節足動物

オオムカデ

オオムカデ

オオムカデとは?

オオムカデとは、オオムカデ目・オオムカデ科に属するムカデ全般のことをいいます。「オオムカデ」という名のムカデがいるわけではありません。

日本でオオムカデ科に属するのは、全国的にはトビズオオムカデ、アカズオオムカデ、アオズオオムカデなどがいて、沖縄限定ではハブオオムカデ、タイワンオオムカデなどがいます。

生息範囲、知名度、数的に考えるとトビズオオムカデが圧倒的に多く、日本でオオムカデといったら、トビズオオムカデのことだと考えて特に差し支えありません。このページでもトビズオオムカデのことをイコール「オオムカデ」として解説しています。

トビズオオムカデは赤足と黄色足がいる

 

オオムカデ(トビズオオムカデ)の身体的特徴

トビズという呼び名は、頭部が鳶色(赤褐色)であることからきています。足は基本的には黄色の場合が多いです。しかしオオムカデは個体によって体色に大きく差があって、鮮やかな朱色の頭を持つものもいれば、毒々しい濃厚な赤色の足を持つものもいたりします。ペットとして飼育する人にとっては、体色はその価値が決まるかなり重要な要素になっているようです。

体長はだいたい8cm~15cm程度。21個の体節から長い足が1対ずつ生えていて、しかも蛇行するように動くために、実際に目にしたときは数字以上の大きさを感じます。

ちなみにオオムカデの足の数は42本。ムカデは漢字では「百足」と書きますが、実際100本ということはなくムカデの種類によって数はまちまちです。ゲジ目では最少で30本、ジムカデ目では最多の346本の種がいます。あと足が多い種ほどその足の長さは短くなる傾向にあります。

オオムカデの足は42本

 

オオムカデの生態

オオムカデは北海道から沖縄まで日本全土に生息していて、活動時期は冬以外。基本的には落ち葉・石・コケの下などの湿った場所に生息しています。

夜行性なので夜になると活発的に移動して、昆虫や小動物を捕まえて食べています。オオムカデはトノサマバッタやゴキブリはもちろん、小型のネズミまでもを捕まえるぐらいに獰猛です。触覚で獲物の体温を感知し、急激に接近しその鋭い牙で攻撃して毒を流し込みます。毒を流し込まれた獲物はその作用によって動くことができなくなり、そのまま鋭いアゴの餌食になります。

冬は樹木の隙間の奥や、土の中などに潜って寒さをしのいで過ごしています。温かい隙間を狙って入り込んでいくので、その結果として人が住む屋内に紛れ込むこともしばしば。かなり狭い隙間にまで入り込むことができるため、古い木造建築の家屋などは簡単に侵入されてしまいます。

オオムカデの捕食。大型の個体であればネズミも食べる

 

オオムカデの生殖方法

オオムカデの生殖行動が活発化するのはだいたい5月から6月の間。この時期にオスとメスが出会って意気投合すると、オスは自分の精子が詰まった精筴という袋を排出します。メスは自分の生殖器でそれを体内に取り込んで保存しておきます。そして産卵の際にその精子を使用して受精卵を作り、卵を産み出すわけです。1度精筴を受け取れば半年ぐらいの間、数回に渡って産卵が行えるというから驚きです。

狭くて湿度のある小さな空間を巣穴とし、一度に50~80個程度の卵を産みます。メスは自分の体で卵を包み込むようにして、地面に触れないようにしたり、舌で舐めてカビや乾燥から守ったりします。このメスの行動がないと卵は無事に孵らないそうです。これは卵が孵っても幼体がある程度成長するまでは続きます。

幼体は2、3ヶ月程度で親離れしてそれぞれ散っていきます。生殖行動が可能になるまでは3年かかると言われており、その間に何度も脱皮を繰り返して成長していきます。ちなみに寿命は7~10年程度です。

オオムカデの子供と卵

 

人間にとってのオオムカデの危険性

前述したとおり、オオムカデはよく人家に侵入してきます。夜行性でしかも狭くて温かいところに潜り込む習性のために、寝ている布団の中に入ってこられるケースもしばしば。ぐっすり寝ていて無抵抗であってもムカデは容赦なく咬みついてきます(涙)

かなり鋭い牙を持っているので咬みつかれると非常に痛く、しかもその毒は強烈です。血球溶解作用を持つ毒で、その成分はスズメバチのものに非常に近いもの。咬まれた箇所は大きく赤く腫れあがって熱を持ち、電流が走るようなピリピリした激しい痛みがあります。この症状が数時間続いて非常に苦しい思いをすることに。筆者も膝を咬まれたことがありますが、精神的にも肉体的にもかなりしんどいです。

いちおうオオムカデの毒で命を落とすことはありませんが、乳幼児が首などを咬まれた場合は重症に至ることもあります。あとごくわずかな確率ではありますが、アナフィラキシーショックの可能性もないわけではありません。(※アナフィラキシーショック・・・毒に対して免疫反応が過剰に働いて重篤な症状を引き起こしてしまうこと)

 

もし咬まれてしまったら

寝ているときに咬まれた場合、もしくは乳幼児がいつの間にか咬まれた場合は、咬んだ相手がムカデだったかどうかもわかりません。まず咬まれた部分を確認してみましょう。

2本の牙によって挟まれるので傷が2箇所ある場合が多いですが、咬まれ方によっては1箇所しかないときもあります。蚊に刺された痕のパワーアップ版みたいな大きな腫れあがり方をして熱を持っています。そして時間の経過とともに毒が反応を起こして、痛みが傷のまわり半径5cmぐらいに広がっていきます。

処置としては、まず咬まれた場所を43℃以上のお湯で温めつつ洗い流して下さい。このとき指を使って傷口から毒が出ていくように押し出します。熱くて大きな痛みを伴うかもしれませんが、ここは我慢してください。オオムカデの毒にはポリペプチドやヒスタミンといった、熱に弱い成分が含まれているので、これらの毒を熱で無効することで後々の苦しみをかなり軽減することができます。

その後はもし常備していれば虫刺され薬を塗ります。キンカン、もしくは抗ヒスタミン剤やステロイド成分の入った塗り薬が効果的です。塗布後はアイスノンなどで冷やして安静にしましょう。

これらの処置を済ませて数時間安静にしていれば症状は治まってくると思いますが、どうしても症状が引かずに苦しみが続く場合は病院へ。特にオオムカデに咬まれるのが初めてでない方はアナフィラキシーショックの可能性もあります。大事をとるに越したことはないでしょう。

オオムカデの毒牙

 

オオムカデに咬まれないために

咬まれた後の処置のことを知っておくことも大切ですが、やはり理想は咬まれないことです。ここではオオムカデに接触しないための心がけをいくつか紹介しておきます。

 

