危険生物

ハブ

ハブ

ハブとは?

ハブは、クサリヘビ科ハブ属のヘビの総称です。マムシと並び日本ではとても有名な毒蛇。

 

ハブの種類

日本国内ではハブの仲間は沖縄のみに生息していて、ホンハブ、ヒメハブ、サキシマハブ、タイワンハブの4種類が確認されています。

 

1.ホンハブ

一番分布が広く、個体数も多いハブ。全長は大型になると2メートルを越える場合もあり、毒が強い。白~黄色地で、黒い細かい網目模様が特徴。特にネズミを好んで食べる。

 

2.サキシマハブ

八重島列島のみに住んでいたが、最近は本当南部や宮古島でも発見されている。 大きさは1メートル程度まで。体色は茶色く、鎖のような模様が入っている。毒は弱め。

 

3.ヒメハブ

全長はせいぜい80センチで小さいが、極端に胴体が太い。暗褐色で斑紋は比較的薄い。他の種よりも水辺を好み、カエルを主食にしている。ハブとしては毒性は最も低く、大きな事故になった前例はまだない。

 

4.タイワンハブ

元々は中国大陸や台湾に生息していた外来種だが、人により持ち込まれて本島の東部にて繁殖。最大1.2メートル程度で、灰褐色に黒い鎖の模様が入っている。牙が細長い上に毒も強いので、人間にとっては危険な種。ただし個体数は非常に少ない。ほかの種よりは木の上での生活を好む。

沖縄に生息するハブの種類
↑ハブ(左上)と、サキシマハブ(右上)、ヒメハブ(左下)、タイワンハブ(右下)

 

このページでは個体数が多くハブの咬傷事故の大半を占めるホンハブについて解説していきます。以下ここではホンハブのことをハブと称します。

 

ハブの身体的特徴

ハブは、全長は100cm~150cm、体重は1kg~2kg程度の大きさになります。ただし環境によりその大きさにはかなり違いがあり、2011年には全長250cm、体重3kgの個体が捕獲されてニュースになりました。天敵が少ない場所では大型の個体が育ちやすい傾向にあるようです。

ただし近年では小遣い目当てでハブを捕獲する人が多いため、駆除率が急速に高まり、あまり大きな個体は出現しにくくなったかもしれません(※捕獲すると県や市町村が報奨金として1匹4000円支払ってくれる)。

体色はお腹のほうが白~黄色で、黒い網目模様がついています。ウロコはほかのヘビに比べると非常に目が細かく、判別の際にはひとつの目安になります。

頭部はマムシと同じく鼻先が尖った三角形で、その槍のような形状から海外ではランス・ヘッド・シャークとも呼ばれています。目と鼻の間にあるピットという感覚器官は獲物の熱を感知することができ、餌を探す際にはレーダーのひとつとして使用して効率よく狩りをしています。

 

ハブの性格と攻撃性

ヘビというと比較的臆病な種類が多いのですが、ハブはどちらかというと気性が荒くて好戦的なほうです。もちろん積極的にハブが近寄ってくるようなことはありませんが、不用意に間合いに入ってしまうと、高い確率でその牙で攻撃を喰らうことになってしまいます。飛びつく間合いは全長の2/3程度でジャンプはしません。なので一般的には1.5メートルの距離をとれば安全だと言われています。

 

ハブの毒

ハブの特徴として見逃せないのが、その強烈な毒です。鋭い牙の先には毒腺があり、相手に噛み付いた際に直接その毒を体内に流し込みます。

毒の種類はマムシと同じく出血毒で、細胞を破壊して焼けるような強い痛みを相手に与えます。毒そのものの強さはマムシより弱いと言われていますが、注入される毒の量がハブのほうが多いため、結果的にはマムシに咬まれた場合よりも深刻な症状が出るケースが多くみられます。

血清が普及していない時代は、マムシの毒で亡くなる人の数は相当なものだったようです。1960~1970年ごろは毎年10人近くの人間の命がマムシによって失われていました。それだけ毒性が強く、危険なヘビだったということです。

近年では血清の普及やインフラの充実により、ハブによって命を失うケースはほぼなくなりました。1980年以降で死亡者はたった4人で、2000年以降は1人の死亡者も出ていません。しかし命こそ失わないもの、血清の投与が遅れた場合はその部位が壊死してしまったり、最悪切断するはめになってしまったりと、危険性の高い毒蛇であることは忘れてはいけません。

【追記】
2014年4月に男性が咬まれて死亡する事件が発生。奄美群島の加計呂麻島にて51歳の男性が手を咬まれ、1時間半後に血清治療をしましたが、その2時間後に死亡しました。

ハブの生態

 

ハブの生活サイクルと繁殖

沖縄の温かい気候もあってか、ハブは冬眠をせずに一年中活動を続けています。基本的に夜行性であるため、昼間はほとんど見かけることはありません。茂みの中や、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中などでじっとしています。

夜になると餌を求めて付近を徘徊します。行動範囲は一晩で約100メートル程度。

春頃にオスはメスを探して交尾を行います。1匹のメスを巡って複数のオスが巻き付き合いながら争うことも。無事に交尾に成功すると、メスは夏に卵を5個~15個程度出産します。そのメスが大きな体格をしていれば、それだけ多くの卵を一度に産むようです。

卵は一ヶ月半ぐらいで孵化し、30~40cm程度の幼蛇が誕生します。そして脱皮を繰り返して成長して、だいたい3年程度で1メートルを超す大きさになります。

ハブの大きさと頭部の様子

 

ハブの主食

ハブは肉食性です。普段はネズミ、トカゲ、カエルなどを食べていますが、大型の個体になるとなんとウサギやハト、ネコを食べた例も。

その中でもやはりネズミが一番の好物で、ハブの食事のほとんどはネズミであると考えられています。そのためネズミを追って家屋に侵入してしまうこともあり、人間に対しての咬傷事故の原因にもなっています。

ハブの主食

 

ハブといえばマングース

ハブといえば連想するのがマングースですが、マングースは元々1910年にインドから、ハブ駆除を期待して人間によって沖縄に持ち込まれたものです。

しかし夜行性であるハブと昼間に活動するマングースが遭遇することはほとんどなく、仮に出会ったとしてもマングースは強敵であるハブを避けて、狙いやすいヤンバルクイナやアミノクロウサギなどの天然記念物ばかり食べてしまうという皮肉な結果に。マングース投入作戦は、史上最悪レベルの失敗作戦であったと言わざるを得ないでしょう。ハブよりもマングースのほうが駆除の対象になっている現状はとても滑稽ですね。

一昔前は見世物で「ハブVSマングース」なんてものがやっていましたが、動物愛護上の問題から今では実施されていません。コブラさえも倒すマングースがハブに負けることはほとんどなかったようですが、前述したとおり、密室に閉じ込めでもしない限りマングースがハブを積極的に攻撃することはありません。「ハブVSマングース」というタイトルこそ知名度が高いですが、これは自然界ではありえない、人工的に作られた対決だったわけです。彼らは実はライバルでもなんでもなかったのです(笑)

ハブVSマングース

 

ハブに咬まれないために

血清が普及しているとはいえ、ハブが危険な生き物である事実は変わりません。沖縄に住むにしても、旅行に行くにしても、咬まれないための心構えだけは常に持っておきたいものです。

 

1.ハブのすみかに近寄らない

ハブは明るい時間は、茂みの中、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中でじっとしています。樹木の空洞や、放置されたゴミや木材の下、サトウキビなどの農作物の根元にいるケースもあります。そういった場所に不用意に近づかないようにしましょう。特に注意したいのは沖縄県内に非常に多い石垣。生活圏に近いうえにハブにとっては格好の隠れ場所です。

ハブは自分の間合いに入ってきた熱源に本能的に飛びかかります。ムチのようにしなるように素早く飛び掛ってくるため、飛び掛られてからでは避けることができません。怪しい場所に行くときには「この陰にはハブがいるかも」という心構えを持って、ハブより先にこちらが相手を目視・確認することが大切です。

 

2.ハブを自宅に近寄らせない

自宅の周辺からハブの住処になりそうなものを排除しましょう。草むらはこまめに手入れして、石垣は隙間をコンクリートで埋めるなどできればベストです。

後は1.5メートル以上のブロック塀を設置するのも効果的です。ハブはすすんでブロック塀を乗り越えようとしません。

手軽なのは照明器具の設置。夜行性のハブは灯りを避けるように行動しますので、ハブの通り道になりそうな場所を明るくしておけば寄り付きにくくなります。まぁ、そのぶん虫なんかが集まるようになってしまうので電撃殺虫灯なども必要になってしまいますが。

ちなみにハブが硫黄の臭いを嫌うっていうのは迷信です。科学的に実証されたガセネタですので、硫黄に頼ることはやめましょう。いまのところハブに対しての効果的な忌避剤というものは存在しませんので。

3.ハブに出会ったら

できればその場をやり過ごして立ち去りたいものですが、もし人家のそばで出会った場合は駆除するのが理想。
ここで逃がせばその個体が人や家畜に害を与える可能性が残ってしまうためです。「退治するなんて私ゼッタイ無理ーッ!!」って足がすくんじゃう人は無理しなくていいですが(笑)

一番無難なのは長い棒状のもので戦うこと。ハブ被害が多い奄美大島のほうでは家庭で常備していたり、道端に「用心ぼう」という棒が設置されていたりします。150cm以上の長さがあって、ある程度の重量があるものが理想です。

あらかじめ準備が必要ですが、ハブノックというハブ用の撃退スプレーも市販されています。これは遠い距離から噴射してハブを攻撃することが可能で、薬剤がかかったハブはすぐに苦しみ出し、数時間で衰弱死します。

ハブの毒と牙

 

4.ハブに咬まれてしまったら

まず何より大事なのは落ち着くことです。ハブに咬まれて死に至る確率はけっして高くありません。無駄にパニックになると血流が早くなって、症状を悪化させる原因になるだけです。

とりあえず相手がハブであるかどうかを確認しましょう。その蛇の見ためで判断がつく場合はいいですが、もし無理な場合は傷跡を見てください。ハブの場合、上顎の牙×2と、下顎の牙×2で、最大4つの穴状の傷跡がつきます(※咬まれ方によっては傷が3つ以下の場合もあります)。比較的早い段階で傷口からじんじんと焼けるような痛みが広がっていきます。

