて現在では日本、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、アフリカなど世界各地でその存在が確認されています。これらは輸入木材などにくっついていた個体が海を渡り、新たな土地で繁殖に成功して住み着いたと考えられています。

日本では1993年に始めて広島県の廿日市市で存在が確認されました。その後は船の出入りが多い港町を中心に、愛知県、神奈川県など発見が相次ぎ、現在では東京都、大阪府、京都府などの都心部でも繁殖が確認されています。

アルゼンチンアリの身体的特徴

 

アルゼンチンアリの身体的特徴

アルゼンチンアリの身体的特徴アルゼンチンアリは、大きさが大体2mm~3mm前後です。胴体は細長く、特に腰周りが細いのでくびれのようなものが確認できます。体色は茶色っぽく、ツヤや赤みはほとんどありません。

それなりに見た目に特徴はあるのですが、いかんせんサイズが小さいため他のアリとの区別は難しいです。「アルゼンチンアリが出た!」と報告があっても、実はオオズアリ、トビイロシワアリなどの他の種のアリと間違っていることも多いのだとか。

アルゼンチンアリとほかのアリとの特徴の違いと見分け方
↑左からアルゼンチンアリ、オオズアリ、トビイロシワアリ
オオズアリは頭が大きい兵隊アリが混じっているし、トビイロシワアリはアルゼンチンアリよりも黒っぽい

 
一番判断材料になるのは、その動きの早さです。他の在来種のアリに比べて格段に移動速度が早いです。異常に動きが早いアリの群れを見たときはアルゼンチンアリを疑ったほうが良いかもしれません。

↑アルゼンチンアリの動き。とんでもなく歩くスピードが早いのが見てとれる。

 

アルゼンチンアリの女王と繁殖

アリというと土の中に巣を作るイメージがありますが、アルゼンチンアリが地中に巣を作ることは稀で、ほとんどは地形からくる何かしらの隙間に巣を張ります。自然界であれば大きな石の下や、倒木の下など。人間の生活圏では、コンクリート壁に出来たヒビの間や、プランターの下、土の上に敷いたマットの下、中には車のトランクや、キッチンの流しの下などに巣を作るようなケースもあります。

アルゼンチンアリは多女王性なので、一つの巣の中に複数の女王アリが存在します。その数はかなり多く、ひとつのコロニーに1000匹を越える女王アリが確認されたことも。女王アリは暖かい時期であれば1日60個ペースで卵を産むので、その繁殖能力は凄まじいものがあります。

アルゼンチンアリの女王
↑アルゼンチンアリの女王(全長3mm~7mm程度)

ある程度アリの数が増えると、女王アリは新天地を求めて分巣していきます。巣の中で雄アリと交尾を済ませた女王アリは、多数の働きアリを連れて徒歩で移動します。他の種のアリのように女王単独での結婚飛行などは行いません。多くの働きアリを伴って行動することで様々なリスクから女王を守ることになるため、非常に安全性の高い分巣方法だと言えるでしょう。

元の巣を出たアリたちは比較的近い場所に新たな巣を作り、さらにそれをどんどん広げていくために最終的には尋常ではない大きさの巨大なコロニーが形成されていくことになります。ヨーロッパでは全長900kmにも及ぶスーパーコロニーが発見された報告も。日本でも最初に発見された広島県では、相当な大きさのコロニーが形成されていると考えられています。

あ、ちなみにアルゼンチンアリは分巣だけでなく、引越しも頻繁に行います。これは洪水が多く発生する原産地で得た習性で、少しでも水害の危険を感じたときに行われるようです。もともとの地形を利用して巣にする習性も、もしかしたら引越し頻度の高さを考えてのものかもしれません。

アルゼンチンアリの巣の作り方と引っ越し

 

アルゼンチンアリの食事と天敵

アルゼンチンアリは攻撃性が非常に強いアリです。多種のアリの巣を見つければ、成虫・幼虫ともに全て自分達のエサにしてしまいます。そのためアルゼンチンアリが住む地域では、多種のアリは全て絶滅してしまうことになります。

ほかには昆虫(生死問わず)、果実、花の蜜、アブラムシやカイガラムシの甘露、などが好物。鳥の巣に侵入して生きている雛鳥を襲ったような例も。人間が食べ残した食事も、肉・魚・野菜・穀物・お菓子など何でも好みます。特に、砂糖のような糖類を多く含む甘い食べ物に積極的にたかる傾向があるようです。

逆に、アルゼンチンアリの天敵は存在しません。外来種が天敵のいない新天地で繁殖してしまうパターンはよくあるのですが、なんとアルゼンチンアリは原産地でさえ天敵と呼べるほどの敵は存在しません。アリを主食にする鳥やトカゲも、あまりこのアリを好んで狙うことはないようです。

アルゼンチンアリはお菓子でも果物でもなんでも食べる
↑クッキーやグレープフルーツに群がるアルゼンチンアリ

 

アルゼンチンアリは同種で争わない

一般的なアリは、同じ種であっても巣が違えば敵グループとして争います。しかし困ったことにアルゼンチンアリは違う巣のアリ同士が争うことがないことが報告されています。同種同士での余計な争いがないことが、彼らの爆発的な繁殖力に拍車をかけているのです。アメリカで捕獲したアルゼンチンアリと日本で捕獲したアルゼンチンアリを鉢合わせてもケンカしないというから驚きです。

 

アルゼンチンアリと人間との関係

アルゼンチンアリは気性が荒いために、人間を咬むこともしばしば。しかしアリ自体のサイズが大したことはないため痛みはそれほどではありません。ヒアリなどのようにその牙に毒を持っていることもありません。

しかし、隙間を好んで家屋に侵入してくるその性質と、異常に高い繁殖能力は、不快害虫としてはかなり高いレベルであると言っても良いでしょう。

土の中を巣として生きるほかのアリであれば、食べ物を探す目的で家屋に侵入してきますが、なんせアルゼンチンアリは、巣を作る目的で家屋に侵入してきます。1mm程度の隙間にも侵入できるこのアリが家屋内で繁殖に成功すると非常に厄介です。

アルゼンチンアリの特集番組で被害者にインタビューをしていましたが、
・数が多過ぎて、駆除しても駆除しても全く数が減らない
・風呂掃除をしていて壁の隙間に水が入った瞬間、周りが真っ黒になるほどの数のアリが出てきた
・ゴミを置くとすぐにどこからか無数に現れてくる
・どうしようもない、ノイローゼになりそう
など悩ましい声が多数上がっていました。

また、農業害虫としても悪名が年々高くなってきています。果物や大根や人参などの根菜をかじって商品価値を無くしてしまう報告が上がっています。さらに別の農業害虫であるアブラムシやカイガラムシを守る性質があるため、これらの昆虫の大量発生を招いて作物に大きな被害をもたらす危険性も。養蜂所のミツバチの巣箱や蜜を食べてしまう食害も報告されています。

さらに前述したとおり、他のアリを駆逐してしまう点も大きな問題です。海外では他種のアリを主食にしていたトカゲの数が激減してしまった例もあります。

アブロムシから甘露をもらうアルゼンチンアリ
↑アルゼンチンアリが他種のアリを攻撃している(左)、アブラムシから甘露をもらうアルゼンチンアリ(右)

 

アルゼンチンアリの駆除方法

残念ながらアルゼンチンアリを完全に駆除するための有効な方法はいまだ見つかっていません。1mmの隙間があれば侵入可能、数が膨大、非常に強い繁殖力、これを完全に防ぐのは不可能かもしれません。

しかし、侵入されにくい・繁殖されにくい環境を作ることは可能です。ここではアルゼンチンアリの被害を多少なりとも軽減する方法を紹介していきます。

 

1.家の周りから彼らの巣になりそうなものを除去する

まずは自宅周辺の掃除・不要物の処分をしましょう。アルゼンチンアリが巣にするような物を全てなくすことで、アルゼンチンアリの繁殖を防ぐことができます。

・ダンボール、木箱、タイヤ、木材、マット、ブルーシート、コンクリートブロックなどを長期間放置しない
・立てかけられるものは立てかけて、地面との設置面積を減らす
・鉢植えはプランタースタンドなどの上に乗せるようにする
・コンクリートのヒビ等の隙間は全てシーリング材などで埋める

ブルーシートの下や放置タイヤもアリの住処になりやすい
↑地面に直接敷かれたブルーシート(左)や放置タイヤ(中)は巣になりやすい。プランターはスタンド(右)を活用したい

 

2.アブラムシ・カイガラムシを駆除する

これらの虫とアルゼンチンアリは強い共生関係にあります。不要な草むらは伐採、畑や花壇には専用の農薬をまいて殲滅しましょう。アルゼンチンアリの重要な食事源を断てば、必然的に繁殖速度は遅くなります。

アブラムシとカイガラムシ

 

3.屋内への侵入経路を全て塞ぐ

住宅の外壁にあるヒビや隙間はすべてシーリング材などで埋めましょう。窓のさんの隙間、軒下の通風孔などの穴は、周辺に忌避薬を散布して対処します。アルゼンチンアリはあまり高い壁を登って侵入する例はないので、配慮するのは2m程度の高さまでで構いません。

侵入経路

 

4.食べ物を放置しない

食べ残しは冷蔵庫にしまうか、きちんと蓋をして密閉しましょう。砂糖などの調味料も密封状態に気を配ってください。また、気をつけたいのはゴミ置き場。ゴミを出す曜日を守り、ゴミが長期間放置されるような状況を作らないようにすることが大切です。缶ゴミ・ビンゴミは必ず水で一度洗浄してから出すようにしましょう。

 

5.アリを殺すときは殺虫剤で

アルゼンチンアリは群れで行動しますし、体格が小さい上に、走る速度はものすごく速いです。
物理的に手で捕まえたり、1匹ずつ叩いて駆除するのは現実的ではありません。市販のアリ用のスプレー型殺虫剤を、アリの行列に直接吹きかけるのが効果的です。

 

6.巣を見つけたら積極的に駆除する

自宅近所でアルゼンチンアリの巣を発見したら、積極的に駆除しましょう。たとえまだ実害が発生していない段階だったとしても、天敵のいないアルゼンチンアリはコロニーを広げて、少しずつあなたの家ににじみよってきます。早めに対処すれば近隣全体を被害を未然に防ぐことにつながります。

巣に対して高い効果が望める殺虫剤は、液体タイプとベイトタイプ(毒餌型)です。それぞれ特徴があるので、できれば併用して確実な殲滅を目指していきましょう。

液体タイプ:
フマキラーなどから「アルゼンチンアリ用退治液剤」として販売されています。液体タイプはアルゼンチンアリの行列に直接かけたり、巣の入り口に注ぎ込むように使用します。それによって、巣を出入りする働きアリの体に殺虫成分が付着します。アルゼンチンアリはお互いの体を舐めあう習性があるので、巣の中の仲間を一緒に殺すことができるというわけです。性質上、働きアリの数を減らす目的に有効で、効果が現れるまでに2、3日と、それなりに即効性も期待できます。

ベイトタイプ:
ベイトタイプは、巣の近くに設置しておけば働きアリがそれを持って帰って女王や幼虫の餌にするため、コロニーの根本的な殲滅が期待できます。ただし働きアリの口に毒が入ることは少ないので、うまく巣の中で女王や幼虫を殺せたとしても、その効果が実感できるまでに時間がかかります。

 

アルゼンチンアリの被害を広めないために

現在アルゼンチンアリは、山口県から東京都までの太平洋側の広範囲に生息域を広めています。この拡大を防ぐには個人レベルではなく、地域レベルでの協力と対策が必要不可欠になってくるでしょう。

巣を見つけたらすぐに処理する、近隣の住民同士で情報を共有し合う、アリの巣になっている資材を他の地域に持ち出さないなど、その地域全体で住民・企業・自治体が協力してこのアリに対処していくことが重要です。

最近問題になっているのは、沖縄県の辺野古基地の埋め立てです。埋め立て用の土はアルゼンチンアリが繁殖している瀬戸内地域の土砂を使う予定になっており、土砂を持ち込む業者はアリの混入を防ぐための具体的な対策を立てていない状況です。もし沖縄のような狭い離島にアルゼンチンアリが侵入すれば、在来種への影響は甚大でしょう。国や基地建設に関わる業者にもう少しアルゼンチンアリの脅威を理解してほしいところです。

アルゼンチンアリ

 

アルゼンチンアリ対策アイテム

アルゼンチンアリ巣ごと退治液剤 1.8L

アルゼンチンアリ巣ごと退治液剤 1.8L
フマキラーから発売されている液体型の殺虫剤です。アルゼンチンアリはもちろんほかの種類のアリにも効果が認められています。アリの行列に直接噴射したり、巣の入り口にノズルで流し込むことと効果的。薬剤がついたアリに接触したアリも死滅するため、一気に巣の殲滅が可能です。

フマキラー アリ用殺虫剤 ウルトラ巣ごと退治 20個入

アリ用殺虫剤 ウルトラ巣ごと退治 20個入
ベイト型のアリ用殺虫剤です。ケースの中にはアリが好きな糖分とたんぱく質を使った毒餌が設置されており、それをアリが巣に持ち帰ることで巣を根本から絶滅させる仕組みになっています。20ケースあるためアリが出没しやすいポイントに設置して一網打尽にすることができます。

アルゼンチンアリ殺虫&侵入防止粉剤 2kg

アルゼンチンアリ殺虫&侵入防止粉剤 2kg
粉末型のアリ忌避剤です。家の周りを囲むように帯状に散布して使用するもので、殺虫効果と忌避効果にはかなり定評があります。アリだけでなくムカデやクモ、毛虫、カメムシなどにも効果が期待できます。

アース製薬 アリアースジェット 450mL

アース製薬 アリアースジェット 450mL
アース製薬から発売されているスプレー型の殺虫剤です。アリ駆除に対しての即効性は非常に高く、粉末型やベイト型に比べて手軽に使いやすいところが大きなメリットです。シフルトリンによる忌避効果も備えており、スプレー後は2週間程度アリが寄り付かなくなる効果もあります。