危険生物

ツキノワグマ

ツキノワグマ

ツキノワグマとは?

ツキノワグマ(月輪熊)は、ネコ目クマ科クマ属に属する哺乳類です。日本では北海道にヒグマだけが、そして本州、四国にこのツキノワグマだけが生息しています。完全に生息域が分離されているので、遭遇してどちらの種か迷うことはないでしょう。

昔は九州でも生息が確認されていたんですが、近年は確かな目撃情報が確認できず、残念ながら2012年に九州のツキノワグマは絶滅と認定されてしまいました(2015年10月に福岡と佐賀の県境でクマらしき目撃情報があって、現在調査中です)。西日本でもその個体数は激減していると言われています。

月輪熊

 

ツキノワグマの身体的特徴

ツキノワグマは体長は100~180cm程度、体重は50kg~から150kg程度です。クマの種類の中ではツキノワグマは比較的小さい種類だと言えるでしょう。体格もヒグマなんかに比べると幾分スタイリッシュな個体が多いです。特に若い個体はそれが顕著で、私達が持っていたクマとのイメージの違いに少し驚くかもしれません。

なんといってもツキノワグマのその最大の特徴は胸についている三日月形の模様です。どうしてこんな模様が付いているのかは理由は確かではありませんが、ツキノワグマだと識別するには一番の特徴だと言えるでしょう。たまにこの三日月の模様がない個体なんかも現れるようですが、その場合は体毛の色で識別。ツキノワグマはクマの仲間の中でも珍しく、体毛が完全に真っ黒な色をしています。

ツキノワグマの身体的特徴

 

ツキノワグマの食性

クマというと川でシャケを取っているイメージが強いですが、それはヒグマの話。じゃあシカやウサギなどの野生の哺乳類を襲って肉を食べているのかと言われればそうでもありません。

実はツキノワグマのメインの食事は植物。ドングリ、ブナ、クリ、ヤマブドウなどを主な栄養源として摂取しています。あとは蛋白源としてアリやハチの巣を探して、巣をほじくりながらそれを食べたりします。大きな体をしていますが、意外にも食べ物はカワイイもので(笑)

あとは動物の死骸なんかも好んで食べます。「クマに会ったら死んだふりだ!」なんてよく言いますが、死肉を食べるクマの前では、死んだふりがいかに愚かなことかがわかりますね。私はごちそうです、と言って自分を差し出しているようなモンです(笑)

そして問題なのは人間の出すゴミも食べること。ツキノワグマは雑食性が高いので、人間が食べ残したものは何だって食べちゃいます。そのためわざわざ人里に下りてきてゴミ集積場を漁ったりなんてこともしばしば。近年ではそれが大きな問題になっていて、ニュースなんかでもよく取り上げられています。

ツキノワグマの食性

 

ツキノワグマの生息地

前述したとおり、日本のツキノワグマの分布は本州と四国です。ヒグマと違って平地や草原などは好まず、落葉広葉樹林が生い茂った山の中だけに住んでいます。昼間は樹木の穴や、洞窟の中などでじっとしていることが多く、朝夕や夜に積極的に行動して餌を探しに動くことがわかっています。

ツキノワグマはあまり縄張り意識を持っておらず、餌が豊富な場所を求めて広範囲に移動を続けます。そのため餌が豊富な場所ではたくさんの個体が集まっていたりすることも。また、この行動力の高さがために人里までやってきてしまい、人間と遭遇して双方にとって不幸な事故が引き起こされてしまうケースもあります。

ツキノワグマ

 

冬ごもりと繁殖

ツキノワグマは知っての通り、冬になると穴にこもって眠るように過ごします。よく冬眠なんて言い方をしますが、クマの場合は仮死状態になるというよりはじっとしているだけなので、どちらかというと「冬ごもり」という言葉のほうが正しいと言えるでしょう。

冬ごもりの期間はその地域の気候にもよりますが、だいたい12月から4月ぐらいまでの間。半年近く穴の中で眠っていると考えると、彼らは意外にのんびりした人生を送ってるのかもしれませんね(笑) ああ、なんてうらやましいスローライフ。

夏のうちに交尾を済ませて妊娠したメスはこの冬ごもり期間中に穴の中で出産します。一度に生まれる子供はだいたい2匹程度。母親グマは3ヶ月程度授乳したあと、2年ほど一緒に子供と行動し、その後子供は自立していきます。

ツキノワグマのリスク回避と対策

 

ツキノワグマのリスク回避(ヒグマとほぼ共通)

やっと本題です。ツキノワグマは基本的に臆病な生き物ですし、決して好戦的ではないです。ですが、人間にとって安全な生き物ではないというのは間違いありません。

まずは何より出会わない努力をしましょう。

人間もツキノワグマと遭遇したくないですが、それは向こうもそうです。できればツキノワグマのほうも人間と遭遇したくないと思っています。まずは不必要にクマが出没するような場所に立ち入らないことです。
登山、ピクニック、山菜取りなど、山に立ち入る理由はいろいろあるとは思いますが、過去に熊騒動があったような場所はやはり避けるべきです。特に雪が残るような春先の山は、冬ごもりの穴に気付かずに近寄ってしまうケースがあって最悪です。

どうしてもクマと遭遇する可能性のある場所に入らなければいけないときには、大人数で騒ぎながら行動する、鈴や笛などの音が出るものを身に着けるなどをして、遠くのクマにこちらの存在をわからせるようにしましょう。定期的に棒で木を叩きながら進むのも良い手です。そうすればクマのほうから距離をとって離れていきます。

ちなみにラジオは駄目です。雑音を垂れ流しっぱなしのものは逆にクマの気配に気付けなくなるためかえって危険です。こちらがいつでも音を出せて、逆にいつでも静まってまわりを伺えるということが、
遭遇リスクを下げることに繋がります。

ツキノワグマ

 
それでも万一遭遇してしまった場合、まずは落ち着くことです。

はっきりいって遭遇してしまったら100%の安全策というものは存在しません。しかし慌ててパニックになってもツキノワグマを刺激してしまい状況を悪化させるだけです。まずは落ち着いて冷静に状況をみて、できることをしましょう。

距離がまだ何十メートルも離れている場合は、ツキノワグマから視線を逸らさずに後ずさりして距離をとります。クマは背を向けて逃げる獲物を追いかける習性があります。この習性はとてつもなく強く、うかつに背を向けて逃げたりすればほぼ間違いなく追いかけられます。ちなみにツキノワグマの走る速度は50km/h以上で、あのウサイン・ボルトより速いです。間違いなく追いつかれて、間違いなく背中から襲われて重傷必至です。

ゆっくりと後ずさりしつつ、武器の準備もしなければいけません。クマ対策の唐辛子スプレーなどを持っているなら手元にその準備を、ないならば何か固くてリーチのある、武器になりそうなものを用意します。どうしても何も見つからなければしかたありません、そのへんの石でもないよりはマシです。

ただしこのとき威嚇的なことは一切しないように。あくまで距離をとって逃げ切るのが最良手で、武器の用意はあくまで最悪の展開への備えです。

それでもまだクマの方からこちらに近寄ってくるようなら、持っている食べ物やリュック等を手放します。
クマがこれらに興味を持った場合はそのまま難を逃れることができるケースがあるのでそっと地面に置いて遠ざかるようにしましょう。

ツキノワグマ

 
うまく逃げ切れたときはいいのですが、相手がこちらに積極的に近づいてきてしまったり、もしくは曲がり角でいきなりバッタリ出会ってしまったりして、数メートルしか距離がない場合。この事態になってしまったら、覚悟を決めて戦いましょう。

そんなバカなと思うかもしれませんが、この状況になった場合に一番生存率が高いのが「戦うこと」です。この状況から走って逃げ切るのは100%不可能ですし、死肉を食べるツキノワグマに対して死んだふりをするのは何の対策にもなりません。この状況から無事に生還した人のほとんどは戦っています。

戦い方ですが、もちろん身体能力では人間はクマに絶対に勝てません。どんなにパンチやキックを浴びせようが、棒で殴ろうが、クマの分厚い筋肉の前には無力です。クマとの戦いで狙うのは「倒すこと」でなく、「戦意喪失させて逃げてもらうこと」になります。

なので狙いは急所の鼻先一点。鼻先に何か強烈な一撃をお見舞いできれば、ツキノワグマは未知の痛みに驚き退散していくことでしょう。クマと対峙するのは相当な恐怖ですが、勇気を振り絞って攻撃してください。覚悟を決めて手を出さなければこちらの生存確率が低くなるだけです。撃退スプレー、ナタ、杖の類を持っていれば相手の前足の攻撃より先にこちらの攻撃を叩き込めるはずです。

どうしてもそういったリーチのある武器が見つからない場合は、落ちている石を持ったり、腕時計を拳につけたり、カギを刃が拳から出るように握り込んだりして、それで鼻先を狙います。より接近を許すことになるので怪我をする危険が高くなりますが、多少怪我をしてでもとにかく鼻先に攻撃を叩き込めれば命を落とすことはなくなります。

ツキノワグマ

 
そして究極に最悪の事態、突然の奇襲を受けてしまった場合です。さきほどの武器による攻撃が失敗してしまったときも同様です。

覆いかぶされたり噛み付かれたりしてしまいますが、とにかく抵抗してください。じっとガードしていても殺されるのを待つのみです。とにかく手や足を、ツキノワグマの目や鼻があるであろう位置に全力で出し続けてください。一発でも入れば相手はビックリして逃げていく可能性があります。この状況になっている時点で怪我を負うのは必至ですが、追い払える可能性だけは放棄しないこと。

 

ツキノワグマの習性豆知識

ツキノワグマの習性を知識として知っておくと不用意に襲われる事態を避けることができます。ここではいくつかその習性を紹介しておきます。

 

1.子供のツキノワグマを守る母熊は危険

これはツキノワグマに限らず大抵の哺乳類に言えることです。母グマは自分の子を守るために、近寄るものを全て敵とみなします。小さいツキノワグマを見つけたときには「わぁ、可愛いー♪」なんてのん気なことを言わずに、近くに「敵意むき出しの母親がいる」と思って警戒するようにしましょう。

 

2.火を恐れない

獣は火を恐れるって知識は間違ってはいませんが、クマに関しては例外です。キャンプ時に焚き火のそばにある荷物を平気で奪っていった事例もありますので、クマ対策として火を使うのはおすすめできません。

 

3.木登りはお手の物

ツキノワグマは木登りが非常に得意です。なので木の上に登ってもツキノワグマは追いかけて登ってきます。しかしツキノワグマに遭遇したときの逃げ場所として木の上が絶対ダメってわけではありません。先に木の上に登れば、下から迫るクマをこちらは靴を履いた足で迎撃できるわけですし、クマのほうも木を登りながら同時に前足で攻撃できるほど器用ではありません。ただしどうやっても持久戦になってクマとのガマン比べになってしまうのは避けられませんが・・・。

ツキノワグマの生態

 

動物園やクマ牧場で楽しむ

ツキノワグマは全国で大抵の動物園で飼育されています。ヒグマより小型で飼育しやすく、集団生活にもすぐに適応するため動物園としても楽なんだそうで。クマ牧場のようにクマに特化して飼育されている施設もあり、そういう場所では餌を与えることもできます。人に飼いならされたツキノワグマはとても人に慣れていて、餌を持ったお客を見つけると、こちらに手を振ったり、両手を差し出して「ちょうだい」のポーズをとったりと愛嬌を振りまくほどです。野生のときとは違ったこういう姿のツキノワグマもなかなか魅力的。

あと動物園で集団で飼われているツキノワグマは社会性を持つことも知られています。必ずボスとなるツキノワグマが現れて、ケンカの仲裁をしたり、見回りをしたりするそうです。一匹狼での行動が多い野生の条件下ではほとんど確認できていない習性です。環境が変わってこういうのが見えるってなんだか面白いですね。

 
広島県安佐動物園のツキノワグマ、クラウド君の高速棒回し動画:

ヒグマ

ヒグマ

ヒグマとは?