1.オオムカデが好きな環境を知る

オオムカデはじめじめした湿気のある狭い空間が大好きです。家の周りにそういった場所はありませんか?庭の置石、積み重ねられた落ち葉、老木、屋外に雨ざらしになった木材、プランター、放置ゴミなど、人家のまわりにはオオムカデが住処として好むものがいっぱいあります。さらにこういった環境にはオオムカデの餌になる生き物までもが集まってきます。これらを処分したり、整理・整頓・掃除をしたりすることによってオオムカデを人家から遠ざけることができるわけです。

またそういった環境で作業などするときは、不用意に隙間や放置物の下に手を突っ込まないこと。オオムカデは何かに接触されると反射的に咬みついてくる生き物です。必ず厚手の軍手などを装着して、オオムカデの存在を意識しながら作業するようにしましょう。

オオムカデ

 

2.屋内に侵入させない

これが何より一番大事なことでしょう。どんなに普段気をつけていても寝ているときに近寄って来られればアウトです。オオムカデに屋内に侵入させない工夫を考えましょう。

まずは戸締りの徹底から。トイレやお風呂の小窓なんかは常時少しだけ開けておくなんて家庭も多いでしょうが、昼間はともかく夜間の間は閉めるようにしてください。湿気を求めてオオムカデが入ってきてしまいます。その窓が2Fや3Fにあったとしても、オオムカデは垂直な壁を平気で登っていけるので同じことです。

次に屋内と屋外を結ぶ隙間を塞ぎましょう。木造家屋なんかだと、長い生活の内に家屋が劣化して縁の下や天井へ通じるような隙間が出来がちです。あからさまな隙間はオオムカデの侵入経路になってしまうので、壁材やパテなどできっちり塞いでください。

仕上げに防虫剤を使います。ムカデよけの薬としていろんな商品が出回っていますが、自分の経験といろんな方の話、Webでの口コミから判断するに一番効果があると考えられるのはナフタリンです。よくタンスの防虫剤なんかに使われているので、そういった商品をそのまま利用します。玄関、床下、天井裏などの侵入経路として怪しい箇所に配置しましょう。

ただしナフタリンはムカデを追い払うほどの強力なゆえに、人体にも害を及ぼす成分です。滞在時間が長くなる居間や寝室などに過剰に配置することは控えましょう。常識的な量の配置ならば問題はありません。ただし幼児やペットがいる家庭は、誤って口に入れないような配慮は必須です。

ナフタリン

 

3.オオムカデが部屋の中に現れた!倒し方は!?

ムカデ専用のスプレー系殺虫剤を使うのが一番ベターです。使用方法は商品によって違うのでそれぞれ取り扱い説明を熟読しておいてください。

しかしありがちなのは、いざオオムカデが現れたときにスプレーが手元にないパターン。スプレーを取りに行っている間に見失うのが必至ってときには、しょうがない、打撃戦です。スリッパや太い雑誌を丸めたような武器で戦いましょう。

しかし大ムカデはその見かけどおり、硬い鎧で体が覆われていて頑丈です。おそるおそる叩いてみたって程度では、奴ら全くひるみません。「粉々に粉砕してやるッ!」ってテンションで思いっきり全力で叩いてください。それで動きが止まったのを確認したら、ここで大事なのはもう1回思いっきり叩くことです。オオムカデは刺激を受けた際に、死んだように動きを止める場合があります。ここで油断すると突然素早く動き出して一目散に逃げていくので、死んだふりであろうが、本当に死んでいようが、もう一度叩いて確実に息の根を止めましょう。

万が一逃がして見失ってしまった場合、ナフタリンを使いましょう。オオムカデが隠れたと思われる隙間に投入すれば、嫌がって出てくることが多いです。それでも発見することができなかった場合はナフタリンを一時的に部屋中に重点配置します。そうすればオオムカデはその部屋から出ていくか、弱ってそのまま死んでしまいます。

 

野生の子持ちオオムカデの動画:

セアカゴケグモ

セアカゴケグモ

セアカゴケグモとは?

セアカゴケグモは、セアカゴケグモはヒメグモ科に分類される毒グモの一種です。

日本名は「背中が赤い後家グモ」という意味。後家グモの呼び名の由来は、その毒によって咬まれた男性が死亡すると未亡人(後家)が増えるというところからきています。

海外でもネーミングセンスは同じで、「Red-back widow spider(背中が赤い未亡人蜘蛛)」と呼ばれています。戦闘機オスプレイの別名「Widow Maker(未亡人製造機)」と若干ニュアンスが近いですね。

ただしこのクモは交尾が終わるとメスがオスを食べてしまうことがあって、後家グモの呼び名の本当の由来はこちらではないかという説もあります。旦那を食べて自ら未亡人(後家)になるって・・・ああ、おそろしや(汗)

セアカゴケグモの大きさの特徴

 

日本に入ってきたセアカゴケグモ

元々はセアカゴケグモは日本には生息していませんでした。原産地はオーストラリアで、むこうでは極めて一般的に見られるクモの一種です。

日本で最初に発見されたのは1995年に大阪府高石市で。輸入木材などにくっついて日本国内に入ってきてしまったと考えられています。それ以後も大きな港や空港がある地域で発見が相次ぎ、現在では港町に限らず全国各地でその姿が確認されています。

しかも残念ながらセアカゴケグモは日本の気候に適応してしまい、越冬、繁殖に成功して生息域を広げているのが現状です。県や市が特定危険外来種として積極的に駆除に当たっていますが、日本国内のセアカゴケグモを一匹残らず絶滅させるというのはさすがに不可能でしょう。

2015年に新たに北海道でも十数匹のセアカゴケグモが発見されたことにより、いまの時点ではセアカゴケグモは41都道府県にて存在が確認されています。新たな場所で確認されるたびに市区町村が発表したりしていますが、福岡市ではここ4年間で8000匹以上が発見・駆除されていたにも関わらず市民に公表されていませんでした。パニックを避けたかったということですが、最低限の注意喚起はしてもらいたいものですね。

セアカゴケグモの巣

 

セアカゴケグモの生態

セアカゴケグモは、オスが体長3~5mm、メスが体長10~20mmぐらいの大きさです。オスはメスに比べてかなり細くて小さく、体色も薄め、背中の模様も赤ではなく茶色系の色をしています。逆にメスはかなり胴体部分が大きくて体色は真っ黒、背中の模様は鮮やかな赤い色をしています。たまに足が茶色と黒のツートンカラーになっている個体なんかもいたり。

元々温かい気候が原産地のクモなので、雨風をしのげる暖かい場所を好みます。建物、排水溝、ブロック塀などの隙間や、プランターの陰、ベンチの下、ガードレールの支柱裏、あとは自動販売機の裏やエアコンの室外機の隙間などの人口的な熱源のまわり。不規則で乱雑な糸の張り方で巣を作り、そこでじっと獲物がかかるのを待っています。

