爬虫類

ヤマガカシ

ヤマカガシ

ヤマカガシとは?

ヤマカガシは、爬虫綱有鱗目ナミヘビ科ヤマカガシ属のヘビの仲間です。

日本国内では北海道や小笠原諸島以外ならどこにでも住んでいて、アオダイショウやシマヘビと並ぶ、生活の中で比較的よく見られる日本の代表的なヘビの一種です。近年まで全く毒蛇だと認識されていなかったという、なんとも稀な経歴を持っています。

ヤマカガシ

 

ヤマカガシの身体的特徴

ヤマカガシは、全長が70cm~150cm程度の大きさになります。日本に生息するヘビとしては中型サイズでしょうか。

鱗はキール(鱗一枚一枚についている隆起)が強く、触るとかなりザラザラした手触りを感じることができます。これはヤマカガシが生活の中で水中を泳ぐ機会が多く、うまく泳ぐためにそのように進化したのではないかと考えられています。

よく『毒蛇といえば頭が三角形』なんて言葉がありますが、ヤマカガシの頭部は、マムシやハブのように三角形ではなく比較的細い丸型をしています。目がクリッとしていて愛嬌がある顔をしているのも特徴のひとつ。ペットとしてもなかなか人気があるようです(※飼育には許可が必要)。

首周りには黄色いリング状の模様がついており、褐色地に黒・黄色・赤が交互に重なった鮮やかな体色をしています。とくに若い個体はこの模様が鮮やかである傾向が強いようです。

しかしこの模様は個体差・地域差が非常に多く、全体的に黒褐色が強かったり、鱗に赤い部分が全くなかったり、黄色のリング模様さえなかったりと、ときに他のヘビとの判別が非常に難しい場合があります。この場合は頭部の鱗の粗さや鱗のキールの強さなどで見分けるのがベター(※判別に自信がないときは触ろうと思わないでください)。

ヤマカガシの身体的特徴。全然色が違っていてもどちらもヤマカガシ
↑(左)と(右)で全然色が違いますが、どちらもヤマカガシ

 

ヤマカガシの住みかと主食

ヤマカガシは平野部、もしくは山間部の低い標高地域の水場に住んでいます。人間の生活圏に近い場所でいえば河川敷や田んぼなど。都心部ではなかなか見かけられませんが、田舎では普通に見かけるメジャーなヘビです。

水場に住んでいる理由は、好む餌がカエルや小型魚類であるためです。オタマジャクシも食べます。ほかのヘビと違ってあまりネズミなどは狙わないようです。あ、鳥の卵は食べるときがあるそうですが。

ヤマカガシの食事の大きな特徴は、毒を持っているヒキガエルさえ食べるということ。マムシやハブのような攻撃性の強いヘビでさえヒキガエルは避けるというのに、なんとヤマカガシは逆に好んでヒキガエルを狙う傾向にあります。しかもそのヒキガエルの毒を体内で取り込んで、自分の毒牙用の毒に使用するというから驚き(実際、ヒキガエルが生息しない地域のヤマカガシは毒を持っていないそうです)。

あと普通のヘビは獲物を頭から食べることが多いのですが、ヤマカガシは何故か獲物をお尻から食べることが多いようです。確かな理由はあきらかになっていません。食べられているカエルには気の毒ですがヤマカガシがカエルを飲み込んでいる途中の状態は、全く新しい生物みたいに見えて、見ため的にはちょっと面白いことになっています。

大きなヒキガエルを丸呑みにする途中のヤマカガシ
↑大きなヒキガエルを丸呑みにする途中のヤマカガシ

 

逆に天敵になるのは、人間、猛禽類、イタチ、テン、タヌキ、大型のヘビなどです。特に生息域が重なるシマヘビやアオダイショウなどの大型ヘビはヤマカガシにとっては脅威で、大型ヘビが多い地域ではヤマカガシは少ないと言われています。

アオダイショウVSヤマカガシ
↑大きなアオダイショウに捕食されるヤマカガシ

 