ヒグマ(羆)は、ネコ目クマ科クマ属に属する哺乳類です。体長はクマの中でもかなり大型に育つ種で、成獣では500kgを越える個体も記録されています。日本に生息する陸上の哺乳類の中ではダントツで大きな生き物といえるでしょう。

羆

 

ヒグマの身体的特徴

日本にはツキノワグマとこのヒグマ(正確にはエゾヒグマという亜種)が生息しています。ツキノワグマは本州と四国の全域に広く生息していますが、ヒグマは北海道にしか生息していません。完全に生息地が分かれているので、遭遇した場所でどちらのクマか判断してしまって結構です。北海道で出会えばヒグマ、それ以外で出会えばツキノワグマです。

見た目の違いも明白で、ツキノワグマはヒグマにくらべてかなり小さく、最大でも2メートルに届かないほど。またツキノワグマの体毛は真っ黒で胸元に半月型の特徴的な模様があって非常にわかりやすいです。まぁ、ツキノワグマの詳細についてはまた別のページで。

ヒグマとツキノワグマ
↑ツキノワグマ(左)とヒグマの若い個体(右)

 
ヒグマの全長はおよそ2~3m、体重は200kg~500kgです。これはオスのサイズで、メスは全体的にもうひとまわり小さくなります。

しかし食事や環境によってかなり大きさに差が出ることがわかっており、アラスカの食糧豊富な土地では1,000kgを越える巨大なヒグマが発見された例もあります。1,000kgってことは、軽トラック(750kg)よりも遥かに重いってことです。そんなサイズのクマが存在しうるって恐ろしい話だ(汗)

 

ヒグマの食性

クマというと川でシャケを取っているイメージが強いですが、実は雑食性で、割合的には木の実や草本を食べていることのほうが多いです。植物は比較的安定して手に入りますし、栄養価・便通の面でもクマにとっては欠かせない餌。

もちろんヒグマは動物性の餌も狙っていきます。ターゲットは哺乳類、鳥類、魚類、昆虫、ザリガニなど。

しかしここでも意外なのは、昆虫を食べる割合がかなり高いこと。ヒグマはアリ、ハチなどが好物で積極的に巣を探しにいきます。こういった昆虫たちは集団でコロニー(巣)を形成していることが多いため、一度のチャンスで多くの餌を手に入れることができるわけです。しかしあの巨体でアリなんか何百匹食べたってお腹満たされないような気もしますが(笑) 単純に空腹を満たすためというよりは、味的に好物だからという説が強いようです。

あとこれも意外な知識なんですが、ヒグマは積極的に生きている哺乳類・鳥類を狙いません。どちらかというと死肉を食べるケースが多く、腐敗が進んだ屍肉食なんかも食べてしまいます。一般的には強大な捕食者のイメージが強いのでこれはちょっとビックリ。足が速くて力もあるクマが狩りが下手とは思えませんが、この雑食性は、おそらく長い生活の中でより安定して餌にありつけるように進化していった結果なんだと思います。

ただし、これは通常のヒグマの食事の習性です。近年のエゾシカの急増に伴い、生きているエゾシカを狙うヒグマも増え始めました。そして一度新鮮な肉の味を覚えてしまったヒグマはそれ以降、積極的に狩りを行うようになります。これはエゾシカに限らず人間においてもそうで、一度人間の味を覚えてしまったヒグマは大変危険です。

ヒグマの習性と生態

 

ヒグマの生息地

前述したとおり、日本のヒグマの生息地は北海道だけです。本州でもヒグマの化石が見つかるため昔は本州以南にも住んでいたようですが、現在では確認されていません。

他種のクマと同じく森林を好みますが、原野も好むのがヒグマの大きな特徴。これは山林にある固い葉よりも、原野に生える柔らかい草花を好むためと言われています。知床の大きな原野で伸び伸びと過ごす姿には威厳とともに愛嬌さえ感じますね。これからも守っていかなければいけない景色。

しかし近年問題になっているのは人間とクマの生活圏が重なってきていることです。人間側は開発と称して山に近寄っていき、クマは異常気象による餌不足で里に近寄っていきます。そのため人間とクマが出会ってしまう不幸が非常に多くなり、それは双方に不幸をもたらしています。人間を恐れない「新生代クマ」と呼ばれる若いクマも増え始めているため、クマと付き合っていかなければいけない地域の人々にとっては深刻な悩みになっています。

追記:
餌不足で人里にヒグマが出没するっていう話をよくニュースなどでやっていますが、最近ではどうもそうではないのではないかという説が出てきました。人里にやってくるヒグマは餌不足でガリガリかと思いきや、みな丸々と太っているらしいのです。山の餌が不足しているのではなく「人里のほうが餌を確保しやすい」と思われているのではないでしょうか?畑では必ず美味しい野菜や果物が得られますし、ごみ置き場を漁れば人間の食べ残しが見つかります。ヒグマたちが賢い生き方を選択し始めた結果がいまの状況なのでは、という意見が増え始めています。

ヒグマ

 

冬ごもりと繁殖

ヒグマは知っての通り、冬になると穴にこもって眠るように過ごします。よく冬眠という言い方をしますが、体温を下げて仮死状態のようになる冬眠に比べるとヒグマの眠りは浅く、あくまで穴の中でじっとしているだけという表現のほうが近いと言えます。そのため、ヒグマの場合は冬眠ではなく、冬ごもりという言い方をされる場合が多いです。

ヒグマの発情期は初夏で、妊娠をした雌熊は冬ごもりをしているその穴の中で出産します。一度に産むのは1~3匹の赤ちゃんで、体重は400g程度しかありません。赤ちゃんはしばらくの間は視力も聴力もないため、穴の中で母親熊は母乳だけで育て続けます。そして春になると穴から出てきてそのまま生活を共にし、1~2年後には子供は親離れをして独立します。

ちなみに幼少期のヒグマにとって一番の天敵は成獣のヒグマ。ヒグマは共食いをします。子供を連れた母熊は絶対に他のヒグマを近づけることをしません。同族が一番の天敵ってなんだか悲しいですね。自然界だと当たり前の弱肉強食ルールなのかもしれませんが。

ヒグマ対策

 

ヒグマのリスク回避

やっと本題です。ヒグマは基本的に臆病な生き物ですし、決して好戦的ではないです。ですが、人間にとって安全な生き物ではないというのは間違いありません。

まずは何より出会わない努力をしましょう。

人間もヒグマと遭遇したくないですが、それは向こうもそうです。できればヒグマのほうも人間と遭遇したくないと思っています。まずは不必要にクマが出没するような場所に立ち入らないことです。登山、ピクニック、山菜取りなど、山に立ち入る理由はいろいろあるとは思いますが、過去に熊騒動があったような場所はやはり避けるべきです。特に雪が残るような春先の山は、冬ごもりの穴に気付かずに近寄ってしまうケースがあって最悪です。

どうしてもクマと遭遇する可能性のある場所に入らなければいけないときには、大人数で騒ぎながら行動する、鈴や笛などの音が出るものを身に着けるなどをして、遠くのクマにこちらの存在をわからせるようにしましょう。定期的に棒で木を叩きながら進むのも良い手です。そうすればクマのほうから距離をとって離れていきます。

ちなみにラジオは駄目です。雑音を垂れ流しっぱなしのものは逆にクマの気配に気付けなくなるためかえって危険です。こちらがいつでも音を出せて、逆にいつでも静まってまわりを伺える状態を作っておくということが、遭遇リスクを下げることに繋がります。

ヒグマ

 

それでも万一遭遇してしまった場合、まずは落ち着くことです。

はっきりいって遭遇してしまったら100%の安全策というものは存在しません。しかし慌ててパニックになってもヒグマを刺激してしまい状況を悪化させるだけです。まずは落ち着いて冷静に状況をみて、できることをしましょう。

距離がまだ何十メートルも離れている場合は、ヒグマから視線を逸らさずに後ずさりして距離をとります。クマは背を向けて逃げる獲物を追いかける習性があります。この習性はとてつもなく強く、うかつに背を向けて逃げたりすればほぼ間違いなく追いかけられます。

ちなみにヒグマの走る速度は50km/h以上で、あのウサイン・ボルトより速いです。間違いなく追いつかれて、間違いなく背中から襲われて重傷必至です。

ゆっくりと後ずさりしつつ、武器の準備もしなければいけません。クマ対策の唐辛子スプレーなどを持っているなら手元にその準備を、ないならば何か固くてリーチのある、武器になりそうなものを用意します。どうしても何も見つからなければしかたありません、そのへんの石でもないよりはマシです。

ただしこのとき威嚇的なことは一切しないように。あくまで距離をとって逃げ切るのが最良手で、武器の用意はあくまで最悪の展開への備えです。

それでもまだクマの方からこちらに近寄ってくるようなら、持っている食べ物やリュック等を手放します。クマがこれらに興味を持った場合はそのまま難を逃れることができるケースがあるので、そっと地面に置いて遠ざかるようにしましょう。

ちなみにこのときに手放したリュックや食べ物は、「後でクマの脅威が去ってから回収しよう」などとは間違っても考えてはいけません。後のヒグマの習性の項でも記述していますが、これは極めて危険な行為です。一度クマに差し出した物は必ずあきらめてください。

ヒグマ

 

うまく逃げ切れたときはいいのですが、相手がこちらに積極的に近づいてきてしまったり、もしくは曲がり角でいきなりバッタリ出会ってしまったりして、1~2メートルしか距離がない場合。この事態になってしまったら、覚悟を決めて戦いましょう。

そんなバカなと思うかもしれませんが、この状況になった場合に一番生存率が高いのが「戦うこと」です。この状況から走って逃げ切るのは100%不可能ですし、死肉を食べるヒグマに対して死んだふりをするのは何の対策にもなりません。この状況から無事に生還した人のほとんどは戦っています。

戦い方ですが、もちろん身体能力では人間はクマに絶対に勝てません。どんなにパンチやキックを浴びせようが、棒で殴ろうが、クマの分厚い筋肉の前には無力です。クマとの戦いで狙うのは「倒すこと」でなく、「戦意喪失させて逃げてもらうこと」になります。

なので狙いは急所の鼻先一点。鼻先に何か強烈な一撃をお見舞いできれば、ヒグマは未知の痛みに驚き退散していくことでしょう。クマと対峙するのは相当な恐怖ですが、勇気を振り絞って攻撃してください。覚悟を決めて手を出さなければこちらの生存確率が低くなるだけです。撃退スプレー、ナタ、杖の類を持っていれば相手の前足の攻撃より先にこちらの攻撃を叩き込めるはずです。

どうしてもそういったリーチのある武器が見つからない場合は、落ちている石を持ったり、腕時計を拳につけたり、カギを刃が拳から出るように握り込んだりして、それで鼻先を狙います。より接近を許すことになるので怪我をする危険が高くなりますが、多少怪我をしてでもとにかく鼻先に攻撃を叩き込めれば命を落とすことはなくなります。

ヒグマ

 

そして究極に最悪の事態、突然の奇襲を受けてしまった場合です。さきほどの武器による攻撃が失敗してしまったときも同様です。

覆いかぶされたり噛み付かれたりしてしまいますが、とにかく抵抗してください。じっとガードしていても殺されるのを待つのみです。とにかく手や足を、ヒグマの目や鼻があるであろう位置に全力で出し続けてください。一発でも入れば相手はビックリして逃げていく可能性があります。この状況になっている時点で正直言って限りなく絶望的な状況には間違いありませんが、最後の可能性だけは放棄しないこと。

 

ヒグマの習性、豆知識

ヒグマの習性を知識として知っておくと不用意に襲われる事態を避けることができます。ここではいくつかその習性を紹介しておきます。

 

1.自分の獲物への執着心が異常に強い

ヒグマは自分が手に入れた食料に対して「これは俺の物、奪おうとする者は敵」という意識が非常に強いです。道端に小動物の食べ残しなどがあったら絶対に近づかないでください。このときヒグマは敵意剥き出しで襲ってきます。福岡大のワンゲル部が襲撃された事件はこの習性を知っていれば防げたであろう事故です。あの事件のときは、一度ヒグマに奪われたリュックを持ち帰ったために執拗に狙われてしまう結果になりました。一度奪われたリュックは、ヒグマにとってはすでに「自分のもの」になっていて、それを回収して持って帰る行為はまさにヒグマの神経を逆撫でする自殺行為だったのです。

 

2.子供のヒグマを守る母熊は危険

これはヒグマに限らず大抵の哺乳類に言えることです。母グマは自分の子を守るために、近寄るものを全て敵とみなします。小さいヒグマを見つけたときには「わぁ、可愛いー♪」なんてのん気なことを言わずに、近くに「敵意むき出しの母親がいる」と思って警戒するようにしましょう。

3.火を恐れない

獣は火を恐れるって知識は間違ってはいませんが、ヒグマに関しては例外です。過去にヒグマの襲撃を恐れた事例ではみな火を一生懸命に炊いて難を逃れようとしましたが、どれも効果は全くなく、無残な結果をもたらすことになりました。ヒグマの前に火は無力です。

 
ヒグマの習性を実験する動画:

 

動物園やクマ牧場で楽しむ

ヒグマは全国で大抵の動物園で飼育されています。クマ牧場のようにクマに特化して飼育されている施設もあり、そういう場所では餌を与えることもできます。人に飼いならされたヒグマはとても人に慣れていて、餌を持ったお客を見つけると、こちらに手を振ったり、両手を差し出して「ちょうだい」のポーズをとったりと愛嬌を振りまくほどです。野生のときとは違ったこういう姿のヒグマもなかなか魅力的。

あと動物園で集団で飼われているヒグマは社会性を持つことも知られています。必ずボスとなるヒグマが現れて、ケンカの仲裁をしたり、見回りをしたりするそうです。一匹狼での行動が多い野生の条件下ではほとんど確認できていない習性です。環境が変わってこういうのが見えるってなんだか面白いですね。

ヒグマ

 

ヒグマによる大きな事件 >

1.三毛別羆事件

1915年12月に北海道苫前郡苫前村で発生したヒグマによる大量殺傷事件です。日本では最大の獣害事件であるとされています。Wikipediaの事件描写が怖すぎるということでも有名になりました。

12月に冬眠し損ねてしまった大きなヒグマが次々に村の民家を襲撃し、重軽傷者多数、最終的に妊婦や子供を含む7人もの死者が出ました。ヒグマは体長270cm、体重340kgに及ぶ大物で、たった数日間で何度も何度も村に姿を現し、次々に住民を襲撃して食べてしまいました。退治のために組織された討伐隊はなんと600人規模で、ヒグマは最初の事件発生から5日後にマタギの手によって射殺されました。

三毛別羆事件
↑事件後に現場に再現されたヒグマの模型。家屋の入り口と比べるとその大きさがわかる。

 

②石狩沼田幌新事件

1923年8月に北海道雨竜郡沼田町で発生しました。犠牲者は5人で、他3名が重軽傷を負っており、三毛別羆事件に次いで二番目の大きな獣害事件です。当時ちょうど開拓の最中であったこの地域では、住民とヒグマの接触事件が非常に多く、この事件はたまたま山中で羆の餌場に人間が近づいてしまったことで発生してしまったと言われています。

村の祭りが終わったその夜、深夜の山中を家路につく一行をヒグマが襲撃しました。男性1人が死亡、もう1人の男性が生きたまま地中に埋められてしまいました。ヒグマから逃げた一行は近くの民家に立てこもりましたが、追ってきたヒグマが再び襲撃。女性1人が連れ去られて食い殺されてしまいました。翌日には単身で退治に向かった猟師が返り討ちに合い死亡。その翌日に300人規模で結成された討伐隊が山に入りました。山中でのヒグマとの戦いにより1人の男性が犠牲になりましたが、ヒグマは無事退治されました。

石狩沼田幌新事件
↑沼田町郷土資料館で保存されている当該ヒグマの毛皮

 

3.福岡大学ワンダーフォーゲル同好会羆襲撃事件

1970年7月に北海道の日高山系カムイエクウチカウシ山で発生しました。登山にきていた福岡大学のワンダーフォーゲル同好会5人が次々に襲われ、最終的に3人が死亡しました。

一度ヒグマにリュックを漁られた後、そのリュックを持って帰ったしまったため、ヒグマに『自分の獲物を奪われた』という感覚を与えてしまいました。そのため彼らのパーティーは何度も何度も襲撃を受けることになってしまったのです。発生から3日後、地元のハンターの手によってこのヒグマは射殺されました。

カミツキガメ

カミツキガメ

カミツキガメとは?