基本的に攻撃的な性格ではないので、クモのほうから積極的に人間に咬みついてくることはありません。危険なのは、たまたまセアカゴケグモが巣を作っている場所に手足を入れてしまうケース。細い隙間の清掃や、プランターの手入れ、屋外に放置していたヘルメットや長靴の装着時などは注意が必要です。セアカゴケグモの繁殖が確認されている地域では「もしかしたらここにクモが巣を作っているかも」という、万が一の想定はしておいたほうがよいでしょう。ちなみに毒がある牙は短いので、長袖の服や軍手を着用するだけでもかなりリスクは減らせます。

セアカゴケグモのオスとメス
セアカゴケグモのオス(左)と、メス(右)

 

セアカゴケグモの食事と天敵

セアカゴケグモは三次元上に不規則な網を張ってターゲットを狙う肉食系のクモで、巣にかかった小さな昆虫を主にして食べています。巣の形状がチョウやガのような飛翔する生き物よりも、地上を歩く生き物を捕らえるのに適した形をしているため、アリやハサミムシ、ゴキブリなどを捕らえて食べることが多いようです。それほど大きな体格をしていないクモなので、ターゲットになる昆虫も必然的に小型なものが中心になります。

逆に天敵は、ベッコウバチやハナバチのような寄生蜂。あとは未確認ではありますが、クモ全般を主食とするような鳥類、トカゲ、小型哺乳類、ムカデなども天敵になるのではないかと考えられます。毒グモとはいえ、自身の肉に毒が含まれているわけではないので普通に捕食されてしまいます。

ベッコウバチとハナバチ
↑ベッコウバチ(左)、ハナバチ(右)

 

セアカゴケグモの繁殖方法

セアカゴケグモは元々温かい地域が原産のクモですので、活動が活発になる夏が繁殖期になります。交尾を済ませたメスは真ん丸で白色の卵嚢を1度に数個作り出し、そこからだいたい15日程度で100匹前後の幼体が生まれてくるようです。幼体は3~4ヶ月ぐらいで交尾可能な状態に成長するので、天敵が少ない快適な環境であればかなりの勢いで数を増やしていくことになります。

 

セアカゴケグモの卵
セアカゴケグモの卵嚢(左)と、卵嚢から出てきたばかりの幼体たち

 

セアカゴケグモの毒とその症状、対処

一般的に出回っているセアカゴケグモの写真はほとんどメスのものです。なぜなら毒グモとして騒がれているのはこの「メス」のみだから。オスは毒を持っていません。この点があまりニュースなどで紹介されていないのがちょっと不思議。

セアカゴケグモの毒はα-ラトロトキシンという名の神経毒です。咬まれると、針で刺されたようなチクリとした痛みがあります。その後咬まれた部分が毒の影響で赤く腫れあがり、30分後ぐらいからどんどん痛みがひどくなっていきます。これだけの症状で済んでここから回復する場合も多いのですが、抵抗力が弱い子供や老人などの場合は痛みが全身に広がり、発熱・発汗、頭痛、嘔吐、下痢、発疹などの症状に発展する場合があります。血清が普及する前のオーストラリアでは死亡例も少数ながら存在します。

もし咬まれた場合、もしくはその疑いがあるときは、まず傷口を綺麗な水で洗い流します。出血がある場合は毒を体外に出すチャンスとみて、止血はしないようにしてください。そしてとにかく速やかに病院へ直行。セアカゴケグモの毒に対して個人で行える効果的な処置は存在しません。冷やして患部の痛みを軽減するぐらいのことはできますが、根本的な治療にはなりません。

それととにかくパニックにならないこと。このクモが普通にウヨウヨいる原産地オーストラリアでもここ200年で死亡件数は13件程度。その13件も、他の病気と合わせた合併症で亡くなったケースがほとんどです。医療設備が普及した近年ではもう50年以上死亡者が出ていません。マスコミが「殺人グモ」みたいな感じで煽っていますが、過剰に恐怖を感じて取り乱す必要は全くありませんので、もし咬まれても落ち着いた対処をしましょう。

 

セアカゴケグモ

 

セアカゴケグモとその卵嚢の駆除

もし成虫を発見したならば、繁殖されても厄介なのでなるべく駆除するようにしましょう。叩き潰すか、一般的な殺虫剤で駆除することができます。ただしセアカゴケグモは何らかの外的な刺激を受けたときに擬死行為(死んだふり)を行う習性があります。死んだふりに騙されずに確実に仕留めるようにしましょう。

卵嚢の場合は外皮に邪魔されて殺虫剤の効果が薄い場合があります。叩き潰すか焼却するなどして対処してください。

その後は速やかに最寄の警察や保健所に連絡をしてください。殺した死骸や卵嚢を一緒に提出すると話が早くなってよいでしょう。

 

セアカゴケグモは飼育できない

セアカゴケグモのような話題の生き物を、ぜひ自分の手元で飼育したいという人もいるかもしれませんが、ここで忘れてはいけないのが、セアカゴケグモは特定外来生物に指定されている生き物だということ。生体も、その卵も、個人が飼育・保管・運搬することは禁じられています。

特に販売目的で飼育した場合は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金と非常に重たい罪が課せられます。絶対に飼育しようなどとは考えないでください。

 

セアカゴケグモの危険性を訴える動画:

マダニ

マダニ

マダニとは?

マダニは、クモ綱ダニ目マダニ亜目マダニ科の節足動物の総称です。

「ダニ」と聞くと私たちは家の中の畳やカーペットに住む小さな生物を連想しますが、マダニはそれとはまったく別の種類の生き物です。同じダニの仲間には違いありませんが、ダニとマダニは生息地もその生態も全く異なっています。英語でもダニは 「mite」 、マダニは 「tick」と呼び分けがされています。

アレルギーの原因になるダニも十分に人間にとっては厄介な存在ですが、このページではそれ以上に厄介な存在、マダニについて解説していきます。

マダニの通常の大きさ

 

マダニの身体的特徴

マダニはクモに近い節足動物の仲間です。体は顎体部と胴体部のふたつに分かれ、胴体部に4対、計8本の足がついています。前足1対が比較的前方に突き出されているので触角のように見えがちですが、触覚はこれとはまた別に顎体部についています。

マダニはほかのダニに比べて非常に体が大きく、通常時でも2mm~3mm程度はあって肉眼ではっきりと見えます。これは小型のテントウムシやシバンムシぐらいの大きさです。しかしこの大きさはまだ序の口で、驚くのは吸血後の大きさ。宿主の血を吸ってまるで風船のようにパンパンに膨れ上がり、なんとその体重は100倍以上に。その全長は1cmを超えるぐらいにまで大きくなります。