ヤマカガシの生活サイクルと繁殖

ヤマカガシは明るい時間に活動することが多く、夜間はあまり積極的には動きません。冬場は土の下などで冬眠をし、寿命は自然環境下では5年程度までと考えられています。

ヤマカガシは基本的に冬眠直前の秋頃に交尾をします。秋に交尾の機会に恵まれなかった個体は、冬眠から覚めた春先に交尾を行う場合もあります。そして妊娠したメスは夏に10~20個程度の卵を産卵します。

産卵場所は石や落ち葉などの下で、卵が孵化するのは30日~50日後。幼蛇は最初は20センチ程度ですが、3年ほどかけて約1メートルぐらいの大きさまで育ちます。

河原にいるヤマカガシ(左)、飼育下で産卵されたヤマカガシの卵(右)
↑河原にいるヤマカガシ(左)、飼育下で産卵されたヤマカガシの卵(右)

 

ヤマカガシの毒

ヤマカガシは毒を持つ部位が2箇所あります。毒牙と、首の付け根あたりの表皮です。

まずは毒牙のほうですが、実はこれは最近までその存在があまり認知されていませんでした。一般的な毒蛇は大抵、口の中で一番前にある大きな牙に毒腺がありますが、ヤマカガシは奥歯のみに毒腺があります。普通に人間に噛み付いたときにこれが皮膚に食い込むことはほとんどないため、ずっとヤマカガシに毒牙はないと思われていました。

その毒牙の知名度を上げたのは1972年の中学生の死亡事故です。指のような細い部位であればヤマカガシの毒牙が届いてしまうケースがあり、それ以降は30件以上の重症例と4件の死亡例があります。

ヤマカガシの毒は、マムシやハブと同じで出血毒です。毒牙によって毒を注入される危険性はほかのヘビよりも少ないものの、その毒性の強さは実は国内最強で、マムシの3倍とまで言われています。

毒が注入されても、しばらくは表面的な症状は出てきません。マムシと違って咬傷部は腫れませんし、ジンジンとくる熱い痛みもほとんどありません。しかし毒が体内を回り始めると、血管内の血小板に異常をきたして体内出血が起こります。全身に皮下出血、歯茎出血、内臓出血、腎機能障害、血便、血尿などが起こり、最悪の場合は死に至るケースがあります。

しかも困ったことにヤマカガシの血清は限られた場所にしかないため、処置が後手に回ってしまうことが多いです。血清が手に入らない場合は輸血や透析処置をすることになりますが、
それらは血清投与ほどの大きな効果は得られないのです。

ヤマカガシの牙と骨

 

次に、首の付け根あたりの表皮にある毒腺のほう。ちょうどこれは体色の中でも一番鮮やかな部分にあたります。派手な部分をあえて見せることで『自分は毒を持った生き物である』ことをアピールするのは毒を持つ動物ではよくあることで、自然界では常識になっていますね。

実際、ヤマカガシは威嚇の際にはコブラのようにこの部分を平たく広げて、なんと相手に背中を向けてこれをアピールします。ヘビの威嚇としてはかなり特殊な部類。普通のヘビの威嚇は『咬んでやるぞ!』ですが、ヤマカガシの場合は『毒あるぞ!』なわけです(笑)

この毒は、ヤマカガシ自身が力を込めることで液状の状態で多少の距離を飛ばすことができます。肌に付着するぐらいではとくに影響はありませんが目に入ったりすると、結膜炎や角膜混濁、最悪失明してしまう危険もあります。

イタチなどがヤマカガシを狙うときに誤ってこの毒腺部分に噛み付いてしまい、返り討ちにあって死んでしまうケースもあるため、ペットをヤマカガシがいそうな環境に連れて行くときは注意が必要です。

ヤマカガシの毒

 

ヤマカガシに咬まれないために

ここまでヤマカガシの毒の恐ろしさについて説明してきましたが、執拗に恐れすぎる必要は全くありません。この50年でヤマカガシによる死亡事故は5件程度。交通事故で死ぬ確率のほうがよっぽど高いぐらいです。