カミツキガメは、爬虫綱カメ目カミツキガメ科カミツキガメ属のカメ、またはその総称です。

よく混同されてしまいがちな「ワニガメ」も同じカミツキガメ科の仲間です。カミツキガメ科のワニガメ、カミツキガメ科のカミツキガメ。ちょっとややこしいですね(苦笑)

元々は日本国内には生息していなかった外来種で、日本には1960年頃からペットとして輸入されるようになりました。しかし子供の頃は可愛くて扱いやすいカミツキガメは、成長すると体格が大きくなる上に攻撃性がかなり強くなります。近年では飼育放棄された個体が野生化して繁殖してしまう事例が報告されており、問題になっています。

カミツキガメ

 

カミツキガメの身体的特徴

カミツキガメは、甲長が最大で50cm程度の大きさになります。甲長が80cmにも及ぶワニガメに比べるとずいぶん小さいんだなというイメージを持つかもしれませんが、カミツキガメは尻尾が大きく、首もかなり長く伸ばすことができるので、鼻先から尻尾の先までの最大全長は100cm近くに及ぶ場合もあります。やはり大型のカメには違いありません。

甲羅は基本的には滑らかな曲線型ですが、縦方向に三本の薄い隆起線があります。ワニガメは甲羅のキールが強くてトゲ状の甲羅をしているので、カミツキガメとワニガメは甲羅の形状を見れば容易に区別することができます。

腕は太く、肩まわりもかなりガッシリとしています。そして非常に発達した爪も大きな特徴。主に水底を這うように行動するカミツキガメは、この爪を使って物を掻き分けるようにして餌を探します。

あと、前述しましたがカミツキガメは尻尾が通常のカメに比べて非常に長いです。そのため調査の際などには、地面に残った尻尾の痕跡と足跡の間隔を比較すれば、それがカミツキガメのものであるかどうかの判別が可能です。ちなみにオスの個体のほうが大きく立派に育つ傾向にあります。

カミツキガメの身体的特徴

 

カミツキガメの生活と繁殖

カミツキガメはほぼ水棲で、一生のほとんどを沼や池などの水がある場所で過ごします。中でも水底に泥が溜まっていて、石・流木・水草などの遮蔽物が多い環境を特に好みます。 水の流れが早い場所、もしくは水が澄んだ場所は逆に好まないため、渓流などで発見されることはあまりありません。

気温の変化には強いほうで、原産地であるアメリカ全ての場所でその気候に対応できています。そのためもし日本のどこで捨てられても生きていくことができてしまいます。この適応能力の高さが、野生下繁殖問題の大きな原因に。

繁殖期はこれといって決まっておらず、冬以外であればいつでも交尾行動をとります。産卵は初夏あたりに行われることが多く、一度に20~30個程度の卵を産みます。卵の大きさはピンポン玉をひとまわり小さくした程度で、だいたい3ヶ月程度で孵化します。

生まれた子ガメが性成熟するまでには約5年。寿命については検証データが少ないためなんともいえませんが、80年は生きるのではないかと考えられています。

生まれたばかりのカミツキガメとカミツキガメの卵の大きさの比較
↑生まれたばかりのカミツキガメ(左)と、カミツキガメ・ワニガメ・ピンポン玉の大きさの比較(右)

 

カミツキガメの主食と天敵

カミツキガメは雑食性です。動物性であれば、昆虫、カエル、ヘビ、魚、ザリガニ、鳥類、小型哺乳類、植物性であれば、茎、葉、花、果実、藻など、本当に口に入るものは何でも選ばずに食べています。

逆に天敵となるのはワニや大型のヘビ、肉食性の大型鳥類・哺乳類ですが、日本においてはそれらがほとんど存在しないため、天敵と呼べるのは人間だけになります。

カミツキガメと天敵

 

カミツキガメの性格と攻撃性

ワニガメと比べると、大きさや甲羅の物々しさで劣る(?)ため、見た目のインパクトではどうしてもカミツキガメは負けてます。しかし、どちらかというと実際に気をつけなければいけないのはカミツキガメのほうです。

何故かというと、カミツキガメは気性が荒く、非常にその動きが俊敏だからです。特に陸上に上がったときは警戒心が強く、目の前に近づいたものに瞬時に咬みつこうとする習性があり、しかも長い首を伸ばすようにして飛びついてくるのでリーチもあります。距離があるから大丈夫だと思って不用意に近づくと痛い目に遭うことになります。イタズラ心で指を失うなんてことにならないように(苦笑)

ちなみに陸上で警戒心が強いのは、水中ほど自由に身動きが取れないためだと考えられています。カミツキガメは水中では大きな水かきを使ってスイスイ素早く動けるので、危険が迫れば自ら逃げていきます。しかし動きづらい陸上では逃げ切れないと判断し、逆に攻撃的になって威嚇体勢をとるというわけです。

カミツキガメの攻撃性

 

人間からみたカミツキガメの危険性

日本にて野生化してしまったカミツキガメの、人間に対しての危険性についてです。この項についてはワニガメと共通で全く同じことが言えます。

近年ペットとして飼育されていたカミツキガメが捨てられて、野生化していることが問題になっています。大人の指でも簡単に咬みちぎるような危険なカメが近所の池にいるなんて信じられない!なんてヒステリックになってる親御さんなんかもいるでしょう。

しかし結論から言います。普通に生活していればカミツキガメに咬みつかれる可能性はまずありません。

カミツキガメは産卵時以外は、常に水中にいます。しかも綺麗な川ではなく、池や沼のような濁った場所を好みます。つまり、人間のほうからそういった池や沼の中に足を入れなければ、絶対に接触しないわけです。池のそばで遊ぶことはあっても、いまどき濁った水の中に入って遊ぶ人はいないでしょう。

しかもカミツキガメは水中で自分より大きな生き物に遭遇するとまず逃げます。そもそも水中ではほとんど咬みつくことはしないとも言われています。

これらのことをふまえて、人間がカミツキガメに咬みつかれるケースがもしあるとすれば、それは人間のほうからカミツキガメにちょっかいを出したときです。カミツキガメをわざわざ陸上にあげて、面白がって指を差し出したりすれば、びっくりするぐらいのスピードで咬みつかれて見事にその指を失うことでしょう。そんなんはもはや自己責任ですね。

もしカミツキガメを見かけたなら絶対に手を出さず、警察に連絡するようにしてください。長い棒で距離をとってイタズラするのであれば大丈夫だろうと思いがちですが、このカメはに、1メートル程度をすごいスピードで首を伸ばしながらジャンプして飛びかかる力があります。絶対にちょっかいを出してはいけません。

 


↑カミツキガメにちょっかいを出して逆襲されている動画。かなりビックリします。

カミツキガメの生態

 

日本におけるカミツキガメの繁殖

前述したとおり、日本の気候に適応できる、天敵がほとんどいないという特徴によって、日本では本来は存在しなかったはずのカミツキガメの繁殖を許してしまっています。

有名なのは千葉県の印旛沼水系。印旛沼水系ではかなり昔から繁殖を許してしまっていて、毎年何百匹単位に及ぶ数のカミツキガメを捕獲・駆除しています。県がかなり力を入れて対策に乗り出していますが、生活のほとんどを水中で過ごすカミツキガメの完全駆除はさすがに現実として厳しいようです。

 

カミツキガメの飼育

昔はペットとして自由に飼育することができました。しかし手に余るサイズにまで成長してしまったカミツキガメを池などに逃がしてしまう事例が多く、そこで繁殖したカミツキガメが他の生態系を脅かす事態に。そのため2005年に特定外来生物に指定され、その飼育は禁止になりました(それ以前から飼っていた場合のみ必要な手続きを踏めば飼育許可が下りる)。

人気芸人どぶろっくの江口さんがカミツキガメの無許可飼育で書類送検されましたが、これは以前から飼育していて法改正後に飼育許可申請をするのを怠っていたために起きた事件です。

もちろん野生のカミツキガメを捕まえて飼育するのも法律違反です。ちょっと飼育してみようなんて考えは起こさないようにしましょう。

カミツキガメの飼育は許可が必要。新規飼育は認められていない

 

野生のカミツキガメを撮影した動画(アメリカ):

イモガイ

イモガイ

イモガイとは?

イモガイは、イモガイ科の貝類の総称です。日本だけでも約120種類の仲間が確認されています。

基本的にはサンゴ礁などがある温かい熱帯・亜熱帯の海に住んでいて、日本では沖縄・鹿児島、暖流が通る高知県・和歌山県・千葉県などで観察することができます。浅瀬から深海までその生息範囲は広く、海岸線の岩場などでもその姿を見かけることがあります。

イモガイ

 

イモガイの身体的特徴

イモガイは、大きさが大体10~20cm前後です。貝殻の形は分銅を横にしたような円錐型の形状で、螺塔があまりありません。これがサトイモの形にも見えるところからイモガイという呼称がきているようです。

貝殻の模様は種類や個体によって様々で、中には非常に鮮やかなものも多いのでコレクターには人気があったりします。

イモガイの貝殻は様々な模様をしている
↑イモガイの貝殻。綺麗な模様のものが多く、古代では腕輪などの装飾品に加工されていたことも。

 

吻は自分の体長と同じぐらいの長さまで伸ばすことができ、これによりかなり広角度に周囲の様子を探ることが可能です。

移動速度は極めて遅く、カタツムリが地面を這うようにゆっくりとしか進むことができません。そのため普段は岩場に隠れたり、砂の中に潜ったりして、獲物を待ち伏せする狩りのスタイルをとっています。口の中には吻があり、その先端には毒を含んだ銛のような武器を持っています。イモガイはこれを獲物に向けて突き刺し、毒を送り込んだ上で獲物を引き寄せます。そして大きな口で丸呑みにしてしまうわけです。

 

イモガイの生活と繁殖

基本的にイモガイは夜行性です。活動が活発になるのは暗くなった夜の時間帯。

イモガイは岩場に卵嚢を複数産みつけます。これは長い日数をかけて行われ、2週間で100近い卵嚢を産みつけるときもあるようです。この卵嚢には数千単位の卵が格納されており、これらはほかの貝類と同じくトロコフォア幼生期、ベリジャー幼生を経て成体へと成長していきます。

イモガイ卵鞘
↑イモガイの卵鞘

 

イモガイの食事と天敵

イモガイは種類によって食性に差があります。大きくはゴカイなどを食べる虫食性、貝類を食べる貝食性、魚を狙う魚食性の3つに分類されます。ここで危険なのは魚食性のイモガイです。以下このページでは魚食性のイモガイについて解説していきます。

捕食方法は前述したとおり。獲物を岩陰や土の下に隠れて待ち伏せし、不意を突いて毒針で攻撃して一気に丸呑みしてしまいます。自分と同じぐらいの大きさの魚でさえも丸呑みにしてしまうから驚き。口を大きく広げて獲物を取り込むかのように体内に運び入れていく様子には鳥肌が立ちます。

おぞましい狩りの方法を持っている生き物なので、一見して敵はいなそうですが、
実際にはカニなどの甲殻類がイモガイの天敵となります。
カニの甲羅に対してはさすがの毒針も無力なようで。
成す術もなく食べられてしまいます。

イモガイの顔アップ(左)、土の中に潜って獲物を待ち構えるイモガイ(右)
↑イモガイの顔アップ(左)、土の中に潜って獲物を待ち構えるイモガイ(右)

 

イモガイの人間に対しての危険性

イモガイの銛に含まれる毒は神経毒で、とてつもなく強力です。刺された魚や貝類はその毒で即死するぐらいです。

これは人間にとっても驚異的なもので、国内に生息するイモガイの中で一番毒性が強いといわれるアンボイナの場合は、その体内に人間30人を死に至らしめる量の毒を保持していると言われています。とんでもない貝ですね(汗)

実際にイモガイに刺される事故は報告されているだけで30件程度。そのうち8人が命を落としています(うち7人は未成年)。ただし、これはあくまで報告されている数字であって、サンゴ礁近辺で溺れ死んだ水難事故の中には、イモガイが原因のものが多く含まれていると考えられています。

沖縄ではイモガイのことを 『ハマナカー(刺されると浜半ばで死んでしまう)』と呼びますが、こんな呼び方が定着したということは、昔からそれ相応の犠牲者がいたということを表しているといえるでしょう。

イモガイの毒銛
↑イモガイの中でも危険性が高いアンボイナガイ(左)、イモガイの毒銛(右)

 

イモガイに刺されないために

危険な毒貝としての知名度が低かったイモガイですが、近年では危険な生き物を紹介するTV番組で取り上げられることも多く、見る者にインパクトを与える捕食方法が話題になってSNSで情報が拡散されることも増えました。幸いにも一昔前に比べて知名度は格段に高くなっています。

『岩場で遊ぶ際には危険な生き物がいる』 という情報共有がまず大事な一歩。特に子供のほうが致死率が高いので小さなお子さんを持つ家庭では特に注意するようにしましょう。

イモガイは本来、日本でも南のほうの暖かい海に生息する生き物ですが、近年の温暖化で熱帯の生き物はどんどん生息地を広げています。最近では天草のあたりでも存在が確認されてニュースになりました。いずれは日本のほとんどの沿岸でイモガイを見かけることになるのではないでしょうか。

とにかくこの形状の貝を見たら、不用意に触らないことです。イモガイは自分から動くことはほとんどなく、動いたとしても非常に緩慢です。こちらからちょっかいをかけなければ襲い掛かられることもありません。貝殻の模様が綺麗であることから何も知らずに触って攻撃されるケースが事故のほとんどです。

また、イモガイは危険を感じると身を貝殻の奥のほうまで引っ込めて隠れることもあります。中身のない死貝だと思って油断すると危険です。

気をつけたいのは、浅瀬で気付かずに踏んずけてしまうパターン。遊泳場になっているような砂浜にはまずイモガイはいないので気にする必要はありませんが、岩場に立ち入るときは靴やサンダルなどを履くようにしましょう。

また、よく似た形状の貝でマガキガイという食用の貝がいます。潮干狩りなどでこれと間違えてイモガイを触ってしまい事故に遭うケースも確認されています。一応マガキガイは貝殻の外側に特徴的な切れ込みがあるので判断はできるのですが、判断に自信がない場合はこの形状の貝には触らないほうが賢明です。

イモガイの捕食
↑魚を丸呑みにする途中(左)、完全に魚を体内に取り込んでしまった後(右)

 

イモガイに刺されてしまったら

毒銛には返しもついているので痛そうなイメージがありますが、実際には刺された直後は、蚊に刺された程度の痛みしかなく自覚がないことが多いようです。そして知らない間に深刻なレベルまで毒が回ってしまいます。

症状としては、徐々に刺された箇所の痛みが増していき、激痛レベルに。そして腫れが大きくなり、全身の痺れ、めまい、嘔吐、発熱が認められて、症状が重い場合には全身麻痺が起き、呼吸不全により命を落とすことも。

刺された、もしくは刺された疑いがあるときはすぐに陸に上がってください。そのまま海中にいると溺れてしまう可能性があります。もし刺された箇所が分かるならば、毒を口や吸引器で少しでも吸い出し、その箇所から心臓に近い位置をタオルなどで縛り、安静にしつつ病院に向かってください。

残念ながらイモガイの毒に対しての血清というものはありません。ですので人間の自然治癒力で毒が分解されるのを待つことになります。毒のピークは5~6時間後というので、それが済むまでひたすら耐えることになりますが、幸いイモガイの毒は、心筋や中枢神経には影響がありません。人工呼吸器によって呼吸不全のリスクさえ回避すれば命を落とすことはないそうです。

イモガイの毒と刺されてしまったときの対策

 

魚を毒銛で攻撃して丸呑みにするイモガイの動画:

オオムカデ

オオムカデ

オオムカデとは?

オオムカデとは、オオムカデ目・オオムカデ科に属するムカデ全般のことをいいます。「オオムカデ」という名のムカデがいるわけではありません。

日本でオオムカデ科に属するのは、全国的にはトビズオオムカデ、アカズオオムカデ、アオズオオムカデなどがいて、沖縄限定ではハブオオムカデ、タイワンオオムカデなどがいます。

生息範囲、知名度、数的に考えるとトビズオオムカデが圧倒的に多く、日本でオオムカデといったら、トビズオオムカデのことだと考えて特に差し支えありません。このページでもトビズオオムカデのことをイコール「オオムカデ」として解説しています。

トビズオオムカデは赤足と黄色足がいる

 

オオムカデ(トビズオオムカデ)の身体的特徴

トビズという呼び名は、頭部が鳶色(赤褐色)であることからきています。足は基本的には黄色の場合が多いです。しかしオオムカデは個体によって体色に大きく差があって、鮮やかな朱色の頭を持つものもいれば、毒々しい濃厚な赤色の足を持つものもいたりします。ペットとして飼育する人にとっては、体色はその価値が決まるかなり重要な要素になっているようです。

体長はだいたい8cm~15cm程度。21個の体節から長い足が1対ずつ生えていて、しかも蛇行するように動くために、実際に目にしたときは数字以上の大きさを感じます。

ちなみにオオムカデの足の数は42本。ムカデは漢字では「百足」と書きますが、実際100本ということはなくムカデの種類によって数はまちまちです。ゲジ目では最少で30本、ジムカデ目では最多の346本の種がいます。あと足が多い種ほどその足の長さは短くなる傾向にあります。

オオムカデの足は42本

 

オオムカデの生態

オオムカデは北海道から沖縄まで日本全土に生息していて、活動時期は冬以外。基本的には落ち葉・石・コケの下などの湿った場所に生息しています。

夜行性なので夜になると活発的に移動して、昆虫や小動物を捕まえて食べています。オオムカデはトノサマバッタやゴキブリはもちろん、小型のネズミまでもを捕まえるぐらいに獰猛です。触覚で獲物の体温を感知し、急激に接近しその鋭い牙で攻撃して毒を流し込みます。毒を流し込まれた獲物はその作用によって動くことができなくなり、そのまま鋭いアゴの餌食になります。

冬は樹木の隙間の奥や、土の中などに潜って寒さをしのいで過ごしています。温かい隙間を狙って入り込んでいくので、その結果として人が住む屋内に紛れ込むこともしばしば。かなり狭い隙間にまで入り込むことができるため、古い木造建築の家屋などは簡単に侵入されてしまいます。

オオムカデの捕食。大型の個体であればネズミも食べる

 

オオムカデの生殖方法

オオムカデの生殖行動が活発化するのはだいたい5月から6月の間。この時期にオスとメスが出会って意気投合すると、オスは自分の精子が詰まった精筴という袋を排出します。メスは自分の生殖器でそれを体内に取り込んで保存しておきます。そして産卵の際にその精子を使用して受精卵を作り、卵を産み出すわけです。1度精筴を受け取れば半年ぐらいの間、数回に渡って産卵が行えるというから驚きです。

狭くて湿度のある小さな空間を巣穴とし、一度に50~80個程度の卵を産みます。メスは自分の体で卵を包み込むようにして、地面に触れないようにしたり、舌で舐めてカビや乾燥から守ったりします。このメスの行動がないと卵は無事に孵らないそうです。これは卵が孵っても幼体がある程度成長するまでは続きます。

幼体は2、3ヶ月程度で親離れしてそれぞれ散っていきます。生殖行動が可能になるまでは3年かかると言われており、その間に何度も脱皮を繰り返して成長していきます。ちなみに寿命は7~10年程度です。

オオムカデの子供と卵

 

人間にとってのオオムカデの危険性

前述したとおり、オオムカデはよく人家に侵入してきます。夜行性でしかも狭くて温かいところに潜り込む習性のために、寝ている布団の中に入ってこられるケースもしばしば。ぐっすり寝ていて無抵抗であってもムカデは容赦なく咬みついてきます(涙)

かなり鋭い牙を持っているので咬みつかれると非常に痛く、しかもその毒は強烈です。血球溶解作用を持つ毒で、その成分はスズメバチのものに非常に近いもの。咬まれた箇所は大きく赤く腫れあがって熱を持ち、電流が走るようなピリピリした激しい痛みがあります。この症状が数時間続いて非常に苦しい思いをすることに。筆者も膝を咬まれたことがありますが、精神的にも肉体的にもかなりしんどいです。

いちおうオオムカデの毒で命を落とすことはありませんが、乳幼児が首などを咬まれた場合は重症に至ることもあります。あとごくわずかな確率ではありますが、アナフィラキシーショックの可能性もないわけではありません。(※アナフィラキシーショック・・・毒に対して免疫反応が過剰に働いて重篤な症状を引き起こしてしまうこと)

 

もし咬まれてしまったら

寝ているときに咬まれた場合、もしくは乳幼児がいつの間にか咬まれた場合は、咬んだ相手がムカデだったかどうかもわかりません。まず咬まれた部分を確認してみましょう。

2本の牙によって挟まれるので傷が2箇所ある場合が多いですが、咬まれ方によっては1箇所しかないときもあります。蚊に刺された痕のパワーアップ版みたいな大きな腫れあがり方をして熱を持っています。そして時間の経過とともに毒が反応を起こして、痛みが傷のまわり半径5cmぐらいに広がっていきます。

処置としては、まず咬まれた場所を43℃以上のお湯で温めつつ洗い流して下さい。このとき指を使って傷口から毒が出ていくように押し出します。熱くて大きな痛みを伴うかもしれませんが、ここは我慢してください。オオムカデの毒にはポリペプチドやヒスタミンといった、熱に弱い成分が含まれているので、これらの毒を熱で無効することで後々の苦しみをかなり軽減することができます。

その後はもし常備していれば虫刺され薬を塗ります。キンカン、もしくは抗ヒスタミン剤やステロイド成分の入った塗り薬が効果的です。塗布後はアイスノンなどで冷やして安静にしましょう。

これらの処置を済ませて数時間安静にしていれば症状は治まってくると思いますが、どうしても症状が引かずに苦しみが続く場合は病院へ。特にオオムカデに咬まれるのが初めてでない方はアナフィラキシーショックの可能性もあります。大事をとるに越したことはないでしょう。

オオムカデの毒牙

 

オオムカデに咬まれないために

咬まれた後の処置のことを知っておくことも大切ですが、やはり理想は咬まれないことです。ここではオオムカデに接触しないための心がけをいくつか紹介しておきます。

 

1.オオムカデが好きな環境を知る

オオムカデはじめじめした湿気のある狭い空間が大好きです。家の周りにそういった場所はありませんか?庭の置石、積み重ねられた落ち葉、老木、屋外に雨ざらしになった木材、プランター、放置ゴミなど、人家のまわりにはオオムカデが住処として好むものがいっぱいあります。さらにこういった環境にはオオムカデの餌になる生き物までもが集まってきます。これらを処分したり、整理・整頓・掃除をしたりすることによってオオムカデを人家から遠ざけることができるわけです。

またそういった環境で作業などするときは、不用意に隙間や放置物の下に手を突っ込まないこと。オオムカデは何かに接触されると反射的に咬みついてくる生き物です。必ず厚手の軍手などを装着して、オオムカデの存在を意識しながら作業するようにしましょう。

オオムカデ

 

2.屋内に侵入させない

これが何より一番大事なことでしょう。どんなに普段気をつけていても寝ているときに近寄って来られればアウトです。オオムカデに屋内に侵入させない工夫を考えましょう。

まずは戸締りの徹底から。トイレやお風呂の小窓なんかは常時少しだけ開けておくなんて家庭も多いでしょうが、昼間はともかく夜間の間は閉めるようにしてください。湿気を求めてオオムカデが入ってきてしまいます。その窓が2Fや3Fにあったとしても、オオムカデは垂直な壁を平気で登っていけるので同じことです。

次に屋内と屋外を結ぶ隙間を塞ぎましょう。木造家屋なんかだと、長い生活の内に家屋が劣化して縁の下や天井へ通じるような隙間が出来がちです。あからさまな隙間はオオムカデの侵入経路になってしまうので、壁材やパテなどできっちり塞いでください。

仕上げに防虫剤を使います。ムカデよけの薬としていろんな商品が出回っていますが、自分の経験といろんな方の話、Webでの口コミから判断するに一番効果があると考えられるのはナフタリンです。よくタンスの防虫剤なんかに使われているので、そういった商品をそのまま利用します。玄関、床下、天井裏などの侵入経路として怪しい箇所に配置しましょう。

ただしナフタリンはムカデを追い払うほどの強力なゆえに、人体にも害を及ぼす成分です。滞在時間が長くなる居間や寝室などに過剰に配置することは控えましょう。常識的な量の配置ならば問題はありません。ただし幼児やペットがいる家庭は、誤って口に入れないような配慮は必須です。

ナフタリン

 

3.オオムカデが部屋の中に現れた!倒し方は!?

ムカデ専用のスプレー系殺虫剤を使うのが一番ベターです。使用方法は商品によって違うのでそれぞれ取り扱い説明を熟読しておいてください。

しかしありがちなのは、いざオオムカデが現れたときにスプレーが手元にないパターン。スプレーを取りに行っている間に見失うのが必至ってときには、しょうがない、打撃戦です。スリッパや太い雑誌を丸めたような武器で戦いましょう。

しかし大ムカデはその見かけどおり、硬い鎧で体が覆われていて頑丈です。おそるおそる叩いてみたって程度では、奴ら全くひるみません。「粉々に粉砕してやるッ!」ってテンションで思いっきり全力で叩いてください。それで動きが止まったのを確認したら、ここで大事なのはもう1回思いっきり叩くことです。オオムカデは刺激を受けた際に、死んだように動きを止める場合があります。ここで油断すると突然素早く動き出して一目散に逃げていくので、死んだふりであろうが、本当に死んでいようが、もう一度叩いて確実に息の根を止めましょう。

万が一逃がして見失ってしまった場合、ナフタリンを使いましょう。オオムカデが隠れたと思われる隙間に投入すれば、嫌がって出てくることが多いです。それでも発見することができなかった場合はナフタリンを一時的に部屋中に重点配置します。そうすればオオムカデはその部屋から出ていくか、弱ってそのまま死んでしまいます。

 

野生の子持ちオオムカデの動画:

ワニガメ

ワニガメ

ワニガメとは?