吸血後のマダニとの大きさの比較
↑吸血前と吸血後のマダニの大きさの比較
 

マダニの生活サイクル

マダニは山の中の茂みや草むらに住んでいます。

普段は植物の葉っぱの先などに身を隠して待ち構え、それに触れた動物にくっつきます。このときマダニはノミのようにジャンプしたりはしません。動物が直接植物に触れたときにうまく乗り移るのです。『巨蟲列島』という漫画で巨大なマダニが風を受けて飛ぶような描写がありますが、実際にはそういった行動は取りません(笑)

マダニ
↑葉っぱの先端に待機して宿主を待ち構えるマダニ

 

うまく宿主を見つけ、1週間以上に渡る吸血を済ませたあとは一度宿主の体から外れ、休眠期間と呼ばれる成長と脱皮の時間を自らに設けます。その後成長したマダニは再び宿主を見つけて吸血し、それが終わればまた休眠。この吸血と休眠のサイクルをマダニは生涯で合計3回繰り返します。

3度目の吸血の際に成熟したマダニは交尾を行っています。宿主の体の上で恋愛してイチャイチャするとは何たるふてぶてしさ(笑) なお一部のマダニは単性生殖が可能なため交尾が必要ない種類もいます。

マダニは地上で一度に数百個から数千個の卵を産みます。このとき産卵した母ダニはそのまま死亡。命を次の世代に繋いでその生涯を終えます。卵は1ヶ月から2ヶ月の期間をもって孵化し、すぐに宿主探しの行動を始めていきます。

基本的には以上がマダニのライフサイクルです。冬は落ち葉の下に潜ってサイクルを休むマダニが多いですが、種によっては逆に季節などおかまいなしに年中を通して活動し続けるものもいます。

血を吸って膨れ上がったマダニとマダニの卵
↑吸血後のマダニ(左)と、産卵したマダニ(右)

 

マダニの吸血方法

マダニはハーラー器官と呼ばれる感覚器官を持っていて、これは動物の体温、振動、二酸化炭素、匂いなどを感知する器官で、宿主探しの際にセンサーとして役立ててています。

うまく宿主の体表に乗り移れたマダニはまずその動物の皮膚が薄くて吸血しやすい部分を探します。一般的な哺乳類だと頭部や目・鼻・耳の近くを選ぶことが多いようです。

吸血場所を選んだマダニは鋭い歯で咬みつき、ノコギリのような歯を皮膚の奥に差し込みます。そこから出血してくる血を吸い続けるわけです。しかもその際に唾液をセメントのように固めて接合部を完全に固定。簡単に宿主から離れない状態を作り上げ、それから1週間以上の時間をかけてゆっくりと血を吸い上げていきます。

この長時間の吸血中は同時に体内で摂取した血液の濃縮作業も行っており、その濃度は3倍程度。つまり実際にはマダニが膨らんだ見た目ぶんの3倍の血を吸っていることになります。量にしてだいたい1ml程度。

吸血し終わったマダニは自ら接合部から牙を抜き出し、宿主の体から離れていきます。マダニは基本的にあまり横移動を行わないので、付近の安全な場所に身を隠して休眠期間に入り、またそのすぐ近くで再び宿主の待ち伏せ行動に入ります。

動物に群れで寄生する野生のマダニ
↑血を吸ってパンパンに膨れ上がるマダニ(左)、野生のシカの顔にびっしり寄生するマダニ(右)

 

その他、マダニが動物に大量に寄生している画像(※かなり強烈です。閲覧注意!)
その1 その2 その3 その4

 

人間からみたマダニの危険性

ようやく本題へ。マダニの人間に対しての危険性についてです。

マダニは人間も寄生対象としています。マダニは山の中に限らず、そのへんの公園や河川の草むらにも潜んでいます。ですので山登りをしたり、公園で遊んだりしているうちに知らないうちにマダニに咬まれることがありえます。最初は体が非常に小さいので、どこかで傷を受けたそのカサブタかなぐらいにしか思わないことが多いようです。しかし日にちが経つにつれてそれはどんどん大きくなっていき、そこでマダニの寄生に初めて気がつきます。

ここでやっかいなのが、彼らはセメントのような唾液で体を固定しているという点です。無理に引き抜こうとするとマダニの頭部や差し込まれている牙が体内に残ってしまうのです。マダニを強く掴むとマダニの体液の逆流を招くこともあり、感染症などのリスクが高まってしまいます。無理に引き抜くことは推奨できません。

まず一番確実な取り方は病院にいくことです。ただしメスを入れて切開することになる場合があるのでその覚悟はしておきましょう。

次に自力でなんとかする場合。よくいわれるのは、アルコールをかける、線香の火を近づける、氷で冷やすなどの手段です。嫌がる刺激を与えてマダニが外れるのを期待するやり方。特に線香の火でマダニのお尻に刺激を与える方法は有効なときが多いようです。ただしこれらをやり過ぎるとマダニが外れる前に死んでしまい、結局死骸が丸ごと残ったままになってしまいます。そうなると結局病院へ行くことになりますのでご注意を。

いろんな情報を総合してみると、一番安全で確実性が高いのはアルコールでしょうか。べンゼンやイソジン、もしくは虫除け(DEET成分を含むもの)でも構いません。脱脂綿などに染み込ませてそれをマダニに被せ、しばらく放置します。その後、さらに綿棒などでやさしく突っついて刺激を与えます。マダニにとって「わ、何!?おちおち飯食ってる場合じゃねぇ!」という状況を作り出すのです。そこからは根気勝負、マダニが自らその牙を外すまでいじめ倒します。やりすぎて殺さないように。。。

どうしても外れてくれない場合は、毛抜きピンセットで接合部を軽くつかんで丁寧に引き抜きます。アルコール攻めをした後だと、普通の状態で引き抜くよりもかなり簡単に引き抜くことができるそうです。アルコールで顎の力がなくなっているからでしょうか?

マダニ

ここでうまくマダニを引き抜けたとしても、病院には必ず行くようにしましょう。傷口に牙が残っていないか、また何かの感染症の症状が出ていないか確認はするべきです。後述しますが、大きな病気で命に関わる場合もあります。

 

人間の皮膚に頭を突っ込んでしまうマダニ

 

マダニを媒介にした感染症

1.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

最近媒介が確認されて話題になったSFTSウイルスによるものです。野生下のマダニのウイルス保有率は5~15%程度とみられています(愛媛での調査では6~31%)。嘔吐、下痢、頭痛などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。

日本でも死亡例の報道が数件相次ぎましたが、これは原因が最近解明されたためであり、重症熱性血小板減少症候群は昔から日本にあったとされる病気です。マダニに刺されないための対策はもちろんしたほうがいいですが、これを過剰に恐れる必要はありません。正直言ってマスコミが煽りすぎています。マダニによるSFTS感染が原因とされる患者数は324人で、そのうち61人が亡くなっています(2018/4時点)。気をつけるに越したことはありませんが、気にし過ぎて自然に全く触れないようになるのも考えものです。

 

2.ライム病

ネズミやシカなどが持っている病原体のボレリアが感染することによって起こる病気です。マダニが吸血を始めてから48時間以上が経つと感染リスクが高まるとされています。傷口近くから赤い斑点が現れ、全身の倦怠感、寒気、頭痛、嘔吐、発熱、関節痛などの症状が現れます。欧米では年間に何万人レベルで感染が報告されており、社会問題となっています。最近では歌手のアヴリル・ラヴィーンが、マダニに咬まれたことによりライム病にかかり病床に伏せました。半年近く寝たきりに近い状態になり、彼女はその症状の重さに一時は死も覚悟したそうです。

アヴリル・ラヴィーンがライム病にかかる

 

3.日本紅斑熱

日本紅斑熱リケッチアという病原体の感染によって引き起こされます。症状は風疹に似ていて、発疹や発熱の症状が起こります。毎年50~100人程度の感染が確認されており、いままでに4件の死亡例があります。日本紅斑熱リケッチアを保持したマダニは産卵を行うと、そこから生まれる子供マダニも日本紅斑熱リケッチアを保持した状態になるため、拡大が懸念されています。

 

4.ツツガムシ病

その名のとおりツツガムシに刺されて感染する病気ですが、マダニに咬まれたことによりウィルスが体内に入って発症することもあります。感染してから2週間程度の潜伏期間を経た後、強烈な悪寒と高熱の症状が現れます。ほかには頭痛、筋肉痛、倦怠感が感じられ、さらに皮膚には紅斑や紫斑が見られるようになります。治療を受けずに放置すると脳炎や心不全の合併症にて死に至ることもありえます。もしこれらと類似の症状が現れたときには、マダニやツツガムシからの感染を疑う必要があります。

 

5.ダニ媒介性脳炎

フラビウイルスによって引き起こされる感染症です。潜伏期間は1週間~2週間で、悪寒・高熱・頭痛・嘔吐などインフルエンザに近い症状が現れます。そこから悪化すると、めまいや自律神経失調、歩行困難などかなり重篤な状態になる場合もあります。また回復後も神経不調の症状が長期間に渡って残る可能性があります。

 

マダニに咬まれないための対策

基本的に茂みや草むらにいかなければ良いのですが、ペットの散歩や、キャンプ・登山などのアウトドアは楽しみたいもの。これらを全て生活から排除するのは不可能な話です。しかし最低限でもよいので、マダニのリスクを少しでも下げる心構えだけは持っておきましょう。

アウトドアの際のマダニ対策

1.肌の露出を防ぐ

マダニは基本的には衣服の上から吸血することはできません。長袖の上着や、丈の長いパンツを履いて肌の露出を少なくしましょう。これはダニ以外の虫に対しても効果的です。人間がマダニに咬まれた場合、場所はくるぶし付近のケースが多いようです。できればくるぶしが露出しない長めの靴下を着用するようにしましょう。

 

2.虫除けスプレーを使用する

主に蚊を寄せないために使用されることが多い虫除けスプレーですが、これに含まれるDEET(ディート)という成分はマダニの忌避剤になることがわかっています。虫除けスプレーの効果は大体2時間程度が限界と言われているので、定期的に全身に吹きかけてマダニを寄せ付けないようにしましょう。

 

3.草木にむやみに接触しない

マダニの宿主への唯一の接触方法がこの草木を介するものです。20cm以上の草であればマダニがいる可能性は十分にあります。あと笹には特に注意。マダニは「笹ダニ」と呼ばれるぐらい笹で待ち構えるのが好きです。

 

4.動物が通る道には特に注意する

マダニは宿主から吸血し終わって外れた後、ほとんど移動をしません。つまり日常的に動物が通る道は、マダニが再び待ち構えている可能性が高い場所だと言えます。生い茂った獣道などは最もマダニに注意しなければいけない場所です。

 

5.帰宅後は全身をチェック

万が一刺されてしまった場合でも、発見が早ければそれだけ感染症によるリスクを減らすことができます。屋外でのレジャーなど、マダニが生息していそうな場所から戻った後はいちおう全身を軽くチェックしておきましょう。マダニに刺されても、その唾液に含まれる成分の麻酔効果により自覚がないことがほとんどです。帰宅直後にすぐにシャワーに入れば発見しやすく、刺す前のマダニであれば水で流せることもあるためおすすめです。その際には脱いだ後の衣服にマダニがいないかのチェックもしておくとよいでしょう。

 

ペットをマダニから守る

マダニの危険性から守りたいのは自分の体だけではないはず。大切なペットも例外ではありません。SFTSは人間だけの病気ですが、人間以外でのSFTS発症は稀ですが、代わりにバベシア症などの病気の危険性があります。何より血を吸う虫が愛するペットの体表にくっついている状況が、飼い主としてはいたたまれないことと思います。

ペットへのマダニ対策

 

しかしペットの多くは屋外の散歩を必要としますし、草木に触れないようにしつけることはまず不可能です。飼い主が意識して守ってあげるようにしましょう。

対策の1つ目としては、マダニがつかないように忌避剤でペットを守る方法。有名な忌避剤ではフロントラインというものがあります。これはノミやダニが嫌がる薬剤を動物の表皮に塗布するもので、マダニには約1ヶ月弱程度の効果があります。実際に使用した方の感想を見る限りでは効果が確認できるそうです。しかし薬剤1回ぶんにつき1,000円程度の値段になるので、継続を考えるのであればそこそこの出費は覚悟しなければいけません。

もう1つの対策は、ついてしまったダニを安全に取り外す方法。これについては人間における場合と同様で、マダニの体を圧迫しないように、さらにダニの頭部がちぎれてペットの体に残らないように慎重にピンセットで取り除く必要があります。このときアルコールを併用すると良いでしょう。ウィスキーを使って愛犬のマダニを取り除いた方のブログがあるので参考にすると良いかもしれません。
→ブログ 『ミックス犬(パピヨン×コーギー)@犬マンガ。時々チワワ』

 

マダニ以外の動物にも注意?

2017年7月、SFTSに感染した野良猫に噛まれた50代女性がSFTSに感染して亡くなりました。国内ではマダニ以外の動物を介して感染が確認された初の事例となりました。これまでは犬や猫からのSFTS感染はほぼないとされていましたが、この件を受けて厚生労働省は注意を呼びかけています。

 

最近の国内のマダニに関するニュース

北海道内のマダニから致死率が高い極東型ウイルスが見つかる

マダニが介する感染症のひとつに「ダニ媒介脳炎」があります。2018年5月に北海道大学の好井健太朗准教授の調査により、札幌市内のマダニからダニ媒介脳炎ウイルスが発見されました。それも致死率が高いと言われる極東型で、1995年の道南での発見以来になるとのことです。極東型ウイルスはほかの型にくらべて致死率が非常に高く30%に及ぶこともあり、夏の行楽シーズンに向けて警戒を呼び掛けています。

 
吸血して膨れ上がったマダニの歩行シーン:

 

マダニ対策用アイテム

マダニ用ピンセット

ダニ取り ティックツイスター 2サイズセット
体に取り付いてしまったマダニを外すための専用ピンセット。肌に吸着しているマダニの横から滑り込ませるように挿し込み、そこから数回ピンセットを回すだけで、マダニの頭部や顎部が皮膚に残ってしまうことを避け安全に取り除くことができます。マダニのサイズに合わせてピンセットは2つのサイズの使い分けが可能。本来はペット用として製造されたものですが、人間が使っても問題はありません。

マダニ撃退用スプレーのヤブ蚊マダニジェット

アース製薬 ヤブ蚊マダニジェット 屋外用 480mL
ヤブ蚊(ヒトスジシマカ)とマダニの両方に効果がある駆除スプレーです。ヤブ蚊やマダニが潜んでいそうな庭木や草むらにスプレーすると殺虫効果と忌避効果の両方が望めます。これらの虫が潜んでいそうな場所で屋外作業をするときに、事前に噴射しておくことで刺されるリスクを減らすことができます。水性タイプで植物にも優しい成分を使用しています。

スキンベープ 虫よけスプレー ミストタイプ 爽快シトラスマリンの香り 200ml(約666プッシュ分)

スキンベープ 虫よけスプレー ミストタイプ
総合的に様々な害虫に効果がある虫除けスプレーです。成分にディートを使用しているのでマダニに対しても忌避効果が望めます。ほかにも蚊、ノミ、トコジラミ、イエダニ、サシバエ、ブユ、アブなどへの効果があり、屋外でのレジャーや農作業の際の虫除けに適したスプレーです。約660回プッシュぶんの容量が入っています。

スズメバチ

スズメバチ

スズメバチとは?

スズメバチは、スズメバチ科スズメバチ亜科に属する昆虫のことです。

腹部に強烈な毒針を持っていて人間への攻撃性も非常に高いことから、毎年夏から秋にかけてのスズメバチが活発になる時期には多数の刺傷事故のニュースを耳にします。年間に10~20人程度の方がこのスズメバチによって亡くなっており、これは国内ではクマ、ヘビ、サメなんかより遥かに多い数字です。つまりスズメバチは日本で最も人間にとって危険な生き物と呼んでも過言はありません。

一口に「スズメバチ」といっても様々で、日本だけでも16種類のスズメバチが生息しています。有名なのは世界でも最大種であるオオスズメバチ、都会の生活にも適応していて事故が多いキイロスズメバチあたり。

ほかにもいろんなスズメバチがいてその生態も様々ですが、
このページでは特に刺傷被害件数が多いこの2種をピックアップして解説していきます。

オオスズメバチとキイロスズメバチ
↑オオスズメバチ(左)と、キイロスズメバチ(右)

 

スズメバチの名前の由来

名前の由来は、スズメ並に体が大きいから、巣の外壁の模様がスズメの模様に似ているから、の2つがあります。巣の模様に関してはおそらくキイロスズメバチのものを言っているんでしょう。ほかのスズメバチは全然違った模様の巣を作るものが多いです。

 

スズメバチの身体的特徴

スズメバチは他のハチの仲間に比べると圧倒的に体が大きいです。スズメバチの中でも小型といえるキイロズズメバチでさえ働き蜂は18~25mm、世界最大でもあるオオスズメバチの働き蜂は、なんと27~40mmの大きさになります。さらにいうと女王蜂はこれらの1.2倍程度の大きさ。このサイズの蜂が激しい羽音を鳴らしながら目の前を飛び交っている光景には誰でも恐怖を覚えるでしょう。

体色は蜂全般でおなじみの鮮やかな黄色と黒のコントラスト。これは警告色といって「ほら、俺は毒針を持っている蜂の仲間だぜ、触ると怪我するぜ」という意味を持っていて、相手との無駄な接触を避ける役割を持っています。キイロスズメバチのほうが黄色部分が多いのは種による個性といったところでしょうか。

スズメバチの体の構造

 

スズメバチの繁殖サイクル

女王蜂は春になると冬眠から覚めて、自分のコロニーづくりのために活動を始めます。このとき自分1匹しかいない状態なので、巣作りも餌探しも幼虫の世話も当然全て自分だけでこなします。自分の王国を築き上げるまでは女王も一人前に苦労しているんですね(笑)

育てていた幼虫が働き蜂として立派になるのは初夏。それ以後は女王蜂は巣にこもって産卵のみに専念します。ちなみにここで生まれる働き蜂は全てメスで、ここまでは完全に女社会です。そしてどんどんその数を増やしていって、秋には数百匹の大所帯を形成するようになります。

その頃になって初めてオス蜂と次世代女王蜂が生まれてきます。オス蜂も次世代女王蜂も多数いて、それぞれ巣を旅立って交尾を行い、無事に生き残った次世代女王が冬眠してまた次の年に活動していくことになるわけです。このときオスは冬眠をすることができないので全て死に絶えます。交尾するだけのために生まれてくるオス。幸せなのか不幸せなのかよくわかんないですね(汗)

あと元々の女王蜂、働き蜂も越冬せずに生涯を終えることになります。つまり次世代をになう仲間が飛び立ったあとはコロニーはそのまま滅びるわけです。よく短いはかない命の代名詞としてセミが挙げられますが、蜂だって十分はかないような気がします。

スズメバチの繁殖サイクル

 

スズメバチの巣

スズメバチは種によって様々な場所に巣を構えます。基本的には雨風にさらされない温かい閉鎖空間を好むため、古い樹木や切り株の中の空洞などに作られることが多いです。しかし比較的寒さに強いキイロスズメバチなどは、屋根の下や木の枝に平然と巣をぶら下げたりもします。形状も丸型だったり、閉鎖空間の中で層状になっていたり、とっくり型だったりと様々です。必ず周辺にスズメバチが飛び回っているのでほかの蜂のものと判断がつかないことはないでしょう。

材質は木を削り取って集めたものを唾液で固めて作られています。最初は小さな巣ですが、蜂が増えるにつれてどんどん増築していき、最終的には1メートルを超える10数層の大きなコロニーになることもあります。

前述したとおり、ここまで作り上げられた巣も冬には空き家になります。状態の良い状態で残っていれば切り離して持ち帰ることも可能です。田舎にいくとよくスズメバチの巣を玄関に飾ってたりするのは、こういった空き家を頂戴したものです。

スズメバチの巣
↑キイロスズメバチの巣(左)と、オオスズメバチの巣(右)

 

スズメバチの食事と狩り

スズメバチというと昆虫を襲ってバリバリ食べているイメージがあるかと思いますが、実際はちょっと違っていて、あれは幼虫のための餌を確保するために昆虫を襲っているのです。獲物を肉片を噛みちぎって肉団子にして巣に持ち帰り、幼虫に与えているわけです。

じゃあ成虫は何を食べているのかというと、実は幼虫が口から出す分泌液で栄養を得ています。つまり肉を運んでくる大人と、栄養液を分泌する子で相互に協力し合って生きているのです。大人が子を養うのが当たり前の生物界ではちょっと不思議な関係かもしれません。

しかし液体だけで活動しているとは思えないぐらいにスズメバチの狩りは激しいです。自慢の毒針と強烈なアゴを武器にして獲物に襲い掛かり、コガネムシ、セミ、バッタなどの大型昆虫を積極的に捕獲していきます。ときにはヘビやカエルの死体、哺乳類の死体などからも肉を採取して巣に持ち帰るほど。

そしてその獰猛さが伺えるのは、ほかの蜂の巣を襲うこと。特にミツバチの巣は天然のものであろうが、養蜂所の巣箱であろうが容赦なく襲い、スズメバチ10匹程度で10,000匹クラスのミツバチの巣を滅ぼしてしまいます。そこで大量のミツバチの成虫の死骸、サナギ、蜜を確保するわけです。

ちなみに襲撃する巣の対象は弱い種のものに限らず。オオスズメバチがキイロスズメバチの巣を襲うなんてケースもあります。なんたる弱肉強食っぷりでしょうか。

スズメバチの強靭な顎と毒針
↑強靭なアゴ(左)と、腹部の毒針(右)

 

人間にとってのスズメバチの危険性

ようやく本題へ。獰猛な性格で強烈な毒針を持つスズメバチへの対策です。

①まず近づかないこと
これはどんな危険生物にもいえる当たり前のことです。「そんなこと言われるまでもないわ!」なんて思うかもしれませんが、危険なものには近づかないこと、それが危険を避ける上で当たり前かつ一番大事なことなのです。

まずは蜂の巣がありそうなところに立ち入らないこと。舗装された道路を歩けば絶対安全なんてことはいいませんが、無駄に獣道や茂みに入れば知らず知らずのうちに彼らの巣の近くを歩いてしまうことも。彼らは巣に近づくものに対しての警戒心が非常に強いので、攻撃を受けてしまう可能性が高くなります。特に夏の終わりから秋にかけてはコロニーが一番大規模になっているので
集団攻撃を受ける可能性もあって大変危険です。

また、こちらから接近しない心得も大事ですが、接近させない心得も大事です。スズメバチは食べ物やジュースの甘い匂いに惹かれてやってきます。飲みかけの缶ジュースの中に知らない間にスズメバチが入っていて、唇を刺されたなんて事故も過去に存在します。バーベーキューやピクニックなどでは、長い時間食べ物を放置しない、ジュースなどは蓋の出来る入れ物を選ぶ、などちょっとした心がけでリスクを減らすことができます。

あと意外かもしれませんが香水なんかもNGです。スズメバチの好む匂いは人間が好む匂いと非常に近いらしいです。良い匂いで異性を呼び込むのもいいですが、なにも蜂まで呼び込まなくてもいいと思います。アウトドアのときぐらいは香水は控えましょう。

②スズメバチを発見したら
まず遠距離で発見してスズメバチがこちらを意識していない場合。距離を保ちつつゆっくりとその場を立ち去りましょう。余裕があればスズメバチが飛び去っていく方向もチェック。その先に巣がある可能性が高いです。

次にスズメバチがこちらを意識した飛び方をしている場合。妙にこちらのまわりを徘徊するように飛んだり、こちらを見たまま空中で止まった状態だったり。この場合は自分がスズメバチの巣に接近してしまっている可能性が高いです。さらにカチカチッというアゴを鳴らす警告音が来たらもう完全にイエローゾーン。身をゆっくりとかがめて蜂とは逆のほうへ立ち去ってください。このとき、もし白色の帽子やタオルなどを所持しているなら頭に被ると安全性が高まります。しばらく蜂が後をつけてくることもありますが、刺激さえ与えなければ大丈夫です。

絶対にNGなのは、手で払って攻撃したり、大声を出したりすること。道具を振り回すのもダメです。何かで脅かしたところで、巣を守っている彼らには「逃げる」という選択肢はありません。無駄な刺激を与えれば確実に針を立ててこちらに襲い掛かってきます。

③もしも刺されてしまったら
どんなに対策をしていても不幸な事故で刺されてしまうこともあるでしょう。その毒性による症状と処置の解説をしておきます。

しかしその前に、まず自分の身の安全を確保してください。刺した蜂はまだそばにいませんか?
スズメバチはミツバチと違って何度でも刺します。また、蜂の毒針からは仲間に警戒信号を送るフェロモンも分泌されているので、その場を離れて安全を確保してください。

次に症状。刺された箇所がすぐに大きく腫れあがり、熱を持って激しく痛みます。部位によっては気持ち悪いぐらいにパンパンに腫れあがってしまうことも。単体の蜂による毒だけで死亡という例はほとんどありませんが、集団に刺されて傷が数十箇所に登る場合やアナフィラキシーショックを起こした場合は死に至ることもあります。実際に命を落としている方が毎年20人近くいます。

毒針とスズメバチに刺されてしまった人の手の写真
↑スズメバチの毒針(左)と、刺されて腫れあがった手の比較(右)

 

処置としては、刺された箇所を指でつまんで毒を外部に押し出してください。これが早ければ体内に回る毒の量を最小限に抑えることができます。このとき口で吸い出すのは危険ですのでやらないでください。口の中の自分では自覚のないような小さな傷からでも毒が体内に侵入する場合があります。

そして冷たい流水で傷口を洗い流しながら冷やします。所持しているなら抗ヒスタミン軟膏、ステロイド剤、タンニン酸水を塗布。これで自分でできる処置は終了です。あとはすみやかに病院へ行って診断を受けてください。

楽しい行楽の最中などに刺された場合、みんなに迷惑をかけたくないという思いで無理をしがちですが、すぐに引き返して病院で診てもらい、帰宅して静養してください。そのまま帰らずに遊んでアナフィラキシーショックでも起こしたら迷惑どころの騒ぎではなくなってしまいます。

 

④アナフィラシキーショックについて
蜂に刺されて死亡した件のほとんどはこれによるものです。簡単に言うと、毒に対して免疫が過剰に反応してしまって激しいアレルギー反応が出てしまうというもの。一度スズメバチに刺されたことがある人がもう一度刺されたときにまれに起こる症状です。めまい、嘔吐、下痢、呼吸困難、全身じんましん、顔面蒼白などの症状を引き起こして最悪の場合は死に至ります。

可能性は低いですが、これらの症状が出ていないかは必ず気にしてください。早い場合は刺されて30分後ぐらいから兆候が見られます。兆候が見えるのが早ければ早いほど危険です。もし怪しいと思ったときには迷わず救急車を呼びましょう。

スズメバチ

 

スズメバチの巣を駆除する

オオスズメバチは山間部の土の中に巣を作ることがほとんどですが、キイロスズメバチに関しては民家の屋根や軒下に巣を作ることもあります。自宅近辺でスズメバチを見かけることが増えたのであれば、近くに巣が作られていないか警戒しましょう。もし巣が近くにあった場合は早急に駆除する必要があります(人が立ち入らない場所であるならハチ達がいなくなる冬まで待つのも手です)。

まずは役所に連絡しましょう。対応には地域差があるのですが、無料で駆除してくれる場合があります。無料駆除を実施していない場合も、割安な駆除業者を紹介してくれたり、費用の補助金が出たりすることがあります。

また自力で駆除するという選択肢もあります。ただし、これは巣がまだ小型の段階であり、さらにしっかりした準備がある場合のみの選択肢です。無計画な自力駆除は自分だけでなく近隣の住民を危険に晒すことがあります。「ちょっとやってみようか」と軽い気持ちで挑むことはお薦めしません。

 

●自力でスズメバチの巣を駆除する方法
(※自己責任でお願いします。また15センチを超えるような大きさの巣に自力挑戦するのは絶対にお薦めしません)

まずはスズメバチ用の殺虫スプレーを2本用意します。一般的な殺虫剤でも効果はあるのですが、スズメバチに特化したスプレーは射程距離が格段に長いです。自分自身の安全のためにスズメバチ用のものを用意しましょう。

まずは昼間のうちに、巣の形状と出入り口の位置、周りの障害物などを確認しておきます。スプレーで巣を攻撃するのであれば2メートル以内の距離までは近づきたいところ。物理的にそれが無理であればあきらめたほうが賢明です。

行動を起こすのは夜間。ハチは全て巣の中に帰っており、夜間はその活動能力も低下してるのが理由です。またスズメバチは気温が18度以下だと行動が鈍くなるので寒い日であればあるほど良いです。スプレーを使うため風もできるだけ無風の日を選びましょう。

格好はできる限り肌の露出をなくし、厚手のものを着用しましょう。香水や整髪料はハチが好む匂いなのでNGです。静かにスズメバチの巣に忍び寄り、巣の出入り口に対して真っ直ぐ攻撃できる位置を目指します。

さて、攻撃のときです。スプレーを1本は巣の中に充満させる目的で巣の出入り口に向けて、もう1本は巣全体に満遍なくかかるように使用します。ハチ用のジェットスプレーは連続噴出時間が1分以下のものがほとんどですが、全て使い切る勢いでいきましょう。噴出が終わったら急いで安全な場所に逃げてください。スプレー中に1匹でも巣の外に飛び立ったハチがいたり、どこかにハチの羽音を感じたりしたときも同様に逃げてください。とにかく身の安全が一番大事。

あとは夜が明けてから巣の様子を見に行ってみましょう。3日間程度、何度か様子を見に行って1度もハチが見つからなければOK。念のために遠くから巣に刺激を与えてみて、それでもハチが現れなければ撲滅完了です。巣は長い棒や内側にゴミ袋をかけたタモなどで落として、廃棄しましょう。

スズメバチの巣

 

スズメバチに関して豆知識

スズメバチの生態について豆知識です。大した内容ではないですが。

①刺された傷に小便をかけるといいってのはデマ!
昔から蜂に限らず、虫刺されには小便をかけるとよいという話を聞きます。尿に含まれるアンモニアが毒の成分に働きかけるとのことですが、毒液の分析がしっかりされていない頃に流行ってしまった全くのデタラメです。そもそも小便にはアンモニアそのものはほとんど含まれておらず、アンモニアを得たければ時間をおいて小便中の尿素が細菌に分解されなければいけません。

 

②蜂は黒い色を攻撃してくる
これは本当です。白色が安全って意味ではありませんが、黒色が危険なのは確かです。蜂が黒色に対して何を思って攻撃性を高めるのか理由ははっきりしていません。天敵であるクマの体色が黒であるからだとか、哺乳類の弱点である目鼻の色だからだとか、説はいろいろあるみたいですが。とにかく薄い色の帽子や服などで露出を少なくすればハチの攻撃性を少しは抑えられるってことは間違いないそうです(※白い服でも刺されるときは刺されます)。

 

③「蜂は夜なら安全!」は信用しすぎないで
「蜂は夜目が利かないから夜に巣を駆除すれば安全!」 そういって素人が蜂の巣を駆除しようとしたのを止めたことがあります。スズメバチが夜目が利かない?あんな真っ暗な巣穴の中に住んでいる生き物に対して、どうしてそういうことを言えるのか(笑)そりゃあ、明るい昼間よりは見えないだろうし行動も活発ではないです。しかしそれだけの話。ハチは暗くてもそれなりに飛びます。
昼間より危険性は下げられますが、絶対に安全とはいえませんのでご注意を。

 

④スズメバチとミツバチの戦争
どちらかというとミツバチの生態の話になりますが。スズメバチがミツバチの巣を襲うことは前述しましたが、実はミツバチもやられっぱなしではありません。あのオオスズメバチですらミツバチに撃退されることがあるのです。

襲ってきたスズメバチに対してミツバチは決死の覚悟で噛み付いていきます。やられてもやられても次々にくらいついて包囲していき、最終的には何十匹ものミツバチで1匹のスズメバチを囲んで蜂球と呼ばれる球体を作ります。スズメバチの動きを封じた状態でミツバチ達は羽や体を激しく揺らして摩擦熱を産み出し、球体内部を温めます。この球体の中の温度は48℃にまで上昇するらしく、スズメバチの生存限界の46℃を超えているため、これをされたスズメバチは成す術もなく死んでしまいます。50℃まで生きられるミツバチがスズメバチとの戦いの歴史の中で編み出した集団戦法。

これはニホンミツバチにしかできない戦術です。巣を襲ってくる獰猛なスズメバチが存在しない土地で育ったセイヨウミツバチはこの蜂球戦術を知らず、日本のスズメバチの前にただ滅ぼされるだけ。いずれセイヨウミツバチも自分達の生き残りのためにこの戦術を編み出したりするんでしょうか?先にスズメバチがニホンミツバチの蜂球戦術の破り方を編み出すかもしれませんね。生物の進化って本当に面白いです。

蜂球

 

スズメバチVSミツバチの攻防戦:

 

驚異の外来種、ツマアカスズメバチ

本来は中国や台湾に生息していたスズメバチの一種、ツマアカスズメバチ。2013年に対馬で繁殖が確認され、さらには2015年には北九州でその姿が確認されました。体長は2cm程度と日本のスズメバチにくらべると小ぶりですが、気性が荒く、海外ではその毒針で命を落とした人もいます。また繁殖能力が極めて高く、同じ生息域のミツバチを狩り尽くしてしまう恐れがあるため、行政は対策を進めています。

ツマアカスズメバチ