ヤマカガシは臆病な性格をしていて人間を見つけるとすぐに逃げていくこと、危険が迫っても積極的に咬みついてこないこと、咬まれてもそのほとんどのケースで毒牙が皮下にまで届くことがないこと、これらを考えるとヤマカガシの危険性というのは非常に低いといえます。

ただし、絶対に最悪の事故が起こらないとは限りません。それを避けるためのちょっとした心構えだけここで記述しておきます。

 

1.ヤマカガシがいそうな場所では警戒心を持つ

前述したとおり、ヤマカガシは水場にいます。田んぼや河川敷でヤマカガシに遭遇する可能性は十分にあります。

基本的には出会ってもヤマカガシのほうから逃げていくので問題ないのですが、怖いのは、誤って不意にヤマカガシを踏んでしまったときや、何気なくふと手を置いたところにヤマカガシがいたとき。この場合は咬まれてしまう可能性が極めて高いです。

「そこにヤマカガシがいるかもしれない」という心構えだけは持っておきましょう。これはマムシやハブに咬まれないための認識にも繋がります。

 

2.ヤマカガシで遊ばない

ヤマカガシは滅多に人を咬みません。子供の頃に普通に素手でヤマカガシを掴んで遊んでいた人も多かったかと思います。しかし興味本位でちょっと捕まえてみようなんて思わないでください。

ちょっとした遊び心で咬まれて大事故になるのは損です。実際これまでに亡くなったのは、遊び心で自分からヤマカガシに接触した人ばかりです。

ヤマカガシに咬まれないための対策

 

3.ヤマカガシに咬まれてしまったら

まず何より大事なのは落ち着くことです。パニックになると冷静な判断ができませんし、血流が早くなって毒が早く回ります。とにかく落ち着きましょう。

最初に困るのは『毒が注入されたかどうか』の判断。仮に毒が注入されていたとしても、ヤマカガシの毒は自覚症状が出るまでには時間がかかります。しかし自覚症状が出てから処置をしたのでは、最終的に重症化する危険性が高まってしまいます。『咬まれたけど平気そうだ』なんて考えずに、毒が入ってしまったとして行動するべきです。

まずは咬まれたヘビの確認。咬まれて振り払ったときにはすでにヘビは逃げ始めていると思われるので難しいかもしれませんが、もしそのヘビがヤマカガシ(もしくはマムシ)であるとはっきり判断できたなら、その後の処置が非常にスピーディーになります。

次に毒の吸引。吸引器を持っていればそれを使いたいところですが、まず携帯していることはないでしょう。しかしヤマカガシの毒は、素人が口を使って吸い出すことはあまり推奨できません。流水で洗いながら血を絞り出すやり方で、少しでも毒を体外に追い出しましょう。後の症状が軽くなります。

さらに咬まれた場所から10cmほど心臓側の位置をタオルなどで強く縛ります。完全に血流を止めてしまうのかえって良くないので、指1本入るぐらいの余裕を持って縛りましょう。

そして病院へ向かってください。毒を受けているかどうかは病院で判断してもらえばいいことです。面倒くさがったり、恥ずかしがったりして判断を誤って命を落とすのは非常につまらないことです。

もし不幸にもヤマカガシの毒の症状がはっきり現れてしまった場合は、医者に相談の上でジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)に連絡してください。ヤマカガシの血清を常備している施設は日本でここだけです。必要とあらばヤマカガシの血清を輸送してくれます。
→ジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)HP

ヤマカガシ

 
カエルを丸呑みにしている最中のヤマカガシの動画:

マムシ

マムシ

マムシとは?

マムシは、クサリヘビ科マムシ属に属するヘビの一種です。正式な標準和名はニホンマムシ。

気温変化には比較的強いほうで、日本では北海道から沖縄まで全ての地域に生息しています。平野部から山間部の水場が近い場所を好み、雑木林、落ち葉の下、山道のU字側溝、川辺の岩の隙間などでよく見かけることができます。

マムシ

 

マムシの身体的特徴

マムシの体長は40cm~100cmぐらい。頭は先端が尖っていて三角形に近い形になっています(若干個体差はありますが)。首が細い割には胴体はかなり太くて寸胴で、ヘビとしては特徴的なシルエットをしています。そしてその胴体の太さの割りにお尻に近づくと急に体が細くなっているのも大きな特徴。

模様は銭型の楕円形の斑紋が確認できます。これはよくメガネ模様と例えられます。個人的にはおっぱい模様のほうがピンとくるような気がするんですが(笑)

マムシはその牙に強力な毒を持っています。それは上あごの牙の先端部分にあって、獲物に噛み付いたときにその毒を相手の体内に注入します。

マムシ

 
この毒は出血毒で、蛋白質分解酵素によって血液凝固を阻害して細胞を破壊するタイプのものです。厳密には神経毒も含まれていますが、その量は小量なためにマムシの場合はほぼ出血毒だと思って構いません。咬まれた部分はすぐに腫れ上がり、場合によっては紫色に変色します。ほおっておくと意識障害、視力障害に発展して危険な状態になりかねませんので、もし咬まれてしまった場合は必ず病院へ行きましょう。

報告されているだけで日本国内で毎年3000件程度のマムシ被害があり、そのうち10人程度の人が命を落としています。つまり致死率は1%以下です。しかも命を落としたケースのほとんどは、マムシの毒を甘くみてまともな処置をしなかったことが原因。ちゃんと適切な処置さえすれば、まず命を落とすことはありません。なのでマムシに咬まれたからといって必要以上にパニックにならないようにしましょう。

マムシの毒が

 

マムシの主食と天敵

マムシの食事は動物性です。頭部に備わった体温感知器官を使って獲物を探し、ネズミなどの小型哺乳類、カエル、トカゲなどを食べています。捕食方法はもちろん丸呑み。元々胴体が太いマムシですが、丸呑みの最中はさらに体が大きく膨れ上がるため、一昔前のツチノコ目撃情報の大半は、この状態のマムシが正体なのではないかと言われています。

逆にマムシを捕食するのは、タカ、フクロウ、キツネ、ヒキガエルなど。しかしこれらの動物も毒蛇であるマムシの捕食にはそれほど積極的ではなく、これといった明確な天敵は存在しません。

マムシの天敵

 

マムシの生活・繁殖サイクル

マムシは基本的には夜行性で、夜になると積極的に獲物を探して徘徊します。逆に昼間は藪の中や岩場の隙間などの涼しく暗い場所に身を隠しています。水辺を好むだけあって泳ぎはうまく、積極的に水の中にも入っていく傾向があります。

マムシは夏に交尾を行い、それから約1年間の妊娠期間を経て、だいたい5~15匹程度の幼蛇を産みます。あ、マムシは蛇には珍しく卵胎生なので、体内で卵を返して直接子供を総排出孔から出産します。

妊娠したメスは栄養を多く必要とするために、昼夜問わずで餌を探して徘徊するようになります。また自らの代謝を上げて子供の発育を良くするために日向ぼっこも積極的に行います。普段は夜行性でおとなしいマムシですが、このときばかりは人間と接触する機会が多くなってしまい、咬傷事故などが起きやすくなっています。

またマムシは脱皮をして古い皮を脱ぎ捨てて成長します。幼少時は年に4回程度、成熟したあとは年に1回程度のペースで脱皮します。ただしこれは環境に大きく作用されるようで、地域や個体によってその回数は前後するようです。

マムシが脱皮した後の皮
↑マムシが脱皮したあとの皮の残骸

 

マムシに咬まれないために

キャンプ、渓流釣り、山に近い地域での農作業など、私たちがマムシに遭遇する機会は少なくありません。防ぎようのない不意の事故というのはありますが、その確率はしっかり下げたいところです。

 

1.マムシの住みかを理解する

マムシは明るい時間は、基本的に藪の中や岩場の影などに潜むようにじっとしています。そういった場所に立ち入るときは 『もしかしたらマムシがいるかもしれない』 という、『もしかしたら』の気持ちを持って行動するようにしましょう。

よく聞く事故の例は、昆虫を追いかけたり、キノコを探したりで足元を確認しないままで木の根元に近づいた、渓流釣りで沢を移動中に岩の隙間に不用意に手をかけた、キャンプ場の石垣に何気なく寄りかかった、倒木を足元の確認なく不用意にまたいだ、などがあります。マムシが潜んでいそうな場所では、常に『もしかしたら』の気持ちを大事に。

 

2.咬まれないような格好をする

なるべくマムシがいる可能性がある場所にいくときには肌の露出を避けましょう。マムシは毒牙が比較的短いため、たとえTシャツレベルの生地の厚さでもないよりはマシです。地肌をそのまま咬まれることに比べれば、毒が注入されるリスクとその注入量は大幅に軽減されます。ズボンも七分丈などは避けて、厚手のデニムが理想的。農作業であれば長靴などを着用すると安全です。

 

3.もし家屋に侵入されるようであれば

マムシは基本的に人の気配を嫌うので、人家には滅多に入ってきません。しかし好物のネズミを追いかけて事故的に屋内に侵入してしまうケースは考えられます。

まずはマムシの侵入路となる可能性のある隙間を埋めましょう。そしてとにかくネズミを減らすこと。ヘビ用の忌避剤も市販されていますが、効果はいまひとつのものが多いようです。ヘビの侵入阻止に頑張るよりは、ヘビが侵入する理由になるネズミを減らすことに頑張るほうが効率がいいです。薬剤やトラップなどを使って、まずはネズミの対策から施していきましょう。

マムシに咬まれてしまったら

 

もしマムシに咬まれてしまったら

マムシに咬まれると、上顎の牙×2本、下顎の牙×2本で、最大4つの穴状の傷がつきます。あくまで最大4つです。たまたま牙が食い込まなくて、傷穴が1~3個だけなんてこともよくあります。

咬まれた直後は針で突かれたような痛みで、その後は毒の作用によってじんじんとした痛みが強くなってきます。咬まれた場所より心臓側10センチの位置で、タオルやヒモを結んで圧迫しましょう。ただし強く縛りすぎて血行を完全に止めるのはかえってマズイので、指1本入る程度に縛ること。

もし毒を吸い出す専用器具を所持しているなら、それを使って毒を少しでも吸い出してください。よく耳にする口で直接毒を吸い出す方法は、口の中の傷から毒が侵入する可能性があるのでオススメできません。口の中にはできかけの口内炎など、自覚のない傷がある場合が多いです。

そしてすぐに病院へ向かってください。必ず病院へ行ってください。レジャーの最中であろうが、周りの人に迷惑がかかろうが、それは仕方のないことです。前述しましたが、死亡例のほとんどは病院に行かなかったパターンです。たとえ咬まれた直後は大した症状が出ていなくても、いずれ時間とともに毒がまわり、全身に異常をきたします。そうなってからでは手遅れになります。

また、このとき無駄に焦らないこと。マムシに咬まれたからといってその直後に死んでしまうなんてことはありません。パニックになって暴れたりすると毒が体内を早く回ってしまい、かえって状況を悪化させることになりかねません。

ただし、咬まれた場所が救急車の到着に時間がかかるような場所だった場合は、自らの足で動いて助けを求めにいくことは構いません。安静でいるのに越したことはないのですが、もし受診までに時間がかかり過ぎるようならそちらのほうが症状が重くなりリスクが高まってしまいます。

マムシに咬まれてしまった場合の腫れ方
↑マムシの顔のアップ(左)と、咬まれて腫れ上がった腕の比較(右)

 
野生のマムシの動画:

ハブ

ハブ

ハブとは?

ハブは、クサリヘビ科ハブ属のヘビの総称です。マムシと並び日本ではとても有名な毒蛇。

 

ハブの種類

日本国内ではハブの仲間は沖縄のみに生息していて、ホンハブ、ヒメハブ、サキシマハブ、タイワンハブの4種類が確認されています。

 

1.ホンハブ

一番分布が広く、個体数も多いハブ。全長は大型になると2メートルを越える場合もあり、毒が強い。白~黄色地で、黒い細かい網目模様が特徴。特にネズミを好んで食べる。

 

2.サキシマハブ

八重島列島のみに住んでいたが、最近は本当南部や宮古島でも発見されている。 大きさは1メートル程度まで。体色は茶色く、鎖のような模様が入っている。毒は弱め。

 

3.ヒメハブ

全長はせいぜい80センチで小さいが、極端に胴体が太い。暗褐色で斑紋は比較的薄い。他の種よりも水辺を好み、カエルを主食にしている。ハブとしては毒性は最も低く、大きな事故になった前例はまだない。

 

4.タイワンハブ

元々は中国大陸や台湾に生息していた外来種だが、人により持ち込まれて本島の東部にて繁殖。最大1.2メートル程度で、灰褐色に黒い鎖の模様が入っている。牙が細長い上に毒も強いので、人間にとっては危険な種。ただし個体数は非常に少ない。ほかの種よりは木の上での生活を好む。

沖縄に生息するハブの種類
↑ハブ(左上)と、サキシマハブ(右上)、ヒメハブ(左下)、タイワンハブ(右下)

 

このページでは個体数が多くハブの咬傷事故の大半を占めるホンハブについて解説していきます。以下ここではホンハブのことをハブと称します。

 

ハブの身体的特徴

ハブは、全長は100cm~150cm、体重は1kg~2kg程度の大きさになります。ただし環境によりその大きさにはかなり違いがあり、2011年には全長250cm、体重3kgの個体が捕獲されてニュースになりました。天敵が少ない場所では大型の個体が育ちやすい傾向にあるようです。

ただし近年では小遣い目当てでハブを捕獲する人が多いため、駆除率が急速に高まり、あまり大きな個体は出現しにくくなったかもしれません(※捕獲すると県や市町村が報奨金として1匹4000円支払ってくれる)。

体色はお腹のほうが白~黄色で、黒い網目模様がついています。ウロコはほかのヘビに比べると非常に目が細かく、判別の際にはひとつの目安になります。

頭部はマムシと同じく鼻先が尖った三角形で、その槍のような形状から海外ではランス・ヘッド・シャークとも呼ばれています。目と鼻の間にあるピットという感覚器官は獲物の熱を感知することができ、餌を探す際にはレーダーのひとつとして使用して効率よく狩りをしています。

 

ハブの性格と攻撃性

ヘビというと比較的臆病な種類が多いのですが、ハブはどちらかというと気性が荒くて好戦的なほうです。もちろん積極的にハブが近寄ってくるようなことはありませんが、不用意に間合いに入ってしまうと、高い確率でその牙で攻撃を喰らうことになってしまいます。飛びつく間合いは全長の2/3程度でジャンプはしません。なので一般的には1.5メートルの距離をとれば安全だと言われています。

 

ハブの毒

ハブの特徴として見逃せないのが、その強烈な毒です。鋭い牙の先には毒腺があり、相手に噛み付いた際に直接その毒を体内に流し込みます。

毒の種類はマムシと同じく出血毒で、細胞を破壊して焼けるような強い痛みを相手に与えます。毒そのものの強さはマムシより弱いと言われていますが、注入される毒の量がハブのほうが多いため、結果的にはマムシに咬まれた場合よりも深刻な症状が出るケースが多くみられます。

血清が普及していない時代は、マムシの毒で亡くなる人の数は相当なものだったようです。1960~1970年ごろは毎年10人近くの人間の命がマムシによって失われていました。それだけ毒性が強く、危険なヘビだったということです。

近年では血清の普及やインフラの充実により、ハブによって命を失うケースはほぼなくなりました。1980年以降で死亡者はたった4人で、2000年以降は1人の死亡者も出ていません。しかし命こそ失わないもの、血清の投与が遅れた場合はその部位が壊死してしまったり、最悪切断するはめになってしまったりと、危険性の高い毒蛇であることは忘れてはいけません。

【追記】
2014年4月に男性が咬まれて死亡する事件が発生。奄美群島の加計呂麻島にて51歳の男性が手を咬まれ、1時間半後に血清治療をしましたが、その2時間後に死亡しました。

ハブの生態

 

ハブの生活サイクルと繁殖

沖縄の温かい気候もあってか、ハブは冬眠をせずに一年中活動を続けています。基本的に夜行性であるため、昼間はほとんど見かけることはありません。茂みの中や、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中などでじっとしています。

夜になると餌を求めて付近を徘徊します。行動範囲は一晩で約100メートル程度。

春頃にオスはメスを探して交尾を行います。1匹のメスを巡って複数のオスが巻き付き合いながら争うことも。無事に交尾に成功すると、メスは夏に卵を5個~15個程度出産します。そのメスが大きな体格をしていれば、それだけ多くの卵を一度に産むようです。

卵は一ヶ月半ぐらいで孵化し、30~40cm程度の幼蛇が誕生します。そして脱皮を繰り返して成長して、だいたい3年程度で1メートルを超す大きさになります。

ハブの大きさと頭部の様子

 

ハブの主食

ハブは肉食性です。普段はネズミ、トカゲ、カエルなどを食べていますが、大型の個体になるとなんとウサギやハト、ネコを食べた例も。

その中でもやはりネズミが一番の好物で、ハブの食事のほとんどはネズミであると考えられています。そのためネズミを追って家屋に侵入してしまうこともあり、人間に対しての咬傷事故の原因にもなっています。

ハブの主食

 

ハブといえばマングース

ハブといえば連想するのがマングースですが、マングースは元々1910年にインドから、ハブ駆除を期待して人間によって沖縄に持ち込まれたものです。

しかし夜行性であるハブと昼間に活動するマングースが遭遇することはほとんどなく、仮に出会ったとしてもマングースは強敵であるハブを避けて、狙いやすいヤンバルクイナやアミノクロウサギなどの天然記念物ばかり食べてしまうという皮肉な結果に。マングース投入作戦は、史上最悪レベルの失敗作戦であったと言わざるを得ないでしょう。ハブよりもマングースのほうが駆除の対象になっている現状はとても滑稽ですね。

一昔前は見世物で「ハブVSマングース」なんてものがやっていましたが、動物愛護上の問題から今では実施されていません。コブラさえも倒すマングースがハブに負けることはほとんどなかったようですが、前述したとおり、密室に閉じ込めでもしない限りマングースがハブを積極的に攻撃することはありません。「ハブVSマングース」というタイトルこそ知名度が高いですが、これは自然界ではありえない、人工的に作られた対決だったわけです。彼らは実はライバルでもなんでもなかったのです(笑)

ハブVSマングース

 

ハブに咬まれないために

血清が普及しているとはいえ、ハブが危険な生き物である事実は変わりません。沖縄に住むにしても、旅行に行くにしても、咬まれないための心構えだけは常に持っておきたいものです。

 

1.ハブのすみかに近寄らない

ハブは明るい時間は、茂みの中、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中でじっとしています。樹木の空洞や、放置されたゴミや木材の下、サトウキビなどの農作物の根元にいるケースもあります。そういった場所に不用意に近づかないようにしましょう。特に注意したいのは沖縄県内に非常に多い石垣。生活圏に近いうえにハブにとっては格好の隠れ場所です。

ハブは自分の間合いに入ってきた熱源に本能的に飛びかかります。ムチのようにしなるように素早く飛び掛ってくるため、飛び掛られてからでは避けることができません。怪しい場所に行くときには「この陰にはハブがいるかも」という心構えを持って、ハブより先にこちらが相手を目視・確認することが大切です。

 

2.ハブを自宅に近寄らせない

自宅の周辺からハブの住処になりそうなものを排除しましょう。草むらはこまめに手入れして、石垣は隙間をコンクリートで埋めるなどできればベストです。

後は1.5メートル以上のブロック塀を設置するのも効果的です。ハブはすすんでブロック塀を乗り越えようとしません。

手軽なのは照明器具の設置。夜行性のハブは灯りを避けるように行動しますので、ハブの通り道になりそうな場所を明るくしておけば寄り付きにくくなります。まぁ、そのぶん虫なんかが集まるようになってしまうので電撃殺虫灯なども必要になってしまいますが。

ちなみにハブが硫黄の臭いを嫌うっていうのは迷信です。科学的に実証されたガセネタですので、硫黄に頼ることはやめましょう。いまのところハブに対しての効果的な忌避剤というものは存在しませんので。

3.ハブに出会ったら

できればその場をやり過ごして立ち去りたいものですが、もし人家のそばで出会った場合は駆除するのが理想。
ここで逃がせばその個体が人や家畜に害を与える可能性が残ってしまうためです。「退治するなんて私ゼッタイ無理ーッ!!」って足がすくんじゃう人は無理しなくていいですが(笑)

一番無難なのは長い棒状のもので戦うこと。ハブ被害が多い奄美大島のほうでは家庭で常備していたり、道端に「用心ぼう」という棒が設置されていたりします。150cm以上の長さがあって、ある程度の重量があるものが理想です。

あらかじめ準備が必要ですが、ハブノックというハブ用の撃退スプレーも市販されています。これは遠い距離から噴射してハブを攻撃することが可能で、薬剤がかかったハブはすぐに苦しみ出し、数時間で衰弱死します。

ハブの毒と牙

 

4.ハブに咬まれてしまったら

まず何より大事なのは落ち着くことです。ハブに咬まれて死に至る確率はけっして高くありません。無駄にパニックになると血流が早くなって、症状を悪化させる原因になるだけです。

とりあえず相手がハブであるかどうかを確認しましょう。その蛇の見ためで判断がつく場合はいいですが、もし無理な場合は傷跡を見てください。ハブの場合、上顎の牙×2と、下顎の牙×2で、最大4つの穴状の傷跡がつきます(※咬まれ方によっては傷が3つ以下の場合もあります)。比較的早い段階で傷口からじんじんと焼けるような痛みが広がっていきます。

次に咬まれた位置より心臓側をタオルなどで強く縛って圧迫します。ただしこのとき力任せに縛り過ぎないように。指一本入る程度の力加減で縛るようにしましょう。

その後は、傷口に口をつけてできる限り毒を吸い出します。ハブの毒は口から含むぶんには人体にほとんど影響がありません。仮に飲んでしまっても、胃でその毒は分解されます。また口の中に傷があっても虫歯があっても構いません(多少炎症になるケースもあるようですが)。

そして走ったりせずにゆっくりと病院へ移動してください。ハブに咬まれたことを先に病院に連絡できれば処置もよりスムーズになります。甘くみずに、絶対に病院に行って血清を打ってもらってくださいね。血清を打たないと咬まれた部位から壊死して、本当に大変なことになりますので。

ハブに咬まれた人

 

ハブを生け捕りにすると報奨金がもらえる

先の項でもチラリと触れましたが、事実です。駆除して絶対数を減らすという面と、生きた個体で血清を製造するという面で需要があり、国や市町村が大きさに関係なく1匹あたり4,000円で引き取っています(2013年時点)。

不況もあってか、このハブ獲りは老若男女問わずで人気が出てしまい、報奨金の予算を使い切ってしまうほどの持ち込みがあって、大きなニュースになりました。たしかに1匹4,000円っていうのは大きなお小遣いですよね(笑) 生け捕りにするためには捕獲器具の準備も必要ですが、日常的にハブに接して暮らしてきた地元民にとって、器具の準備も捕獲作業自体も気軽で簡単なことだったようです。

このハブの報奨金については、スリムクラブの真栄田賢がトークのネタにしています。なんでも真栄田の父親がハブ捕りが上手いらしく、次々と市役所にハブを持ち込んで日銭を稼いでいたそうです。そうしたら、あまりの持ち込みの数の多さに市役所が怪しんで、「養殖してるんじゃないか」とあらぬ疑惑をかけられてしまったそうで(笑)

みなさん、間違っても養殖とかしちゃダメですよ。それで報奨金貰ってたら立派な詐欺罪になっちゃいますので(笑)

ハブVSマングースの動画: