哺乳類

ツキノワグマ

ツキノワグマ

ツキノワグマとは?

ツキノワグマ(月輪熊)は、ネコ目クマ科クマ属に属する哺乳類です。日本では北海道にヒグマだけが、そして本州、四国にこのツキノワグマだけが生息しています。完全に生息域が分離されているので、遭遇してどちらの種か迷うことはないでしょう。

昔は九州でも生息が確認されていたんですが、近年は確かな目撃情報が確認できず、残念ながら2012年に九州のツキノワグマは絶滅と認定されてしまいました(2015年10月に福岡と佐賀の県境でクマらしき目撃情報があって、現在調査中です)。西日本でもその個体数は激減していると言われています。

月輪熊

 

ツキノワグマの身体的特徴

ツキノワグマは体長は100~180cm程度、体重は50kg~から150kg程度です。クマの種類の中ではツキノワグマは比較的小さい種類だと言えるでしょう。体格もヒグマなんかに比べると幾分スタイリッシュな個体が多いです。特に若い個体はそれが顕著で、私達が持っていたクマとのイメージの違いに少し驚くかもしれません。

なんといってもツキノワグマのその最大の特徴は胸についている三日月形の模様です。どうしてこんな模様が付いているのかは理由は確かではありませんが、ツキノワグマだと識別するには一番の特徴だと言えるでしょう。たまにこの三日月の模様がない個体なんかも現れるようですが、その場合は体毛の色で識別。ツキノワグマはクマの仲間の中でも珍しく、体毛が完全に真っ黒な色をしています。

ツキノワグマの身体的特徴

 

ツキノワグマの食性

クマというと川でシャケを取っているイメージが強いですが、それはヒグマの話。じゃあシカやウサギなどの野生の哺乳類を襲って肉を食べているのかと言われればそうでもありません。

実はツキノワグマのメインの食事は植物。ドングリ、ブナ、クリ、ヤマブドウなどを主な栄養源として摂取しています。あとは蛋白源としてアリやハチの巣を探して、巣をほじくりながらそれを食べたりします。大きな体をしていますが、意外にも食べ物はカワイイもので(笑)

あとは動物の死骸なんかも好んで食べます。「クマに会ったら死んだふりだ!」なんてよく言いますが、死肉を食べるクマの前では、死んだふりがいかに愚かなことかがわかりますね。私はごちそうです、と言って自分を差し出しているようなモンです(笑)

そして問題なのは人間の出すゴミも食べること。ツキノワグマは雑食性が高いので、人間が食べ残したものは何だって食べちゃいます。そのためわざわざ人里に下りてきてゴミ集積場を漁ったりなんてこともしばしば。近年ではそれが大きな問題になっていて、ニュースなんかでもよく取り上げられています。

ツキノワグマの食性

 

ツキノワグマの生息地

前述したとおり、日本のツキノワグマの分布は本州と四国です。ヒグマと違って平地や草原などは好まず、落葉広葉樹林が生い茂った山の中だけに住んでいます。昼間は樹木の穴や、洞窟の中などでじっとしていることが多く、朝夕や夜に積極的に行動して餌を探しに動くことがわかっています。

ツキノワグマはあまり縄張り意識を持っておらず、餌が豊富な場所を求めて広範囲に移動を続けます。そのため餌が豊富な場所ではたくさんの個体が集まっていたりすることも。また、この行動力の高さがために人里までやってきてしまい、人間と遭遇して双方にとって不幸な事故が引き起こされてしまうケースもあります。

ツキノワグマ

 

冬ごもりと繁殖

ツキノワグマは知っての通り、冬になると穴にこもって眠るように過ごします。よく冬眠なんて言い方をしますが、クマの場合は仮死状態になるというよりはじっとしているだけなので、どちらかというと「冬ごもり」という言葉のほうが正しいと言えるでしょう。

冬ごもりの期間はその地域の気候にもよりますが、だいたい12月から4月ぐらいまでの間。半年近く穴の中で眠っていると考えると、彼らは意外にのんびりした人生を送ってるのかもしれませんね(笑) ああ、なんてうらやましいスローライフ。

夏のうちに交尾を済ませて妊娠したメスはこの冬ごもり期間中に穴の中で出産します。一度に生まれる子供はだいたい2匹程度。母親グマは3ヶ月程度授乳したあと、2年ほど一緒に子供と行動し、その後子供は自立していきます。

ツキノワグマのリスク回避と対策

 

ツキノワグマのリスク回避(ヒグマとほぼ共通)

やっと本題です。ツキノワグマは基本的に臆病な生き物ですし、決して好戦的ではないです。ですが、人間にとって安全な生き物ではないというのは間違いありません。

まずは何より出会わない努力をしましょう。

人間もツキノワグマと遭遇したくないですが、それは向こうもそうです。できればツキノワグマのほうも人間と遭遇したくないと思っています。まずは不必要にクマが出没するような場所に立ち入らないことです。
登山、ピクニック、山菜取りなど、山に立ち入る理由はいろいろあるとは思いますが、過去に熊騒動があったような場所はやはり避けるべきです。特に雪が残るような春先の山は、冬ごもりの穴に気付かずに近寄ってしまうケースがあって最悪です。

どうしてもクマと遭遇する可能性のある場所に入らなければいけないときには、大人数で騒ぎながら行動する、鈴や笛などの音が出るものを身に着けるなどをして、遠くのクマにこちらの存在をわからせるようにしましょう。定期的に棒で木を叩きながら進むのも良い手です。そうすればクマのほうから距離をとって離れていきます。

ちなみにラジオは駄目です。雑音を垂れ流しっぱなしのものは逆にクマの気配に気付けなくなるためかえって危険です。こちらがいつでも音を出せて、逆にいつでも静まってまわりを伺えるということが、
遭遇リスクを下げることに繋がります。

ツキノワグマ

 
それでも万一遭遇してしまった場合、まずは落ち着くことです。

はっきりいって遭遇してしまったら100%の安全策というものは存在しません。しかし慌ててパニックになってもツキノワグマを刺激してしまい状況を悪化させるだけです。まずは落ち着いて冷静に状況をみて、できることをしましょう。

距離がまだ何十メートルも離れている場合は、ツキノワグマから視線を逸らさずに後ずさりして距離をとります。クマは背を向けて逃げる獲物を追いかける習性があります。この習性はとてつもなく強く、うかつに背を向けて逃げたりすればほぼ間違いなく追いかけられます。ちなみにツキノワグマの走る速度は50km/h以上で、あのウサイン・ボルトより速いです。間違いなく追いつかれて、間違いなく背中から襲われて重傷必至です。

ゆっくりと後ずさりしつつ、武器の準備もしなければいけません。クマ対策の唐辛子スプレーなどを持っているなら手元にその準備を、ないならば何か固くてリーチのある、武器になりそうなものを用意します。どうしても何も見つからなければしかたありません、そのへんの石でもないよりはマシです。

ただしこのとき威嚇的なことは一切しないように。あくまで距離をとって逃げ切るのが最良手で、武器の用意はあくまで最悪の展開への備えです。

それでもまだクマの方からこちらに近寄ってくるようなら、持っている食べ物やリュック等を手放します。
クマがこれらに興味を持った場合はそのまま難を逃れることができるケースがあるのでそっと地面に置いて遠ざかるようにしましょう。

ツキノワグマ

 
うまく逃げ切れたときはいいのですが、相手がこちらに積極的に近づいてきてしまったり、もしくは曲がり角でいきなりバッタリ出会ってしまったりして、数メートルしか距離がない場合。この事態になってしまったら、覚悟を決めて戦いましょう。

そんなバカなと思うかもしれませんが、この状況になった場合に一番生存率が高いのが「戦うこと」です。この状況から走って逃げ切るのは100%不可能ですし、死肉を食べるツキノワグマに対して死んだふりをするのは何の対策にもなりません。この状況から無事に生還した人のほとんどは戦っています。

戦い方ですが、もちろん身体能力では人間はクマに絶対に勝てません。どんなにパンチやキックを浴びせようが、棒で殴ろうが、クマの分厚い筋肉の前には無力です。クマとの戦いで狙うのは「倒すこと」でなく、「戦意喪失させて逃げてもらうこと」になります。

なので狙いは急所の鼻先一点。鼻先に何か強烈な一撃をお見舞いできれば、ツキノワグマは未知の痛みに驚き退散していくことでしょう。クマと対峙するのは相当な恐怖ですが、勇気を振り絞って攻撃してください。覚悟を決めて手を出さなければこちらの生存確率が低くなるだけです。撃退スプレー、ナタ、杖の類を持っていれば相手の前足の攻撃より先にこちらの攻撃を叩き込めるはずです。

どうしてもそういったリーチのある武器が見つからない場合は、落ちている石を持ったり、腕時計を拳につけたり、カギを刃が拳から出るように握り込んだりして、それで鼻先を狙います。より接近を許すことになるので怪我をする危険が高くなりますが、多少怪我をしてでもとにかく鼻先に攻撃を叩き込めれば命を落とすことはなくなります。

ツキノワグマ

 
そして究極に最悪の事態、突然の奇襲を受けてしまった場合です。さきほどの武器による攻撃が失敗してしまったときも同様です。

覆いかぶされたり噛み付かれたりしてしまいますが、とにかく抵抗してください。じっとガードしていても殺されるのを待つのみです。とにかく手や足を、ツキノワグマの目や鼻があるであろう位置に全力で出し続けてください。一発でも入れば相手はビックリして逃げていく可能性があります。この状況になっている時点で怪我を負うのは必至ですが、追い払える可能性だけは放棄しないこと。

 

ツキノワグマの習性豆知識

ツキノワグマの習性を知識として知っておくと不用意に襲われる事態を避けることができます。ここではいくつかその習性を紹介しておきます。

 

1.子供のツキノワグマを守る母熊は危険

これはツキノワグマに限らず大抵の哺乳類に言えることです。母グマは自分の子を守るために、近寄るものを全て敵とみなします。小さいツキノワグマを見つけたときには「わぁ、可愛いー♪」なんてのん気なことを言わずに、近くに「敵意むき出しの母親がいる」と思って警戒するようにしましょう。

 

2.火を恐れない

獣は火を恐れるって知識は間違ってはいませんが、クマに関しては例外です。キャンプ時に焚き火のそばにある荷物を平気で奪っていった事例もありますので、クマ対策として火を使うのはおすすめできません。

 

3.木登りはお手の物

ツキノワグマは木登りが非常に得意です。なので木の上に登ってもツキノワグマは追いかけて登ってきます。しかしツキノワグマに遭遇したときの逃げ場所として木の上が絶対ダメってわけではありません。先に木の上に登れば、下から迫るクマをこちらは靴を履いた足で迎撃できるわけですし、クマのほうも木を登りながら同時に前足で攻撃できるほど器用ではありません。ただしどうやっても持久戦になってクマとのガマン比べになってしまうのは避けられませんが・・・。

ツキノワグマの生態

 

動物園やクマ牧場で楽しむ

ツキノワグマは全国で大抵の動物園で飼育されています。ヒグマより小型で飼育しやすく、集団生活にもすぐに適応するため動物園としても楽なんだそうで。クマ牧場のようにクマに特化して飼育されている施設もあり、そういう場所では餌を与えることもできます。人に飼いならされたツキノワグマはとても人に慣れていて、餌を持ったお客を見つけると、こちらに手を振ったり、両手を差し出して「ちょうだい」のポーズをとったりと愛嬌を振りまくほどです。野生のときとは違ったこういう姿のツキノワグマもなかなか魅力的。

あと動物園で集団で飼われているツキノワグマは社会性を持つことも知られています。必ずボスとなるツキノワグマが現れて、ケンカの仲裁をしたり、見回りをしたりするそうです。一匹狼での行動が多い野生の条件下ではほとんど確認できていない習性です。環境が変わってこういうのが見えるってなんだか面白いですね。

 
広島県安佐動物園のツキノワグマ、クラウド君の高速棒回し動画:

 

ツキノワグマ関連アイテム

熊撃退スプレー 中型 ホルスター付

熊撃退スプレー 中型 ホルスター付
クマ撃退用のスプレーです。全国の地方自治体などでも採用されている信頼のおける商品。射程距離は5メートル以内、噴射時間は連続で2.5秒程度です。遠距離で使ってクマがちょっと驚いた程度になってしまうのは怖いので、できれば3メートル以内の距離で確実に熊の顔に向けて直撃させたいところです。

熊よけ すず ベアークマ MM-1918

熊よけ すず ベアークマ MM-1918
クマ避けの鈴です。高く響く音を鳴らしながら歩くことで、早い段階でクマに人間の存在を知ってもらって不意の遭遇を避けるためのものです。滑落時や遭難時にもエネルギーを使わずに遠くまで届く音をだせるため、活用が可能です。

電子ホイッスル

電子ホイッスル
単4電池をバッテリーとした電子ホイッスル。簡単なボタン操作で、3種類の音色を3段階の音量で鳴らすことができます。本来はスポーツ用やイベント用のホイッスルですが、クマ避けとして使っている熟練の登山者も多いようです。

動物撃退器 超音波 ソーラー USB充電式

動物撃退器 超音波 ソーラー USB充電式
ツキノワグマだけでなく哺乳類全般に効果がある超音波撃退装置です。庭先に設置すると赤外線で動物の動きをキャッチ。動物が嫌がる超音波を発して対象を遠ざける効果があります。ソーラー充電式なので電源の確保の必要はなく、対象となる動物の種類に合わせて超音波の強さを設定することができます。

ヒグマ

ヒグマ

ヒグマとは?

ヒグマ(羆)は、ネコ目クマ科クマ属に属する哺乳類です。体長はクマの中でもかなり大型に育つ種で、成獣では500kgを越える個体も記録されています。日本に生息する陸上の哺乳類の中ではダントツで大きな生き物といえるでしょう。

羆

 

ヒグマの身体的特徴

日本にはツキノワグマとこのヒグマ(正確にはエゾヒグマという亜種)が生息しています。ツキノワグマは本州と四国の全域に広く生息していますが、ヒグマは北海道にしか生息していません。完全に生息地が分かれているので、遭遇した場所でどちらのクマか判断してしまって結構です。北海道で出会えばヒグマ、それ以外で出会えばツキノワグマです。

見た目の違いも明白で、ツキノワグマはヒグマにくらべてかなり小さく、最大でも2メートルに届かないほど。またツキノワグマの体毛は真っ黒で胸元に半月型の特徴的な模様があって非常にわかりやすいです。まぁ、ツキノワグマの詳細についてはまた別のページで。

ヒグマとツキノワグマ
↑ツキノワグマ(左)とヒグマの若い個体(右)

 
ヒグマの全長はおよそ2~3m、体重は200kg~500kgです。これはオスのサイズで、メスは全体的にもうひとまわり小さくなります。

しかし食事や環境によってかなり大きさに差が出ることがわかっており、アラスカの食糧豊富な土地では1,000kgを越える巨大なヒグマが発見された例もあります。1,000kgってことは、軽トラック(750kg)よりも遥かに重いってことです。そんなサイズのクマが存在しうるって恐ろしい話だ(汗)

 

ヒグマの食性

クマというと川でシャケを取っているイメージが強いですが、実は雑食性で、割合的には木の実や草本を食べていることのほうが多いです。植物は比較的安定して手に入りますし、栄養価・便通の面でもクマにとっては欠かせない餌。

もちろんヒグマは動物性の餌も狙っていきます。ターゲットは哺乳類、鳥類、魚類、昆虫、ザリガニなど。

しかしここでも意外なのは、昆虫を食べる割合がかなり高いこと。ヒグマはアリ、ハチなどが好物で積極的に巣を探しにいきます。こういった昆虫たちは集団でコロニー(巣)を形成していることが多いため、一度のチャンスで多くの餌を手に入れることができるわけです。しかしあの巨体でアリなんか何百匹食べたってお腹満たされないような気もしますが(笑) 単純に空腹を満たすためというよりは、味的に好物だからという説が強いようです。

あとこれも意外な知識なんですが、ヒグマは積極的に生きている哺乳類・鳥類を狙いません。どちらかというと死肉を食べるケースが多く、腐敗が進んだ屍肉食なんかも食べてしまいます。一般的には強大な捕食者のイメージが強いのでこれはちょっとビックリ。足が速くて力もあるクマが狩りが下手とは思えませんが、この雑食性は、おそらく長い生活の中でより安定して餌にありつけるように進化していった結果なんだと思います。

ただし、これは通常のヒグマの食事の習性です。近年のエゾシカの急増に伴い、生きているエゾシカを狙うヒグマも増え始めました。そして一度新鮮な肉の味を覚えてしまったヒグマはそれ以降、積極的に狩りを行うようになります。これはエゾシカに限らず人間においてもそうで、一度人間の味を覚えてしまったヒグマは大変危険です。

ヒグマの習性と生態

 

ヒグマの生息地

前述したとおり、日本のヒグマの生息地は北海道だけです。本州でもヒグマの化石が見つかるため昔は本州以南にも住んでいたようですが、現在では確認されていません。

他種のクマと同じく森林を好みますが、原野も好むのがヒグマの大きな特徴。これは山林にある固い葉よりも、原野に生える柔らかい草花を好むためと言われています。知床の大きな原野で伸び伸びと過ごす姿には威厳とともに愛嬌さえ感じますね。これからも守っていかなければいけない景色。

しかし近年問題になっているのは人間とクマの生活圏が重なってきていることです。人間側は開発と称して山に近寄っていき、クマは異常気象による餌不足で里に近寄っていきます。そのため人間とクマが出会ってしまう不幸が非常に多くなり、それは双方に不幸をもたらしています。人間を恐れない「新生代クマ」と呼ばれる若いクマも増え始めているため、クマと付き合っていかなければいけない地域の人々にとっては深刻な悩みになっています。

追記:
餌不足で人里にヒグマが出没するっていう話をよくニュースなどでやっていますが、最近ではどうもそうではないのではないかという説が出てきました。人里にやってくるヒグマは餌不足でガリガリかと思いきや、みな丸々と太っているらしいのです。山の餌が不足しているのではなく「人里のほうが餌を確保しやすい」と思われているのではないでしょうか?畑では必ず美味しい野菜や果物が得られますし、ごみ置き場を漁れば人間の食べ残しが見つかります。ヒグマたちが賢い生き方を選択し始めた結果がいまの状況なのでは、という意見が増え始めています。

ヒグマ

 

冬ごもりと繁殖

ヒグマは知っての通り、冬になると穴にこもって眠るように過ごします。よく冬眠という言い方をしますが、体温を下げて仮死状態のようになる冬眠に比べるとヒグマの眠りは浅く、あくまで穴の中でじっとしているだけという表現のほうが近いと言えます。そのため、ヒグマの場合は冬眠ではなく、冬ごもりという言い方をされる場合が多いです。

ヒグマの発情期は初夏で、妊娠をした雌熊は冬ごもりをしているその穴の中で出産します。一度に産むのは1~3匹の赤ちゃんで、体重は400g程度しかありません。赤ちゃんはしばらくの間は視力も聴力もないため、穴の中で母親熊は母乳だけで育て続けます。そして春になると穴から出てきてそのまま生活を共にし、1~2年後には子供は親離れをして独立します。

ちなみに幼少期のヒグマにとって一番の天敵は成獣のヒグマ。ヒグマは共食いをします。子供を連れた母熊は絶対に他のヒグマを近づけることをしません。同族が一番の天敵ってなんだか悲しいですね。自然界だと当たり前の弱肉強食ルールなのかもしれませんが。

ヒグマ対策

 

ヒグマのリスク回避

やっと本題です。ヒグマは基本的に臆病な生き物ですし、決して好戦的ではないです。ですが、人間にとって安全な生き物ではないというのは間違いありません。

まずは何より出会わない努力をしましょう。

人間もヒグマと遭遇したくないですが、それは向こうもそうです。できればヒグマのほうも人間と遭遇したくないと思っています。まずは不必要にクマが出没するような場所に立ち入らないことです。登山、ピクニック、山菜取りなど、山に立ち入る理由はいろいろあるとは思いますが、過去に熊騒動があったような場所はやはり避けるべきです。特に雪が残るような春先の山は、冬ごもりの穴に気付かずに近寄ってしまうケースがあって最悪です。

どうしてもクマと遭遇する可能性のある場所に入らなければいけないときには、大人数で騒ぎながら行動する、鈴や笛などの音が出るものを身に着けるなどをして、遠くのクマにこちらの存在をわからせるようにしましょう。定期的に棒で木を叩きながら進むのも良い手です。そうすればクマのほうから距離をとって離れていきます。

ちなみにラジオは駄目です。雑音を垂れ流しっぱなしのものは逆にクマの気配に気付けなくなるためかえって危険です。こちらがいつでも音を出せて、逆にいつでも静まってまわりを伺える状態を作っておくということが、遭遇リスクを下げることに繋がります。

ヒグマ

 

それでも万一遭遇してしまった場合、まずは落ち着くことです。

はっきりいって遭遇してしまったら100%の安全策というものは存在しません。しかし慌ててパニックになってもヒグマを刺激してしまい状況を悪化させるだけです。まずは落ち着いて冷静に状況をみて、できることをしましょう。

距離がまだ何十メートルも離れている場合は、ヒグマから視線を逸らさずに後ずさりして距離をとります。クマは背を向けて逃げる獲物を追いかける習性があります。この習性はとてつもなく強く、うかつに背を向けて逃げたりすればほぼ間違いなく追いかけられます。

ちなみにヒグマの走る速度は50km/h以上で、あのウサイン・ボルトより速いです。間違いなく追いつかれて、間違いなく背中から襲われて重傷必至です。

視線を合わせたまま音を立てずにゆっくりと後ずさりしつつ、武器の準備もしなければいけません。クマ対策の唐辛子スプレーなどを持っているなら手元にその準備を、ないならば何か固くてリーチのある、武器になりそうなものを用意します。どうしても何も見つからなければしかたありません、そのへんの石でもないよりはマシです。

ただしこのとき威嚇的なことは一切しないように。あくまで距離をとって逃げ切るのが最良手で、武器の用意はあくまで最悪の展開への備えです。

それでもまだクマの方からこちらに近寄ってくるようなら、持っている食べ物やリュック等を手放します。クマがこれらに興味を持った場合はそのまま難を逃れることができるケースがあるので、そっと地面に置いて遠ざかるようにしましょう。

ちなみにこのときに手放したリュックや食べ物は、「後でクマの脅威が去ってから回収しよう」などとは間違っても考えてはいけません。後のヒグマの習性の項でも記述していますが、これは極めて危険な行為です。一度クマに差し出した物は必ずあきらめてください。

ヒグマ

 

うまく逃げ切れたときはいいのですが、相手がこちらに積極的に近づいてきてしまったり、もしくは曲がり角でいきなりバッタリ出会ってしまったりして、1~2メートルしか距離がない場合。この事態になってしまったら、覚悟を決めて戦いましょう。

そんなバカなと思うかもしれませんが、この状況になった場合に一番生存率が高いのが「戦うこと」です。この状況から走って逃げ切るのは100%不可能ですし、死肉を食べるヒグマに対して死んだふりをするのは何の対策にもなりません。この状況から無事に生還した人のほとんどは戦っています。

戦い方ですが、もちろん身体能力では人間はクマに絶対に勝てません。ツキノワグマであれば「空手の有段者が正拳突きで追い払った」なんて武勇伝を耳にすることもありますが、ヒグマの場合は100%無理。ヒグマは成獣であれば体重400kg前後であり、これは室伏広治4人分の体重です。どんなにパンチやキックを浴びせようが、棒で殴ろうが、クマの分厚い筋肉の前には無力です。クマとの戦いで狙うのは「倒すこと」でなく、「戦意喪失させて逃げてもらうこと」になります。

なので狙いは急所の鼻先一点。鼻先に何か強烈な一撃をお見舞いできれば、ヒグマは未知の痛みに驚き退散していくことでしょう。クマと対峙するのは相当な恐怖ですが、勇気を振り絞って攻撃してください。覚悟を決めて手を出さなければこちらの生存確率が低くなるだけです。撃退スプレー、ナタ、杖の類を持っていれば相手の前足の攻撃より先にこちらの攻撃を叩き込めるはずです。もしジャンプ傘を持っているなら、顔の近くで勢いよく音を立てて広げればビックリして逃げてもらえるかもしれません。

どうしてもそういったリーチのある武器が見つからない場合は、落ちている石を持ったり、腕時計を拳につけたり、カギを刃が拳から出るように握り込んだりして、それで鼻先を狙います。より接近を許すことになるので怪我をする危険が高くなりますが、多少怪我をしてでもとにかく鼻先に攻撃を叩き込めれば命を落とすことはなくなります。

ヒグマ

 

そして究極に最悪の事態、突然の奇襲を受けてしまった場合です。さきほどの武器による攻撃が失敗してしまったときも同様です。

覆いかぶされたり噛み付かれたりしてしまいますが、とにかく抵抗してください。じっとガードしていても殺されるのを待つのみです。とにかく手や足を、ヒグマの目や鼻があるであろう位置に全力で出し続けてください。一発でも入れば相手はビックリして逃げていく可能性があります。この状況になっている時点で正直言って限りなく絶望的な状況には間違いありませんが、最後の可能性だけは放棄しないこと。

 

ヒグマの習性、豆知識

ヒグマの習性を知識として知っておくと不用意に襲われる事態を避けることができます。ここではいくつかその習性を紹介しておきます。

 

1.自分の獲物への執着心が異常に強い

ヒグマは自分が手に入れた食料に対して「これは俺の物、奪おうとする者は敵」という意識が非常に強いです。道端に小動物の食べ残しなどがあったら絶対に近づかないでください。このときヒグマは敵意剥き出しで襲ってきます。福岡大のワンゲル部が襲撃された事件はこの習性を知っていれば防げたであろう事故です。あの事件のときは、一度ヒグマに奪われたリュックを持ち帰ったために執拗に狙われてしまう結果になりました。一度奪われたリュックは、ヒグマにとってはすでに「自分のもの」になっていて、それを回収して持って帰る行為はまさにヒグマの神経を逆撫でする自殺行為だったのです。

 

2.子供のヒグマを守る母熊は危険

これはヒグマに限らず大抵の哺乳類に言えることです。母グマは自分の子を守るために、近寄るものを全て敵とみなします。小さいヒグマを見つけたときには「わぁ、可愛いー♪」なんてのん気なことを言わずに、近くに「敵意むき出しの母親がいる」と思って警戒するようにしましょう。

3.火を恐れない

獣は火を恐れるって知識は間違ってはいませんが、ヒグマに関しては例外です。過去にヒグマの襲撃を恐れた事例ではみな火を一生懸命に炊いて難を逃れようとしましたが、どれも効果は全くなく、無残な結果をもたらすことになりました。ヒグマの前に火は無力です。

 
ヒグマの習性を実験する動画:

 

動物園やクマ牧場で楽しむ

ヒグマは全国で大抵の動物園で飼育されています。クマ牧場のようにクマに特化して飼育されている施設もあり、そういう場所では餌を与えることもできます。人に飼いならされたヒグマはとても人に慣れていて、餌を持ったお客を見つけると、こちらに手を振ったり、両手を差し出して「ちょうだい」のポーズをとったりと愛嬌を振りまくほどです。野生のときとは違ったこういう姿のヒグマもなかなか魅力的。

あと動物園で集団で飼われているヒグマは社会性を持つことも知られています。必ずボスとなるヒグマが現れて、ケンカの仲裁をしたり、見回りをしたりするそうです。一匹狼での行動が多い野生の条件下ではほとんど確認できていない習性です。環境が変わってこういうのが見えるってなんだか面白いですね。

ヒグマ

 

ヒグマによる大きな事件

1.三毛別羆事件

1915年12月に北海道苫前郡苫前村で発生したヒグマによる大量殺傷事件です。日本では最大の獣害事件であるとされています。Wikipediaの事件描写が怖すぎるということでも有名になりました。

12月に冬眠し損ねてしまった大きなヒグマが次々に村の民家を襲撃し、重軽傷者多数、最終的に妊婦や子供を含む7人もの死者が出ました。ヒグマは体長270cm、体重340kgに及ぶ大物で、たった数日間で何度も何度も村に姿を現し、次々に住民を襲撃して食べてしまいました。退治のために組織された討伐隊はなんと600人規模で、ヒグマは最初の事件発生から5日後にマタギの手によって射殺されました。

三毛別羆事件
↑事件後に現場に再現されたヒグマの模型。家屋の入り口と比べるとその大きさがわかる。

 

②石狩沼田幌新事件

1923年8月に北海道雨竜郡沼田町で発生しました。犠牲者は5人で、他3名が重軽傷を負っており、三毛別羆事件に次いで二番目の大きな獣害事件です。当時ちょうど開拓の最中であったこの地域では、住民とヒグマの接触事件が非常に多く、この事件はたまたま山中で羆の餌場に人間が近づいてしまったことで発生してしまったと言われています。

村の祭りが終わったその夜、深夜の山中を家路につく一行をヒグマが襲撃しました。男性1人が死亡、もう1人の男性が生きたまま地中に埋められてしまいました。ヒグマから逃げた一行は近くの民家に立てこもりましたが、追ってきたヒグマが再び襲撃。女性1人が連れ去られて食い殺されてしまいました。翌日には単身で退治に向かった猟師が返り討ちに合い死亡。その翌日に300人規模で結成された討伐隊が山に入りました。山中でのヒグマとの戦いにより1人の男性が犠牲になりましたが、ヒグマは無事退治されました。

石狩沼田幌新事件
↑沼田町郷土資料館で保存されている当該ヒグマの毛皮

 

3.福岡大学ワンダーフォーゲル同好会羆襲撃事件

1970年7月に北海道の日高山系カムイエクウチカウシ山で発生しました。登山にきていた福岡大学のワンダーフォーゲル同好会5人が次々に襲われ、最終的に3人が死亡しました。

一度ヒグマにリュックを漁られた後、そのリュックを持って帰ったしまったため、ヒグマに『自分の獲物を奪われた』という感覚を与えてしまいました。そのため彼らのパーティーは何度も何度も襲撃を受けることになってしまったのです。発生から3日後、地元のハンターの手によってこのヒグマは射殺されました。

 

ヒグマ関連アイテム

UDAP 熊撃退スプレー ホルスター付

UDAP 熊撃退スプレー ホルスター付
クマ撃退用のスプレーです。ヒグマ撃退用の強力版でアメリカ森林警備隊採用品です。射程距離は9メートルとなっていますが、遠距離で使ってクマがちょっと驚いた程度になってしまうのは怖いので、できれば5メートル以内の距離で確実に熊の顔に向けて直撃させたいところです。

熊よけ すず ベアークマ MM-1918

熊よけ すず ベアークマ MM-1918
クマ避けの鈴です。高く響く音を鳴らしながら歩くことで、早い段階でクマに人間の存在を知ってもらって不意の遭遇を避けるためのものです。滑落時や遭難時にもエネルギーを使わずに遠くまで届く音をだせるため、活用が可能です。

電子ホイッスル

電子ホイッスル
単4電池をバッテリーとした電子ホイッスル。簡単なボタン操作で、3種類の音色を3段階の音量で鳴らすことができます。本来はスポーツ用やイベント用のホイッスルですが、クマ避けとして使っている熟練の登山者も多いようです。

動物撃退器 超音波 ソーラー USB充電式

動物撃退器 超音波 ソーラー USB充電式
ツキノワグマだけでなく哺乳類全般に効果がある超音波撃退装置です。庭先に設置すると赤外線で動物の動きをキャッチ。動物が嫌がる超音波を発して対象を遠ざける効果があります。ソーラー充電式なので電源の確保の必要はなく、対象となる動物の種類に合わせて超音波の強さを設定することができます。

ニホンイノシシ

ニホンイノシシ

ニホンイノシシとは?

ニホンイノシシは、鯨偶蹄目イノシシ科の哺乳類です。

日本国内ではニホンイノシシとリュウキュウイノシシの2種が確認されており、ニホンイノシシは北海道と沖縄以外、リュウキュウイノシシは沖縄のみに生息しています。しかしリュウキュウイノシシは非常に数が少なく、絶滅危惧のレッドリストにも記載されているぐらいです。なので日本でイノシシといえば、ニホンイノシシのことを指すと思って差し支えないでしょう。以下このページでは、ニホンイノシシを「イノシシ」と呼称して扱っていくことにします。


↑ニホンイノシシ(左)と、リュウキュウイノシシ(右)。リュウキュウイノシシのほうがひとまわり体格が小さい。

 

イノシシの身体的特徴

イノシシは成獣で、体長は100cm~170cm、体重は80kg~180kg程度の大きさになります。体毛は明るめの茶褐色~黒褐色をしていて、その色にはやや個体差があります。この体毛は非常に剛毛で、逆向きに触れたときにはかなりゴワゴワした感触を感じるでしょう。

またイノシシの子供の頃は綺麗な縞模様が体色に現れていて、それが瓜の模様に非常に似ていることから、幼いイノシシはよく「うり坊」と呼ばれます。この縞模様は木漏れ日の中では保護色の役目を果たすと考えられていて、成獣まで成長して天敵がいなくなるにつれて少しずつ消えていってしまいます。シマシマのままのほうが可愛いのに残念ですね(笑)

イノシシの下あごには牙が備わっており、オスの大きな個体であれば、その長さは15cmを超えるほどになります。下から生えて手前に湾曲している牙を下からアッパーカット気味に振り回すことによって、対象物の肉をえぐりとり、大きなダメージを与えることができます。人間にとってはこれがちょうど太腿の高さにあたるため、大怪我をさせられる危険性があります。

また意外に知られていないのがその身体能力の高さ。普段はゆっくり歩いて過ごしていますが、いざ敵と対峙するとなると、走れば時速40km、垂直ジャンプならば1m以上を飛ぶという脅威の身体能力をみせます。しかも大抵の生物は鼻先が急所ですが、イノシシの場合は鼻先は強靭な武器です。重さ70kgの岩さえも動かせるその硬い鼻先が、猛烈な加速をつけて突進してくるのはかなりの脅威。実際に人間が大怪我をさせられた例は数多くあります。

イノシシの身体的特徴
↑ニホンイノシシの牙(左)と、イノシシの子供「うり坊」(右)

 

また意外にも泳ぎが得意で、犬かきのような動きで池や川を、なんと時には海を泳ぐこともあります。その目的は定かではありませんが、毎年中国地方から四国まで瀬戸内海を泳いで渡るイノシシがいます。瀬戸内海ほどの距離を泳ぎきれる哺乳類は他にはなかなかいません。いったいどこで泳ぎ方とか覚えるんでしょうね。

うりぼう
↑瀬戸内海を泳いで渡るイノシシ(2012年11月撮影)

 

ニホンイノシシの主食

ニホンイノシシは雑食性です。普段は植物性のものを食べていることが多く、ドングリなどの木の実、果実、タケノコ、地下茎、芋などを好みます。動物性のものでは、ヘビやカエル、ネズミ、ミミズなども摂取します。また近年では人間が出した生ゴミや畑の作物を狙って人里に現れることが多く、人間との接触事故に発展してしまうケースが危惧されています(詳しくは後述)。

逆にイノシシの天敵となるのは、幼少期はキツネや野犬、フクロウ、カラスなど。成獣になってしまえば日本国内においては敵は存在しません。唯一クマがイノシシにとって危険ではありますが、クマは積極的に生きている大型哺乳類を狙うことはありませんので。

ニホンイノシシの主食

 

ニホンイノシシの住みか・習性

イノシシは山に住んでいる、というイメージが非常に強いですが、実はイノシシは山間部でも低山地域や平地、つまり人里にかなり近い位置に住んでいます。自分の体が隠れるような草木が生い茂った土地、それも河川が近い湿地帯を好みます。

水場付近に住むのは、給水のほかにも水浴びや泥浴びをする目的があるためです。イノシシはよく全身を塗らす様に水の中を転げまわり、ダニや寄生虫を落としています。

また理由はよくわかっていませんが、イノシシは小便を水の中ですることが多いようです。しかし大のほうは普通に陸上でプリッと(笑) どういう意図で小便だけ水中でしてるんでしょうね?

イノシシが夜間に人里にやってくるニュースなどのせいで夜行性のイメージが強いですが、実際は昼間のほうが活動的に動いています。夜間に人里に来るのは、そのほうが人間に見つからずにすむため。そう、イノシシは学習能力が高くしたたかな生き物なのです。

 

ニホンイノシシの繁殖サイクル

イノシシの発情期は冬です。この時期になるとオスのイノシシはメスを求めて徘徊し、意気投合したメスと生殖行動を行います。このとき一匹のメスを巡ってオス同士で争うこともありますが、もちろんここでは強い方のオスだけがメスを獲得することができます。

無事に生殖行動を終えたオスはそこで休むことなく次のメス探しへ。発情期が終わるまでオスは延々とメスを探し続け、生殖行動を何度も何度も行っていきます。

一方身ごもったメスのほうは草木で巣を作り、4ヶ月の妊娠期間を経て3~6頭程度の子供を生みます。そして子供がひとり立ちするまで一緒に暮らしていきます。子供が成獣となって繁殖機能を持つのが約1年半。そしてまたオスはメスを求めて徘徊を始めるわけです。

うりぼう

 

イノシシと出会ってしまったら

イノシシは生息域が山間の低標高地域であるために、野生動物の中でも人間と遭遇しやすい生き物です。基本的にはイノシシは臆病で警戒心の強い生き物であるため、人間を見つけてもイノシシのほうから距離をとって離れていきます。このへんはクマと同じですね。

ただし、いきなり角を曲がったら出会い頭に、というパターンは危険。興奮したイノシシは人間を倒さねばならない敵とみなし、突撃してくることがあります。前述した脅威の運動神経で突進されては人間はひとたまりもありません。

 

1.イノシシと出会わない工夫をしましょう

山登りなどをするときにクマ対策として鈴を鳴らしたり、
皆で談笑をしながら歩くという手法がありますが、これはイノシシにも有効です。
イノシシは聴覚が非常に発達した動物ですので、人間の位置をこちらから知らせてやれば、
むこうのほうから距離をとってくれます。

 

2.もしイノシシと出会ってしまったら

もしイノシシと出会ってしまったら、まずはパニックにならないこと。とにかく刺激をイノシシに刺激を与えないことを第一に考えてください。十分に距離があるならば、ゆっくりその場を離れましょう。

もし不幸にも出会ってしまった距離が非常に近くて、相手がすでに威嚇行動に入ってる場合は、目を見たままで決して背を向けずに後ずさりして距離をとっていきましょう。背を向けて走って逃げると本能的に彼らは追いかけてきます。これはイノシシに限らずクマの場合でも同じです。

ちなみにイノシシの威嚇行動は、背中の毛を逆立たせたり、挙動不審に動き回ったり、牙をカチカチと擦り合わせて音を鳴らしたり、後ずさりしながら前足で地面をガリガリ擦ったり、などがあります。これらの動きをみせているときは要注意。

 

3.もしイノシシが襲いかかってきたら!

もしイノシシが突進してくるという最悪の事態になった場合。真っ直ぐ走って逃げても、逃げ切るのは不可能です。なんせ相手は時速40km以上で追いかけてきます。高い場所に登る、遮蔽物を利用して逃げるのが一応の最善手です。

ただし、もし幸運にもジャンプ傘を持っていたならば目の前で勢いよく広げてやりましょう。目の前で突然視界をおおう未知の物体に、イノシシは驚いて逃げていってくれます。

イノシシが襲ってきたら

 

民家や畑にやってくるイノシシ

イノシシが家庭ごみや農作物を狙って人里に下りてくる行動が、近年非常に大きな問題になっています。ゴミ捨て場や畑を荒らされる被害はもちろん、人間に対して突進したり咬みついたりするような事例が多く起きています。ケガで済めばまだ良いですが、下手をすれば死亡事故にも繋がりかねません。イノシシが出没する地域に住んでいる場合は、やはりその対策が必要になってきます。

 

1.イノシシが近づかない環境作り

まずイノシシは自分の身を隠せる茂みのようなものが好きです。逆に言うと、隠れられるものがない場所を嫌がります。山から家・畑までの間に茂みがあるならば綺麗に刈り取りましょう。身を隠せそうな遮蔽物も取り除けばなおベストです。

あと餌を見える場所に置かないこと。畑で出てきた野菜クズなどは放置してはいけません。ゴミも夜間に屋外に出さずに、収集車が来る直前に出すなどしてイノシシが近寄る理由を断ちましょう。収穫時期になった農作物は後回しにせずに早めに収穫してしまいましょう。

イノシシ用の忌避剤を使用するのも有効です。オオカミの尿の成分を使用したウルフピーという商品があって、この臭いによってイノシシに限らず野生動物のほとんどが寄り付かなります。値段はそこそこしますが内容量が多くて持続性も良いので、かなり長期間の効果が期待できます。


【野生動物忌避剤 ウルフピー】

 

2.もしイノシシが何度も来るようになってしまったら

イノシシは学習能力が非常に高いです。そのためゴミ置き場や畑で一度オイシイ思いをするとそれを覚えてしまい、また再びやってきます。一度味を占めてしまったイノシシは、茂みを取り除いた程度では引き返してくれません。

ゴミ置き場であれば、金属製のダストボックスを使うなどしてイノシシが手を出せないようにしましょう。網やブルーシートを被せるだけではイノシシの前では全く役に立ちませんのでご注意を。

畑であれば、対策はちょっと大事(おおごと)になります。まずは先に紹介したウルフピーの設置。

それで解決しないようであれば、イノシシが越えれないような壁を設ける必要があります。柵でもいいですが、できればその場合は布などで目隠しを。イノシシから視覚的に中が見えないことが大事。

壁の高さは1メートル程度で十分ですが、その上部には網などを外側にせり出すように張ってください。よく刑務所の塀の最上部に有刺鉄線が内側にせり出すように張り巡らされていますよね?アレに近しいのものを作ってください。予算があるなら、網と言わずいっそ有刺鉄線でもいいです(笑)

理由は、イノシシが垂直ジャンプしかできないからです。彼らは助走をつけたジャンプをしません。手前に網(有刺鉄線)がせり出した壁であれば垂直ジャンプでは越えることができず、イノシシは上からの侵入をあきらめます。

 

次に壁の下方向の処理。イノシシはその強固な鼻で穴を掘ることができます。生半可な壁だとその下に20cm程度の隙間を掘って、そこを無理やり押し通って入ってきます。壁をより深く埋め込むように立てるか、杭などで地面にも網を固定して土を掘れない状況にしてやりましょう。

ちなみにこの壁ですが、完全に囲まないと意味がありませんのでご注意を。山側だけに設置してもイノシシは平気で回り込んできます。道路側であろうが民家側であろうとおかまいなしです。それだけ学習能力が高く、環境に慣れやすい生き物です。

 

3.どうしてもイノシシの被害を抑えられない、対策するのが経済的に難しい

この場合は最終手段としてイノシシを駆除しなければいけませんが、イノシシを勝手に捕獲・駆除することは法律で禁じられています。お住まいの自治体に相談してください。被害が深刻であることを報告すれば自治体・猟友会が駆除に動いてくれます。

イノシシとの付き合い方

 

イノシシと人間の付き合い方

基本的にはイノシシは臆病な生き物で、子供のうりぼうなどは非常に可愛いです。自然の中でその愛らしい姿を見つけた際には可愛がってあげたい気持ちもあるでしょう。しかし、絶対に餌を与えて餌付けしないでください。

人間慣れして人間を恐れなくなったイノシシは、近隣の町に出没するようになり、買い物袋をさげた人などを襲撃するようになります。最近では神戸市中央区で5日連続でイノシシによる人間への襲撃事件が続き、通学途中の女子生徒らを含む14人が怪我を負いました。幸い命には別状はありませんでしたが、運が悪ければ万が一が起きていてもおかしくありません。

あなたが餌をあげたイノシシが人を傷つけます。
あなたが餌をあげたイノシシはそのせいで殺処分されます。
それでもあなたはイノシシに餌をあげますか?

野生動物と愛玩動物は違います。その区別を考えずに可愛がると、人間もイノシシもどちらも不幸にすることになります。絶対に野生のイノシシに餌を与えないでください。

 

設置した金網を捻じ曲げて侵入していくイノシシの動画:

 

ビニールハウスを破壊して農作物を荒らすイノシシの親子の動画:

 

イノシシ対策アイテム

超音波 害獣撃退装置

超音波 害獣撃退装置
イノシシだけでなく哺乳類全般に効果がある超音波撃退装置です。庭先に設置すると赤外線で動物の動きをキャッチ。動物が嫌がる超音波を発して対象を遠ざける効果があります。ソーラー充電式なので電源の確保の必要はなく、対象となる動物の種類に合わせて超音波の強さを設定することができます。

押しバネ縦式 くくり罠 12cmサイズ

押しバネ縦式 くくり罠 12cmサイズ
イノシシや鹿を対象としたくくり罠です。害獣の通り道となっている場所に仕掛けることで効果が期待できます。原始的で手作り感が非常に強いアイテムですが、対象にも存在を気付かれにくく、捕獲の際には非常に効果的なアイテムです。

ファームガード

ファームガード
イノシシやタヌキ、ハクビシンなどを対象とした電気柵です。単1電池8本により24時間稼動で60日間の使用が可能です。こちらは比較的簡易型ですので、大きな農場などの広範囲をガードする場合は別の大型の規格の柵を購入すると良いでしょう。

フタワ 強力忌避一番

フタワ 強力忌避一番
液体型の忌避剤です。木タールの焦げついたような臭いが特徴で、哺乳類全般の接近を防ぐ効果が期待できます。できる限り雨風の影響を受けにくい場所に使用しなければいけない点と、畑など広範囲のガードは難しい点だけ注意が必要です。