ワニガメは、爬虫綱カメ目カミツキガメ科ワニガメ属のカメのことです。

名前のとおりワニのように大きな口を持ったカメで、英名もAlligator snapping turtle(ワニのように咬みつくカメ)となっています。映画「ガメラ」に似ていると思った人、正解です。 そのモデルになったカメがワニガメなのです。

元々日本には生息していなかった種のカメで、原産は北アメリカ大陸。ペットとして輸入されて日本国内に持ち込まれていました。しかし成長すれば1メートルほどにもなるその大きさから飼育は困難で、その飼育放棄により野生化してしまった個体が定着してしまい、現在大きな問題になっています。

オオワニガメ

 

ワニガメの身体的特徴

ワニガメは甲羅の大きさが80cm程度、全長だと120cmほどに成長します。体重は大きな個体では100kgを超えることもあり、カメの中でもかなり大きな種類だといえます。

最大の特徴は頭部。ほかのカメに比べて非常に頭部が大きく、アゴ先が鋭く尖っています。このアゴは非常に強靭で、人間の指ぐらいなら簡単に数本まとめて咬みちぎってしまうほど。その力は300kg~500kgといわれていて、他のカメや貝類をいとも簡単に噛み砕いて食べてしまいます。しかしそれだけ攻撃に特化してしまったせいか、その頭が大きすぎて甲羅の中にしまうことができません。まぁ、天敵がほとんどいないワニガメにとっては頭部を隠すことに意味はないかもしれませんが。

また口の中には小さくて細い、鮮やかなピンクをしたミミズのような舌があります。ワニガメは水中でこれをまるで小さな生き物かのように動かして、近寄る魚を捕食しています。

首の周りにはトゲのような突起物が並んでいます。これで水の流れを感知して、獲物の位置を把握したりします。嗅覚も遠くの死肉を嗅ぎつけるほど非常に敏感。ワニガメは見た目よりも遥かに高度な捕食能力を備えたハンターなのです。

甲羅にはごついトゲ状のものがいくつも重なるようについています。水の抵抗が死活問題になる海ガメなどはつるつるした凹凸のない甲羅になりますが、ワニガメは基本的には水の流れがない、池や沼地に住んでいます。岩に擬態するため、ワニなどに捕食されないために独自に進化した結果だといえるでしょう。

ワニガメの舌と甲羅
↑擬似餌の役割をする小さな舌(左)と、アリゲーターをも退ける丈夫な甲羅(右)

 

ワニガメの主食と天敵

ワニガメは雑食性で、とくに動物性のものは何でも食べてしまいます。魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、それぞれ生きていようが死んでいようがお構いなし。ほかには貝類や果物なんかも食べたりします。

狩りの方法は待ち伏せと、夜間の積極的な索餌行動の2つ。待ち伏せの際は前述したとおり舌を疑似餌に見立てて捕食する手法をとることがあり、まだ幼い個体であるほどこの手法に頼る傾向が強いようです。体が小さい間はむやみに動き回るより、岩のようにじっとして餌を待ったほうが自分の身の安全にもなるからでしょう。

逆にワニガメにはこれといった天敵はいません。大型の亀にとっての天敵は通常はワニですが、ワニガメの甲羅はそのワニの顎の力を持ってしても砕くことができません。そもそも日本にワニいませんしね(笑)。ただし前述のとおり、生まれて間もないような小さな個体であれば、肉食性の鳥類・哺乳類に食べられてしまうことはあります。

ワニガメの捕食と天敵

 

ワニガメの住みかと繁殖

ワニガメは爬虫類の中でもかなり水に依存して暮らしています。水の流れの少ない池や沼、それも植物が生い茂っていて泥で濁った水質を好みます。生活のほとんどを水の中で過ごし、自ら陸に上がることはまずしません。

逆に自ら陸に上がる日。それは3年に一度の産卵のときです。

春に交尾を済ませたワニガメは夏前ぐらいの時期に陸に上がり産卵巣を作ります。土の中に産み付けられる卵は6個~50個程度。秋には卵から孵化して、その子供たちは水の中に帰っていきます。

ワニガメは繁殖できるまで成長するのに10年から15年かかるといわれています。繁殖速度がそれほど早くないため、乱獲が横行したアメリカではレッドリストに登録されてしまいました。

ワニガメ
↑ワニガメの子供

 

人間からみたワニガメの危険性

ようやく本題へ。ワニガメの人間に対しての危険性についてです。

近年ペットとして飼育されていたワニガメが捨てられて、野生化していることが問題になっています。大人の指でも簡単に咬みちぎるような危険なカメが近所の池にいるなんて信じられない!なんてヒステリックになってる親御さんなんかもいるでしょう。

しかし結論から言います。普通に生活していればワニガメに咬みつかれる可能性はまずありません。

ワニガメは産卵の時以外は常に水中にいます。しかも綺麗な川ではなく、池や沼のような濁った場所を好みます。つまり、人間のほうからそういった池や沼の中に足を入れなければ、絶対に接触しないわけです。池のそばで遊ぶことはあっても、いまどき池の中に入って遊ぶ人はいないでしょう。

しかもワニガメは水中で自分より大きな生き物に遭遇するとまず逃げます。そもそも水中ではほとんど咬みつくことはしないとも言われています。

唯一自ら陸地に上がってくる産卵時ですが、産卵自体3年に一度しかなく、運悪くそのときに遭遇しても、産卵を控えたワニガメの攻撃性は低く、ワニガメのほうから逃げていきます。

これらのことをふまえて、人間がワニガメに咬みつかれるケースがもしあるとすれば、それは人間のほうからワニガメにちょっかいを出したときです。ワニガメをわざわざ陸上にあげて、面白がって指を差し出したりすれば、びっくりするぐらいのスピードで咬みつかれて見事にその指を失うことでしょう。そんなんはもはや自己責任ですね。

もしワニガメを見かけたなら絶対に手を出さず、警察に連絡するようにしてください。

ワニガメの攻撃性

 

ワニガメの飼育放棄問題

人間が咬まれるトラブルはまず起こりえないだろうということを書きましたが、だからといって「じゃあ飼育放棄してもいいや」と簡単に思ってもらっては困ります。

ワニガメは自分の体より大きなワニ以外に天敵がいません。つまり日本では完全に無敵というわけです。濁った水中でおとなしくしていれば、唯一の脅威である人間の目に止まることもありません。さらにワニガメの寿命は30年~100年。これが日本の自然に放たれればどれだけ生態系を崩してしまうか、その想像は容易でしょう。

2016年現在、ワニガメの新規飼育はかなり厳しくなりました。多数の書類申請を行い、何万円もする申請料金を払い、これまた高額なマイクロチップを埋めなければなりません。またこれだけ大きな、しかも水棲のカメを飼育するとなるとその設備投資も多大な金額になります。
そして初期投資以上に、継続飼育していくには精神的にも金銭的にもたくさんの苦労が発生していきます。

「そこまでしてでも飼いたい!」というアツい気持ちは否定しませんが、安易な覚悟でとりあえず飼ってみようなんてのは控えてください。「何十年も生きるワニガメと一緒に人生添い遂げるんだ!」っていう覚悟はやはり必要です。

追記:
ちなみに飼育放棄に関して言えば、ワニガメ以上にタチが悪いのは実はミドリガメ。正式にはミシシッピアカミミガメという学名なんですが、彼らは食欲が旺盛で繁殖力が強く、しかも意外なことに体長30cmという大きさまで成長します。小型の鳥類さえも集団で襲って食べる彼らは、生態系の壊すという点ではワニガメに劣りません。ワニガメはもちろんそうですが「ミドリガメぐらいなら池に捨ててもいいだろう」なんて甘い考えは絶対に持たないようにしてください。
→鳩を襲って食べるミドリガメの動画

ワニガメの生態

 

日本国内での主なワニガメ捕獲事件

国内でのワニガメ騒ぎを何件か紹介します。ここで紹介しているのはあくまでたくさんの事例の中のほんの一部です。

 

1.2006年6月 東京都 上野公園不忍池

東京都台東区の上野公園不忍池でワニガメのメスが発見されました。通行人が穴を掘っている大きなカメに気付いて警察に通報したそうです。甲長37cmの比較的若い小さな個体でしたが、驚きは産卵した卵と一緒に見つかったこと。ワニガメが野生化して適応したことはあっても、繁殖に成功している例はまだ確認されていません。

この件では最初に6個、またその後に9個と合計15個の卵を回収しています。有精卵だとすれば池の中に別にオスがいて繁殖している可能性がありますが、その卵が有精卵だったかどうかは不明。

しかしこの不忍池にはかなりの数のワニガメが生息しているとの噂があって、公園に詳しい地元民やホームレスにとっては、その存在は有名であったようです。可能性としてはすでに繁殖に成功しているとみたほうが自然のような気が。噂レベルではありますが、水を飲んでいる鳩を大きなカメが襲って食べたという目撃談も確かに存在します。

不忍池のワニガメ

 

2.2009年6月、9月 愛知県 堀川

愛知県を流れる堀川の筋違橋付近で4年ほど前からワニガメの目撃情報が相次いでいました。調査の結果2匹の個体を確認し、2009年6月にそのうち1匹のオスの個体の捕獲に成功しました。甲長53cm、体重は37kgだったそうです。
→捕獲者のブログ「どようさんのオケラみち」

その後同年9月にもう1匹(♀)を捕獲しましたが、事前に撮影されていた個体とは違う可能性が高いと判断されました。「普通のカメとは明らかに違う子ガメを見た」という目撃情報もあって、残念ながら堀川では繁殖に成功してしまったという見方が強まっています。トゲスッポン、ブルーギル、アリゲーターガーの姿も確認されている堀川は外来種のメッカになってしまいました(汗)

 

3.2009年8月 福岡県 福岡競艇場

福岡市中央区の福岡競艇場のボートレース場にて発見されました。レース前に待機中だった乙藤智史選手(当時24歳)が水面にプカプカと浮かぶワニガメを発見して職員に通報、
まさかの怪物の出現に職員たちは大慌ててながらも捕獲したそうです。甲長は50cm、全長は70cm程度。

上流の那珂川から、もしくは数日前の大雨の際にどこか近場の水場から紛れ込んだ可能性が高いとみられています。なおペットとして飼育する際に義務付けられているマイクロチップは埋め込まれていなかったそうです。

 

4.2010年6月 大阪府 大阪港

こちらはなんと大阪港での発見例。泳いでいるワニガメを船舶点検していた大阪府警水上署の男性署員が発見したそうです。汽水域(淡水と海水が混じる場所)でも住むことができるワニガメですが、港というと限りなく海水のはず。好んでそんなエリアに侵入するとは思えないので、水の流れに逆らえずに紛れ込んでしまったものと考えられます。全長は70cm程度だったようです。

オオワニガメ

 

5.2011年10月 東京都 渋谷区鍋島松濤公園

通行人からの「ワニガメらしきカメが、ほかのカメの頭を咬みちぎって食べている」との通報を受けて警察が出動。渋谷署員13人が出動して、甲長30cm程度の個体が捕獲されました。付近の小学生がインタビューで「夏休みぐらいからいた」と証言しています。こらっ!早く通報しろよっ(苦笑)
→ANNニュース動画

 

6.2013年2月 沖縄県 嘉手納町屋良ムルチ(比謝川)

2012年12月に釣り人から目撃情報が寄せられました。釣り人と警察官たちが協力して釣り上げようとしましたが、糸を切られて逃げられてしまいました。その後対策本部が設置され、翌年2月に無事捕獲されました。甲長は50cm程度だったそうです。

 

飼育されているワニガメの動画:

ヤマガカシ

ヤマカガシ

ヤマカガシとは?

ヤマカガシは、爬虫綱有鱗目ナミヘビ科ヤマカガシ属のヘビの仲間です。

日本国内では北海道や小笠原諸島以外ならどこにでも住んでいて、アオダイショウやシマヘビと並ぶ、生活の中で比較的よく見られる日本の代表的なヘビの一種です。近年まで全く毒蛇だと認識されていなかったという、なんとも稀な経歴を持っています。

ヤマカガシ

 

ヤマカガシの身体的特徴

ヤマカガシは、全長が70cm~150cm程度の大きさになります。日本に生息するヘビとしては中型サイズでしょうか。

鱗はキール(鱗一枚一枚についている隆起)が強く、触るとかなりザラザラした手触りを感じることができます。これはヤマカガシが生活の中で水中を泳ぐ機会が多く、うまく泳ぐためにそのように進化したのではないかと考えられています。

よく『毒蛇といえば頭が三角形』なんて言葉がありますが、ヤマカガシの頭部は、マムシやハブのように三角形ではなく比較的細い丸型をしています。目がクリッとしていて愛嬌がある顔をしているのも特徴のひとつ。ペットとしてもなかなか人気があるようです(※飼育には許可が必要)。

首周りには黄色いリング状の模様がついており、褐色地に黒・黄色・赤が交互に重なった鮮やかな体色をしています。とくに若い個体はこの模様が鮮やかである傾向が強いようです。

しかしこの模様は個体差・地域差が非常に多く、全体的に黒褐色が強かったり、鱗に赤い部分が全くなかったり、黄色のリング模様さえなかったりと、ときに他のヘビとの判別が非常に難しい場合があります。この場合は頭部の鱗の粗さや鱗のキールの強さなどで見分けるのがベター(※判別に自信がないときは触ろうと思わないでください)。

ヤマカガシの身体的特徴。全然色が違っていてもどちらもヤマカガシ
↑(左)と(右)で全然色が違いますが、どちらもヤマカガシ

 

ヤマカガシの住みかと主食

ヤマカガシは平野部、もしくは山間部の低い標高地域の水場に住んでいます。人間の生活圏に近い場所でいえば河川敷や田んぼなど。都心部ではなかなか見かけられませんが、田舎では普通に見かけるメジャーなヘビです。

水場に住んでいる理由は、好む餌がカエルや小型魚類であるためです。オタマジャクシも食べます。ほかのヘビと違ってあまりネズミなどは狙わないようです。あ、鳥の卵は食べるときがあるそうですが。

ヤマカガシの食事の大きな特徴は、毒を持っているヒキガエルさえ食べるということ。マムシやハブのような攻撃性の強いヘビでさえヒキガエルは避けるというのに、なんとヤマカガシは逆に好んでヒキガエルを狙う傾向にあります。しかもそのヒキガエルの毒を体内で取り込んで、自分の毒牙用の毒に使用するというから驚き(実際、ヒキガエルが生息しない地域のヤマカガシは毒を持っていないそうです)。

