マダニ


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マダニ

マダニとは?

マダニは、クモ綱ダニ目マダニ亜目マダニ科の節足動物の総称です。

「ダニ」と聞くと私たちは家の中の畳やカーペットに住む小さな生物を連想しますが、マダニはそれとはまったく別の種類の生き物です。同じダニの仲間には違いありませんが、ダニとマダニは生息地もその生態も全く異なっています。英語でもダニは 「mite」 、マダニは 「tick」と呼び分けがされています。

アレルギーの原因になるダニも十分に人間にとっては厄介な存在ですが、このページではそれ以上に厄介な存在、マダニについて解説していきます。

マダニの通常の大きさ

 

マダニの身体的特徴

マダニはクモに近い節足動物の仲間です。体は顎体部と胴体部のふたつに分かれ、胴体部に4対、計8本の足がついています。前足1対が比較的前方に突き出されているので触角のように見えがちですが、触覚はこれとはまた別に顎体部についています。

マダニはほかのダニに比べて非常に体が大きく、通常時でも2mm~3mm程度はあって肉眼ではっきりと見えます。これは小型のテントウムシやシバンムシぐらいの大きさです。しかしこの大きさはまだ序の口で、驚くのは吸血後の大きさ。宿主の血を吸ってまるで風船のようにパンパンに膨れ上がり、なんとその体重は100倍以上に。その全長は1cmを超えるぐらいにまで大きくなります。

吸血後のマダニとの大きさの比較
↑吸血前と吸血後のマダニの大きさの比較
 

マダニの生活サイクル

マダニは山の中の茂みや草むらに住んでいます。

普段は植物の葉っぱの先などに身を隠して待ち構え、それに触れた動物にくっつきます。このときマダニはノミのようにジャンプしたりはしません。動物が直接植物に触れたときにうまく乗り移るのです。『巨蟲列島』という漫画で巨大なマダニが風を受けて飛ぶような描写がありますが、実際にはそういった行動は取りません(笑)

マダニ
↑葉っぱの先端に待機して宿主を待ち構えるマダニ

 

うまく宿主を見つけ、1週間以上に渡る吸血を済ませたあとは一度宿主の体から外れ、休眠期間と呼ばれる成長と脱皮の時間を自らに設けます。その後成長したマダニは再び宿主を見つけて吸血し、それが終わればまた休眠。この吸血と休眠のサイクルをマダニは生涯で合計3回繰り返します。

3度目の吸血の際に成熟したマダニは交尾を行っています。宿主の体の上で恋愛してイチャイチャするとは何たるふてぶてしさ(笑) なお一部のマダニは単性生殖が可能なため交尾が必要ない種類もいます。

マダニは地上で一度に数百個から数千個の卵を産みます。このとき産卵した母ダニはそのまま死亡。命を次の世代に繋いでその生涯を終えます。卵は1ヶ月から2ヶ月の期間をもって孵化し、すぐに宿主探しの行動を始めていきます。

基本的には以上がマダニのライフサイクルです。冬は落ち葉の下に潜ってサイクルを休むマダニが多いですが、種によっては逆に季節などおかまいなしに年中を通して活動し続けるものもいます。

血を吸って膨れ上がったマダニとマダニの卵
↑吸血後のマダニ(左)と、産卵したマダニ(右)

 

マダニの吸血方法

マダニはハーラー器官と呼ばれる感覚器官を持っていて、これは動物の体温、振動、二酸化炭素、匂いなどを感知する器官で、宿主探しの際にセンサーとして役立ててています。

うまく宿主の体表に乗り移れたマダニはまずその動物の皮膚が薄くて吸血しやすい部分を探します。一般的な哺乳類だと頭部や目・鼻・耳の近くを選ぶことが多いようです。

吸血場所を選んだマダニは鋭い歯で咬みつき、ノコギリのような歯を皮膚の奥に差し込みます。そこから出血してくる血を吸い続けるわけです。しかもその際に唾液をセメントのように固めて接合部を完全に固定。簡単に宿主から離れない状態を作り上げ、それから1週間以上の時間をかけてゆっくりと血を吸い上げていきます。

この長時間の吸血中は同時に体内で摂取した血液の濃縮作業も行っており、その濃度は3倍程度。つまり実際にはマダニが膨らんだ見た目ぶんの3倍の血を吸っていることになります。量にしてだいたい1ml程度。

吸血し終わったマダニは自ら接合部から牙を抜き出し、宿主の体から離れていきます。マダニは基本的にあまり横移動を行わないので、付近の安全な場所に身を隠して休眠期間に入り、またそのすぐ近くで再び宿主の待ち伏せ行動に入ります。

動物に群れで寄生する野生のマダニ
↑血を吸ってパンパンに膨れ上がるマダニ(左)、野生のシカの顔にびっしり寄生するマダニ(右)

 

その他、マダニが動物に大量に寄生している画像(※かなり強烈です。閲覧注意!)
その1 その2 その3 その4

 

人間からみたマダニの危険性

ようやく本題へ。マダニの人間に対しての危険性についてです。

マダニは人間も寄生対象としています。マダニは山の中に限らず、そのへんの公園や河川の草むらにも潜んでいます。ですので山登りをしたり、公園で遊んだりしているうちに知らないうちにマダニに咬まれることがありえます。最初は体が非常に小さいので、どこかで傷を受けたそのカサブタかなぐらいにしか思わないことが多いようです。しかし日にちが経つにつれてそれはどんどん大きくなっていき、そこでマダニの寄生に初めて気がつきます。

ここでやっかいなのが、彼らはセメントのような唾液で体を固定しているという点です。無理に引き抜こうとするとマダニの頭部や差し込まれている牙が体内に残ってしまうのです。マダニを強く掴むとマダニの体液の逆流を招くこともあり、感染症などのリスクが高まってしまいます。無理に引き抜くことは推奨できません。

まず一番確実な取り方は病院にいくことです。ただしメスを入れて切開することになる場合があるのでその覚悟はしておきましょう。

次に自力でなんとかする場合。よくいわれるのは、アルコールをかける、線香の火を近づける、氷で冷やすなどの手段です。嫌がる刺激を与えてマダニが外れるのを期待するやり方。特に線香の火でマダニのお尻に刺激を与える方法は有効なときが多いようです。ただしこれらをやり過ぎるとマダニが外れる前に死んでしまい、結局死骸が丸ごと残ったままになってしまいます。そうなると結局病院へ行くことになりますのでご注意を。

いろんな情報を総合してみると、一番安全で確実性が高いのはアルコールでしょうか。べンゼンやイソジン、もしくは虫除け(DEET成分を含むもの)でも構いません。脱脂綿などに染み込ませてそれをマダニに被せ、しばらく放置します。その後、さらに綿棒などでやさしく突っついて刺激を与えます。マダニにとって「わ、何!?おちおち飯食ってる場合じゃねぇ!」という状況を作り出すのです。そこからは根気勝負、マダニが自らその牙を外すまでいじめ倒します。やりすぎて殺さないように。。。

どうしても外れてくれない場合は、毛抜きピンセットで接合部を軽くつかんで丁寧に引き抜きます。アルコール攻めをした後だと、普通の状態で引き抜くよりもかなり簡単に引き抜くことができるそうです。アルコールで顎の力がなくなっているからでしょうか?

マダニ

ここでうまくマダニを引き抜けたとしても、病院には必ず行くようにしましょう。傷口に牙が残っていないか、また何かの感染症の症状が出ていないか確認はするべきです。後述しますが、大きな病気で命に関わる場合もあります。

 

人間の皮膚に頭を突っ込んでしまうマダニ

 

マダニを媒介にした感染症

1.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

最近媒介が確認されて話題になったSFTSウイルスによるものです。野生下のマダニのウイルス保有率は5~15%程度とみられています(愛媛での調査では6~31%)。嘔吐、下痢、頭痛などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。

日本でも死亡例の報道が数件相次ぎましたが、これは原因が最近解明されたためであり、重症熱性血小板減少症候群は昔から日本にあったとされる病気です。マダニに刺されないための対策はもちろんしたほうがいいですが、これを過剰に恐れる必要はありません。正直言ってマスコミが煽りすぎています。マダニによるSFTS感染が原因とされる患者数は324人で、そのうち61人が亡くなっています(2018/4時点)。気をつけるに越したことはありませんが、気にし過ぎて自然に全く触れないようになるのも考えものです。

 

2.ライム病

ネズミやシカなどが持っている病原体のボレリアが感染することによって起こる病気です。マダニが吸血を始めてから48時間以上が経つと感染リスクが高まるとされています。傷口近くから赤い斑点が現れ、全身の倦怠感、寒気、頭痛、嘔吐、発熱、関節痛などの症状が現れます。欧米では年間に何万人レベルで感染が報告されており、社会問題となっています。最近では歌手のアヴリル・ラヴィーンが、マダニに咬まれたことによりライム病にかかり病床に伏せました。半年近く寝たきりに近い状態になり、彼女はその症状の重さに一時は死も覚悟したそうです。

アヴリル・ラヴィーンがライム病にかかる

 

3.日本紅斑熱

日本紅斑熱リケッチアという病原体の感染によって引き起こされます。症状は風疹に似ていて、発疹や発熱の症状が起こります。毎年50~100人程度の感染が確認されており、いままでに4件の死亡例があります。日本紅斑熱リケッチアを保持したマダニは産卵を行うと、そこから生まれる子供マダニも日本紅斑熱リケッチアを保持した状態になるため、拡大が懸念されています。

 

4.ツツガムシ病

その名のとおりツツガムシに刺されて感染する病気ですが、マダニに咬まれたことによりウィルスが体内に入って発症することもあります。感染してから2週間程度の潜伏期間を経た後、強烈な悪寒と高熱の症状が現れます。ほかには頭痛、筋肉痛、倦怠感が感じられ、さらに皮膚には紅斑や紫斑が見られるようになります。治療を受けずに放置すると脳炎や心不全の合併症にて死に至ることもありえます。もしこれらと類似の症状が現れたときには、マダニやツツガムシからの感染を疑う必要があります。

 

5.ダニ媒介性脳炎

フラビウイルスによって引き起こされる感染症です。潜伏期間は1週間~2週間で、悪寒・高熱・頭痛・嘔吐などインフルエンザに近い症状が現れます。そこから悪化すると、めまいや自律神経失調、歩行困難などかなり重篤な状態になる場合もあります。また回復後も神経不調の症状が長期間に渡って残る可能性があります。

 

マダニに咬まれないための対策

基本的に茂みや草むらにいかなければ良いのですが、ペットの散歩や、キャンプ・登山などのアウトドアは楽しみたいもの。これらを全て生活から排除するのは不可能な話です。しかし最低限でもよいので、マダニのリスクを少しでも下げる心構えだけは持っておきましょう。

アウトドアの際のマダニ対策

1.肌の露出を防ぐ

マダニは基本的には衣服の上から吸血することはできません。長袖の上着や、丈の長いパンツを履いて肌の露出を少なくしましょう。これはダニ以外の虫に対しても効果的です。人間がマダニに咬まれた場合、場所はくるぶし付近のケースが多いようです。できればくるぶしが露出しない長めの靴下を着用するようにしましょう。

 

2.虫除けスプレーを使用する

主に蚊を寄せないために使用されることが多い虫除けスプレーですが、これに含まれるDEET(ディート)という成分はマダニの忌避剤になることがわかっています。虫除けスプレーの効果は大体2時間程度が限界と言われているので、定期的に全身に吹きかけてマダニを寄せ付けないようにしましょう。

 

3.草木にむやみに接触しない

マダニの宿主への唯一の接触方法がこの草木を介するものです。20cm以上の草であればマダニがいる可能性は十分にあります。あと笹には特に注意。マダニは「笹ダニ」と呼ばれるぐらい笹で待ち構えるのが好きです。

 

4.動物が通る道には特に注意する

マダニは宿主から吸血し終わって外れた後、ほとんど移動をしません。つまり日常的に動物が通る道は、マダニが再び待ち構えている可能性が高い場所だと言えます。生い茂った獣道などは最もマダニに注意しなければいけない場所です。

 

5.帰宅後は全身をチェック

万が一刺されてしまった場合でも、発見が早ければそれだけ感染症によるリスクを減らすことができます。屋外でのレジャーなど、マダニが生息していそうな場所から戻った後はいちおう全身を軽くチェックしておきましょう。マダニに刺されても、その唾液に含まれる成分の麻酔効果により自覚がないことがほとんどです。帰宅直後にすぐにシャワーに入れば発見しやすく、刺す前のマダニであれば水で流せることもあるためおすすめです。その際には脱いだ後の衣服にマダニがいないかのチェックもしておくとよいでしょう。

 

ペットをマダニから守る

マダニの危険性から守りたいのは自分の体だけではないはず。大切なペットも例外ではありません。SFTSは人間だけの病気ですが、人間以外でのSFTS発症は稀ですが、代わりにバベシア症などの病気の危険性があります。何より血を吸う虫が愛するペットの体表にくっついている状況が、飼い主としてはいたたまれないことと思います。

ペットへのマダニ対策

 

しかしペットの多くは屋外の散歩を必要としますし、草木に触れないようにしつけることはまず不可能です。飼い主が意識して守ってあげるようにしましょう。

対策の1つ目としては、マダニがつかないように忌避剤でペットを守る方法。有名な忌避剤ではフロントラインというものがあります。これはノミやダニが嫌がる薬剤を動物の表皮に塗布するもので、マダニには約1ヶ月弱程度の効果があります。実際に使用した方の感想を見る限りでは効果が確認できるそうです。しかし薬剤1回ぶんにつき1,000円程度の値段になるので、継続を考えるのであればそこそこの出費は覚悟しなければいけません。

もう1つの対策は、ついてしまったダニを安全に取り外す方法。これについては人間における場合と同様で、マダニの体を圧迫しないように、さらにダニの頭部がちぎれてペットの体に残らないように慎重にピンセットで取り除く必要があります。このときアルコールを併用すると良いでしょう。ウィスキーを使って愛犬のマダニを取り除いた方のブログがあるので参考にすると良いかもしれません。
→ブログ 『ミックス犬(パピヨン×コーギー)@犬マンガ。時々チワワ』

 

マダニ以外の動物にも注意?

2017年7月、SFTSに感染した野良猫に噛まれた50代女性がSFTSに感染して亡くなりました。国内ではマダニ以外の動物を介して感染が確認された初の事例となりました。これまでは犬や猫からのSFTS感染はほぼないとされていましたが、この件を受けて厚生労働省は注意を呼びかけています。

 

国内のマダニに関するニュース

北海道内のマダニから致死率が高い極東型ウイルスが見つかる

マダニが介する感染症のひとつに「ダニ媒介脳炎」があります。2018年5月に北海道大学の好井健太朗准教授の調査により、札幌市内のマダニからダニ媒介脳炎ウイルスが発見されました。それも致死率が高いと言われる極東型で、1995年の道南での発見以来になるとのことです。極東型ウイルスはほかの型にくらべて致死率が非常に高く30%に及ぶこともあり、夏の行楽シーズンに向けて警戒を呼び掛けています。

 

吸血して膨れ上がったマダニの歩行シーン:

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