次に咬まれた位置より心臓側をタオルなどで強く縛って圧迫します。ただしこのとき力任せに縛り過ぎないように。指一本入る程度の力加減で縛るようにしましょう。

その後は、傷口に口をつけてできる限り毒を吸い出します。ハブの毒は口から含むぶんには人体にほとんど影響がありません。仮に飲んでしまっても、胃でその毒は分解されます。また口の中に傷があっても虫歯があっても構いません(多少炎症になるケースもあるようですが)。

そして走ったりせずにゆっくりと病院へ移動してください。ハブに咬まれたことを先に病院に連絡できれば処置もよりスムーズになります。甘くみずに、絶対に病院に行って血清を打ってもらってくださいね。血清を打たないと咬まれた部位から壊死して、本当に大変なことになりますので。

ハブに咬まれた人

 

ハブを生け捕りにすると報奨金がもらえる

先の項でもチラリと触れましたが、事実です。駆除して絶対数を減らすという面と、生きた個体で血清を製造するという面で需要があり、国や市町村が大きさに関係なく1匹あたり4,000円で引き取っています(2013年時点)。

不況もあってか、このハブ獲りは老若男女問わずで人気が出てしまい、報奨金の予算を使い切ってしまうほどの持ち込みがあって、大きなニュースになりました。たしかに1匹4,000円っていうのは大きなお小遣いですよね(笑) 生け捕りにするためには捕獲器具の準備も必要ですが、日常的にハブに接して暮らしてきた地元民にとって、器具の準備も捕獲作業自体も気軽で簡単なことだったようです。

このハブの報奨金については、スリムクラブの真栄田賢がトークのネタにしています。なんでも真栄田の父親がハブ捕りが上手いらしく、次々と市役所にハブを持ち込んで日銭を稼いでいたそうです。そうしたら、あまりの持ち込みの数の多さに市役所が怪しんで、「養殖してるんじゃないか」とあらぬ疑惑をかけられてしまったそうで(笑)

みなさん、間違っても養殖とかしちゃダメですよ。それで報奨金貰ってたら立派な詐欺罪になっちゃいますので(笑)

ハブVSマングースの動画:

 

ハブ対策アイテム

イヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット

ヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット
ヘビやムカデ用の忌避剤です。ナフタリン、木酢粒剤、硫黄などを使用しており、嗅覚に敏感なヘビやムカデを寄せ付けなくします。効果は一ヶ月程度。雨に濡れると効果が落ちてしまうためなるべく雨風の影響を受けにくい位置に散布すると長期間の効果を期待できるようになります。

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g
ヘビやトカゲ用の忌避剤です。大きめの固体錠剤タイプでヘビなどが現れる場所に仕掛けることでヘビの接近を遠ざけることができます。家の中への侵入路となりそうな場所にピンポイントで設置すると効果的です。天然成分を使用しているため健康面でも安心ができます。

ヘビレス

ヘビレス
ヘビ用の粒状をした忌避剤です。4種類の有効成分を配合しており、庭先に撒くことで1ヶ月程度の忌避効果が期待できます。粒状であるため雨にも強く、天候に左右されにくい効果が期待できます。

ヘビ捕獲棒

ヘビ捕獲棒
アルミでできているヘビ捕獲棒です。危険な毒ヘビに近寄ることなく捕獲作業を行うことができます。やや柄の長さが短めであるため、大型のヘビの捕獲を考えている場合はもう少し大型のタイプを購入したほうがよいかもしれません。

ポイズンリムーバー

ポイズンリムーバー
携帯用のポイズンリムーバーです。毒を持った生き物に刺されてしまった、もしくは咬まれてしまったときに毒を吸い出して被害を最小限におさえることができます。蚊に刺された場合でも吸い出すと効果があり、その後の炎症がかなり軽減されます。ただし圧力を下げて毒を吸い出す構造上、体の先端部の傷口に対しては容器がフィットせずに使用できない可能性があるため注意が必要です。

セアカゴケグモ

セアカゴケグモ

セアカゴケグモとは?

セアカゴケグモは、セアカゴケグモはヒメグモ科に分類される毒グモの一種です。

日本名は「背中が赤い後家グモ」という意味。後家グモの呼び名の由来は、その毒によって咬まれた男性が死亡すると未亡人(後家)が増えるというところからきています。

海外でもネーミングセンスは同じで、「Red-back widow spider(背中が赤い未亡人蜘蛛)」と呼ばれています。戦闘機オスプレイの別名「Widow Maker(未亡人製造機)」と若干ニュアンスが近いですね。

ただしこのクモは交尾が終わるとメスがオスを食べてしまうことがあって、後家グモの呼び名の本当の由来はこちらではないかという説もあります。旦那を食べて自ら未亡人(後家)になるって・・・ああ、おそろしや(汗)

セアカゴケグモの大きさの特徴

 

日本に入ってきたセアカゴケグモ

元々はセアカゴケグモは日本には生息していませんでした。原産地はオーストラリアで、むこうでは極めて一般的に見られるクモの一種です。

日本で最初に発見されたのは1995年に大阪府高石市で。輸入木材などにくっついて日本国内に入ってきてしまったと考えられています。それ以後も大きな港や空港がある地域で発見が相次ぎ、現在では港町に限らず全国各地でその姿が確認されています。

しかも残念ながらセアカゴケグモは日本の気候に適応してしまい、越冬、繁殖に成功して生息域を広げているのが現状です。県や市が特定危険外来種として積極的に駆除に当たっていますが、日本国内のセアカゴケグモを一匹残らず絶滅させるというのはさすがに不可能でしょう。

2015年に新たに北海道でも十数匹のセアカゴケグモが発見されたことにより、いまの時点ではセアカゴケグモは41都道府県にて存在が確認されています。新たな場所で確認されるたびに市区町村が発表したりしていますが、福岡市ではここ4年間で8000匹以上が発見・駆除されていたにも関わらず市民に公表されていませんでした。パニックを避けたかったということですが、最低限の注意喚起はしてもらいたいものですね。

セアカゴケグモの巣

 

セアカゴケグモの生態

セアカゴケグモは、オスが体長3~5mm、メスが体長10~20mmぐらいの大きさです。オスはメスに比べてかなり細くて小さく、体色も薄め、背中の模様も赤ではなく茶色系の色をしています。逆にメスはかなり胴体部分が大きくて体色は真っ黒、背中の模様は鮮やかな赤い色をしています。たまに足が茶色と黒のツートンカラーになっている個体なんかもいたり。

元々温かい気候が原産地のクモなので、雨風をしのげる暖かい場所を好みます。建物、排水溝、ブロック塀などの隙間や、プランターの陰、ベンチの下、ガードレールの支柱裏、あとは自動販売機の裏やエアコンの室外機の隙間などの人口的な熱源のまわり。不規則で乱雑な糸の張り方で巣を作り、そこでじっと獲物がかかるのを待っています。

基本的に攻撃的な性格ではないので、クモのほうから積極的に人間に咬みついてくることはありません。危険なのは、たまたまセアカゴケグモが巣を作っている場所に手足を入れてしまうケース。細い隙間の清掃や、プランターの手入れ、屋外に放置していたヘルメットや長靴の装着時などは注意が必要です。セアカゴケグモの繁殖が確認されている地域では「もしかしたらここにクモが巣を作っているかも」という、万が一の想定はしておいたほうがよいでしょう。ちなみに毒がある牙は短いので、長袖の服や軍手を着用するだけでもかなりリスクは減らせます。

セアカゴケグモのオスとメス
セアカゴケグモのオス(左)と、メス(右)

 

セアカゴケグモの食事と天敵

セアカゴケグモは三次元上に不規則な網を張ってターゲットを狙う肉食系のクモで、巣にかかった小さな昆虫を主にして食べています。巣の形状がチョウやガのような飛翔する生き物よりも、地上を歩く生き物を捕らえるのに適した形をしているため、アリやハサミムシ、ゴキブリなどを捕らえて食べることが多いようです。それほど大きな体格をしていないクモなので、ターゲットになる昆虫も必然的に小型なものが中心になります。

逆に天敵は、ベッコウバチやハナバチのような寄生蜂。あとは未確認ではありますが、クモ全般を主食とするような鳥類、トカゲ、小型哺乳類、ムカデなども天敵になるのではないかと考えられます。毒グモとはいえ、自身の肉に毒が含まれているわけではないので普通に捕食されてしまいます。

ベッコウバチとハナバチ
↑ベッコウバチ(左)、ハナバチ(右)

 

セアカゴケグモの繁殖方法

セアカゴケグモは元々温かい地域が原産のクモですので、活動が活発になる夏が繁殖期になります。交尾を済ませたメスは真ん丸で白色の卵嚢を1度に数個作り出し、そこからだいたい15日程度で100匹前後の幼体が生まれてくるようです。幼体は3~4ヶ月ぐらいで交尾可能な状態に成長するので、天敵が少ない快適な環境であればかなりの勢いで数を増やしていくことになります。

 

セアカゴケグモの卵
セアカゴケグモの卵嚢(左)と、卵嚢から出てきたばかりの幼体たち

 

セアカゴケグモの毒とその症状、対処

一般的に出回っているセアカゴケグモの写真はほとんどメスのものです。なぜなら毒グモとして騒がれているのはこの「メス」のみだから。オスは毒を持っていません。この点があまりニュースなどで紹介されていないのがちょっと不思議。

セアカゴケグモの毒はα-ラトロトキシンという名の神経毒です。咬まれると、針で刺されたようなチクリとした痛みがあります。その後咬まれた部分が毒の影響で赤く腫れあがり、30分後ぐらいからどんどん痛みがひどくなっていきます。これだけの症状で済んでここから回復する場合も多いのですが、抵抗力が弱い子供や老人などの場合は痛みが全身に広がり、発熱・発汗、頭痛、嘔吐、下痢、発疹などの症状に発展する場合があります。血清が普及する前のオーストラリアでは死亡例も少数ながら存在します。

もし咬まれた場合、もしくはその疑いがあるときは、まず傷口を綺麗な水で洗い流します。出血がある場合は毒を体外に出すチャンスとみて、止血はしないようにしてください。そしてとにかく速やかに病院へ直行。セアカゴケグモの毒に対して個人で行える効果的な処置は存在しません。冷やして患部の痛みを軽減するぐらいのことはできますが、根本的な治療にはなりません。

それととにかくパニックにならないこと。このクモが普通にウヨウヨいる原産地オーストラリアでもここ200年で死亡件数は13件程度。その13件も、他の病気と合わせた合併症で亡くなったケースがほとんどです。医療設備が普及した近年ではもう50年以上死亡者が出ていません。マスコミが「殺人グモ」みたいな感じで煽っていますが、過剰に恐怖を感じて取り乱す必要は全くありませんので、もし咬まれても落ち着いた対処をしましょう。

 

セアカゴケグモ

 

セアカゴケグモとその卵嚢の駆除

もし成虫を発見したならば、繁殖されても厄介なのでなるべく駆除するようにしましょう。叩き潰すか、一般的な殺虫剤で駆除することができます。ただしセアカゴケグモは何らかの外的な刺激を受けたときに擬死行為(死んだふり)を行う習性があります。死んだふりに騙されずに確実に仕留めるようにしましょう。

卵嚢の場合は外皮に邪魔されて殺虫剤の効果が薄い場合があります。叩き潰すか焼却するなどして対処してください。

その後は速やかに最寄の警察や保健所に連絡をしてください。殺した死骸や卵嚢を一緒に提出すると話が早くなってよいでしょう。

 

セアカゴケグモは飼育できない

セアカゴケグモのような話題の生き物を、ぜひ自分の手元で飼育したいという人もいるかもしれませんが、ここで忘れてはいけないのが、セアカゴケグモは特定外来生物に指定されている生き物だということ。生体も、その卵も、個人が飼育・保管・運搬することは禁じられています。

特に販売目的で飼育した場合は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金と非常に重たい罪が課せられます。絶対に飼育しようなどとは考えないでください。

 

セアカゴケグモの危険性を訴える動画:

 

セアカゴケグモ対策アイテム

殺虫スプレー クモフマキラー

殺虫スプレー クモフマキラー
フマキラーのクモに特化した殺虫スプレーです。速効殺虫成分イミプロトリン配合。駆除効果だけでなく予防効果も備えています。成虫はもちろん卵にも効果があり、外来の毒グモであるセアカゴケグモにも効果があります。逆さでも使用できるので、狭い奥まった場所でも使用しやすいのがメリットです。

アース製薬 アースガーデン クモの巣撃滅

アース製薬 アースガーデン クモの巣撃滅
アース製薬から発売されているのクモ駆除スプレーです。セアカゴケグモ、ジョロウグモ、コガネグモ、クサグモ、タカラダニに効果があります。クモの忌避効果もあるため、よく巣を張られてしまいがちな場所に事前にスプレーしておくことで2~3ヶ月はクモが近寄ってくることを防ぐことができます。

プロケミ クモルスストレート 1kg

プロケミ クモルスストレート 1kg
クモ用の忌避剤です。よくある一時的に効果がある簡易的なものではなく壁に塗装して忌避コーティングをするもので、長期間効果が継続されます。モルタル、木材、プラスチック、クロス、コンクリートなど多くの材質に塗布が可能です(ガラスへの使用は曇ってしまうため推奨されません)。

エクストラクター ポイズンリムーバー 強力型

エクストラクター ポイズンリムーバー 強力型
毒を持った生物に刺されてしまったときに傷口から毒を吸い出す器具です。2018年にモデルチェンジした新しいバージョンで、カップもどんな傷口の箇所にも対応できるように4サイズが用意されています。やや耐久性に不安があるようなので、いざというときに使う消耗品のつもりでいたほうが良いかもしれません。

マダニ

マダニ

マダニとは?

マダニは、クモ綱ダニ目マダニ亜目マダニ科の節足動物の総称です。全世界ではダニの仲間は40,000種程度が分類されており、その中でマダニは650種程度、さらにその中で日本に生息するマダニは約50種程度とされています。

私たちは「ダニ」と聞くと、まず家の中の畳やカーペットに住む小さな生物を連想します。ほこりや布製品の繊維の隙間に紛れていて、掃除を怠ると繁殖してしまいアレルギーの原因になる厄介な微生物というイメージ。

ですが、マダニはそれらダニとはかなり性質が異なる生き物です。同じダニの仲間には違いありませんが、ダニとマダニは生息地もその生態も全く違います。英語でもダニは「mite」 、マダニは「tick」と呼び分けがされているぐらいです。

アレルギーの原因になるダニも十分に人間にとっては厄介な存在ですが、このページではそれ以上に厄介な存在、マダニについて解説していきます。

マダニの通常の大きさ

 

マダニの身体的特徴

マダニはクモに近い節足動物の仲間です。体は顎体部と胴体部のふたつに分かれ、胴体部に4対、計8本の足がついています(ただし幼虫期は6本足)。長い前足1対が比較的前方に突き出されているので触角のように見えがちですが、触覚はこれとはまた別に顎体部についています。

マダニはほかのダニに比べて非常に体が大きく、通常時でも2mm~3mm程度はあって肉眼ではっきりと見えます。これは小型のテントウムシやシバンムシぐらいの大きさです。しかしこの大きさはまだ序の口で、驚くのは吸血後の大きさ。宿主の血を長期間に渡って吸い続けた後のマダニの体は、まるで水風船のようにパンパンに膨れ上がり、なんとその体重は吸血前の100倍以上になります。その全長は1cmを超えるぐらいにまで大きくなります。

吸血後のマダニとの大きさの比較
↑吸血前と吸血後のマダニの大きさの比較

 

マダニの生活サイクル

マダニは山の中の茂みや草むらに住んでいます。

活動が活発になるのは5月~9月頃。普段は植物の葉っぱの先などに身を隠して待ち構え、それに触れた動物にくっつきます。このときマダニは動物の身長を考慮しているのか、だいたい80cm以下の高さの葉っぱに潜むことが多いようです。

マダニはノミのようにジャンプしたりはしません。動物が直接植物に触れたときにうまく乗り移るのです。ちなみに『巨蟲列島』という漫画で巨大なマダニが風を受けて飛ぶような描写がありますが、実際にはそういった行動は確認されていません(笑)

マダニ
↑葉っぱの先端に待機して宿主を待ち構えるマダニ

 

うまく宿主を見つけ、1週間以上に渡る吸血を済ませたあとは一度宿主の体から外れ、休眠期間と呼ばれる成長と脱皮の時間を自らに設けます。その後成長したマダニは再び宿主を見つけて吸血し、それが終わればまた休眠。この吸血と休眠のサイクルをマダニは生涯で合計3回繰り返します。

3度目の吸血の際に成熟したマダニは生殖活動を行っています。宿主の体の上で恋愛してイチャイチャするとは何たるふてぶてしさ(笑) ただし、ほとんどの種のマダニの雄には生殖器が存在しません。精子が入った袋を体内から取り出し、それをメスに渡すことで生殖を行います。なお一部のマダニは単性生殖が可能なためこういった生殖活動が必要ない種類もいます。

生殖活動に成功したマダニは寄生主から離れて地上に降り、一度に数百個から数千個の卵を産みます。このとき産卵した母ダニはそのまま死亡。命を次の世代に繋いでその生涯を終えます。卵は1ヶ月から2ヶ月の期間をもって孵化し、すぐに宿主探しの行動を始めていきます。

基本的には以上がマダニのライフサイクルです。冬は落ち葉の下に潜ってサイクルを休むマダニが多いですが、種によっては逆に季節などおかまいなしに年中を通して活動し続けるものもいます。

血を吸って膨れ上がったマダニとマダニの卵
↑吸血後のマダニ(左)と、産卵したマダニ(右)

 

マダニの吸血方法

マダニはハーラー器官と呼ばれる感覚器官を持っていて、これは動物の体温、振動、二酸化炭素、匂いなどを感知する器官で、宿主探しの際にセンサーとして役立ててています。

うまく宿主の体表に乗り移れたマダニはまずその動物の皮膚が薄くて吸血しやすい部分を探します。一般的な哺乳類だと頭部や目・鼻・耳の近くを選ぶことが多いようです。

吸血場所を選んだマダニは鋭い歯で咬みつき、ノコギリのような歯を皮膚の奥に差し込みます。そこから出血してくる血を吸い続けるわけです。ここから数時間~24時間の吸着を続けた際に「そこが安定して血を吸える場所」だと認識した場合は唾液腺よりセメント性の物質を分泌して接合部を完全に固定。簡単に宿主から離れない状態を作り上げ、それから1週間以上の時間をかけてゆっくりと血を吸い上げていきます。

それ以後は、唾液に混ぜて「血液の凝固を防ぐ成分」や「炎症・充血を促す成分」を傷口に流し込むことによって安定した吸血を続けていきます。この長時間の吸血中は同時に体内で摂取した血液の濃縮作業も行っており、その濃度は3倍程度。つまり実際にはマダニが膨らんだ見た目ぶんの3倍の血を吸っていることになります。量にしてだいたい1ml程度。

吸血し終わったマダニはセメントを溶かす成分を分泌したあとに自ら接合部から牙を抜き出し、宿主の体から離れていきます。脱着したマダニは基本的にあまり横移動を行わないので、付近の安全な場所に身を隠して休眠期間に入り、またそのすぐ近くで再び宿主の待ち伏せ行動に入ります。

動物に群れで寄生する野生のマダニ
↑血を吸ってパンパンに膨れ上がるマダニ(左)、野生のシカの顔にびっしり寄生するマダニ(右)

 

その他、マダニが動物に大量に寄生している画像(※かなり強烈です。閲覧注意!)
その1 その2 その3 その4

 

マダニの天敵

マダニの天敵となるのは、昆虫を主食とするトカゲなどの爬虫類、小型の鳥類、ほかにはクモやムカデやアリなどが考えられます。最近では森林総合研究所がカニムシの中でも大型の種であるオオヤドリカニムシもマダニの天敵になるのではないかと発表をしました。オオヤドリカニムシは森の中の土壌の中に生息しており、体長が5mm程度でしっぽがないサソリのような姿をしています。実験では同じぐらいの体格のマダニにも積極的に襲いかかっていく性質が確認され、マダニの天敵候補として研究が進められています。でもオオヤドリカニムシもなかなか怖いビジュアルをしているので、これを大量に野に放たれてもちょっと怖いですよね(汗)

 

人間からみたマダニの危険性

ようやく本題へ。マダニの人間に対しての危険性についてです。

マダニは野生動物だけでなく人間も寄生対象としています。マダニは山の中に限らず、そのへんの公園や河川の草むらにも潜んでいる可能性があります。ですので山登りはもちろん、河川敷を散歩したり、公園で遊んだりしているうちに知らないうちにマダニに咬まれることがありえます。最初は体が非常に小さいので、どこかで傷を受けたそのカサブタかなぐらいにしか思わないことが多いようです。しかし日にちが経つにつれてそれはどんどん大きくなっていき、そこでマダニの寄生に初めて気がつきます。

ここでやっかいなのが、発見までに時間が経ってしまっていた場合、マダニはセメントのような唾液で体を固定しているという点です。無理に引き抜こうとするとマダニの体がちぎれてしまい頭部(正確には顎部)や差し込まれている牙が体内に残ってしまうのです。マダニを強く掴むとマダニの体液の逆流を招くこともあり、感染症などのリスクが高まってしまいます。無理に引き抜くことは推奨できません。

まず一番確実な取り方は病院にいくことです。診療は皮膚科が適しています。ただし最悪の場合メスを入れて切開することになる場合があるのでその覚悟はしておきましょう。

次に自力でなんとかする場合。よくいわれるのは、アルコールをかける、タバコや線香の火を近づける、氷で冷やすなどの手段です。嫌がる刺激を与えてマダニが外れるのを期待するやり方。特に線香の火でマダニのお尻に刺激を与える方法は有効なときが多いようです。ただしこれらをやり過ぎるとマダニが外れる前に死んでしまい、結局死骸が丸ごと残ったままになってしまいます。そうなると結局病院へ行くことになりますのでご注意を。

いろんな情報を総合してみると、一番安全で確実性が高いのはアルコールでしょうか。べンゼンやイソジン、もしくは虫除け(DEET成分を含むもの)でも構いません。脱脂綿などに染み込ませてそれをマダニに被せ、しばらく放置します。その後、さらに綿棒などでやさしく突っついて刺激を与えます。マダニにとって「わ、何!?おちおち飯食ってる場合じゃねぇ!」という状況を作り出すのです。そこからは根気勝負、マダニが自らその牙を外すまでいじめ倒します。やりすぎて殺さないように。。。

どうしても外れてくれない場合は、毛抜きピンセットで接合部を軽くつかんで丁寧に引き抜きます。アルコール攻めをした後だと、普通の状態で引き抜くよりもかなり簡単に引き抜くことができるそうです。アルコールで顎の力がなくなっているからでしょうか?

マダニ

ここでうまくマダニを引き抜けたとしても、病院には必ず行くようにしましょう。傷口に牙が残っていないか、また何かの感染症の症状が出ていないか確認はするべきです。後述しますが、大きな病気で命に関わる場合もあります。

 

人間の皮膚に頭を突っ込んでしまうマダニ

 

マダニを媒介にした感染症

「人間を一番多く殺しているのは蚊である」という話は有名です。これは蚊がいろんなウイルスや細菌を吸血行動によって人に感染させるためですが、同じことがマダニにも言えます。とくに重症化を引き起こす感染症が多く存在する南米などでは、マダニの危険性はかなり認知が進んでいます。

1.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

最近媒介が確認されて話題になったSFTSウイルスによるものです。野生下のマダニのSFTSウイルス保有率は5~15%程度とみられています(愛媛での調査では6~31%)。嘔吐、下痢、頭痛などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。

近年になって日本でも死亡例の報道が相次ぐようになりましたが、これは原因がマダニであると最近解明されたためであり、重症熱性血小板減少症候群は昔から日本にあったとされる病気です。マダニによるSFTS感染が原因とされる患者数は324人で、そのうち61人が亡くなっています(2018/4時点)。

 

2.ライム病

ネズミやシカなどが持っている病原体のボレリアが感染することによって起こる病気です。マダニが吸血を始めてから48時間以上が経つと感染リスクが高まるとされています。傷口近くから赤い斑点が現れ、全身の倦怠感、寒気、頭痛、嘔吐、発熱、関節痛などの症状が現れます。欧米では年間に何万人レベルで感染が報告されており、社会問題となっています。最近では歌手のアヴリル・ラヴィーンが、マダニに咬まれたことによりライム病にかかり病床に伏せました。半年近く寝たきりに近い状態になり、彼女はその症状の重さに一時は死も覚悟したそうです。

アヴリル・ラヴィーンがライム病にかかる

 

3.日本紅斑熱

日本紅斑熱リケッチアという病原体の感染によって引き起こされます。症状は風疹に似ていて、発疹や発熱の症状が起こります。毎年50~100人程度の感染が確認されており、いままでに4件の死亡例があります。日本紅斑熱リケッチアを保持したマダニは産卵を行うと、そこから生まれる子供マダニも日本紅斑熱リケッチアを保持した状態になるため、拡大が懸念されています。

 

4.ツツガムシ病

その名のとおりツツガムシに刺されて感染する病気ですが、マダニに咬まれたことによりウィルスが体内に入って発症することもあります。感染してから2週間程度の潜伏期間を経た後、強烈な悪寒と高熱の症状が現れます。ほかには頭痛、筋肉痛、倦怠感が感じられ、さらに皮膚には紅斑や紫斑が見られるようになります。治療を受けずに放置すると脳炎や心不全の合併症にて死に至ることもありえます。もしこれらと類似の症状が現れたときには、マダニやツツガムシからの感染を疑う必要があります。

 

5.ダニ媒介性脳炎

フラビウイルスによって引き起こされる感染症です。潜伏期間は1週間~2週間で、悪寒・高熱・頭痛・嘔吐などインフルエンザに近い症状が現れます。そこから悪化すると、めまいや自律神経失調、歩行困難などかなり重篤な状態になる場合もあります。また回復後も神経不調の症状が長期間に渡って残る可能性があります。

 

6.野兎病(やとびょう)

細菌によって引き起こされる感染症です。野生のウサギを触った際に感染することが多いことからその名前がついていますが、マダニの唾液からの感染してしまうこともあります。感染力は非常に高く、目などの粘膜はもちろん、皮膚の接触でも感染の可能性があります。潜伏期間は1週間程度で、発症すると突発的な高熱に襲われます。治療法は病院で抗菌薬の処方が中心となります。

 

マダニに咬まれないための対策

基本的に茂みや草むらに立ち入らなければ良いのですが、ペットの散歩や、キャンプ・登山などのアウトドアは楽しみたいもの。これらを全て生活から排除するのはなかなか難しい話です。しかし最低限でもよいので、マダニのリスクを少しでも下げる心構えだけは持っておきましょう。

アウトドアの際のマダニ対策

1.肌の露出を防ぐ

マダニは基本的には衣服の上から吸血することはできません。長袖の上着や、丈の長いパンツを履いて肌の露出を少なくしましょう。これはマダニ以外の虫に対しても効果的です。人間がマダニに咬まれた場合、場所はくるぶし付近のケースが多いようです。できればくるぶしが露出しない長めの靴下を着用するようにしましょう。

 

2.虫除けスプレーを使用する

主に蚊を寄せないために使用されることが多い虫除けスプレーですが、これに含まれるDEET(ディート)という成分はマダニの忌避剤になることがわかっています。虫除けスプレーの効果は大体2時間程度が限界と言われているので、定期的に全身に吹きかけてマダニを寄せ付けないようにしましょう。

 

3.草木にむやみに接触しない

マダニの宿主への唯一の接触方法がこの草木を介するものです。20cm以上の草であればマダニがいる可能性は十分にあります。あと笹には特に注意。マダニは「笹ダニ」と呼ばれるぐらい笹で待ち構えるのが好きだとされています。

 

4.動物が通る道には特に注意する

マダニは宿主から吸血し終わって外れた後、ほとんど横に移動をしません。つまり日常的に動物が通る道は、マダニが再び待ち構えている可能性が高い場所だと言えます。生い茂った獣道などは最もマダニに注意しなければいけない場所です。

 

5.帰宅後は全身をチェック

万が一刺されてしまった場合でも、発見が早ければそれだけ感染症によるリスクを減らすことができます。屋外でのレジャーなど、マダニが生息していそうな場所から戻った後はいちおう全身を軽くチェックしておきましょう。小さなお子様であれば特に頭部に注意が必要です。マダニの潜む葉っぱと子供の頭の高さが近いことから、子供の場合は頭部を咬まれてしまう事例が多く報告されています。

マダニに刺されてしまっていてもその唾液に含まれる成分の麻酔効果により自覚がないことがほとんどです。帰宅直後にすぐにシャワーに入れば発見しやすく、吸血前のマダニはもちろん、すでに吸血状態にあるマダニであってもセメント物質を出し始める前であれば水で流せることもあるためおすすめです。

シャワーに入った際には、脱いだ後の衣服にもマダニがいないかチェックしておくとよいでしょう。家の中にマダニを生きたまま持ち込むと、その後から刺されるリスクが増えてしまいます。

 

ペットをマダニから守る

マダニの危険性から守りたいのは自分の体だけではないはず。大切なペットも例外ではありません。SFTSは人間だけの病気ですが、人間以外でのSFTS発症は稀ですが、代わりにバベシア症などの病気の危険性があります。何より血を吸う虫が愛するペットの体表にくっついている状況が、飼い主としてはいたたまれないことと思います。

ペットへのマダニ対策

 

しかしペットの多くは屋外の散歩を必要としますし、草木に触れないようにしつけることはまず不可能です。ここは飼い主が意識して守ってあげるようにしましょう。

対策の1つ目としては、マダニがつかないように忌避剤でペットを守る方法。有名な忌避剤ではフロントラインというものがあります。これはノミやダニが嫌がる薬剤を動物の表皮に塗布するもので、マダニには約1ヶ月弱程度の効果があります。実際に使用した方の感想を見る限りでは効果が確認できるそうです。しかし薬剤1回ぶんにつき1,000円程度の値段になるので、継続を考えるのであればそこそこの出費は覚悟しなければいけません。

またマダニ避けの首輪なども市販されていますが、こちらは環境によって効果はピンキリの模様。効果があればラッキーぐらいで考えていたほうがよいかもしれません。

あと把握しておきたいのは、ついてしまったダニを安全に取り外す方法。これについては人間における場合と同様で、マダニの体を圧迫しないように、さらにダニの頭部がちぎれてペットの体に残らないように慎重にピンセットで取り除く必要があります。このときアルコールを併用すると良いでしょう。ウィスキーを使って愛犬のマダニを取り除いた方のブログがあるので参考にすると良いかもしれません。
→ブログ 『ミックス犬(パピヨン×コーギー)@犬マンガ。時々チワワ』

 

マダニに咬まれた動物からのSFTS感染も注意?

2017年7月 野良猫に咬まれた女性がSFTSに感染して死亡

弱っていた野良猫を看病しようとして咬まれた50代女性がSFTSに感染して亡くなりました。この野良猫はおそらくマダニを介してSFTSに感染していたと考えられます。国内ではマダニ以外の動物からヒトへのSFTS感染が確認された初の事例となりました。これまでは犬や猫からのSFTS感染はほぼないとされていましたが、この件を受けて厚生労働省は注意を呼びかけています。

2017年10月 徳島県で飼い犬から40代男性にSFTSが感染した疑い

体調を崩していた飼い犬の看病をしていた飼い主の男性がSFTSに感染しました。男性は犬に咬まれたわけではありませんが、看病中にSFTSに汚染された唾液に接触したため感染したと考えられています。男性の体調は回復しているとのことです。

 

マダニの唾液の成分でがん治療の研究が行われている

マダニの唾液の中には血液の凝固作用を防ぐたんぱく質が含まれていて、ブラジルではこの成分にがん治療の可能性があるということで研究が進められています。マウス実験では、2週間以上投与したマウスのがん細胞が縮小を始め、42日目の段階で完全に消滅したとのことです。正常な細胞には影響がありませんでした。まだまだ実用化には至っていませんが、皮膚がん、肝臓がん、すい臓がんなどの特効薬になる可能性があるとして期待がされています。

 

最近の国内のマダニに関するニュース

北海道内のマダニから致死率が高い極東型ウイルスが見つかる

マダニが介する感染症のひとつに「ダニ媒介脳炎」があります。2018年5月に北海道大学の好井健太朗准教授の調査により、札幌市内のマダニからダニ媒介脳炎ウイルスが発見されました。それも致死率が高いと言われる極東型で、1995年の道南での発見以来になるとのことです。極東型ウイルスはほかの型にくらべて致死率が非常に高く30%に及ぶこともあり、夏の行楽シーズンに向けて警戒を呼び掛けています。

 
吸血して膨れ上がったマダニの歩行シーン:

 
参考: マダニの新たな天敵を発見 -森のネズミと暮らすカニムシはマダニを捕食する-(森林総合研究所)

 

マダニ対策用アイテム

マダニ用ピンセット

ダニ取り ティックツイスター 2サイズセット
体に取り付いてしまったマダニを外すための専用ピンセット。肌に吸着しているマダニの横から滑り込ませるように挿し込み、そこから数回ピンセットを回すだけで、マダニの頭部や顎部が皮膚に残ってしまうことを避け安全に取り除くことができます。マダニのサイズに合わせてピンセットは2つのサイズの使い分けが可能。本来はペット用として製造されたものですが、人間が使っても問題はありません。

マダニ撃退用スプレーのヤブ蚊マダニジェット

アース製薬 ヤブ蚊マダニジェット 屋外用 480mL
ヤブ蚊(ヒトスジシマカ)とマダニの両方に効果がある駆除スプレーです。ヤブ蚊やマダニが潜んでいそうな庭木や草むらにスプレーすると殺虫効果と忌避効果の両方が望めます。これらの虫が潜んでいそうな場所で屋外作業をするときに、事前に噴射しておくことで刺されるリスクを減らすことができます。水性タイプで植物にも優しい成分を使用しています。

スキンベープ 虫よけスプレー ミストタイプ 爽快シトラスマリンの香り 200ml(約666プッシュ分)

スキンベープ 虫よけスプレー ミストタイプ
総合的に様々な害虫に効果がある虫除けスプレーです。成分にディートを使用しているのでマダニに対しても忌避効果が望めます。ほかにも蚊、ノミ、トコジラミ、イエダニ、サシバエ、ブユ、アブなどへの効果があり、屋外でのレジャーや農作業の際の虫除けに適したスプレーです。約660回プッシュぶんの容量が入っています。

フロントライン

フロントライン プラス 大型犬用6ピペット
世界的にも有名なペット用のマダニ・ノミの駆除剤です。こちらはゴールデンレトリバーなどの大型犬用。犬の肩甲骨のあたりから薬剤を垂らしてブラッシングすることで吸着しているマダニやノミを駆除できるだけでなく、今後の吸着からも守ることができます。効果は1ピペットで1ヶ月程度続きます。

スズメバチ

スズメバチ

スズメバチとは?

スズメバチは、スズメバチ科スズメバチ亜科に属する昆虫のことです。

腹部に強烈な毒針を持っていて人間への攻撃性も非常に高いことから、毎年夏から秋にかけてのスズメバチが活発になる時期には多数の刺傷事故のニュースを耳にします。年間に10~20人程度の方がこのスズメバチによって亡くなっており、これは国内ではクマ、ヘビ、サメなんかより遥かに多い数字です。つまりスズメバチは日本で最も人間にとって危険な生き物と呼んでも過言はありません。

一口に「スズメバチ」といっても様々で、日本だけでも16種類のスズメバチが生息しています。有名なのは世界でも最大種であるオオスズメバチ、都会の生活にも適応していて事故が多いキイロスズメバチあたり。

ほかにもいろんなスズメバチがいてその生態も様々ですが、
このページでは特に刺傷被害件数が多いこの2種をピックアップして解説していきます。

オオスズメバチとキイロスズメバチ
↑オオスズメバチ(左)と、キイロスズメバチ(右)

 

スズメバチの名前の由来

名前の由来は、スズメ並に体が大きいから、巣の外壁の模様がスズメの模様に似ているから、の2つがあります。巣の模様に関してはおそらくキイロスズメバチのものを言っているんでしょう。ほかのスズメバチは全然違った模様の巣を作るものが多いです。

 

スズメバチの身体的特徴

スズメバチは他のハチの仲間に比べると圧倒的に体が大きいです。スズメバチの中でも小型といえるキイロズズメバチでさえ働き蜂は18~25mm、世界最大でもあるオオスズメバチの働き蜂は、なんと27~40mmの大きさになります。さらにいうと女王蜂はこれらの1.2倍程度の大きさ。このサイズの蜂が激しい羽音を鳴らしながら目の前を飛び交っている光景には誰でも恐怖を覚えるでしょう。

体色は蜂全般でおなじみの鮮やかな黄色と黒のコントラスト。これは警告色といって「ほら、俺は毒針を持っている蜂の仲間だぜ、触ると怪我するぜ」という意味を持っていて、相手との無駄な接触を避ける役割を持っています。キイロスズメバチのほうが黄色部分が多いのは種による個性といったところでしょうか。

スズメバチの体の構造

 

スズメバチの繁殖サイクル

女王蜂は春になると冬眠から覚めて、自分のコロニーづくりのために活動を始めます。このとき自分1匹しかいない状態なので、巣作りも餌探しも幼虫の世話も当然全て自分だけでこなします。自分の王国を築き上げるまでは女王も一人前に苦労しているんですね(笑)

育てていた幼虫が働き蜂として立派になるのは初夏。それ以後は女王蜂は巣にこもって産卵のみに専念します。ちなみにここで生まれる働き蜂は全てメスで、ここまでは完全に女社会です。そしてどんどんその数を増やしていって、秋には数百匹の大所帯を形成するようになります。

その頃になって初めてオス蜂と次世代女王蜂が生まれてきます。オス蜂も次世代女王蜂も多数いて、それぞれ巣を旅立って交尾を行い、無事に生き残った次世代女王が冬眠してまた次の年に活動していくことになるわけです。このときオスは冬眠をすることができないので全て死に絶えます。交尾するだけのために生まれてくるオス。幸せなのか不幸せなのかよくわかんないですね(汗)

あと元々の女王蜂、働き蜂も越冬せずに生涯を終えることになります。つまり次世代をになう仲間が飛び立ったあとはコロニーはそのまま滅びるわけです。よく短いはかない命の代名詞としてセミが挙げられますが、蜂だって十分はかないような気がします。

スズメバチの繁殖サイクル

 

スズメバチの巣

スズメバチは種によって様々な場所に巣を構えます。基本的には雨風にさらされない温かい閉鎖空間を好むため、古い樹木や切り株の中の空洞などに作られることが多いです。しかし比較的寒さに強いキイロスズメバチなどは、屋根の下や木の枝に平然と巣をぶら下げたりもします。形状も丸型だったり、閉鎖空間の中で層状になっていたり、とっくり型だったりと様々です。必ず周辺にスズメバチが飛び回っているのでほかの蜂のものと判断がつかないことはないでしょう。

材質は木を削り取って集めたものを唾液で固めて作られています。最初は小さな巣ですが、蜂が増えるにつれてどんどん増築していき、最終的には1メートルを超える10数層の大きなコロニーになることもあります。

前述したとおり、ここまで作り上げられた巣も冬には空き家になります。状態の良い状態で残っていれば切り離して持ち帰ることも可能です。田舎にいくとよくスズメバチの巣を玄関に飾ってたりするのは、こういった空き家を頂戴したものです。

スズメバチの巣
↑キイロスズメバチの巣(左)と、オオスズメバチの巣(右)

 

スズメバチの食事と狩り

スズメバチというと昆虫を襲ってバリバリ食べているイメージがあるかと思いますが、実際はちょっと違っていて、あれは幼虫のための餌を確保するために昆虫を襲っているのです。獲物を肉片を噛みちぎって肉団子にして巣に持ち帰り、幼虫に与えているわけです。

じゃあ成虫は何を食べているのかというと、実は幼虫が口から出す分泌液で栄養を得ています。つまり肉を運んでくる大人と、栄養液を分泌する子で相互に協力し合って生きているのです。大人が子を養うのが当たり前の生物界ではちょっと不思議な関係かもしれません。

しかし液体だけで活動しているとは思えないぐらいにスズメバチの狩りは激しいです。自慢の毒針と強烈なアゴを武器にして獲物に襲い掛かり、コガネムシ、セミ、バッタなどの大型昆虫を積極的に捕獲していきます。ときにはヘビやカエルの死体、哺乳類の死体などからも肉を採取して巣に持ち帰るほど。

そしてその獰猛さが伺えるのは、ほかの蜂の巣を襲うこと。特にミツバチの巣は天然のものであろうが、養蜂所の巣箱であろうが容赦なく襲い、スズメバチ10匹程度で10,000匹クラスのミツバチの巣を滅ぼしてしまいます。そこで大量のミツバチの成虫の死骸、サナギ、蜜を確保するわけです。

ちなみに襲撃する巣の対象は弱い種のものに限らず。オオスズメバチがキイロスズメバチの巣を襲うなんてケースもあります。なんたる弱肉強食っぷりでしょうか。

スズメバチの強靭な顎と毒針
↑強靭なアゴ(左)と、腹部の毒針(右)

 

人間にとってのスズメバチの危険性

ようやく本題へ。獰猛な性格で強烈な毒針を持つスズメバチへの対策です。

①まず近づかないこと
これはどんな危険生物にもいえる当たり前のことです。「そんなこと言われるまでもないわ!」なんて思うかもしれませんが、危険なものには近づかないこと、それが危険を避ける上で当たり前かつ一番大事なことなのです。

まずは蜂の巣がありそうなところに立ち入らないこと。舗装された道路を歩けば絶対安全なんてことはいいませんが、無駄に獣道や茂みに入れば知らず知らずのうちに彼らの巣の近くを歩いてしまうことも。彼らは巣に近づくものに対しての警戒心が非常に強いので、攻撃を受けてしまう可能性が高くなります。特に夏の終わりから秋にかけてはコロニーが一番大規模になっているので
集団攻撃を受ける可能性もあって大変危険です。

また、こちらから接近しない心得も大事ですが、接近させない心得も大事です。スズメバチは食べ物やジュースの甘い匂いに惹かれてやってきます。飲みかけの缶ジュースの中に知らない間にスズメバチが入っていて、唇を刺されたなんて事故も過去に存在します。バーベーキューやピクニックなどでは、長い時間食べ物を放置しない、ジュースなどは蓋の出来る入れ物を選ぶ、などちょっとした心がけでリスクを減らすことができます。

あと意外かもしれませんが香水なんかもNGです。スズメバチの好む匂いは人間が好む匂いと非常に近いらしいです。良い匂いで異性を呼び込むのもいいですが、なにも蜂まで呼び込まなくてもいいと思います。アウトドアのときぐらいは香水は控えましょう。

②スズメバチを発見したら
まず遠距離で発見してスズメバチがこちらを意識していない場合。距離を保ちつつゆっくりとその場を立ち去りましょう。余裕があればスズメバチが飛び去っていく方向もチェック。その先に巣がある可能性が高いです。

次にスズメバチがこちらを意識した飛び方をしている場合。妙にこちらのまわりを徘徊するように飛んだり、こちらを見たまま空中で止まった状態だったり。この場合は自分がスズメバチの巣に接近してしまっている可能性が高いです。さらにカチカチッというアゴを鳴らす警告音が来たらもう完全にイエローゾーン。身をゆっくりとかがめて蜂とは逆のほうへ立ち去ってください。このとき、もし白色の帽子やタオルなどを所持しているなら頭に被ると安全性が高まります。しばらく蜂が後をつけてくることもありますが、刺激さえ与えなければ大丈夫です。

絶対にNGなのは、手で払って攻撃したり、大声を出したりすること。道具を振り回すのもダメです。何かで脅かしたところで、巣を守っている彼らには「逃げる」という選択肢はありません。無駄な刺激を与えれば確実に針を立ててこちらに襲い掛かってきます。

③もしも刺されてしまったら
どんなに対策をしていても不幸な事故で刺されてしまうこともあるでしょう。その毒性による症状と処置の解説をしておきます。

しかしその前に、まず自分の身の安全を確保してください。刺した蜂はまだそばにいませんか?
スズメバチはミツバチと違って何度でも刺します。また、蜂の毒針からは仲間に警戒信号を送るフェロモンも分泌されているので、その場を離れて安全を確保してください。

次に症状。刺された箇所がすぐに大きく腫れあがり、熱を持って激しく痛みます。部位によっては気持ち悪いぐらいにパンパンに腫れあがってしまうことも。単体の蜂による毒だけで死亡という例はほとんどありませんが、集団に刺されて傷が数十箇所に登る場合やアナフィラキシーショックを起こした場合は死に至ることもあります。実際に命を落としている方が毎年20人近くいます。

毒針とスズメバチに刺されてしまった人の手の写真
↑スズメバチの毒針(左)と、刺されて腫れあがった手の比較(右)

 

処置としては、刺された箇所を指でつまんで毒を外部に押し出してください。これが早ければ体内に回る毒の量を最小限に抑えることができます。このとき口で吸い出すのは危険ですのでやらないでください。口の中の自分では自覚のないような小さな傷からでも毒が体内に侵入する場合があります。

そして冷たい流水で傷口を洗い流しながら冷やします。所持しているなら抗ヒスタミン軟膏、ステロイド剤、タンニン酸水を塗布。これで自分でできる処置は終了です。あとはすみやかに病院へ行って診断を受けてください。

楽しい行楽の最中などに刺された場合、みんなに迷惑をかけたくないという思いで無理をしがちですが、すぐに引き返して病院で診てもらい、帰宅して静養してください。そのまま帰らずに遊んでアナフィラキシーショックでも起こしたら迷惑どころの騒ぎではなくなってしまいます。

 

④アナフィラシキーショックについて
蜂に刺されて死亡した件のほとんどはこれによるものです。簡単に言うと、毒に対して免疫が過剰に反応してしまって激しいアレルギー反応が出てしまうというもの。一度スズメバチに刺されたことがある人がもう一度刺されたときにまれに起こる症状です。めまい、嘔吐、下痢、呼吸困難、全身じんましん、顔面蒼白などの症状を引き起こして最悪の場合は死に至ります。

可能性は低いですが、これらの症状が出ていないかは必ず気にしてください。早い場合は刺されて30分後ぐらいから兆候が見られます。兆候が見えるのが早ければ早いほど危険です。もし怪しいと思ったときには迷わず救急車を呼びましょう。

スズメバチ

 

スズメバチの巣を駆除する

オオスズメバチは山間部の土の中に巣を作ることがほとんどですが、キイロスズメバチに関しては民家の屋根や軒下に巣を作ることもあります。自宅近辺でスズメバチを見かけることが増えたのであれば、近くに巣が作られていないか警戒しましょう。もし巣が近くにあった場合は早急に駆除する必要があります(人が立ち入らない場所であるならハチ達がいなくなる冬まで待つのも手です)。

まずは役所に連絡しましょう。対応には地域差があるのですが、無料で駆除してくれる場合があります。無料駆除を実施していない場合も、割安な駆除業者を紹介してくれたり、費用の補助金が出たりすることがあります。

また自力で駆除するという選択肢もあります。ただし、これは巣がまだ小型の段階であり、さらにしっかりした準備がある場合のみの選択肢です。無計画な自力駆除は自分だけでなく近隣の住民を危険に晒すことがあります。「ちょっとやってみようか」と軽い気持ちで挑むことはお薦めしません。

 

●自力でスズメバチの巣を駆除する方法
(※自己責任でお願いします。また15センチを超えるような大きさの巣に自力挑戦するのは絶対にお薦めしません)

まずはスズメバチ用の殺虫スプレーを2本用意します。一般的な殺虫剤でも効果はあるのですが、スズメバチに特化したスプレーは射程距離が格段に長いです。自分自身の安全のためにスズメバチ用のものを用意しましょう。

まずは昼間のうちに、巣の形状と出入り口の位置、周りの障害物などを確認しておきます。スプレーで巣を攻撃するのであれば2メートル以内の距離までは近づきたいところ。物理的にそれが無理であればあきらめたほうが賢明です。

行動を起こすのは夜間。ハチは全て巣の中に帰っており、夜間はその活動能力も低下してるのが理由です。またスズメバチは気温が18度以下だと行動が鈍くなるので寒い日であればあるほど良いです。スプレーを使うため風もできるだけ無風の日を選びましょう。

格好はできる限り肌の露出をなくし、厚手のものを着用しましょう。香水や整髪料はハチが好む匂いなのでNGです。静かにスズメバチの巣に忍び寄り、巣の出入り口に対して真っ直ぐ攻撃できる位置を目指します。

さて、攻撃のときです。スプレーを1本は巣の中に充満させる目的で巣の出入り口に向けて、もう1本は巣全体に満遍なくかかるように使用します。ハチ用のジェットスプレーは連続噴出時間が1分以下のものがほとんどですが、全て使い切る勢いでいきましょう。噴出が終わったら急いで安全な場所に逃げてください。スプレー中に1匹でも巣の外に飛び立ったハチがいたり、どこかにハチの羽音を感じたりしたときも同様に逃げてください。とにかく身の安全が一番大事。

あとは夜が明けてから巣の様子を見に行ってみましょう。3日間程度、何度か様子を見に行って1度もハチが見つからなければOK。念のために遠くから巣に刺激を与えてみて、それでもハチが現れなければ撲滅完了です。巣は長い棒や内側にゴミ袋をかけたタモなどで落として、廃棄しましょう。

スズメバチの巣

 

スズメバチに関して豆知識

スズメバチの生態について豆知識です。大した内容ではないですが。

①刺された傷に小便をかけるといいってのはデマ!
昔から蜂に限らず、虫刺されには小便をかけるとよいという話を聞きます。尿に含まれるアンモニアが毒の成分に働きかけるとのことですが、毒液の分析がしっかりされていない頃に流行ってしまった全くのデタラメです。そもそも小便にはアンモニアそのものはほとんど含まれておらず、アンモニアを得たければ時間をおいて小便中の尿素が細菌に分解されなければいけません。

 

②蜂は黒い色を攻撃してくる
これは本当です。白色が安全って意味ではありませんが、黒色が危険なのは確かです。蜂が黒色に対して何を思って攻撃性を高めるのか理由ははっきりしていません。天敵であるクマの体色が黒であるからだとか、哺乳類の弱点である目鼻の色だからだとか、説はいろいろあるみたいですが。とにかく薄い色の帽子や服などで露出を少なくすればハチの攻撃性を少しは抑えられるってことは間違いないそうです(※白い服でも刺されるときは刺されます)。

 

③「蜂は夜なら安全!」は信用しすぎないで
「蜂は夜目が利かないから夜に巣を駆除すれば安全!」 そういって素人が蜂の巣を駆除しようとしたのを止めたことがあります。スズメバチが夜目が利かない?あんな真っ暗な巣穴の中に住んでいる生き物に対して、どうしてそういうことを言えるのか(笑)そりゃあ、明るい昼間よりは見えないだろうし行動も活発ではないです。しかしそれだけの話。ハチは暗くてもそれなりに飛びます。
昼間より危険性は下げられますが、絶対に安全とはいえませんのでご注意を。

 

④スズメバチとミツバチの戦争
どちらかというとミツバチの生態の話になりますが。スズメバチがミツバチの巣を襲うことは前述しましたが、実はミツバチもやられっぱなしではありません。あのオオスズメバチですらミツバチに撃退されることがあるのです。

襲ってきたスズメバチに対してミツバチは決死の覚悟で噛み付いていきます。やられてもやられても次々にくらいついて包囲していき、最終的には何十匹ものミツバチで1匹のスズメバチを囲んで蜂球と呼ばれる球体を作ります。スズメバチの動きを封じた状態でミツバチ達は羽や体を激しく揺らして摩擦熱を産み出し、球体内部を温めます。この球体の中の温度は48℃にまで上昇するらしく、スズメバチの生存限界の46℃を超えているため、これをされたスズメバチは成す術もなく死んでしまいます。50℃まで生きられるミツバチがスズメバチとの戦いの歴史の中で編み出した集団戦法。

これはニホンミツバチにしかできない戦術です。巣を襲ってくる獰猛なスズメバチが存在しない土地で育ったセイヨウミツバチはこの蜂球戦術を知らず、日本のスズメバチの前にただ滅ぼされるだけ。いずれセイヨウミツバチも自分達の生き残りのためにこの戦術を編み出したりするんでしょうか?先にスズメバチがニホンミツバチの蜂球戦術の破り方を編み出すかもしれませんね。生物の進化って本当に面白いです。

蜂球

 

スズメバチVSミツバチの攻防戦:

 

驚異の外来種、ツマアカスズメバチ

本来は中国や台湾に生息していたスズメバチの一種、ツマアカスズメバチ。2013年に対馬で繁殖が確認され、さらには2015年には北九州でその姿が確認されました。体長は2cm程度と日本のスズメバチにくらべると小ぶりですが、気性が荒く、海外ではその毒針で命を落とした人もいます。また繁殖能力が極めて高く、同じ生息域のミツバチを狩り尽くしてしまう恐れがあるため、行政は対策を進めています。

ツマアカスズメバチ

 

スズメバチ対策アイテム

ハチ・アブ用ハンターZ PRO

ハチ・アブ用ハンターZ PRO
ジェット噴射ができる殺虫剤スプレーです。成分はモンフルオロトリンが使用されており、速攻で標的を行動不能にして駆除することができます。スズメバチを含めたハチ全般に効果があるのはもちろん、ムカデやカメムシなどにも効果があります。商品説明では射程距離は10メートルとありますが、実際に使用した感覚では5メートル以下でないと十分な効果は難しいかなといったところです。

ハチ激取れ

フマキラー ハチ激取れ
庭先につるすタイプのスズメバチ駆除グッズです。カゴの形をした容器の中にはハチを惹きつける物質が入っており、これに引き寄せられたハチが容器の中に入っていく仕組みになっています。容器の中は一方通行になっているため一度入ったハチは脱出することができずにそのまま息絶えていきます。効果は絶大で、山間部の住宅であれば数週間で容器の中はハチで一杯になってしまうほど。

Vevin スズメ蜂 万全防護服

Vevin スズメ蜂 万全防護服
ハチ用の防護服です。スズメバチのような大型のハチからも身を守ることができる厚手のタイプです。ナイロンタイプと違って通気性は抜群でありながら、厚さ20mmの生地はスズメバチの針を完全にシャットアウトします(スズメバチの毒針は6mm)。よく刺されがちな肘や膝などの湾曲部にも特別なプロテクターが入っており、ハチの攻撃に対して隙がありません。

ポイズンリムーバー

ポイズンリムーバー
携帯用のポイズンリムーバーです。毒を持った生き物に刺されてしまった、もしくは咬まれてしまったときに毒を吸い出して被害を最小限におさえることができます。蚊に刺された場合でも吸い出すと効果があり、その後の炎症がかなり軽減されます。ただし圧力を下げて毒を吸い出す構造上、体の先端部の傷口に対しては容器がフィットせずに使用できない可能性があるため注意が必要です。

サメ

サメの生態

サメとは?

サメは軟骨魚の中でエラが体の側面にある種類の総称です。サメは全世界で500種以上の仲間が確認されています。一般的にはその中でもホオジロザメやジンベエザメなどが有名ですね。

一口にサメといってもそのビジュアルや生態は様々で、体長は15センチ程度の小さな種から15メートルに及ぶ巨大な種(魚類としては最大)まで、体型は流線型だったり丸みがあったり平べったかったり、住む場所も近海だったり外洋だったり深海だったり、種としてのバリエーションは非常に豊富です。

ホオジロザメとジンベエザメ

↑映画「ジョーズ」で一躍有名になったホオジロザメ(左)と、魚類の中でも最大の大きさを誇るジンベエザメ(右)

 

サメの身体的特徴

1.鰭(ヒレ)
サメは基本的には尾ビレ・尻ビレを一基、背ビレを二基、胸ビレ・腹ビレを一対備えています。その大きさや形、配置はそれぞれの個体で違いがありますが、どのサメもこれらのヒレを持っています(※カグラザメ・エビスザメなどは例外で、背びれが一基しかない)。そのヒレはほとんどが薄くてそれでいて固く、流体の中を進むのに非常に適した形をしています。

サメのヒレ

 

2.体表
サメの有名な特徴のひとつは鮫肌と呼ばれるザラザラした肌。これは楯鱗(じゅんりん)と呼ばれるエナメル質の突起が無数についていて、これらが体表に水の幕を発生させることによって水の抵抗をなくし、泳ぐスピードを格段に高めています。シドニーオリンピックで話題になった競泳水着は、このサメの楯鱗を模倣して製造されました。その性能の高さから残念ながら使用禁止になってしまいましたが。

サメ肌

 

3.骨
意外に知られていないのが、サメは軟骨魚であるという点。サメは全身の骨が軟骨でできていて、柔軟かつ丈夫なその性質がサメの強靭な身体能力を生み出しています。ちなみに硬骨で形成されているのは顎の部分だけです。軟骨はまず化石にならないので、サメが死んだ後は顎と歯だけが化石として残ります。

 

4.顎(アゴ)
骨の項でも書いたとおり、サメの体の中では唯一の硬骨部分です。最大の特徴は、顎が頭蓋部分に完全に固定されておらず、柔軟な靭帯で吊るされたようになっていること。これにより咬み付くときに、前方に顎を大きく突き出す動きや、横方向にノコギリのように歯をこすり合わせる動きを実現しており、より獲物の肉を効率よく噛みちぎれるようになっています。

サメのあごと歯

↑ホオジロザメの顎(左)、アオザメの顎(真ん中)、絶滅した古代種メガロドンの顎(右)

 

5.歯
サメの歯は種によって様々です。ホオジロザメのような海獣類を主食にする種は、肉を噛みちぎれるように大きな三角形をしています。アオザメのようなイカやタコをよく食べる種は、獲物を捕らえやすいように鋭くて細い歯が並んでいます。貝類を主食にするネコザメは平べったい歯を備えていて、それを摺り合わせて獲物を潰すように噛み砕きます。ジンベエザメの歯は小さな歯が無数に並んだやすりのような形状をしていて、小魚等を捕まえやすくなっています。

どの種の歯も、列単位でストックが奥に用意されていて、いま使っている歯が抜けると列ごと歯を入れ替えていきます。種によっては新しい歯列が再生するのに10日かからないものもいて、生涯で3万本以上の歯を使用するサメもいます。

ホオジロザメの歯

↑ホオジロザメの正三角形の歯(左)、イタチザメの歯列(右)

 

6.嗅覚
サメは非常に嗅覚に優れた生き物です。鼻孔は常に新しい水を取り込み続けることができる構造になっていて、細かいひだ状で表面積が大きい感覚器(嗅嚢)を使って臭いを感知しています。よく耳にする「サメは海の中で数十キロメートル先の一滴の血を感知してやってくる」なんてのは、さすがに大袈裟な都市伝説ですが、生き物の臭いに関するセンサーが鋭いことには間違いありません。

特に人間の血よりも魚の体液に敏感だという実験結果が出ています。そのためスピアフィッシングなどで、傷ついた魚を腰に身につけたまま泳ぐのは非常に危険な行為だといえるでしょう。愛媛県で起きたタイラギ漁中のホオジロザメ襲撃事故は、タイラギの体液がサメを呼んだのではないかと言われています。

 

7.目
サメは嗅覚や磁場感覚に優れるために視力は低いと思われがちでしたが、実際にはほかの魚類と同等、もしくはそれ以上の視覚能力を持っています。プランクトンをまるごと吸い込むように食べるジンベエザメやウバザメ、海底で獲物を待ち構えるカスザメなどは、視力をそれほど必要としないためその目は小さいですが、積極的に動く獲物を狙っていくタイプのサメ(とくにアオザメやニタリなど)は非常に大きな眼球を持っています。光の明暗や色の識別も可能で、特に夜間時の採光能力は高くネコ以上のものを備えています。

サメの目には瞬膜という人間でいうまぶたのようなものがあります。獲物に襲いかかるときには目を損傷しないようにこれを閉じるサメが多くみられています。よくホオジロザメやイタチザメが獲物に咬みつく映像で白目をむいている姿が見られますが、これは白目になっているのではなく、瞬膜を閉じて目を保護している状態なのです。

サメの目と眼球とまぶた

↑左からイタチザメ、ネコザメ、ジンベエザメの目。一番右は瞬膜を閉じた状態のペレスメジロザメ

 

8.ロレンチーニ器官
サメはその鼻先に電流や磁場を感知する特有の器官、ロレンチーニ器官を持っています。全ての生き物は運動する際に必ず微弱ながら電気を発しています。サメはそれを感知して獲物を探し当てるわけです。しかしさすがにこの能力は遠方の獲物までを感知することはできません。あくまで近距離、岩場や砂の中に隠れている獲物を探し当てるような用途に使われることが多いようです。

まだ検証は不十分ですが、回遊性のサメは地球上の磁場を感じて進行方向を決めていると考えられています。長距離の回遊をしながらもイタチザメがミズドリの生息地を正確に巡ったり、ホオジロザメがメキシコとハワイの中間にあるホオジロザメカフェと呼ばれる特定のスポットに定期的に集まったり、これらは海底の地形と海流の流れの熟知だけでは考えられないことです。

またこのロレンチーニ器官は非常に繊細で、外部から強い刺激を受けるとサメはその感覚が狂ってしまいます。あのホオジロザメでさえも例外ではなく、ダイビングカメラマンはサメが接近してきたときはその鼻先をさわって、うまくサメの感覚を狂わせて危険を回避します(※咬まれた後では手遅れですw)。ペレスメジロザメなどは鼻先を刺激するとおとなしくなって動きを止めることが知られており、うまくすれば寝かしつけるようにしたり、体を垂直に立ててあげたりすることも可能です。

シュモクザメのロレンチーニ器官

↑砂の中に隠れたアカエイの微弱電流を探知するシュモクザメ(左)、鼻先をさわられるホオジロザメ(中)とペレスメジロザメ(右)

 

9.側線
サメに限らず魚類や一部の両生類は側線と呼ばれる管状の器官を持っています。これは顔から耳の側を通って体の後方まで伸びていて、水の圧力の変化や振動を感知するために存在します。とくに魚がもがくときにでるような低周波、さらにリズムが不規則な音に敏感で、ケガをして弱った魚が付近にいるとすぐにそれを探知してやってきます。

人間は五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)を持っていますが、サメはこの側線とロレンチーニ器官のために、合わせて七感を駆使して生きている非常に優れた生き物です。何億年もほとんど姿を変えずに生きてきたこともうなずける、生き物としてひとつの完成形だといえるでしょう。

 

サメの繁殖

魚類というと、メスが産みつけた無数の卵にオスが精子をかけるような方法をイメージするかもしれませんが、サメでこの方法をとる種類は実はひとつもいません。みな生殖器を持っていて、体内受精をします。サメは漢字で「鮫」と書くとおり、交わる魚、つまり交尾をする魚なのです。

サメの交尾
↑ネムリブカの交尾。オスがメスの胸ビレに噛みついて体を固定している。

交尾後はもちろん卵を産むわけですが、400種類以上いるサメはその方法も非常に多彩です。いくつか例を出して紹介しますと、

①卵生種
ネコザメやナヌカザメのような卵生種はなるべく水の流れがあるきれいな場所を選んで、産み出した卵を岩場やサンゴなどにくっつけます。固い外皮に覆われた卵の中で胎仔は成長し、成熟すると自ら外皮を破って出てきます。

②卵胎生種
ホオジロザメ、シロワニ、ジンベエザメ等ほとんどのサメがこれにあたります。自分の体内で卵を孵して、胎仔がある程度成長してから体外に放出します。なので外からみれば哺乳類のように子供を産むのと変わりがありません。一番危険が多い卵の時期、生まれたての稚魚の時期を安全な母親の体内で過ごすため、自然界においてはかなり安全で確実性の高い繁殖方法といえます。

体内での稚魚の過ごし方はそれぞれ独特で、生まれてすぐに体外に出ていくもの、そこに留まって母親の膣内の分泌物で成長するもの、ほかの稚魚や未成熟卵を食べて成長するものなど様々です。ホオジロザメやシロワニは膣内の中からすでに激しい生存競争が始まっているわけです。

③胎生種
オオメジロザメなどがこれにあたります。なんとこのタイプの場合は、膣内で卵からではなく子供の形で生まれます。しかも哺乳類のようにへその緒を持っており、親から栄養分を直接もらうことによって成長していきます。

サメの卵

↑サンゴに結び付けられたナヌカザメの卵(左)、胎生のサメの腹を割いた写真(右)

 

サメの人間に対しての危険性

サメに対して人間が抱くイメージといえば「人食い」でしょうか。しかしこれはサメといえばホオジロザメしか知らないような人間が作り出した虚像であると言い切れます。400種類以上いるサメの中で人間に危害を加えた事例があるのは10種類程度。しかも縄張りに入った、自らちょっかいをかけた、などの人間側の不注意がなければ襲ってこないような種も多く、そういった事例を除けば、積極的に襲ってくるサメの種類はかなり限定されます。

人間にとって危険なのは主に、ホオジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメです。これらは大型な上に比較的沿岸にまで現れるため、遊泳やサーフィン、潜水漁をする人間と遭遇する可能性があります。あとアオザメやヨゴレも非常に危険ですが、外洋性のサメのため遭遇する機会はまずないでしょう。ほかにシュモクザメとシロワニの危険性も唱えられていますが、基本的にはおとなしく臆病なサメです。至近距離で興奮させてしまうような不幸がない限りは比較的安全といえます。

確実にサメに襲われない方法というのは「水に入らない」ぐらいしかありません。襲撃される確率を少しでも下げるには、

1.出血した状態で泳がない
2.傷ついた魚を携帯したまま泳がない
3.ネックレスなどの光るアクセサリーをつけたまま泳がない
4.朝夕のサメの活動が活発な時間に泳がない
5.濁った海で泳がない(サメの接近に気が付けない、サメもエサと人間を誤認しやすい)
6.サメを見つけてパニックになって水面で暴れない
7.小型のサメでも、こちらから絶対に刺激しない
8.サメの目撃情報が多い海での遊泳は控える

ぐらいでしょうか。しかしこれらのことはあくまで確率を下げるってだけで、確実に襲われない保障にはなりません。

ただ、必要以上にサメに対して恐怖を抱くのは無意味であることは理解していただきたいです。日本ではこの50年間で報告されているサメ襲撃事故は10数件。日本全国の海水浴客・潜水業者の50年分の延べ人数は何百億、何千億人にのぼります。あなたがサメ襲撃にあう確率は天文学的に低いことがわかるでしょう。まれに「サメが怖いから海で泳ぎたくない」という意見を聞きますが、道を歩いていて車に跳ねられる確率の方が段違いに高いです。

人間にとって危険なサメはホオジロザメとオオメジロザメとイタチザメ

↑6メートルまで成長するホオジロザメ(左)、沖縄などに生息するイタチザメ(中)、淡水にも侵入可能で貪欲なオオメジロザメ(右)

 

人間に危険のあるサメのピックアップ動画:

 

サメが殺した人間の数を他の動物やモノとくらべてみた動画:

 

サメの保護

サメは海の中では限りなく頂点に近い位置にある生き物です。そういった種は自然の中では個体数が少なく、繁殖能力も低い傾向にあります。サメについてもそれは例外ではありません。

中国を中心としたアジア諸国でフカヒレの需要が高まったことによって、サメの乱獲が促進されて、その個体数は近年減少傾向にあります。そのため世界中でサメを保護する法整備の動きが進んでいます。

アメリカではスポーツフィッシングにルールが追加、(1隻につき1尾まで、135cm以上の個体のみ捕獲許可が下りる)EUではフカヒレ目的のサメ漁を全面禁止、オーストラリアではサメ保護のために特定海域が侵入禁止になるなど、先進国を中心にサメ保護の流れが作られています。あの凶暴なイメージのホオジロザメでさえも、ワシントン条約で保護の対象になっています。

しかし発展途上国ではいまだにフカヒレの乱獲が続けられており、船の上で生きたサメのフカヒレだけを切り落として本体を海に捨てる、フィニングが行われています。

 

日本もサメを水産資源として活用している国のひとつであるため、海外諸国からよく槍玉に挙げられることがあります。日本で水揚げされるサメの9割を宮城県の気仙沼市が占めていて、そのうちの8割以上がヨシキリザメです。ヨシキリザメは国際自然保護連合(IUCN)の「保全状況の評価リスト」における準絶滅危惧種に指定されていますが、個体数を減らしているという状況証拠が非常に乏しく、その点で保護団体と漁業関係者とで論争の種になっています。

日本側の漁業関係者の主張は以下のとおり。
・マグロ延縄漁の混獲でとれたサメだけを水揚げしており、収穫量は毎年変化なし、数が減少している兆しはない
・フィニングは行っておらず、肉・皮・骨まで全てを水産資源として活用している

しかし、諸外国では「サメを水揚げしている」という点だけで残虐なフィニングのイメージを持つ人が多く、サメ漁全てを否定する動きをとる団体も多くあります。最近ではラッシュ・ジャパンがフカヒレ漁反対キャンペーンを打って話題になりました。

 

サメ関連アイテム

サメ避けリストバンド

磁気サメ忌避ブレスレット
磁場の乱れを嫌がるサメの性質を利用したブレスレットです。柔軟性のあるシリコンバンドを採用することにより使用感と快適感を高めています。ただしかなり強力な磁気を発生させるため、電子機器に30cm異常近づけると影響を与えてしまう可能性があるため注意が必要です。

ほぼ命がけサメ図鑑 沼口 麻子

ほぼ命がけサメ図鑑 沼口 麻子
近年の日本のサメ業界の中ではナンバーワンと言ってもよいぐらいに知名度がある、シャークジャーナリスト・沼口麻子氏の著書。日本だけでなく世界中を巡ってサメと触れ合ってきた経験を活かし、サメの本当の姿をありのままに書き綴った図鑑。砕けた日本語でわかりやすく解説されており、レビューの評価も非常に高い。

世界サメ図鑑

世界サメ図鑑 スティーブ・パーカー
動物学を学び理学士号を取得したスティーブ・パーカーの著書を、魚類の系統分類学を学んだ仲谷一宏が監修したもの。写真は多いが掲載されているサメの種類が少なく、どちらかというとライトユーザー向け。ディープなサメマニアにとってはやや物足りないかもしれない。

サメガイドブック

サメガイドブック
アンドレア フェッラーリの著書。前半は80ページに渡りサメの生態や歴史、人とのふれあいについて書かれており、後半はサメの種類ごとに図鑑のように丁寧に解説している。サメ図鑑としては大変充実していてユーザーレビューの評価も高い。ただしエイを含めたたくさんの種類のサメを網羅しているぶん、ひとつひとつの種についてはやや描写が浅いところもある。

 

サメ関連 参考サイト

サメ-MANIAX-