あと普通のヘビは獲物を頭から食べることが多いのですが、ヤマカガシは何故か獲物をお尻から食べることが多いようです。確かな理由はあきらかになっていません。食べられているカエルには気の毒ですがヤマカガシがカエルを飲み込んでいる途中の状態は、全く新しい生物みたいに見えて、見ため的にはちょっと面白いことになっています。

大きなヒキガエルを丸呑みにする途中のヤマカガシ
↑大きなヒキガエルを丸呑みにする途中のヤマカガシ

 

逆に天敵になるのは、人間、猛禽類、イタチ、テン、タヌキ、大型のヘビなどです。特に生息域が重なるシマヘビやアオダイショウなどの大型ヘビはヤマカガシにとっては脅威で、大型ヘビが多い地域ではヤマカガシは少ないと言われています。

アオダイショウVSヤマカガシ
↑大きなアオダイショウに捕食されるヤマカガシ

 

ヤマカガシの生活サイクルと繁殖

ヤマカガシは明るい時間に活動することが多く、夜間はあまり積極的には動きません。冬場は土の下などで冬眠をし、寿命は自然環境下では5年程度までと考えられています。

ヤマカガシは基本的に冬眠直前の秋頃に交尾をします。秋に交尾の機会に恵まれなかった個体は、冬眠から覚めた春先に交尾を行う場合もあります。そして妊娠したメスは夏に10~20個程度の卵を産卵します。

産卵場所は石や落ち葉などの下で、卵が孵化するのは30日~50日後。幼蛇は最初は20センチ程度ですが、3年ほどかけて約1メートルぐらいの大きさまで育ちます。

河原にいるヤマカガシ(左)、飼育下で産卵されたヤマカガシの卵(右)
↑河原にいるヤマカガシ(左)、飼育下で産卵されたヤマカガシの卵(右)

 

ヤマカガシの毒

ヤマカガシは毒を持つ部位が2箇所あります。毒牙と、首の付け根あたりの表皮です。

まずは毒牙のほうですが、実はこれは最近までその存在があまり認知されていませんでした。一般的な毒蛇は大抵、口の中で一番前にある大きな牙に毒腺がありますが、ヤマカガシは奥歯のみに毒腺があります。普通に人間に噛み付いたときにこれが皮膚に食い込むことはほとんどないため、ずっとヤマカガシに毒牙はないと思われていました。

その毒牙の知名度を上げたのは1972年の中学生の死亡事故です。指のような細い部位であればヤマカガシの毒牙が届いてしまうケースがあり、それ以降は30件以上の重症例と4件の死亡例があります。

ヤマカガシの毒は、マムシやハブと同じで出血毒です。毒牙によって毒を注入される危険性はほかのヘビよりも少ないものの、その毒性の強さは実は国内最強で、マムシの3倍とまで言われています。

毒が注入されても、しばらくは表面的な症状は出てきません。マムシと違って咬傷部は腫れませんし、ジンジンとくる熱い痛みもほとんどありません。しかし毒が体内を回り始めると、血管内の血小板に異常をきたして体内出血が起こります。全身に皮下出血、歯茎出血、内臓出血、腎機能障害、血便、血尿などが起こり、最悪の場合は死に至るケースがあります。

しかも困ったことにヤマカガシの血清は限られた場所にしかないため、処置が後手に回ってしまうことが多いです。血清が手に入らない場合は輸血や透析処置をすることになりますが、
それらは血清投与ほどの大きな効果は得られないのです。

ヤマカガシの牙と骨

 

次に、首の付け根あたりの表皮にある毒腺のほう。ちょうどこれは体色の中でも一番鮮やかな部分にあたります。派手な部分をあえて見せることで『自分は毒を持った生き物である』ことをアピールするのは毒を持つ動物ではよくあることで、自然界では常識になっていますね。

実際、ヤマカガシは威嚇の際にはコブラのようにこの部分を平たく広げて、なんと相手に背中を向けてこれをアピールします。ヘビの威嚇としてはかなり特殊な部類。普通のヘビの威嚇は『咬んでやるぞ!』ですが、ヤマカガシの場合は『毒あるぞ!』なわけです(笑)

この毒は、ヤマカガシ自身が力を込めることで液状の状態で多少の距離を飛ばすことができます。肌に付着するぐらいではとくに影響はありませんが目に入ったりすると、結膜炎や角膜混濁、最悪失明してしまう危険もあります。

イタチなどがヤマカガシを狙うときに誤ってこの毒腺部分に噛み付いてしまい、返り討ちにあって死んでしまうケースもあるため、ペットをヤマカガシがいそうな環境に連れて行くときは注意が必要です。

ヤマカガシの毒

 

ヤマカガシに咬まれないために

ここまでヤマカガシの毒の恐ろしさについて説明してきましたが、執拗に恐れすぎる必要は全くありません。この50年でヤマカガシによる死亡事故は5件程度。交通事故で死ぬ確率のほうがよっぽど高いぐらいです。

ヤマカガシは臆病な性格をしていて人間を見つけるとすぐに逃げていくこと、危険が迫っても積極的に咬みついてこないこと、咬まれてもそのほとんどのケースで毒牙が皮下にまで届くことがないこと、これらを考えるとヤマカガシの危険性というのは非常に低いといえます。

ただし、絶対に最悪の事故が起こらないとは限りません。それを避けるためのちょっとした心構えだけここで記述しておきます。

 

1.ヤマカガシがいそうな場所では警戒心を持つ

前述したとおり、ヤマカガシは水場にいます。田んぼや河川敷でヤマカガシに遭遇する可能性は十分にあります。

基本的には出会ってもヤマカガシのほうから逃げていくので問題ないのですが、怖いのは、誤って不意にヤマカガシを踏んでしまったときや、何気なくふと手を置いたところにヤマカガシがいたとき。この場合は咬まれてしまう可能性が極めて高いです。

「そこにヤマカガシがいるかもしれない」という心構えだけは持っておきましょう。これはマムシやハブに咬まれないための認識にも繋がります。

 

2.ヤマカガシで遊ばない

ヤマカガシは滅多に人を咬みません。子供の頃に普通に素手でヤマカガシを掴んで遊んでいた人も多かったかと思います。しかし興味本位でちょっと捕まえてみようなんて思わないでください。

ちょっとした遊び心で咬まれて大事故になるのは損です。実際これまでに亡くなったのは、遊び心で自分からヤマカガシに接触した人ばかりです。

ヤマカガシに咬まれないための対策

 

3.ヤマカガシに咬まれてしまったら

まず何より大事なのは落ち着くことです。パニックになると冷静な判断ができませんし、血流が早くなって毒が早く回ります。とにかく落ち着きましょう。

最初に困るのは『毒が注入されたかどうか』の判断。仮に毒が注入されていたとしても、ヤマカガシの毒は自覚症状が出るまでには時間がかかります。しかし自覚症状が出てから処置をしたのでは、最終的に重症化する危険性が高まってしまいます。『咬まれたけど平気そうだ』なんて考えずに、毒が入ってしまったとして行動するべきです。

まずは咬まれたヘビの確認。咬まれて振り払ったときにはすでにヘビは逃げ始めていると思われるので難しいかもしれませんが、もしそのヘビがヤマカガシ(もしくはマムシ)であるとはっきり判断できたなら、その後の処置が非常にスピーディーになります。

次に毒の吸引。吸引器を持っていればそれを使いたいところですが、まず携帯していることはないでしょう。しかしヤマカガシの毒は、素人が口を使って吸い出すことはあまり推奨できません。流水で洗いながら血を絞り出すやり方で、少しでも毒を体外に追い出しましょう。後の症状が軽くなります。

さらに咬まれた場所から10cmほど心臓側の位置をタオルなどで強く縛ります。完全に血流を止めてしまうのかえって良くないので、指1本入るぐらいの余裕を持って縛りましょう。

そして病院へ向かってください。毒を受けているかどうかは病院で判断してもらえばいいことです。面倒くさがったり、恥ずかしがったりして判断を誤って命を落とすのは非常につまらないことです。

もし不幸にもヤマカガシの毒の症状がはっきり現れてしまった場合は、医者に相談の上でジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)に連絡してください。ヤマカガシの血清を常備している施設は日本でここだけです。必要とあらばヤマカガシの血清を輸送してくれます。
→ジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)HP

ヤマカガシ

 
カエルを丸呑みにしている最中のヤマカガシの動画:

マムシ

マムシ

マムシとは?

マムシは、クサリヘビ科マムシ属に属するヘビの一種です。正式な標準和名はニホンマムシ。

気温変化には比較的強いほうで、日本では北海道から沖縄まで全ての地域に生息しています。平野部から山間部の水場が近い場所を好み、雑木林、落ち葉の下、山道のU字側溝、川辺の岩の隙間などでよく見かけることができます。

マムシ

 

マムシの身体的特徴

マムシの体長は40cm~100cmぐらい。頭は先端が尖っていて三角形に近い形になっています(若干個体差はありますが)。首が細い割には胴体はかなり太くて寸胴で、ヘビとしては特徴的なシルエットをしています。そしてその胴体の太さの割りにお尻に近づくと急に体が細くなっているのも大きな特徴。

模様は銭型の楕円形の斑紋が確認できます。これはよくメガネ模様と例えられます。個人的にはおっぱい模様のほうがピンとくるような気がするんですが(笑)

マムシはその牙に強力な毒を持っています。それは上あごの牙の先端部分にあって、獲物に噛み付いたときにその毒を相手の体内に注入します。

マムシ

 
この毒は出血毒で、蛋白質分解酵素によって血液凝固を阻害して細胞を破壊するタイプのものです。厳密には神経毒も含まれていますが、その量は小量なためにマムシの場合はほぼ出血毒だと思って構いません。咬まれた部分はすぐに腫れ上がり、場合によっては紫色に変色します。ほおっておくと意識障害、視力障害に発展して危険な状態になりかねませんので、もし咬まれてしまった場合は必ず病院へ行きましょう。

報告されているだけで日本国内で毎年3000件程度のマムシ被害があり、そのうち10人程度の人が命を落としています。つまり致死率は1%以下です。しかも命を落としたケースのほとんどは、マムシの毒を甘くみてまともな処置をしなかったことが原因。ちゃんと適切な処置さえすれば、まず命を落とすことはありません。なのでマムシに咬まれたからといって必要以上にパニックにならないようにしましょう。

マムシの毒が

 

マムシの主食と天敵

マムシの食事は動物性です。頭部に備わった体温感知器官を使って獲物を探し、ネズミなどの小型哺乳類、カエル、トカゲなどを食べています。捕食方法はもちろん丸呑み。元々胴体が太いマムシですが、丸呑みの最中はさらに体が大きく膨れ上がるため、一昔前のツチノコ目撃情報の大半は、この状態のマムシが正体なのではないかと言われています。

逆にマムシを捕食するのは、タカ、フクロウ、キツネ、ヒキガエルなど。しかしこれらの動物も毒蛇であるマムシの捕食にはそれほど積極的ではなく、これといった明確な天敵は存在しません。

マムシの天敵

 

マムシの生活・繁殖サイクル

マムシは基本的には夜行性で、夜になると積極的に獲物を探して徘徊します。逆に昼間は藪の中や岩場の隙間などの涼しく暗い場所に身を隠しています。水辺を好むだけあって泳ぎはうまく、積極的に水の中にも入っていく傾向があります。

マムシは夏に交尾を行い、それから約1年間の妊娠期間を経て、だいたい5~15匹程度の幼蛇を産みます。あ、マムシは蛇には珍しく卵胎生なので、体内で卵を返して直接子供を総排出孔から出産します。

妊娠したメスは栄養を多く必要とするために、昼夜問わずで餌を探して徘徊するようになります。また自らの代謝を上げて子供の発育を良くするために日向ぼっこも積極的に行います。普段は夜行性でおとなしいマムシですが、このときばかりは人間と接触する機会が多くなってしまい、咬傷事故などが起きやすくなっています。

またマムシは脱皮をして古い皮を脱ぎ捨てて成長します。幼少時は年に4回程度、成熟したあとは年に1回程度のペースで脱皮します。ただしこれは環境に大きく作用されるようで、地域や個体によってその回数は前後するようです。

マムシが脱皮した後の皮
↑マムシが脱皮したあとの皮の残骸

 

マムシに咬まれないために

キャンプ、渓流釣り、山に近い地域での農作業など、私たちがマムシに遭遇する機会は少なくありません。防ぎようのない不意の事故というのはありますが、その確率はしっかり下げたいところです。

 

1.マムシの住みかを理解する

マムシは明るい時間は、基本的に藪の中や岩場の影などに潜むようにじっとしています。そういった場所に立ち入るときは 『もしかしたらマムシがいるかもしれない』 という、『もしかしたら』の気持ちを持って行動するようにしましょう。

よく聞く事故の例は、昆虫を追いかけたり、キノコを探したりで足元を確認しないままで木の根元に近づいた、渓流釣りで沢を移動中に岩の隙間に不用意に手をかけた、キャンプ場の石垣に何気なく寄りかかった、倒木を足元の確認なく不用意にまたいだ、などがあります。マムシが潜んでいそうな場所では、常に『もしかしたら』の気持ちを大事に。

 

2.咬まれないような格好をする

なるべくマムシがいる可能性がある場所にいくときには肌の露出を避けましょう。マムシは毒牙が比較的短いため、たとえTシャツレベルの生地の厚さでもないよりはマシです。地肌をそのまま咬まれることに比べれば、毒が注入されるリスクとその注入量は大幅に軽減されます。ズボンも七分丈などは避けて、厚手のデニムが理想的。農作業であれば長靴などを着用すると安全です。

 

3.もし家屋に侵入されるようであれば

マムシは基本的に人の気配を嫌うので、人家には滅多に入ってきません。しかし好物のネズミを追いかけて事故的に屋内に侵入してしまうケースは考えられます。

まずはマムシの侵入路となる可能性のある隙間を埋めましょう。そしてとにかくネズミを減らすこと。ヘビ用の忌避剤も市販されていますが、効果はいまひとつのものが多いようです。ヘビの侵入阻止に頑張るよりは、ヘビが侵入する理由になるネズミを減らすことに頑張るほうが効率がいいです。薬剤やトラップなどを使って、まずはネズミの対策から施していきましょう。

マムシに咬まれてしまったら

 

もしマムシに咬まれてしまったら

マムシに咬まれると、上顎の牙×2本、下顎の牙×2本で、最大4つの穴状の傷がつきます。あくまで最大4つです。たまたま牙が食い込まなくて、傷穴が1~3個だけなんてこともよくあります。

咬まれた直後は針で突かれたような痛みで、その後は毒の作用によってじんじんとした痛みが強くなってきます。咬まれた場所より心臓側10センチの位置で、タオルやヒモを結んで圧迫しましょう。ただし強く縛りすぎて血行を完全に止めるのはかえってマズイので、指1本入る程度に縛ること。

もし毒を吸い出す専用器具を所持しているなら、それを使って毒を少しでも吸い出してください。よく耳にする口で直接毒を吸い出す方法は、口の中の傷から毒が侵入する可能性があるのでオススメできません。口の中にはできかけの口内炎など、自覚のない傷がある場合が多いです。

そしてすぐに病院へ向かってください。必ず病院へ行ってください。レジャーの最中であろうが、周りの人に迷惑がかかろうが、それは仕方のないことです。前述しましたが、死亡例のほとんどは病院に行かなかったパターンです。たとえ咬まれた直後は大した症状が出ていなくても、いずれ時間とともに毒がまわり、全身に異常をきたします。そうなってからでは手遅れになります。

また、このとき無駄に焦らないこと。マムシに咬まれたからといってその直後に死んでしまうなんてことはありません。パニックになって暴れたりすると毒が体内を早く回ってしまい、かえって状況を悪化させることになりかねません。

ただし、咬まれた場所が救急車の到着に時間がかかるような場所だった場合は、自らの足で動いて助けを求めにいくことは構いません。安静でいるのに越したことはないのですが、もし受診までに時間がかかり過ぎるようならそちらのほうが症状が重くなりリスクが高まってしまいます。

マムシに咬まれてしまった場合の腫れ方
↑マムシの顔のアップ(左)と、咬まれて腫れ上がった腕の比較(右)

 
野生のマムシの動画:

ニホンイノシシ

ニホンイノシシ

ニホンイノシシとは?

ニホンイノシシは、鯨偶蹄目イノシシ科の哺乳類です。

日本国内ではニホンイノシシとリュウキュウイノシシの2種が確認されており、ニホンイノシシは北海道と沖縄以外、リュウキュウイノシシは沖縄のみに生息しています。しかしリュウキュウイノシシは非常に数が少なく、絶滅危惧のレッドリストにも記載されているぐらいです。なので日本でイノシシといえば、ニホンイノシシのことを指すと思って差し支えないでしょう。以下このページでは、ニホンイノシシを「イノシシ」と呼称して扱っていくことにします。


↑ニホンイノシシ(左)と、リュウキュウイノシシ(右)。リュウキュウイノシシのほうがひとまわり体格が小さい。

 

イノシシの身体的特徴

イノシシは成獣で、体長は100cm~170cm、体重は80kg~180kg程度の大きさになります。体毛は明るめの茶褐色~黒褐色をしていて、その色にはやや個体差があります。この体毛は非常に剛毛で、逆向きに触れたときにはかなりゴワゴワした感触を感じるでしょう。

またイノシシの子供の頃は綺麗な縞模様が体色に現れていて、それが瓜の模様に非常に似ていることから、幼いイノシシはよく「うり坊」と呼ばれます。この縞模様は木漏れ日の中では保護色の役目を果たすと考えられていて、成獣まで成長して天敵がいなくなるにつれて少しずつ消えていってしまいます。シマシマのままのほうが可愛いのに残念ですね(笑)

イノシシの下あごには牙が備わっており、オスの大きな個体であれば、その長さは15cmを超えるほどになります。下から生えて手前に湾曲している牙を下からアッパーカット気味に振り回すことによって、対象物の肉をえぐりとり、大きなダメージを与えることができます。人間にとってはこれがちょうど太腿の高さにあたるため、大怪我をさせられる危険性があります。

また意外に知られていないのがその身体能力の高さ。普段はゆっくり歩いて過ごしていますが、いざ敵と対峙するとなると、走れば時速40km、垂直ジャンプならば1m以上を飛ぶという脅威の身体能力をみせます。しかも大抵の生物は鼻先が急所ですが、イノシシの場合は鼻先は強靭な武器です。重さ70kgの岩さえも動かせるその硬い鼻先が、猛烈な加速をつけて突進してくるのはかなりの脅威。実際に人間が大怪我をさせられた例は数多くあります。

イノシシの身体的特徴
↑ニホンイノシシの牙(左)と、イノシシの子供「うり坊」(右)

 

また意外にも泳ぎが得意で、犬かきのような動きで池や川を、なんと時には海を泳ぐこともあります。その目的は定かではありませんが、毎年中国地方から四国まで瀬戸内海を泳いで渡るイノシシがいます。瀬戸内海ほどの距離を泳ぎきれる哺乳類は他にはなかなかいません。いったいどこで泳ぎ方とか覚えるんでしょうね。

うりぼう
↑瀬戸内海を泳いで渡るイノシシ(2012年11月撮影)

 

ニホンイノシシの主食

ニホンイノシシは雑食性です。普段は植物性のものを食べていることが多く、ドングリなどの木の実、果実、タケノコ、地下茎、芋などを好みます。動物性のものでは、ヘビやカエル、ネズミ、ミミズなども摂取します。また近年では人間が出した生ゴミや畑の作物を狙って人里に現れることが多く、人間との接触事故に発展してしまうケースが危惧されています(詳しくは後述)。

逆にイノシシの天敵となるのは、幼少期はキツネや野犬、フクロウ、カラスなど。成獣になってしまえば日本国内においては敵は存在しません。唯一クマがイノシシにとって危険ではありますが、クマは積極的に生きている大型哺乳類を狙うことはありませんので。

ニホンイノシシの主食

 

ニホンイノシシの住みか・習性

イノシシは山に住んでいる、というイメージが非常に強いですが、実はイノシシは山間部でも低山地域や平地、つまり人里にかなり近い位置に住んでいます。自分の体が隠れるような草木が生い茂った土地、それも河川が近い湿地帯を好みます。

水場付近に住むのは、給水のほかにも水浴びや泥浴びをする目的があるためです。イノシシはよく全身を塗らす様に水の中を転げまわり、ダニや寄生虫を落としています。

また理由はよくわかっていませんが、イノシシは小便を水の中ですることが多いようです。しかし大のほうは普通に陸上でプリッと(笑) どういう意図で小便だけ水中でしてるんでしょうね?

イノシシが夜間に人里にやってくるニュースなどのせいで夜行性のイメージが強いですが、実際は昼間のほうが活動的に動いています。夜間に人里に来るのは、そのほうが人間に見つからずにすむため。そう、イノシシは学習能力が高くしたたかな生き物なのです。

 

ニホンイノシシの繁殖サイクル

イノシシの発情期は冬です。この時期になるとオスのイノシシはメスを求めて徘徊し、意気投合したメスと生殖行動を行います。このとき一匹のメスを巡ってオス同士で争うこともありますが、もちろんここでは強い方のオスだけがメスを獲得することができます。

無事に生殖行動を終えたオスはそこで休むことなく次のメス探しへ。発情期が終わるまでオスは延々とメスを探し続け、生殖行動を何度も何度も行っていきます。

一方身ごもったメスのほうは草木で巣を作り、4ヶ月の妊娠期間を経て3~6頭程度の子供を生みます。そして子供がひとり立ちするまで一緒に暮らしていきます。子供が成獣となって繁殖機能を持つのが約1年半。そしてまたオスはメスを求めて徘徊を始めるわけです。

うりぼう

 

イノシシと出会ってしまったら

イノシシは生息域が山間の低標高地域であるために、野生動物の中でも人間と遭遇しやすい生き物です。基本的にはイノシシは臆病で警戒心の強い生き物であるため、人間を見つけてもイノシシのほうから距離をとって離れていきます。このへんはクマと同じですね。

ただし、いきなり角を曲がったら出会い頭に、というパターンは危険。興奮したイノシシは人間を倒さねばならない敵とみなし、突撃してくることがあります。前述した脅威の運動神経で突進されては人間はひとたまりもありません。

 

1.イノシシと出会わない工夫をしましょう

山登りなどをするときにクマ対策として鈴を鳴らしたり、
皆で談笑をしながら歩くという手法がありますが、これはイノシシにも有効です。
イノシシは聴覚が非常に発達した動物ですので、人間の位置をこちらから知らせてやれば、
むこうのほうから距離をとってくれます。

 

2.もしイノシシと出会ってしまったら

もしイノシシと出会ってしまったら、まずはパニックにならないこと。とにかく刺激をイノシシに刺激を与えないことを第一に考えてください。十分に距離があるならば、ゆっくりその場を離れましょう。

もし不幸にも出会ってしまった距離が非常に近くて、相手がすでに威嚇行動に入ってる場合は、目を見たままで決して背を向けずに後ずさりして距離をとっていきましょう。背を向けて走って逃げると本能的に彼らは追いかけてきます。これはイノシシに限らずクマの場合でも同じです。

ちなみにイノシシの威嚇行動は、背中の毛を逆立たせたり、挙動不審に動き回ったり、牙をカチカチと擦り合わせて音を鳴らしたり、後ずさりしながら前足で地面をガリガリ擦ったり、などがあります。これらの動きをみせているときは要注意。

 

3.もしイノシシが襲いかかってきたら!

もしイノシシが突進してくるという最悪の事態になった場合。真っ直ぐ走って逃げても、逃げ切るのは不可能です。なんせ相手は時速40km以上で追いかけてきます。高い場所に登る、遮蔽物を利用して逃げるのが一応の最善手です。

ただし、もし幸運にもジャンプ傘を持っていたならば目の前で勢いよく広げてやりましょう。目の前で突然視界をおおう未知の物体に、イノシシは驚いて逃げていってくれます。

イノシシが襲ってきたら

 

民家や畑にやってくるイノシシ

イノシシが家庭ごみや農作物を狙って人里に下りてくる行動が、近年非常に大きな問題になっています。ゴミ捨て場や畑を荒らされる被害はもちろん、人間に対して突進したり咬みついたりするような事例が多く起きています。ケガで済めばまだ良いですが、下手をすれば死亡事故にも繋がりかねません。イノシシが出没する地域に住んでいる場合は、やはりその対策が必要になってきます。

 

1.イノシシが近づかない環境作り

まずイノシシは自分の身を隠せる茂みのようなものが好きです。逆に言うと、隠れられるものがない場所を嫌がります。山から家・畑までの間に茂みがあるならば綺麗に刈り取りましょう。身を隠せそうな遮蔽物も取り除けばなおベストです。

あと餌を見える場所に置かないこと。畑で出てきた野菜クズなどは放置してはいけません。ゴミも夜間に屋外に出さずに、収集車が来る直前に出すなどしてイノシシが近寄る理由を断ちましょう。収穫時期になった農作物は後回しにせずに早めに収穫してしまいましょう。

イノシシ用の忌避剤を使用するのも有効です。オオカミの尿の成分を使用したウルフピーという商品があって、この臭いによってイノシシに限らず野生動物のほとんどが寄り付かなります。値段はそこそこしますが内容量が多くて持続性も良いので、かなり長期間の効果が期待できます。


【野生動物忌避剤 ウルフピー】

 

2.もしイノシシが何度も来るようになってしまったら

イノシシは学習能力が非常に高いです。そのためゴミ置き場や畑で一度オイシイ思いをするとそれを覚えてしまい、また再びやってきます。一度味を占めてしまったイノシシは、茂みを取り除いた程度では引き返してくれません。

ゴミ置き場であれば、金属製のダストボックスを使うなどしてイノシシが手を出せないようにしましょう。網やブルーシートを被せるだけではイノシシの前では全く役に立ちませんのでご注意を。

畑であれば、対策はちょっと大事(おおごと)になります。まずは先に紹介したウルフピーの設置。

それで解決しないようであれば、イノシシが越えれないような壁を設ける必要があります。柵でもいいですが、できればその場合は布などで目隠しを。イノシシから視覚的に中が見えないことが大事。

壁の高さは1メートル程度で十分ですが、その上部には網などを外側にせり出すように張ってください。よく刑務所の塀の最上部に有刺鉄線が内側にせり出すように張り巡らされていますよね?アレに近しいのものを作ってください。予算があるなら、網と言わずいっそ有刺鉄線でもいいです(笑)

理由は、イノシシが垂直ジャンプしかできないからです。彼らは助走をつけたジャンプをしません。手前に網(有刺鉄線)がせり出した壁であれば垂直ジャンプでは越えることができず、イノシシは上からの侵入をあきらめます。

 

次に壁の下方向の処理。イノシシはその強固な鼻で穴を掘ることができます。生半可な壁だとその下に20cm程度の隙間を掘って、そこを無理やり押し通って入ってきます。壁をより深く埋め込むように立てるか、杭などで地面にも網を固定して土を掘れない状況にしてやりましょう。

ちなみにこの壁ですが、完全に囲まないと意味がありませんのでご注意を。山側だけに設置してもイノシシは平気で回り込んできます。道路側であろうが民家側であろうとおかまいなしです。それだけ学習能力が高く、環境に慣れやすい生き物です。

 

3.どうしてもイノシシの被害を抑えられない、対策するのが経済的に難しい

この場合は最終手段としてイノシシを駆除しなければいけませんが、イノシシを勝手に捕獲・駆除することは法律で禁じられています。お住まいの自治体に相談してください。被害が深刻であることを報告すれば自治体・猟友会が駆除に動いてくれます。

イノシシとの付き合い方

 

イノシシと人間の付き合い方

基本的にはイノシシは臆病な生き物で、子供のうりぼうなどは非常に可愛いです。自然の中でその愛らしい姿を見つけた際には可愛がってあげたい気持ちもあるでしょう。しかし、絶対に餌を与えて餌付けしないでください。

人間慣れして人間を恐れなくなったイノシシは、近隣の町に出没するようになり、買い物袋をさげた人などを襲撃するようになります。最近では神戸市中央区で5日連続でイノシシによる人間への襲撃事件が続き、通学途中の女子生徒らを含む14人が怪我を負いました。幸い命には別状はありませんでしたが、運が悪ければ万が一が起きていてもおかしくありません。

あなたが餌をあげたイノシシが人を傷つけます。
あなたが餌をあげたイノシシはそのせいで殺処分されます。
それでもあなたはイノシシに餌をあげますか?

野生動物と愛玩動物は違います。その区別を考えずに可愛がると、人間もイノシシもどちらも不幸にすることになります。絶対に野生のイノシシに餌を与えないでください。

 

設置した金網を捻じ曲げて侵入していくイノシシの動画:

 

ビニールハウスを破壊して農作物を荒らすイノシシの親子の動画:

ハブ

ハブ

ハブとは?

ハブは、クサリヘビ科ハブ属のヘビの総称です。マムシと並び日本ではとても有名な毒蛇。

 

ハブの種類

日本国内ではハブの仲間は沖縄のみに生息していて、ホンハブ、ヒメハブ、サキシマハブ、タイワンハブの4種類が確認されています。

 

1.ホンハブ

一番分布が広く、個体数も多いハブ。全長は大型になると2メートルを越える場合もあり、毒が強い。白~黄色地で、黒い細かい網目模様が特徴。特にネズミを好んで食べる。

 

2.サキシマハブ

八重島列島のみに住んでいたが、最近は本当南部や宮古島でも発見されている。 大きさは1メートル程度まで。体色は茶色く、鎖のような模様が入っている。毒は弱め。

 

3.ヒメハブ

全長はせいぜい80センチで小さいが、極端に胴体が太い。暗褐色で斑紋は比較的薄い。他の種よりも水辺を好み、カエルを主食にしている。ハブとしては毒性は最も低く、大きな事故になった前例はまだない。

 

4.タイワンハブ

元々は中国大陸や台湾に生息していた外来種だが、人により持ち込まれて本島の東部にて繁殖。最大1.2メートル程度で、灰褐色に黒い鎖の模様が入っている。牙が細長い上に毒も強いので、人間にとっては危険な種。ただし個体数は非常に少ない。ほかの種よりは木の上での生活を好む。

沖縄に生息するハブの種類
↑ハブ(左上)と、サキシマハブ(右上)、ヒメハブ(左下)、タイワンハブ(右下)

 

このページでは個体数が多くハブの咬傷事故の大半を占めるホンハブについて解説していきます。以下ここではホンハブのことをハブと称します。

 

ハブの身体的特徴

ハブは、全長は100cm~150cm、体重は1kg~2kg程度の大きさになります。ただし環境によりその大きさにはかなり違いがあり、2011年には全長250cm、体重3kgの個体が捕獲されてニュースになりました。天敵が少ない場所では大型の個体が育ちやすい傾向にあるようです。

ただし近年では小遣い目当てでハブを捕獲する人が多いため、駆除率が急速に高まり、あまり大きな個体は出現しにくくなったかもしれません(※捕獲すると県や市町村が報奨金として1匹4000円支払ってくれる)。

体色はお腹のほうが白~黄色で、黒い網目模様がついています。ウロコはほかのヘビに比べると非常に目が細かく、判別の際にはひとつの目安になります。

頭部はマムシと同じく鼻先が尖った三角形で、その槍のような形状から海外ではランス・ヘッド・シャークとも呼ばれています。目と鼻の間にあるピットという感覚器官は獲物の熱を感知することができ、餌を探す際にはレーダーのひとつとして使用して効率よく狩りをしています。

 

ハブの性格と攻撃性

ヘビというと比較的臆病な種類が多いのですが、ハブはどちらかというと気性が荒くて好戦的なほうです。もちろん積極的にハブが近寄ってくるようなことはありませんが、不用意に間合いに入ってしまうと、高い確率でその牙で攻撃を喰らうことになってしまいます。飛びつく間合いは全長の2/3程度でジャンプはしません。なので一般的には1.5メートルの距離をとれば安全だと言われています。

 

ハブの毒

ハブの特徴として見逃せないのが、その強烈な毒です。鋭い牙の先には毒腺があり、相手に噛み付いた際に直接その毒を体内に流し込みます。

毒の種類はマムシと同じく出血毒で、細胞を破壊して焼けるような強い痛みを相手に与えます。毒そのものの強さはマムシより弱いと言われていますが、注入される毒の量がハブのほうが多いため、結果的にはマムシに咬まれた場合よりも深刻な症状が出るケースが多くみられます。

血清が普及していない時代は、マムシの毒で亡くなる人の数は相当なものだったようです。1960~1970年ごろは毎年10人近くの人間の命がマムシによって失われていました。それだけ毒性が強く、危険なヘビだったということです。

近年では血清の普及やインフラの充実により、ハブによって命を失うケースはほぼなくなりました。1980年以降で死亡者はたった4人で、2000年以降は1人の死亡者も出ていません。しかし命こそ失わないもの、血清の投与が遅れた場合はその部位が壊死してしまったり、最悪切断するはめになってしまったりと、危険性の高い毒蛇であることは忘れてはいけません。

【追記】
2014年4月に男性が咬まれて死亡する事件が発生。奄美群島の加計呂麻島にて51歳の男性が手を咬まれ、1時間半後に血清治療をしましたが、その2時間後に死亡しました。

ハブの生態

 

ハブの生活サイクルと繁殖

沖縄の温かい気候もあってか、ハブは冬眠をせずに一年中活動を続けています。基本的に夜行性であるため、昼間はほとんど見かけることはありません。茂みの中や、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中などでじっとしています。

夜になると餌を求めて付近を徘徊します。行動範囲は一晩で約100メートル程度。

春頃にオスはメスを探して交尾を行います。1匹のメスを巡って複数のオスが巻き付き合いながら争うことも。無事に交尾に成功すると、メスは夏に卵を5個~15個程度出産します。そのメスが大きな体格をしていれば、それだけ多くの卵を一度に産むようです。

卵は一ヶ月半ぐらいで孵化し、30~40cm程度の幼蛇が誕生します。そして脱皮を繰り返して成長して、だいたい3年程度で1メートルを超す大きさになります。

ハブの大きさと頭部の様子

 

ハブの主食

ハブは肉食性です。普段はネズミ、トカゲ、カエルなどを食べていますが、大型の個体になるとなんとウサギやハト、ネコを食べた例も。

その中でもやはりネズミが一番の好物で、ハブの食事のほとんどはネズミであると考えられています。そのためネズミを追って家屋に侵入してしまうこともあり、人間に対しての咬傷事故の原因にもなっています。

ハブの主食

 

ハブといえばマングース

ハブといえば連想するのがマングースですが、マングースは元々1910年にインドから、ハブ駆除を期待して人間によって沖縄に持ち込まれたものです。

しかし夜行性であるハブと昼間に活動するマングースが遭遇することはほとんどなく、仮に出会ったとしてもマングースは強敵であるハブを避けて、狙いやすいヤンバルクイナやアミノクロウサギなどの天然記念物ばかり食べてしまうという皮肉な結果に。マングース投入作戦は、史上最悪レベルの失敗作戦であったと言わざるを得ないでしょう。ハブよりもマングースのほうが駆除の対象になっている現状はとても滑稽ですね。

一昔前は見世物で「ハブVSマングース」なんてものがやっていましたが、動物愛護上の問題から今では実施されていません。コブラさえも倒すマングースがハブに負けることはほとんどなかったようですが、前述したとおり、密室に閉じ込めでもしない限りマングースがハブを積極的に攻撃することはありません。「ハブVSマングース」というタイトルこそ知名度が高いですが、これは自然界ではありえない、人工的に作られた対決だったわけです。彼らは実はライバルでもなんでもなかったのです(笑)

ハブVSマングース

 

ハブに咬まれないために

血清が普及しているとはいえ、ハブが危険な生き物である事実は変わりません。沖縄に住むにしても、旅行に行くにしても、咬まれないための心構えだけは常に持っておきたいものです。

 

1.ハブのすみかに近寄らない

ハブは明るい時間は、茂みの中、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中でじっとしています。樹木の空洞や、放置されたゴミや木材の下、サトウキビなどの農作物の根元にいるケースもあります。そういった場所に不用意に近づかないようにしましょう。特に注意したいのは沖縄県内に非常に多い石垣。生活圏に近いうえにハブにとっては格好の隠れ場所です。

ハブは自分の間合いに入ってきた熱源に本能的に飛びかかります。ムチのようにしなるように素早く飛び掛ってくるため、飛び掛られてからでは避けることができません。怪しい場所に行くときには「この陰にはハブがいるかも」という心構えを持って、ハブより先にこちらが相手を目視・確認することが大切です。

 

2.ハブを自宅に近寄らせない

自宅の周辺からハブの住処になりそうなものを排除しましょう。草むらはこまめに手入れして、石垣は隙間をコンクリートで埋めるなどできればベストです。

後は1.5メートル以上のブロック塀を設置するのも効果的です。ハブはすすんでブロック塀を乗り越えようとしません。

手軽なのは照明器具の設置。夜行性のハブは灯りを避けるように行動しますので、ハブの通り道になりそうな場所を明るくしておけば寄り付きにくくなります。まぁ、そのぶん虫なんかが集まるようになってしまうので電撃殺虫灯なども必要になってしまいますが。

ちなみにハブが硫黄の臭いを嫌うっていうのは迷信です。科学的に実証されたガセネタですので、硫黄に頼ることはやめましょう。いまのところハブに対しての効果的な忌避剤というものは存在しませんので。

3.ハブに出会ったら

できればその場をやり過ごして立ち去りたいものですが、もし人家のそばで出会った場合は駆除するのが理想。
ここで逃がせばその個体が人や家畜に害を与える可能性が残ってしまうためです。「退治するなんて私ゼッタイ無理ーッ!!」って足がすくんじゃう人は無理しなくていいですが(笑)

一番無難なのは長い棒状のもので戦うこと。ハブ被害が多い奄美大島のほうでは家庭で常備していたり、道端に「用心ぼう」という棒が設置されていたりします。150cm以上の長さがあって、ある程度の重量があるものが理想です。

あらかじめ準備が必要ですが、ハブノックというハブ用の撃退スプレーも市販されています。これは遠い距離から噴射してハブを攻撃することが可能で、薬剤がかかったハブはすぐに苦しみ出し、数時間で衰弱死します。

ハブの毒と牙

 

4.ハブに咬まれてしまったら

まず何より大事なのは落ち着くことです。ハブに咬まれて死に至る確率はけっして高くありません。無駄にパニックになると血流が早くなって、症状を悪化させる原因になるだけです。

とりあえず相手がハブであるかどうかを確認しましょう。その蛇の見ためで判断がつく場合はいいですが、もし無理な場合は傷跡を見てください。ハブの場合、上顎の牙×2と、下顎の牙×2で、最大4つの穴状の傷跡がつきます(※咬まれ方によっては傷が3つ以下の場合もあります)。比較的早い段階で傷口からじんじんと焼けるような痛みが広がっていきます。

次に咬まれた位置より心臓側をタオルなどで強く縛って圧迫します。ただしこのとき力任せに縛り過ぎないように。指一本入る程度の力加減で縛るようにしましょう。

その後は、傷口に口をつけてできる限り毒を吸い出します。ハブの毒は口から含むぶんには人体にほとんど影響がありません。仮に飲んでしまっても、胃でその毒は分解されます。また口の中に傷があっても虫歯があっても構いません(多少炎症になるケースもあるようですが)。

そして走ったりせずにゆっくりと病院へ移動してください。ハブに咬まれたことを先に病院に連絡できれば処置もよりスムーズになります。甘くみずに、絶対に病院に行って血清を打ってもらってくださいね。血清を打たないと咬まれた部位から壊死して、本当に大変なことになりますので。

ハブに咬まれた人

 

ハブを生け捕りにすると報奨金がもらえる

先の項でもチラリと触れましたが、事実です。駆除して絶対数を減らすという面と、生きた個体で血清を製造するという面で需要があり、国や市町村が大きさに関係なく1匹あたり4,000円で引き取っています(2013年時点)。

不況もあってか、このハブ獲りは老若男女問わずで人気が出てしまい、報奨金の予算を使い切ってしまうほどの持ち込みがあって、大きなニュースになりました。たしかに1匹4,000円っていうのは大きなお小遣いですよね(笑) 生け捕りにするためには捕獲器具の準備も必要ですが、日常的にハブに接して暮らしてきた地元民にとって、器具の準備も捕獲作業自体も気軽で簡単なことだったようです。

このハブの報奨金については、スリムクラブの真栄田賢がトークのネタにしています。なんでも真栄田の父親がハブ捕りが上手いらしく、次々と市役所にハブを持ち込んで日銭を稼いでいたそうです。そうしたら、あまりの持ち込みの数の多さに市役所が怪しんで、「養殖してるんじゃないか」とあらぬ疑惑をかけられてしまったそうで(笑)

みなさん、間違っても養殖とかしちゃダメですよ。それで報奨金貰ってたら立派な詐欺罪になっちゃいますので(笑)

ハブVSマングースの動画: