危険生物

ヒョウモンダコ

ヒョウモンダコ

 

ヒョウモンダコとは?

ヒョウモンダコは、マダコ亜目マダコ科ヒョウモンダコ属に属するタコです。このヒョウモンダコ属の代表には「ヒョウモンダコ」と「オオマルモンダコ」がいます。ヒョウモンダコは足だけが丸模様で、胴体はいびつな縞模様に近いのが特徴。逆にオオマルモンダコは足だけでなく全身がきれいな丸模様であるのが特徴。分類上は別のタコですが共通点も多いため、このページでは「ヒョウモンダコ」としてまとめて紹介していきます。

ヒョウモンダコとオオマルモンダコの違い
↑ヒョウモンダコ(左)とオオマルモンダコ(右)

 

ヒョウモンダコの身体的特徴

体長は10cm程度の小さなタコで、名前の由来にもなっているとおり豹のような模様をしているのが一番の大きな特徴です。体色は基本的には暗い茶色ですが環境に合わせて変幻自在。海底を這うように過ごしていることがほとんどであるため、その場所の岩肌の色に近い体色でいることがほとんどです。通常時は青い丸模様もそこまでは目立ちません。

しかし外敵に襲われそうになって興奮したときは、体色を鮮やかな黄色に変化させ、さらに青い丸模様もかなり鮮やかな状態に変化します。自然界にはなかなか存在しない色彩になので、突然変化したらビックリしちゃいますよね。毒を持つ生き物の中ではよくある「俺は毒を持っているぞ!危険だぞ!」というアピール。

 

↑最初は地味で薄い黄色の体色をしていますが、刺激を与えた瞬間に鮮やかな色に変化します

また私たちが持っている一般的なタコのイメージは「俊敏に泳ぐハンター」であるかと思いますが、実はヒョウモンダコはあまり泳ぐのは得意ではありません。基本的には海底を足で這うように移動して獲物を探します。またタコの代表的な武器である墨もほとんど吐きません(墨を吐くところを観察された事例はありますが煙幕の役割を果たせるほどのものではないそうです)。強力な毒と威嚇能力を持ったため、墨を吐いて逃げる必要がなくなり退化したのではないかといわれています。

 

ヒョウモンダコの生息域

ヒョウモンダコは温かい海を好む生き物で、本来は赤道付近の熱帯・亜熱帯の海に住んでいます。そのため日本では沖縄や小笠原諸島でのみその姿が見られました。しかし近年では温暖化の影響で日本本州付近でもヒョウモンダコは頻繁に目撃されるようになり、福井県や東京都でも一般的に見られるようになってきました。今後は東北地方の海にも進出していくことが予想されます。

ヒョウモンダコは基本的には浅い海の岩場を好みます。そのため子供が遊ぶような浅瀬の岩場でもヒョウモンダコは見られます。あまり俊敏ではないため通常は魚は狙わず、動きの遅いカニやエビを襲って食べています。

 

ヒョウモンダコの寿命と繁殖サイクル

ヒョウモンダコのサイクルは完全に季節と連動しています。寿命はちょうど1年間。4~6月ぐらいに誕生し、9月頃には相手を見つけて交尾をしてメスは産卵を行うようです。そこから6ヶ月以上メスは卵を抱いたままで生活し、また次の4~6月ぐらいに次の世代が誕生します。そこで親世代は息絶えてしまいます。丸1年でその生涯を閉じてしまうというのは短いように感じますが、ヒョウモンダコに限らず小型のタコはだいたいこれぐらいの寿命しかないそうです。

こういったサイクルでヒョウモンダコは生活しているため、必然的に夏は幼体であることが多いため目撃例が極端に減ります。9月ぐらいから成長して目視しやすいサイズになってくるため、そこから次の夏前までによく姿が見られるようになります。


↑卵を抱きかかえたメスのヒョウモンダコ。このまま6ヶ月ほど飲まず食わずで卵を守る。

ヒョウモンダコの幼体
↑生まれてまもないヒョウモンダコの子供

 

ヒョウモンダコの毒

さて、ようやく本題。人間に対しての危険性の解説です。ヒョウモンダコはその唾液の中にテトロドトキシンという強烈な神経毒を持っています。テトロドトキシンはフグの毒としても有名ですね。この毒は体内に入ると、まずは痺れやめまいの症状が現れ、次第に呼吸困難を引き起こします。日本では死亡例はありませんが、オーストラリアやニュージーランドでは実際にヒョウモンダコによって命を落とした人も少なからずいます。

ヒョウモンダコはもうひとつハパロトキシンという毒を持っているという情報もあります。このハパロトキシンは海中に散布して付近の獲物をじっくりと弱らせるというものらしいですが、調べてみるかぎりでは情報の信憑性はちょっとビミョウかと。いろんなサイトで「ヒョウモンダコがハパロトキシンを出す」という記載が見られますが内容がどれも同じであるため、ひとつの情報源から拡散しているものと思います。ハパロトキシンという物質自体の情報もほとんど出てこないため、そういった可能性もあるといった程度で考えていたほうが良さそうです。

 

ヒョウモンダコの危険を避けるために

基本的にはヒョウモンダコは臆病であるため自ら人間に寄ってくることはありませんが、浅瀬で不意に触ってしまったり、面白がってちょっかいをかけたりすると咬まれてしまうこともありえます。見かけた場合は絶対に触ろうとせずに速やかに距離を取りましょう。またヒョウモンダコの厄介なところは、咬まれても傷口が小さく痛みも少ないため咬まれたこと自体に気が付かないケースがあることです。浅瀬でめまいなど体調に異変があったときにはヒョウモンダコの可能性を疑ったほうがいいかもしれません。

万が一咬まれてしまった場合は、とにかくすぐに水から出て病院へ直行しましょう。傷口を洗ったり、血を絞り出してもあまり効果は望めません。また口で吸い出すのは二次感染の可能性があるため厳禁です。テトロドトキシンで命を落とす可能性があるのは呼吸麻痺。とにかくすぐに人工呼吸器のある病院へ行くのが一番の対策です。血清や解毒剤はありませんのでそこからは自然治癒に頼るしかありません。

ヒョウモンダコの毒は即効性があるためすぐに症状が現れます。逆に数時間経ってもとくに症状が現れない場合は、幸運にも毒が体内に入っていないと考えて差し支えありません。

ヒョウモンダコの毒と危険性

 

ヒョウモンダコは一応ペットとして飼える

人を殺せるぐらいの毒を持つ危険なヒョウモンダコですが、実はアクアリウムショップで観賞用として普通に購入することができます。価格は2000円~5000円ぐらい、5cm以下の小ぶりな個体が多く出回るようです。鮮やかな体色をしているのでそこそこ人気もあるようですね。ただしもちろん咬まれないように細心の注意は必要です。タコの牙は鋭いのでゴム手袋をしても安全とは言い切れません。飼育する場合は絶対に触らないことを前提としましょう。また前述したとおりヒョウモンダコの寿命は1年程度しかありません。大きく成長している個体であれば、そう長くは生きられないということは承知の上で飼育するようにしましょう。

 

ヒョウモンダコは食べてはいけない

これまでヒョウモンダコの毒は唾液腺の中に含まれていると考えられていて、あるYouTuberが唾液腺を除いた上で「ヒョウモンダコ食べてみた」といった動画をアップしたりしたこともありました。しかし最近の研究でヒョウモンダコの毒は筋肉や皮膚にも含まれていると発表されています。幸いこのYouTuberは毒に当たることはなかったようですが、非常に危険な行為であるいえるのでヒョウモンダコは食用にしないようにしましょう。

 
飼育しているヒョウモンダコの孵化シーン:

 

ヒョウモンダコ関連アイテム

危険生物

危険生物
危険生物ガイドブックの海洋版です。比較的子供向けの内容となっていて、磯でレジャーを楽しむときに気をつけたい生き物について生態を詳しく書いています。イモガイ、カサゴやカツオノエボシなどの紹介もされています。

危険・有毒生物 (フィールドベスト図鑑)

危険・有毒生物 (フィールドベスト図鑑)
人間の命に影響を与える危険生物400種類を解説している図鑑。陸の生物、海の生物、動物由来の感染症などにカテゴリーを分けて解説。

OKINAWA 海の危険生物 増補版

OKINAWA 海の危険生物 増補版
沖縄に住む危険な生き物について詳しく取り上げている図鑑です。イモガイやウミヘビ、ゴンズイ、オコゼなどについてもその危険性が解説されています。

エクストラクター ポイズンリムーバー 強力型

エクストラクター ポイズンリムーバー 強力型
毒を持った生物に刺されてしまったときに傷口から毒を吸い出す器具です。2018年にモデルチェンジした新しいバージョンで、カップもどんな傷口の箇所にも対応できるように4サイズが用意されています。やや耐久性に不安があるようなので、いざというときに使う消耗品のつもりでいたほうが良いかもしれません。

 

ヒョウモンダコ関連ニュース


ツキノワグマ

ツキノワグマ

ツキノワグマとは?

ツキノワグマ(月輪熊)は、ネコ目クマ科クマ属に属する哺乳類です。日本では北海道にヒグマだけが、そして本州、四国にこのツキノワグマだけが生息しています。完全に生息域が分離されているので、遭遇してどちらの種か迷うことはないでしょう。

昔は九州でも生息が確認されていたんですが、近年は確かな目撃情報が確認できず、残念ながら2012年に九州のツキノワグマは絶滅と認定されてしまいました(2015年10月に福岡と佐賀の県境でクマらしき目撃情報があって、現在調査中です)。西日本でもその個体数は激減していると言われています。

月輪熊

 

ツキノワグマの身体的特徴

ツキノワグマは体長は100~180cm程度、体重は50kg~から150kg程度です。クマの種類の中ではツキノワグマは比較的小さい種類だと言えるでしょう。体格もヒグマなんかに比べると幾分スタイリッシュな個体が多いです。特に若い個体はそれが顕著で、私達が持っていたクマとのイメージの違いに少し驚くかもしれません。

なんといってもツキノワグマのその最大の特徴は胸についている三日月形の模様です。どうしてこんな模様が付いているのかは理由は確かではありませんが、ツキノワグマだと識別するには一番の特徴だと言えるでしょう。たまにこの三日月の模様がない個体なんかも現れるようですが、その場合は体毛の色で識別。ツキノワグマはクマの仲間の中でも珍しく、体毛が完全に真っ黒な色をしています。

ツキノワグマの身体的特徴

 

ツキノワグマの食性

クマというと川でシャケを取っているイメージが強いですが、それはヒグマの話。じゃあシカやウサギなどの野生の哺乳類を襲って肉を食べているのかと言われればそうでもありません。

実はツキノワグマのメインの食事は植物。ドングリ、ブナ、クリ、ヤマブドウなどを主な栄養源として摂取しています。あとは蛋白源としてアリやハチの巣を探して、巣をほじくりながらそれを食べたりします。大きな体をしていますが、意外にも食べ物はカワイイもので(笑)

あとは動物の死骸なんかも好んで食べます。「クマに会ったら死んだふりだ!」なんてよく言いますが、死肉を食べるクマの前では、死んだふりがいかに愚かなことかがわかりますね。私はごちそうです、と言って自分を差し出しているようなモンです(笑)

そして問題なのは人間の出すゴミも食べること。ツキノワグマは雑食性が高いので、人間が食べ残したものは何だって食べちゃいます。そのためわざわざ人里に下りてきてゴミ集積場を漁ったりなんてこともしばしば。近年ではそれが大きな問題になっていて、ニュースなんかでもよく取り上げられています。

ツキノワグマの食性

 

ツキノワグマの生息地

前述したとおり、日本のツキノワグマの分布は本州と四国です。ヒグマと違って平地や草原などは好まず、落葉広葉樹林が生い茂った山の中だけに住んでいます。昼間は樹木の穴や、洞窟の中などでじっとしていることが多く、朝夕や夜に積極的に行動して餌を探しに動くことがわかっています。

ツキノワグマはあまり縄張り意識を持っておらず、餌が豊富な場所を求めて広範囲に移動を続けます。そのため餌が豊富な場所ではたくさんの個体が集まっていたりすることも。また、この行動力の高さがために人里までやってきてしまい、人間と遭遇して双方にとって不幸な事故が引き起こされてしまうケースもあります。

ツキノワグマ

 

冬ごもりと繁殖

ツキノワグマは知っての通り、冬になると穴にこもって眠るように過ごします。よく冬眠なんて言い方をしますが、クマの場合は仮死状態になるというよりはじっとしているだけなので、どちらかというと「冬ごもり」という言葉のほうが正しいと言えるでしょう。

冬ごもりの期間はその地域の気候にもよりますが、だいたい12月から4月ぐらいまでの間。半年近く穴の中で眠っていると考えると、彼らは意外にのんびりした人生を送ってるのかもしれませんね(笑) ああ、なんてうらやましいスローライフ。

夏のうちに交尾を済ませて妊娠したメスはこの冬ごもり期間中に穴の中で出産します。一度に生まれる子供はだいたい2匹程度。母親グマは3ヶ月程度授乳したあと、2年ほど一緒に子供と行動し、その後子供は自立していきます。

ツキノワグマのリスク回避と対策

 

ツキノワグマのリスク回避(ヒグマとほぼ共通)

やっと本題です。ツキノワグマは基本的に臆病な生き物ですし、決して好戦的ではないです。ですが、人間にとって安全な生き物ではないというのは間違いありません。

まずは何より出会わない努力をしましょう。

人間もツキノワグマと遭遇したくないですが、それは向こうもそうです。できればツキノワグマのほうも人間と遭遇したくないと思っています。まずは不必要にクマが出没するような場所に立ち入らないことです。
登山、ピクニック、山菜取りなど、山に立ち入る理由はいろいろあるとは思いますが、過去に熊騒動があったような場所はやはり避けるべきです。特に雪が残るような春先の山は、冬ごもりの穴に気付かずに近寄ってしまうケースがあって最悪です。

どうしてもクマと遭遇する可能性のある場所に入らなければいけないときには、大人数で騒ぎながら行動する、鈴や笛などの音が出るものを身に着けるなどをして、遠くのクマにこちらの存在をわからせるようにしましょう。定期的に棒で木を叩きながら進むのも良い手です。そうすればクマのほうから距離をとって離れていきます。

ちなみにラジオは駄目です。雑音を垂れ流しっぱなしのものは逆にクマの気配に気付けなくなるためかえって危険です。こちらがいつでも音を出せて、逆にいつでも静まってまわりを伺えるということが、
遭遇リスクを下げることに繋がります。

ツキノワグマ

 
それでも万一遭遇してしまった場合、まずは落ち着くことです。

はっきりいって遭遇してしまったら100%の安全策というものは存在しません。しかし慌ててパニックになってもツキノワグマを刺激してしまい状況を悪化させるだけです。まずは落ち着いて冷静に状況をみて、できることをしましょう。

距離がまだ何十メートルも離れている場合は、ツキノワグマから視線を逸らさずに後ずさりして距離をとります。クマは背を向けて逃げる獲物を追いかける習性があります。この習性はとてつもなく強く、うかつに背を向けて逃げたりすればほぼ間違いなく追いかけられます。ちなみにツキノワグマの走る速度は50km/h以上で、あのウサイン・ボルトより速いです。間違いなく追いつかれて、間違いなく背中から襲われて重傷必至です。

ゆっくりと後ずさりしつつ、武器の準備もしなければいけません。クマ対策の唐辛子スプレーなどを持っているなら手元にその準備を、ないならば何か固くてリーチのある、武器になりそうなものを用意します。どうしても何も見つからなければしかたありません、そのへんの石でもないよりはマシです。

ただしこのとき威嚇的なことは一切しないように。あくまで距離をとって逃げ切るのが最良手で、武器の用意はあくまで最悪の展開への備えです。

それでもまだクマの方からこちらに近寄ってくるようなら、持っている食べ物やリュック等を手放します。
クマがこれらに興味を持った場合はそのまま難を逃れることができるケースがあるのでそっと地面に置いて遠ざかるようにしましょう。

ツキノワグマ

 
うまく逃げ切れたときはいいのですが、相手がこちらに積極的に近づいてきてしまったり、もしくは曲がり角でいきなりバッタリ出会ってしまったりして、数メートルしか距離がない場合。この事態になってしまったら、覚悟を決めて戦いましょう。

そんなバカなと思うかもしれませんが、この状況になった場合に一番生存率が高いのが「戦うこと」です。この状況から走って逃げ切るのは100%不可能ですし、死肉を食べるツキノワグマに対して死んだふりをするのは何の対策にもなりません。この状況から無事に生還した人のほとんどは戦っています。

戦い方ですが、もちろん身体能力では人間はクマに絶対に勝てません。どんなにパンチやキックを浴びせようが、棒で殴ろうが、クマの分厚い筋肉の前には無力です。クマとの戦いで狙うのは「倒すこと」でなく、「戦意喪失させて逃げてもらうこと」になります。

なので狙いは急所の鼻先一点。鼻先に何か強烈な一撃をお見舞いできれば、ツキノワグマは未知の痛みに驚き退散していくことでしょう。クマと対峙するのは相当な恐怖ですが、勇気を振り絞って攻撃してください。覚悟を決めて手を出さなければこちらの生存確率が低くなるだけです。撃退スプレー、ナタ、杖の類を持っていれば相手の前足の攻撃より先にこちらの攻撃を叩き込めるはずです。

どうしてもそういったリーチのある武器が見つからない場合は、落ちている石を持ったり、腕時計を拳につけたり、カギを刃が拳から出るように握り込んだりして、それで鼻先を狙います。より接近を許すことになるので怪我をする危険が高くなりますが、多少怪我をしてでもとにかく鼻先に攻撃を叩き込めれば命を落とすことはなくなります。

ツキノワグマ

 
そして究極に最悪の事態、突然の奇襲を受けてしまった場合です。さきほどの武器による攻撃が失敗してしまったときも同様です。

覆いかぶされたり噛み付かれたりしてしまいますが、とにかく抵抗してください。じっとガードしていても殺されるのを待つのみです。とにかく手や足を、ツキノワグマの目や鼻があるであろう位置に全力で出し続けてください。一発でも入れば相手はビックリして逃げていく可能性があります。この状況になっている時点で怪我を負うのは必至ですが、追い払える可能性だけは放棄しないこと。

 

ツキノワグマの習性豆知識

ツキノワグマの習性を知識として知っておくと不用意に襲われる事態を避けることができます。ここではいくつかその習性を紹介しておきます。

 

1.子供のツキノワグマを守る母熊は危険

これはツキノワグマに限らず大抵の哺乳類に言えることです。母グマは自分の子を守るために、近寄るものを全て敵とみなします。小さいツキノワグマを見つけたときには「わぁ、可愛いー♪」なんてのん気なことを言わずに、近くに「敵意むき出しの母親がいる」と思って警戒するようにしましょう。

2.火を恐れない

獣は火を恐れるって知識は間違ってはいませんが、クマに関しては例外です。キャンプ時に焚き火のそばにある荷物を平気で奪っていった事例もありますので、クマ対策として火を使うのはおすすめできません。

3.木登りはお手の物

ツキノワグマは木登りが非常に得意です。なので木の上に登ってもツキノワグマは追いかけて登ってきます。しかしツキノワグマに遭遇したときの逃げ場所として木の上が絶対ダメってわけではありません。先に木の上に登れば、下から迫るクマをこちらは靴を履いた足で迎撃できるわけですし、クマのほうも木を登りながら同時に前足で攻撃できるほど器用ではありません。ただしどうやっても持久戦になってクマとのガマン比べになってしまうのは避けられませんが・・・。

ツキノワグマの生態

 

ツキノワグマによる国内の事故

1.十和利山熊襲撃事件

2016年に発生したツキノワグマによる襲撃事件で、4人が命を落とし、3人が重軽傷を負っています。ヒグマによる三毛別羆事件、石狩沼田幌新事件に次いで、多くの犠牲者が出た獣害事件です(戦後に発生したものの中では犠牲者数トップ)。秋田県鹿角市の十和利山麓がちょうどタケノコ狩りのシーズンであり、被害にあった方々はタケノコ目当てで山に入っていてそこを襲われるケースがほとんどでした。

本件においては、直接人を襲って殺した個体、その死肉を漁った個体、合わせて5体のツキノワグマが鑑定にて確認されています。その中でも3人を襲ったとされる体重80kgのオスの個体は「スーパーK」と呼ばれていて、この個体は後日檻の罠にかかっているところを発見されて処分されました。

2.長年飼育していたツキノワグマに襲撃された事故

2018年に茨城県取手市で許可を取った上で飼育されていたツキノワグマが、飼育担当者を襲って死亡させてしまうという痛ましい事件がありました。15年前の小熊の頃から人の手で飼育されていた個体であり人にも慣れていたそうですが、飼育担当者が同じ檻の中に入ったところを襲われてしまいました。長期間に渡って飼育されたクマであっても、ふとしたきっかけで野生の本能が出てしまうことがあるのかもしれません。

 

動物園やクマ牧場で楽しむ

ツキノワグマは全国で大抵の動物園で飼育されています。ヒグマより小型で飼育しやすく、集団生活にもすぐに適応するため動物園としても楽なんだそうで。クマ牧場のようにクマに特化して飼育されている施設もあり、そういう場所では餌を与えることもできます。人に飼いならされたツキノワグマはとても人に慣れていて、餌を持ったお客を見つけると、こちらに手を振ったり、両手を差し出して「ちょうだい」のポーズをとったりと愛嬌を振りまくほどです。野生のときとは違ったこういう姿のツキノワグマもなかなか魅力的。

あと動物園で集団で飼われているツキノワグマは社会性を持つことも知られています。必ずボスとなるツキノワグマが現れて、ケンカの仲裁をしたり、見回りをしたりするそうです。一匹狼での行動が多い野生の条件下ではほとんど確認できていない習性です。環境が変わってこういうのが見えるってなんだか面白いですね。

 
広島県安佐動物園のツキノワグマ、クラウド君の高速棒回し動画:

 

ツキノワグマ関連アイテム

熊撃退スプレー 中型 ホルスター付

熊撃退スプレー 中型 ホルスター付
クマ撃退用のスプレーです。全国の地方自治体などでも採用されている信頼のおける商品。射程距離は5メートル以内、噴射時間は連続で2.5秒程度です。遠距離で使ってクマがちょっと驚いた程度になってしまうのは怖いので、できれば3メートル以内の距離で確実に熊の顔に向けて直撃させたいところです。

熊よけ すず ベアークマ MM-1918

熊よけ すず ベアークマ MM-1918
クマ避けの鈴です。高く響く音を鳴らしながら歩くことで、早い段階でクマに人間の存在を知ってもらって不意の遭遇を避けるためのものです。滑落時や遭難時にもエネルギーを使わずに遠くまで届く音をだせるため、活用が可能です。

電子ホイッスル

電子ホイッスル
単4電池をバッテリーとした電子ホイッスル。簡単なボタン操作で、3種類の音色を3段階の音量で鳴らすことができます。本来はスポーツ用やイベント用のホイッスルですが、クマ避けとして使っている熟練の登山者も多いようです。

動物撃退器 超音波 ソーラー USB充電式

動物撃退器 超音波 ソーラー USB充電式
ツキノワグマだけでなく哺乳類全般に効果がある超音波撃退装置です。庭先に設置すると赤外線で動物の動きをキャッチ。動物が嫌がる超音波を発して対象を遠ざける効果があります。ソーラー充電式なので電源の確保の必要はなく、対象となる動物の種類に合わせて超音波の強さを設定することができます。

 

ツキノワグマ関連ニュース


ヒグマ

ヒグマ

ヒグマとは?

ヒグマ(羆)は、ネコ目クマ科クマ属に属する哺乳類です。体長はクマの中でもかなり大型に育つ種で、成獣では500kgを越える個体も記録されています。日本に生息する陸上の哺乳類の中ではダントツで大きな生き物といえるでしょう。

羆

 

ヒグマの身体的特徴

日本にはツキノワグマとこのヒグマ(正確にはエゾヒグマという亜種)が生息しています。ツキノワグマは本州と四国の全域に広く生息していますが、ヒグマは北海道にしか生息していません。完全に生息地が分かれているので、遭遇した場所でどちらのクマか判断してしまって結構です。北海道で出会えばヒグマ、それ以外で出会えばツキノワグマです。

見た目の違いも明白で、ツキノワグマはヒグマにくらべてかなり小さく、最大でも2メートルに届かないほど。またツキノワグマの体毛は真っ黒で胸元に半月型の特徴的な模様があって非常にわかりやすいです。まぁ、ツキノワグマの詳細についてはまた別のページで。

ヒグマとツキノワグマ
↑ツキノワグマ(左)とヒグマの若い個体(右)

 
ヒグマの全長はおよそ2~3m、体重は200kg~500kgです。これはオスのサイズで、メスは全体的にもうひとまわり小さくなります。

しかし食事や環境によってかなり大きさに差が出ることがわかっており、アラスカの食糧豊富な土地では1,000kgを越える巨大なヒグマが発見された例もあります。1,000kgってことは、軽トラック(750kg)よりも遥かに重いってことです。そんなサイズのクマが存在しうるって恐ろしい話だ(汗)

 

ヒグマの食性

クマというと川でシャケを取っているイメージが強いですが、実は雑食性で、割合的には木の実や草本を食べていることのほうが多いです。植物は比較的安定して手に入りますし、栄養価・便通の面でもクマにとっては欠かせない餌。

もちろんヒグマは動物性の餌も狙っていきます。ターゲットは哺乳類、鳥類、魚類、昆虫、ザリガニなど。

しかしここでも意外なのは、昆虫を食べる割合がかなり高いこと。ヒグマはアリ、ハチなどが好物で積極的に巣を探しにいきます。こういった昆虫たちは集団でコロニー(巣)を形成していることが多いため、一度のチャンスで多くの餌を手に入れることができるわけです。しかしあの巨体でアリなんか何百匹食べたってお腹満たされないような気もしますが(笑) 単純に空腹を満たすためというよりは、味的に好物だからという説が強いようです。

あとこれも意外な知識なんですが、ヒグマは積極的に生きている哺乳類・鳥類を狙いません。どちらかというと死肉を食べるケースが多く、腐敗が進んだ屍肉食なんかも食べてしまいます。一般的には強大な捕食者のイメージが強いのでこれはちょっとビックリ。足が速くて力もあるクマが狩りが下手とは思えませんが、この雑食性は、おそらく長い生活の中でより安定して餌にありつけるように進化していった結果なんだと思います。

ただし、これは通常のヒグマの食事の習性です。近年のエゾシカの急増に伴い、生きているエゾシカを狙うヒグマも増え始めました。そして一度新鮮な肉の味を覚えてしまったヒグマはそれ以降、積極的に狩りを行うようになります。これはエゾシカに限らず人間においてもそうで、一度人間の味を覚えてしまったヒグマは大変危険です。

ヒグマの習性と生態

 

ヒグマの生息地

前述したとおり、日本のヒグマの生息地は北海道だけです。本州でもヒグマの化石が見つかるため昔は本州以南にも住んでいたようですが、現在では確認されていません。

他種のクマと同じく森林を好みますが、原野も好むのがヒグマの大きな特徴。これは山林にある固い葉よりも、原野に生える柔らかい草花を好むためと言われています。知床の大きな原野で伸び伸びと過ごす姿には威厳とともに愛嬌さえ感じますね。これからも守っていかなければいけない景色。

しかし近年問題になっているのは人間とクマの生活圏が重なってきていることです。人間側は開発と称して山に近寄っていき、クマは異常気象による餌不足で里に近寄っていきます。そのため人間とクマが出会ってしまう不幸が非常に多くなり、それは双方に不幸をもたらしています。人間を恐れない「新生代クマ」と呼ばれる若いクマも増え始めているため、クマと付き合っていかなければいけない地域の人々にとっては深刻な悩みになっています。

追記:
餌不足で人里にヒグマが出没するっていう話をよくニュースなどでやっていますが、最近ではどうもそうではないのではないかという説が出てきました。人里にやってくるヒグマは餌不足でガリガリかと思いきや、みな丸々と太っているらしいのです。山の餌が不足しているのではなく「人里のほうが餌を確保しやすい」と思われているのではないでしょうか?畑では必ず美味しい野菜や果物が得られますし、ごみ置き場を漁れば人間の食べ残しが見つかります。ヒグマたちが賢い生き方を選択し始めた結果がいまの状況なのでは、という意見が増え始めています。

ヒグマ

 

冬ごもりと繁殖

ヒグマは知っての通り、冬になると穴にこもって眠るように過ごします。よく冬眠という言い方をしますが、体温を下げて仮死状態のようになる冬眠に比べるとヒグマの眠りは浅く、あくまで穴の中でじっとしているだけという表現のほうが近いと言えます。そのため、ヒグマの場合は冬眠ではなく、冬ごもりという言い方をされる場合が多いです。

ヒグマの発情期は初夏で、妊娠をした雌熊は冬ごもりをしているその穴の中で出産します。一度に産むのは1~3匹の赤ちゃんで、体重は400g程度しかありません。赤ちゃんはしばらくの間は視力も聴力もないため、穴の中で母親熊は母乳だけで育て続けます。そして春になると穴から出てきてそのまま生活を共にし、1~2年後には子供は親離れをして独立します。

ちなみに幼少期のヒグマにとって一番の天敵は成獣のヒグマ。ヒグマは共食いをします。子供を連れた母熊は絶対に他のヒグマを近づけることをしません。同族が一番の天敵ってなんだか悲しいですね。自然界だと当たり前の弱肉強食ルールなのかもしれませんが。

ヒグマ対策

 

ヒグマのリスク回避

やっと本題です。ヒグマは基本的に臆病な生き物ですし、決して好戦的ではないです。ですが、人間にとって安全な生き物ではないというのは間違いありません。

まずは何より出会わない努力をしましょう。

人間もヒグマと遭遇したくないですが、それは向こうもそうです。できればヒグマのほうも人間と遭遇したくないと思っています。まずは不必要にクマが出没するような場所に立ち入らないことです。登山、ピクニック、山菜取りなど、山に立ち入る理由はいろいろあるとは思いますが、過去に熊騒動があったような場所はやはり避けるべきです。特に雪が残るような春先の山は、冬ごもりの穴に気付かずに近寄ってしまうケースがあって最悪です。

どうしてもクマと遭遇する可能性のある場所に入らなければいけないときには、大人数で騒ぎながら行動する、鈴や笛などの音が出るものを身に着けるなどをして、遠くのクマにこちらの存在をわからせるようにしましょう。定期的に棒で木を叩きながら進むのも良い手です。そうすればクマのほうから距離をとって離れていきます。

ちなみにラジオは駄目です。雑音を垂れ流しっぱなしのものは逆にクマの気配に気付けなくなるためかえって危険です。こちらがいつでも音を出せて、逆にいつでも静まってまわりを伺える状態を作っておくということが、遭遇リスクを下げることに繋がります。

ヒグマ

 

それでも万一遭遇してしまった場合、まずは落ち着くことです。

はっきりいって遭遇してしまったら100%の安全策というものは存在しません。しかし慌ててパニックになってもヒグマを刺激してしまい状況を悪化させるだけです。まずは落ち着いて冷静に状況をみて、できることをしましょう。

距離がまだ何十メートルも離れている場合は、ヒグマから視線を逸らさずに後ずさりして距離をとります。クマは背を向けて逃げる獲物を追いかける習性があります。この習性はとてつもなく強く、うかつに背を向けて逃げたりすればほぼ間違いなく追いかけられます。

ちなみにヒグマの走る速度は50km/h以上で、あのウサイン・ボルトより速いです。間違いなく追いつかれて、間違いなく背中から襲われて重傷必至です。

視線を合わせたまま音を立てずにゆっくりと後ずさりしつつ、武器の準備もしなければいけません。クマ対策の唐辛子スプレーなどを持っているなら手元にその準備を、ないならば何か固くてリーチのある、武器になりそうなものを用意します。どうしても何も見つからなければしかたありません、そのへんの石でもないよりはマシです。

ただしこのとき威嚇的なことは一切しないように。あくまで距離をとって逃げ切るのが最良手で、武器の用意はあくまで最悪の展開への備えです。

それでもまだクマの方からこちらに近寄ってくるようなら、持っている食べ物やリュック等を手放します。クマがこれらに興味を持った場合はそのまま難を逃れることができるケースがあるので、そっと地面に置いて遠ざかるようにしましょう。

ちなみにこのときに手放したリュックや食べ物は、「後でクマの脅威が去ってから回収しよう」などとは間違っても考えてはいけません。後のヒグマの習性の項でも記述していますが、これは極めて危険な行為です。一度クマに差し出した物は必ずあきらめてください。

ヒグマ

 

うまく逃げ切れたときはいいのですが、相手がこちらに積極的に近づいてきてしまったり、もしくは曲がり角でいきなりバッタリ出会ってしまったりして、1~2メートルしか距離がない場合。この事態になってしまったら、覚悟を決めて戦いましょう。

そんなバカなと思うかもしれませんが、この状況になった場合に一番生存率が高いのが「戦うこと」です。この状況から走って逃げ切るのは100%不可能ですし、死肉を食べるヒグマに対して死んだふりをするのは何の対策にもなりません。この状況から無事に生還した人のほとんどは戦っています。

戦い方ですが、もちろん身体能力では人間はクマに絶対に勝てません。ツキノワグマであれば「空手の有段者が正拳突きで追い払った」なんて武勇伝を耳にすることもありますが、ヒグマの場合は100%無理。ヒグマは成獣であれば体重400kg前後であり、これは室伏広治4人分の体重です。どんなにパンチやキックを浴びせようが、棒で殴ろうが、クマの分厚い筋肉の前には無力です。クマとの戦いで狙うのは「倒すこと」でなく、「戦意喪失させて逃げてもらうこと」になります。

なので狙いは急所の鼻先一点。鼻先に何か強烈な一撃をお見舞いできれば、ヒグマは未知の痛みに驚き退散していくことでしょう。クマと対峙するのは相当な恐怖ですが、勇気を振り絞って攻撃してください。覚悟を決めて手を出さなければこちらの生存確率が低くなるだけです。撃退スプレー、ナタ、杖の類を持っていれば相手の前足の攻撃より先にこちらの攻撃を叩き込めるはずです。もしジャンプ傘を持っているなら、顔の近くで勢いよく音を立てて広げればビックリして逃げてもらえるかもしれません。

どうしてもそういったリーチのある武器が見つからない場合は、落ちている石を持ったり、腕時計を拳につけたり、カギを刃が拳から出るように握り込んだりして、それで鼻先を狙います。より接近を許すことになるので怪我をする危険が高くなりますが、多少怪我をしてでもとにかく鼻先に攻撃を叩き込めれば命を落とすことはなくなります。

ヒグマ

 

そして究極に最悪の事態、突然の奇襲を受けてしまった場合です。さきほどの武器による攻撃が失敗してしまったときも同様です。

覆いかぶされたり噛み付かれたりしてしまいますが、とにかく抵抗してください。じっとガードしていても殺されるのを待つのみです。とにかく手や足を、ヒグマの目や鼻があるであろう位置に全力で出し続けてください。一発でも入れば相手はビックリして逃げていく可能性があります。この状況になっている時点で正直言って限りなく絶望的な状況には間違いありませんが、最後の可能性だけは放棄しないこと。

 

ヒグマの習性、豆知識

ヒグマの習性を知識として知っておくと不用意に襲われる事態を避けることができます。ここではいくつかその習性を紹介しておきます。

 

1.自分の獲物への執着心が異常に強い

ヒグマは自分が手に入れた食料に対して「これは俺の物、奪おうとする者は敵」という意識が非常に強いです。道端に小動物の食べ残しなどがあったら絶対に近づかないでください。このときヒグマは敵意剥き出しで襲ってきます。福岡大のワンゲル部が襲撃された事件はこの習性を知っていれば防げたであろう事故です。あの事件のときは、一度ヒグマに奪われたリュックを持ち帰ったために執拗に狙われてしまう結果になりました。一度奪われたリュックは、ヒグマにとってはすでに「自分のもの」になっていて、それを回収して持って帰る行為はまさにヒグマの神経を逆撫でする自殺行為だったのです。

2.子供のヒグマを守る母熊は危険

これはヒグマに限らず大抵の哺乳類に言えることです。母グマは自分の子を守るために、近寄るものを全て敵とみなします。小さいヒグマを見つけたときには「わぁ、可愛いー♪」なんてのん気なことを言わずに、近くに「敵意むき出しの母親がいる」と思って警戒するようにしましょう。

3.火を恐れない

獣は火を恐れるって知識は間違ってはいませんが、ヒグマに関しては例外です。過去にヒグマの襲撃を恐れた事例ではみな火を一生懸命に炊いて難を逃れようとしましたが、どれも効果は全くなく、無残な結果をもたらすことになりました。ヒグマの前に火は無力です。

 
ヒグマの習性を実験する動画:

 

動物園やクマ牧場で楽しむ

ヒグマは全国で大抵の動物園で飼育されています。クマ牧場のようにクマに特化して飼育されている施設もあり、そういう場所では餌を与えることもできます。人に飼いならされたヒグマはとても人に慣れていて、餌を持ったお客を見つけると、こちらに手を振ったり、両手を差し出して「ちょうだい」のポーズをとったりと愛嬌を振りまくほどです。野生のときとは違ったこういう姿のヒグマもなかなか魅力的。

あと動物園で集団で飼われているヒグマは社会性を持つことも知られています。必ずボスとなるヒグマが現れて、ケンカの仲裁をしたり、見回りをしたりするそうです。一匹狼での行動が多い野生の条件下ではほとんど確認できていない習性です。環境が変わってこういうのが見えるってなんだか面白いですね。

ヒグマ

 

ヒグマによる大きな事件

1.三毛別羆事件

1915年12月に北海道苫前郡苫前村で発生したヒグマによる大量殺傷事件です。日本では最大の獣害事件であるとされています。Wikipediaの事件描写が怖すぎるということでも有名になりました。

12月に冬眠し損ねてしまった大きなヒグマが次々に村の民家を襲撃し、重軽傷者多数、最終的に妊婦や子供を含む7人もの死者が出ました。ヒグマは体長270cm、体重340kgに及ぶ大物で、たった数日間で何度も何度も村に姿を現し、次々に住民を襲撃して食べてしまいました。退治のために組織された討伐隊はなんと600人規模で、ヒグマは最初の事件発生から5日後にマタギの手によって射殺されました。

三毛別羆事件
↑事件後に現場に再現されたヒグマの模型。家屋の入り口と比べるとその大きさがわかる。

 

②石狩沼田幌新事件

1923年8月に北海道雨竜郡沼田町で発生しました。犠牲者は5人で、他3名が重軽傷を負っており、三毛別羆事件に次いで二番目の大きな獣害事件です。当時ちょうど開拓の最中であったこの地域では、住民とヒグマの接触事件が非常に多く、この事件はたまたま山中で羆の餌場に人間が近づいてしまったことで発生してしまったと言われています。

村の祭りが終わったその夜、深夜の山中を家路につく一行をヒグマが襲撃しました。男性1人が死亡、もう1人の男性が生きたまま地中に埋められてしまいました。ヒグマから逃げた一行は近くの民家に立てこもりましたが、追ってきたヒグマが再び襲撃。女性1人が連れ去られて食い殺されてしまいました。翌日には単身で退治に向かった猟師が返り討ちに合い死亡。その翌日に300人規模で結成された討伐隊が山に入りました。山中でのヒグマとの戦いにより1人の男性が犠牲になりましたが、ヒグマは無事退治されました。

石狩沼田幌新事件
↑沼田町郷土資料館で保存されている当該ヒグマの毛皮

 

3.福岡大学ワンダーフォーゲル同好会羆襲撃事件

1970年7月に北海道の日高山系カムイエクウチカウシ山で発生しました。登山にきていた福岡大学のワンダーフォーゲル同好会5人が次々に襲われ、最終的に3人が死亡しました。

一度ヒグマにリュックを漁られた後、そのリュックを持って帰ったしまったため、ヒグマに『自分の獲物を奪われた』という感覚を与えてしまいました。そのため彼らのパーティーは何度も何度も襲撃を受けることになってしまったのです。発生から3日後、地元のハンターの手によってこのヒグマは射殺されました。

 

ヒグマ関連アイテム

UDAP 熊撃退スプレー ホルスター付

UDAP 熊撃退スプレー ホルスター付
クマ撃退用のスプレーです。ヒグマ撃退用の強力版でアメリカ森林警備隊採用品です。射程距離は9メートルとなっていますが、遠距離で使ってクマがちょっと驚いた程度になってしまうのは怖いので、できれば5メートル以内の距離で確実に熊の顔に向けて直撃させたいところです。

熊よけ すず ベアークマ MM-1918

熊よけ すず ベアークマ MM-1918
クマ避けの鈴です。高く響く音を鳴らしながら歩くことで、早い段階でクマに人間の存在を知ってもらって不意の遭遇を避けるためのものです。滑落時や遭難時にもエネルギーを使わずに遠くまで届く音をだせるため、活用が可能です。

電子ホイッスル

電子ホイッスル
単4電池をバッテリーとした電子ホイッスル。簡単なボタン操作で、3種類の音色を3段階の音量で鳴らすことができます。本来はスポーツ用やイベント用のホイッスルですが、クマ避けとして使っている熟練の登山者も多いようです。

動物撃退器 超音波 ソーラー USB充電式

動物撃退器 超音波 ソーラー USB充電式
ツキノワグマだけでなく哺乳類全般に効果がある超音波撃退装置です。庭先に設置すると赤外線で動物の動きをキャッチ。動物が嫌がる超音波を発して対象を遠ざける効果があります。ソーラー充電式なので電源の確保の必要はなく、対象となる動物の種類に合わせて超音波の強さを設定することができます。

 

ヒグマ関連ニュース


カミツキガメ

カミツキガメ

カミツキガメとは?

カミツキガメは、爬虫綱カメ目カミツキガメ科カミツキガメ属のカメ、またはその総称です。

よく混同されてしまいがちな「ワニガメ」も同じカミツキガメ科の仲間です。カミツキガメ科のワニガメ、カミツキガメ科のカミツキガメ。ちょっとややこしいですね(苦笑)

元々は日本国内には生息していなかった外来種で、日本には1960年頃からペットとして輸入されるようになりました。しかし子供の頃は可愛くて扱いやすいカミツキガメは、成長すると体格が大きくなる上に攻撃性がかなり強くなります。近年では飼育放棄された個体が野生化して繁殖してしまう事例が報告されており、問題になっています。

カミツキガメ

 

カミツキガメの身体的特徴

カミツキガメは、甲長が最大で50cm程度の大きさになります。甲長が80cmにも及ぶワニガメに比べるとずいぶん小さいんだなというイメージを持つかもしれませんが、カミツキガメは尻尾が大きく、首もかなり長く伸ばすことができるので、鼻先から尻尾の先までの最大全長は100cm近くに及ぶ場合もあります。やはり大型のカメには違いありません。

甲羅は基本的には滑らかな曲線型ですが、縦方向に三本の薄い隆起線があります。ワニガメは甲羅のキールが強くてトゲ状の甲羅をしているので、カミツキガメとワニガメは甲羅の形状を見れば容易に区別することができます。

腕は太く、肩まわりもかなりガッシリとしています。そして非常に発達した爪も大きな特徴。主に水底を這うように行動するカミツキガメは、この爪を使って物を掻き分けるようにして餌を探します。

あと、前述しましたがカミツキガメは尻尾が通常のカメに比べて非常に長いです。そのため調査の際などには、地面に残った尻尾の痕跡と足跡の間隔を比較すれば、それがカミツキガメのものであるかどうかの判別が可能です。ちなみにオスの個体のほうが大きく立派に育つ傾向にあります。

カミツキガメの身体的特徴

 

カミツキガメの生活と繁殖

カミツキガメはほぼ水棲で、一生のほとんどを沼や池などの水がある場所で過ごします。中でも水底に泥が溜まっていて、石・流木・水草などの遮蔽物が多い環境を特に好みます。 水の流れが早い場所、もしくは水が澄んだ場所は逆に好まないため、渓流などで発見されることはあまりありません。

気温の変化には強いほうで、原産地であるアメリカ全ての場所でその気候に対応できています。そのためもし日本のどこで捨てられても生きていくことができてしまいます。この適応能力の高さが、野生下繁殖問題の大きな原因に。

繁殖期はこれといって決まっておらず、冬以外であればいつでも交尾行動をとります。産卵は初夏あたりに行われることが多く、一度に20~30個程度の卵を産みます。卵の大きさはピンポン玉をひとまわり小さくした程度で、だいたい3ヶ月程度で孵化します。

生まれた子ガメが性成熟するまでには約5年。寿命については検証データが少ないためなんともいえませんが、80年は生きるのではないかと考えられています。

生まれたばかりのカミツキガメとカミツキガメの卵の大きさの比較
↑生まれたばかりのカミツキガメ(左)と、カミツキガメ・ワニガメ・ピンポン玉の大きさの比較(右)

 

カミツキガメの主食と天敵

カミツキガメは雑食性です。動物性であれば、昆虫、カエル、ヘビ、魚、ザリガニ、鳥類、小型哺乳類、植物性であれば、茎、葉、花、果実、藻など、本当に口に入るものは何でも選ばずに食べています。

逆に天敵となるのはワニや大型のヘビ、肉食性の大型鳥類・哺乳類ですが、日本においてはそれらがほとんど存在しないため、天敵と呼べるのは人間だけになります。

カミツキガメと天敵

 

カミツキガメの性格と攻撃性

ワニガメと比べると、大きさや甲羅の物々しさで劣る(?)ため、見た目のインパクトではどうしてもカミツキガメは負けてます。しかし、どちらかというと実際に気をつけなければいけないのはカミツキガメのほうです。

何故かというと、カミツキガメは気性が荒く、非常にその動きが俊敏だからです。特に陸上に上がったときは警戒心が強く、目の前に近づいたものに瞬時に咬みつこうとする習性があり、しかも長い首を伸ばすようにして飛びついてくるのでリーチもあります。距離があるから大丈夫だと思って不用意に近づくと痛い目に遭うことになります。イタズラ心で指を失うなんてことにならないように(苦笑)

ちなみに陸上で警戒心が強いのは、水中ほど自由に身動きが取れないためだと考えられています。カミツキガメは水中では大きな水かきを使ってスイスイ素早く動けるので、危険が迫れば自ら逃げていきます。しかし動きづらい陸上では逃げ切れないと判断し、逆に攻撃的になって威嚇体勢をとるというわけです。

カミツキガメの攻撃性

 

人間からみたカミツキガメの危険性

日本にて野生化してしまったカミツキガメの、人間に対しての危険性についてです。この項についてはワニガメと共通で全く同じことが言えます。

近年ペットとして飼育されていたカミツキガメが捨てられて、野生化していることが問題になっています。大人の指でも簡単に咬みちぎるような危険なカメが近所の池にいるなんて信じられない!なんてヒステリックになってる親御さんなんかもいるでしょう。

しかし結論から言います。普通に生活していればカミツキガメに咬みつかれる可能性はまずありません。

カミツキガメは産卵時以外は、常に水中にいます。しかも綺麗な川ではなく、池や沼のような濁った場所を好みます。つまり、人間のほうからそういった池や沼の中に足を入れなければ、絶対に接触しないわけです。池のそばで遊ぶことはあっても、いまどき濁った水の中に入って遊ぶ人はいないでしょう。

しかもカミツキガメは水中で自分より大きな生き物に遭遇するとまず逃げます。そもそも水中ではほとんど咬みつくことはしないとも言われています。

これらのことをふまえて、人間がカミツキガメに咬みつかれるケースがもしあるとすれば、それは人間のほうからカミツキガメにちょっかいを出したときです。カミツキガメをわざわざ陸上にあげて、面白がって指を差し出したりすれば、びっくりするぐらいのスピードで咬みつかれて見事にその指を失うことでしょう。そんなんはもはや自己責任ですね。

もしカミツキガメを見かけたなら絶対に手を出さず、警察に連絡するようにしてください。長い棒で距離をとってイタズラするのであれば大丈夫だろうと思いがちですが、このカメはに、1メートル程度をすごいスピードで首を伸ばしながらジャンプして飛びかかる力があります。絶対にちょっかいを出してはいけません。

 


↑カミツキガメにちょっかいを出して逆襲されている動画。かなりビックリします。

カミツキガメの生態

 

日本におけるカミツキガメの繁殖

前述したとおり、日本の気候に適応できる、天敵がほとんどいないという特徴によって、日本では本来は存在しなかったはずのカミツキガメの繁殖を許してしまっています。

有名なのは千葉県の印旛沼水系。印旛沼水系ではかなり昔から繁殖を許してしまっていて、毎年何百匹単位に及ぶ数のカミツキガメを捕獲・駆除しています。県がかなり力を入れて対策に乗り出していますが、生活のほとんどを水中で過ごすカミツキガメの完全駆除はさすがに現実として厳しいようです。

 

カミツキガメの飼育

昔はペットとして自由に飼育することができました。しかし手に余るサイズにまで成長してしまったカミツキガメを池などに逃がしてしまう事例が多く、そこで繁殖したカミツキガメが他の生態系を脅かす事態に。そのため2005年に特定外来生物に指定され、その飼育は禁止になりました(それ以前から飼っていた場合のみ必要な手続きを踏めば飼育許可が下りる)。

人気芸人どぶろっくの江口さんがカミツキガメの無許可飼育で書類送検されましたが、これは以前から飼育していて法改正後に飼育許可申請をするのを怠っていたために起きた事件です。

もちろん野生のカミツキガメを捕まえて飼育するのも法律違反です。ちょっと飼育してみようなんて考えは起こさないようにしましょう。

カミツキガメの飼育は許可が必要。新規飼育は認められていない

 

野生のカミツキガメを撮影した動画(アメリカ):

 

カミツキガメ関連アイテム

カミツキガメはわるいやつ?

カミツキガメはわるいやつ?
千葉県の印旛沼水系に住み着いてしまった外来種カミツキガメは本当に悪役なのか? さまざまな視点からカミツキガメを検証した松沢陽士氏の著書。

カメのすべて (カラー図鑑シリーズ)

カメのすべて (カラー図鑑シリーズ)
大人から子供まで楽しめるカメ図鑑。カメ124種の生息地域や生態をカラー写真にて紹介している。飼育可能なカメについてはその飼育方法についても解説。

カメが好き! かめ亀KAME図鑑

カメが好き! かめ亀KAME図鑑
カメのかわいい部分を追求したカメ図鑑。100種類ほどのカメを紹介しており、身近なカメや、ウミガメに会うための体験記など親しみやすい内容となっている。

 

カミツキガメ関連ニュース


オオムカデ

オオムカデ

オオムカデとは?

オオムカデとは、オオムカデ目・オオムカデ科に属するムカデ全般のことをいいます。「オオムカデ」という名のムカデがいるわけではありません。

日本でオオムカデ科に属するのは、全国的にはトビズオオムカデ、アカズオオムカデ、アオズオオムカデなどがいて、沖縄限定ではハブオオムカデ、タイワンオオムカデなどがいます。

生息範囲、知名度、数的に考えるとトビズオオムカデが圧倒的に多く、日本でオオムカデといったら、トビズオオムカデのことだと考えて特に差し支えありません。このページでもトビズオオムカデのことをイコール「オオムカデ」として解説しています。

トビズオオムカデは赤足と黄色足がいる

 

オオムカデ(トビズオオムカデ)の身体的特徴

トビズという呼び名は、頭部が鳶色(赤褐色)であることからきています。足は基本的には黄色の場合が多いです。しかしオオムカデは個体によって体色に大きく差があって、鮮やかな朱色の頭を持つものもいれば、毒々しい濃厚な赤色の足を持つものもいたりします。ペットとして飼育する人にとっては、体色はその価値が決まるかなり重要な要素になっているようです。

体長はだいたい8cm~15cm程度。21個の体節から長い足が1対ずつ生えていて、しかも蛇行するように動くために、実際に目にしたときは数字以上の大きさを感じます。

ちなみにオオムカデの足の数は42本。ムカデは漢字では「百足」と書きますが、実際100本ということはなくムカデの種類によって数はまちまちです。ゲジ目では最少で30本、ジムカデ目では最多の346本の種がいます。あと足が多い種ほどその足の長さは短くなる傾向にあります。

オオムカデの足は42本

 

オオムカデの生態

オオムカデは北海道から沖縄まで日本全土に生息していて、活動時期は冬以外。基本的には落ち葉・石・コケの下などの湿った場所に生息しています。

夜行性なので夜になると活発的に移動して、昆虫や小動物を捕まえて食べています。オオムカデはトノサマバッタやゴキブリはもちろん、小型のネズミまでもを捕まえるぐらいに獰猛です。触覚で獲物の体温を感知し、急激に接近しその鋭い牙で攻撃して毒を流し込みます。毒を流し込まれた獲物はその作用によって動くことができなくなり、そのまま鋭いアゴの餌食になります。

冬は樹木の隙間の奥や、土の中などに潜って寒さをしのいで過ごしています。温かい隙間を狙って入り込んでいくので、その結果として人が住む屋内に紛れ込むこともしばしば。かなり狭い隙間にまで入り込むことができるため、古い木造建築の家屋などは簡単に侵入されてしまいます。

オオムカデの捕食。大型の個体であればネズミも食べる

 

オオムカデの生殖方法

オオムカデの生殖行動が活発化するのはだいたい5月から6月の間。この時期にオスとメスが出会って意気投合すると、オスは自分の精子が詰まった精筴という袋を排出します。メスは自分の生殖器でそれを体内に取り込んで保存しておきます。そして産卵の際にその精子を使用して受精卵を作り、卵を産み出すわけです。1度精筴を受け取れば半年ぐらいの間、数回に渡って産卵が行えるというから驚きです。

狭くて湿度のある小さな空間を巣穴とし、一度に50~80個程度の卵を産みます。メスは自分の体で卵を包み込むようにして、地面に触れないようにしたり、舌で舐めてカビや乾燥から守ったりします。このメスの行動がないと卵は無事に孵らないそうです。これは卵が孵っても幼体がある程度成長するまでは続きます。

幼体は2、3ヶ月程度で親離れしてそれぞれ散っていきます。生殖行動が可能になるまでは3年かかると言われており、その間に何度も脱皮を繰り返して成長していきます。ちなみに寿命は7~10年程度です。

オオムカデの子供と卵

 

人間にとってのオオムカデの危険性

前述したとおり、オオムカデはよく人家に侵入してきます。夜行性でしかも狭くて温かいところに潜り込む習性のために、寝ている布団の中に入ってこられるケースもしばしば。ぐっすり寝ていて無抵抗であってもムカデは容赦なく咬みついてきます(涙)

かなり鋭い牙を持っているので咬みつかれると非常に痛く、しかもその毒は強烈です。血球溶解作用を持つ毒で、その成分はスズメバチのものに非常に近いもの。咬まれた箇所は大きく赤く腫れあがって熱を持ち、電流が走るようなピリピリした激しい痛みがあります。この症状が数時間続いて非常に苦しい思いをすることに。筆者も膝を咬まれたことがありますが、精神的にも肉体的にもかなりしんどいです。

いちおうオオムカデの毒で命を落とすことはありませんが、乳幼児が首などを咬まれた場合は重症に至ることもあります。あとごくわずかな確率ではありますが、アナフィラキシーショックの可能性もないわけではありません。(※アナフィラキシーショック・・・毒に対して免疫反応が過剰に働いて重篤な症状を引き起こしてしまうこと)

 

もし咬まれてしまったら

寝ているときに咬まれた場合、もしくは乳幼児がいつの間にか咬まれた場合は、咬んだ相手がムカデだったかどうかもわかりません。まず咬まれた部分を確認してみましょう。

2本の牙によって挟まれるので傷が2箇所ある場合が多いですが、咬まれ方によっては1箇所しかないときもあります。蚊に刺された痕のパワーアップ版みたいな大きな腫れあがり方をして熱を持っています。そして時間の経過とともに毒が反応を起こして、痛みが傷のまわり半径5cmぐらいに広がっていきます。

処置としては、まず咬まれた場所を43℃以上のお湯で温めつつ洗い流して下さい。このとき指を使って傷口から毒が出ていくように押し出します。熱くて大きな痛みを伴うかもしれませんが、ここは我慢してください。オオムカデの毒にはポリペプチドやヒスタミンといった、熱に弱い成分が含まれているので、これらの毒を熱で無効することで後々の苦しみをかなり軽減することができます。

その後はもし常備していれば虫刺され薬を塗ります。キンカン、もしくは抗ヒスタミン剤やステロイド成分の入った塗り薬が効果的です。塗布後はアイスノンなどで冷やして安静にしましょう。

これらの処置を済ませて数時間安静にしていれば症状は治まってくると思いますが、どうしても症状が引かずに苦しみが続く場合は病院へ。特にオオムカデに咬まれるのが初めてでない方はアナフィラキシーショックの可能性もあります。大事をとるに越したことはないでしょう。

オオムカデの毒牙

 

オオムカデに咬まれないために

咬まれた後の処置のことを知っておくことも大切ですが、やはり理想は咬まれないことです。ここではオオムカデに接触しないための心がけをいくつか紹介しておきます。

 

1.オオムカデが好きな環境を知る

オオムカデはじめじめした湿気のある狭い空間が大好きです。家の周りにそういった場所はありませんか?庭の置石、積み重ねられた落ち葉、老木、屋外に雨ざらしになった木材、プランター、放置ゴミなど、人家のまわりにはオオムカデが住処として好むものがいっぱいあります。さらにこういった環境にはオオムカデの餌になる生き物までもが集まってきます。これらを処分したり、整理・整頓・掃除をしたりすることによってオオムカデを人家から遠ざけることができるわけです。

またそういった環境で作業などするときは、不用意に隙間や放置物の下に手を突っ込まないこと。オオムカデは何かに接触されると反射的に咬みついてくる生き物です。必ず厚手の軍手などを装着して、オオムカデの存在を意識しながら作業するようにしましょう。

オオムカデ

 

2.屋内に侵入させない

これが何より一番大事なことでしょう。どんなに普段気をつけていても寝ているときに近寄って来られればアウトです。オオムカデに屋内に侵入させない工夫を考えましょう。

まずは戸締りの徹底から。トイレやお風呂の小窓なんかは常時少しだけ開けておくなんて家庭も多いでしょうが、昼間はともかく夜間の間は閉めるようにしてください。湿気を求めてオオムカデが入ってきてしまいます。その窓が2Fや3Fにあったとしても、オオムカデは垂直な壁を平気で登っていけるので同じことです。

次に屋内と屋外を結ぶ隙間を塞ぎましょう。木造家屋なんかだと、長い生活の内に家屋が劣化して縁の下や天井へ通じるような隙間が出来がちです。あからさまな隙間はオオムカデの侵入経路になってしまうので、壁材やパテなどできっちり塞いでください。

仕上げに防虫剤を使います。ムカデよけの薬としていろんな商品が出回っていますが、自分の経験といろんな方の話、Webでの口コミから判断するに一番効果があると考えられるのはナフタリンです。よくタンスの防虫剤なんかに使われているので、そういった商品をそのまま利用します。玄関、床下、天井裏などの侵入経路として怪しい箇所に配置しましょう。

ただしナフタリンはムカデを追い払うほどの強力なゆえに、人体にも害を及ぼす成分です。滞在時間が長くなる居間や寝室などに過剰に配置することは控えましょう。常識的な量の配置ならば問題はありません。ただし幼児やペットがいる家庭は、誤って口に入れないような配慮は必須です。

ナフタリン

 

3.オオムカデが部屋の中に現れた!倒し方は!?

ムカデ専用のスプレー系殺虫剤を使うのが一番ベターです。使用方法は商品によって違うのでそれぞれ取り扱い説明を熟読しておいてください。

しかしありがちなのは、いざオオムカデが現れたときにスプレーが手元にないパターン。スプレーを取りに行っている間に見失うのが必至ってときには、しょうがない、打撃戦です。スリッパや太い雑誌を丸めたような武器で戦いましょう。

しかし大ムカデはその見かけどおり、硬い鎧で体が覆われていて頑丈です。おそるおそる叩いてみたって程度では、奴ら全くひるみません。「粉々に粉砕してやるッ!」ってテンションで思いっきり全力で叩いてください。それで動きが止まったのを確認したら、ここで大事なのはもう1回思いっきり叩くことです。オオムカデは刺激を受けた際に、死んだように動きを止める場合があります。ここで油断すると突然素早く動き出して一目散に逃げていくので、死んだふりであろうが、本当に死んでいようが、もう一度叩いて確実に息の根を止めましょう。

万が一逃がして見失ってしまった場合、ナフタリンを使いましょう。オオムカデが隠れたと思われる隙間に投入すれば、嫌がって出てくることが多いです。それでも発見することができなかった場合はナフタリンを一時的に部屋中に重点配置します。そうすればオオムカデはその部屋から出ていくか、弱ってそのまま死んでしまいます。

 

野生の子持ちオオムカデの動画:

 

ムカデ対策アイテム

ムカデコロリ

ムカデコロリ
ベイト型のムカデ駆除剤です。プラスチックケースの中にムカデを引き寄せる毒餌が入っており、仕掛ける場所によっては短期間で何匹ものムカデが罠にかかってくれます。かなり効果的であると評判も高く、山に面した地域で過ごしていてムカデの被害に毎年困っている人にはオススメのムカデ対策アイテムです。

ムカデブロック 10個セット

ムカデブロック 10個セット
設置型のムカデ忌避剤です。袋の中にはヒバ由来の精油が含まれており、この成分が少しずつ空気に溶け出していくことで忌避効果を発揮します。ムカデが侵入しそうな経路にあらかじめ設置しておくのが効果的です。

フマキラー アリ用殺虫剤 アリ・ムカデ粉剤 1kg

フマキラー アリ用殺虫剤 アリ・ムカデ粉剤 1kg
粉末型のムカデ・アリ用の薬剤です。殺虫効果と忌避効果の両方が期待できます。天然由来の殺虫成分ピレトリンを使用しており、健康面や安全面の心配がありません。

キンカン

キンカン
ムカデに刺されてしまったときに効果的な塗り薬です。アンモニア水を主成分としており、虫刺されによる炎症もちろん、肩こり、腰痛、打撲、捻挫などの消炎作用も持っています。

 

オオムカデ関連ニュース


ワニガメ

ワニガメ

ワニガメとは?

ワニガメは、爬虫綱カメ目カミツキガメ科ワニガメ属のカメのことです。

名前のとおりワニのように大きな口を持ったカメで、英名もAlligator snapping turtle(ワニのように咬みつくカメ)となっています。映画「ガメラ」に似ていると思った人、正解です。 そのモデルになったカメがワニガメなのです。

元々日本には生息していなかった種のカメで、原産は北アメリカ大陸。ペットとして輸入されて日本国内に持ち込まれていました。しかし成長すれば1メートルほどにもなるその大きさから飼育は困難で、その飼育放棄により野生化してしまった個体が定着してしまい、現在大きな問題になっています。

オオワニガメ

 

ワニガメの身体的特徴

ワニガメは甲羅の大きさが80cm程度、全長だと120cmほどに成長します。体重は大きな個体では100kgを超えることもあり、カメの中でもかなり大きな種類だといえます。

最大の特徴は頭部。ほかのカメに比べて非常に頭部が大きく、アゴ先が鋭く尖っています。このアゴは非常に強靭で、人間の指ぐらいなら簡単に数本まとめて咬みちぎってしまうほど。その力は300kg~500kgといわれていて、他のカメや貝類をいとも簡単に噛み砕いて食べてしまいます。しかしそれだけ攻撃に特化してしまったせいか、その頭が大きすぎて甲羅の中にしまうことができません。まぁ、天敵がほとんどいないワニガメにとっては頭部を隠すことに意味はないかもしれませんが。

また口の中には小さくて細い、鮮やかなピンクをしたミミズのような舌があります。ワニガメは水中でこれをまるで小さな生き物かのように動かして、近寄る魚を捕食しています。

首の周りにはトゲのような突起物が並んでいます。これで水の流れを感知して、獲物の位置を把握したりします。嗅覚も遠くの死肉を嗅ぎつけるほど非常に敏感。ワニガメは見た目よりも遥かに高度な捕食能力を備えたハンターなのです。

甲羅にはごついトゲ状のものがいくつも重なるようについています。水の抵抗が死活問題になる海ガメなどはつるつるした凹凸のない甲羅になりますが、ワニガメは基本的には水の流れがない、池や沼地に住んでいます。岩に擬態するため、ワニなどに捕食されないために独自に進化した結果だといえるでしょう。

ワニガメの舌と甲羅
↑擬似餌の役割をする小さな舌(左)と、アリゲーターをも退ける丈夫な甲羅(右)

 

ワニガメの主食と天敵

ワニガメは雑食性で、とくに動物性のものは何でも食べてしまいます。魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、それぞれ生きていようが死んでいようがお構いなし。ほかには貝類や果物なんかも食べたりします。

狩りの方法は待ち伏せと、夜間の積極的な索餌行動の2つ。待ち伏せの際は前述したとおり舌を疑似餌に見立てて捕食する手法をとることがあり、まだ幼い個体であるほどこの手法に頼る傾向が強いようです。体が小さい間はむやみに動き回るより、岩のようにじっとして餌を待ったほうが自分の身の安全にもなるからでしょう。

逆にワニガメにはこれといった天敵はいません。大型の亀にとっての天敵は通常はワニですが、ワニガメの甲羅はそのワニの顎の力を持ってしても砕くことができません。そもそも日本にワニいませんしね(笑)。ただし前述のとおり、生まれて間もないような小さな個体であれば、肉食性の鳥類・哺乳類に食べられてしまうことはあります。

ワニガメの捕食と天敵

 

ワニガメの住みかと繁殖

ワニガメは爬虫類の中でもかなり水に依存して暮らしています。水の流れの少ない池や沼、それも植物が生い茂っていて泥で濁った水質を好みます。生活のほとんどを水の中で過ごし、自ら陸に上がることはまずしません。

逆に自ら陸に上がる日。それは3年に一度の産卵のときです。

春に交尾を済ませたワニガメは夏前ぐらいの時期に陸に上がり産卵巣を作ります。土の中に産み付けられる卵は6個~50個程度。秋には卵から孵化して、その子供たちは水の中に帰っていきます。

ワニガメは繁殖できるまで成長するのに10年から15年かかるといわれています。繁殖速度がそれほど早くないため、乱獲が横行したアメリカではレッドリストに登録されてしまいました。

ワニガメ
↑ワニガメの子供

 

人間からみたワニガメの危険性

ようやく本題へ。ワニガメの人間に対しての危険性についてです。

近年ペットとして飼育されていたワニガメが捨てられて、野生化していることが問題になっています。大人の指でも簡単に咬みちぎるような危険なカメが近所の池にいるなんて信じられない!なんてヒステリックになってる親御さんなんかもいるでしょう。

しかし結論から言います。普通に生活していればワニガメに咬みつかれる可能性はまずありません。

ワニガメは産卵の時以外は常に水中にいます。しかも綺麗な川ではなく、池や沼のような濁った場所を好みます。つまり、人間のほうからそういった池や沼の中に足を入れなければ、絶対に接触しないわけです。池のそばで遊ぶことはあっても、いまどき池の中に入って遊ぶ人はいないでしょう。

しかもワニガメは水中で自分より大きな生き物に遭遇するとまず逃げます。そもそも水中ではほとんど咬みつくことはしないとも言われています。

唯一自ら陸地に上がってくる産卵時ですが、産卵自体3年に一度しかなく、運悪くそのときに遭遇しても、産卵を控えたワニガメの攻撃性は低く、ワニガメのほうから逃げていきます。

これらのことをふまえて、人間がワニガメに咬みつかれるケースがもしあるとすれば、それは人間のほうからワニガメにちょっかいを出したときです。ワニガメをわざわざ陸上にあげて、面白がって指を差し出したりすれば、びっくりするぐらいのスピードで咬みつかれて見事にその指を失うことでしょう。そんなんはもはや自己責任ですね。

もしワニガメを見かけたなら絶対に手を出さず、警察に連絡するようにしてください。

ワニガメの攻撃性

 

ワニガメの飼育放棄問題

人間が咬まれるトラブルはまず起こりえないだろうということを書きましたが、だからといって「じゃあ飼育放棄してもいいや」と簡単に思ってもらっては困ります。

ワニガメは自分の体より大きなワニ以外に天敵がいません。つまり日本では完全に無敵というわけです。濁った水中でおとなしくしていれば、唯一の脅威である人間の目に止まることもありません。さらにワニガメの寿命は30年~100年。これが日本の自然に放たれればどれだけ生態系を崩してしまうか、その想像は容易でしょう。

2016年現在、ワニガメの新規飼育はかなり厳しくなりました。多数の書類申請を行い、何万円もする申請料金を払い、これまた高額なマイクロチップを埋めなければなりません。またこれだけ大きな、しかも水棲のカメを飼育するとなるとその設備投資も多大な金額になります。
そして初期投資以上に、継続飼育していくには精神的にも金銭的にもたくさんの苦労が発生していきます。

「そこまでしてでも飼いたい!」というアツい気持ちは否定しませんが、安易な覚悟でとりあえず飼ってみようなんてのは控えてください。「何十年も生きるワニガメと一緒に人生添い遂げるんだ!」っていう覚悟はやはり必要です。

追記:
ちなみに飼育放棄に関して言えば、ワニガメ以上にタチが悪いのは実はミドリガメ。正式にはミシシッピアカミミガメという学名なんですが、彼らは食欲が旺盛で繁殖力が強く、しかも意外なことに体長30cmという大きさまで成長します。小型の鳥類さえも集団で襲って食べる彼らは、生態系の壊すという点ではワニガメに劣りません。ワニガメはもちろんそうですが「ミドリガメぐらいなら池に捨ててもいいだろう」なんて甘い考えは絶対に持たないようにしてください。
→鳩を襲って食べるミドリガメの動画

ワニガメの生態

 

日本国内での主なワニガメ捕獲事件

国内でのワニガメ騒ぎを何件か紹介します。ここで紹介しているのはあくまでたくさんの事例の中のほんの一部です。

 

1.2006年6月 東京都 上野公園不忍池

東京都台東区の上野公園不忍池でワニガメのメスが発見されました。通行人が穴を掘っている大きなカメに気付いて警察に通報したそうです。甲長37cmの比較的若い小さな個体でしたが、驚きは産卵した卵と一緒に見つかったこと。ワニガメが野生化して適応したことはあっても、繁殖に成功している例はまだ確認されていません。

この件では最初に6個、またその後に9個と合計15個の卵を回収しています。有精卵だとすれば池の中に別にオスがいて繁殖している可能性がありますが、その卵が有精卵だったかどうかは不明。

しかしこの不忍池にはかなりの数のワニガメが生息しているとの噂があって、公園に詳しい地元民やホームレスにとっては、その存在は有名であったようです。可能性としてはすでに繁殖に成功しているとみたほうが自然のような気が。噂レベルではありますが、水を飲んでいる鳩を大きなカメが襲って食べたという目撃談も確かに存在します。

不忍池のワニガメ

 

2.2009年6月、9月 愛知県 堀川

愛知県を流れる堀川の筋違橋付近で4年ほど前からワニガメの目撃情報が相次いでいました。調査の結果2匹の個体を確認し、2009年6月にそのうち1匹のオスの個体の捕獲に成功しました。甲長53cm、体重は37kgだったそうです。
→捕獲者のブログ「どようさんのオケラみち」

その後同年9月にもう1匹(♀)を捕獲しましたが、事前に撮影されていた個体とは違う可能性が高いと判断されました。「普通のカメとは明らかに違う子ガメを見た」という目撃情報もあって、残念ながら堀川では繁殖に成功してしまったという見方が強まっています。トゲスッポン、ブルーギル、アリゲーターガーの姿も確認されている堀川は外来種のメッカになってしまいました(汗)

 

3.2009年8月 福岡県 福岡競艇場

福岡市中央区の福岡競艇場のボートレース場にて発見されました。レース前に待機中だった乙藤智史選手(当時24歳)が水面にプカプカと浮かぶワニガメを発見して職員に通報、
まさかの怪物の出現に職員たちは大慌ててながらも捕獲したそうです。甲長は50cm、全長は70cm程度。

上流の那珂川から、もしくは数日前の大雨の際にどこか近場の水場から紛れ込んだ可能性が高いとみられています。なおペットとして飼育する際に義務付けられているマイクロチップは埋め込まれていなかったそうです。

 

4.2010年6月 大阪府 大阪港

こちらはなんと大阪港での発見例。泳いでいるワニガメを船舶点検していた大阪府警水上署の男性署員が発見したそうです。汽水域(淡水と海水が混じる場所)でも住むことができるワニガメですが、港というと限りなく海水のはず。好んでそんなエリアに侵入するとは思えないので、水の流れに逆らえずに紛れ込んでしまったものと考えられます。全長は70cm程度だったようです。

オオワニガメ

 

5.2011年10月 東京都 渋谷区鍋島松濤公園

通行人からの「ワニガメらしきカメが、ほかのカメの頭を咬みちぎって食べている」との通報を受けて警察が出動。渋谷署員13人が出動して、甲長30cm程度の個体が捕獲されました。付近の小学生がインタビューで「夏休みぐらいからいた」と証言しています。こらっ!早く通報しろよっ(苦笑)
→ANNニュース動画

 

6.2013年2月 沖縄県 嘉手納町屋良ムルチ(比謝川)

2012年12月に釣り人から目撃情報が寄せられました。釣り人と警察官たちが協力して釣り上げようとしましたが、糸を切られて逃げられてしまいました。その後対策本部が設置され、翌年2月に無事捕獲されました。甲長は50cm程度だったそうです。

 

飼育されているワニガメの動画:

 

ワニガメ関連アイテム

ワニガメハンドブック

ワニガメハンドブック
大久保 智哉氏がワニガメについて書いたガイドブック。内容は写真が多く、特別ワニガメマニアでなくても楽しめる内容になっている。

ワニガメハンドブック2

ワニガメハンドブック2
大久保 智哉氏がワニガメについて書いたガイドブックの第2弾。ワニガメ大好き人間によるワニガメ大好き人間のためのガイドブック。

カメのすべて (カラー図鑑シリーズ)

カメのすべて (カラー図鑑シリーズ)
大人から子供まで楽しめるカメ図鑑。カメ124種の生息地域や生態をカラー写真にて紹介している。飼育可能なカメについてはその飼育方法についても解説。

カメが好き! かめ亀KAME図鑑

カメが好き! かめ亀KAME図鑑
カメのかわいい部分を追求したカメ図鑑。100種類ほどのカメを紹介しており、身近なカメや、ウミガメに会うための体験記など親しみやすい内容となっている。

 

ワニガメ関連ニュース


ヤマカガシ

ヤマカガシ

ヤマカガシとは?

ヤマカガシは、爬虫綱有鱗目ナミヘビ科ヤマカガシ属のヘビの仲間です。

日本国内では北海道や小笠原諸島以外ならどこにでも住んでいて、アオダイショウやシマヘビと並ぶ、生活の中で比較的よく見られる日本の代表的なヘビの一種です。近年まで全く毒蛇だと認識されていなかったという、なんとも稀な経歴を持っています。

ヤマカガシ

 

ヤマカガシの身体的特徴

ヤマカガシは、全長が70cm~150cm程度の大きさになります。日本に生息するヘビとしては中型サイズでしょうか。

鱗はキール(鱗一枚一枚についている隆起)が強く、触るとかなりザラザラした手触りを感じることができます。これはヤマカガシが生活の中で水中を泳ぐ機会が多く、うまく泳ぐためにそのように進化したのではないかと考えられています。

よく『毒蛇といえば頭が三角形』なんて言葉がありますが、ヤマカガシの頭部は、マムシハブのように三角形ではなく比較的細い丸型をしています。目がクリッとしていて愛嬌がある顔をしているのも特徴のひとつ。ペットとしてもなかなか人気があるようです(※飼育には許可が必要)。

首周りには黄色いリング状の模様がついており、褐色地に黒・黄色・赤が交互に重なった鮮やかな体色をしています。とくに若い個体はこの模様が鮮やかである傾向が強いようです。

しかしこの模様は個体差・地域差が非常に多く、全体的に黒褐色が強かったり、鱗に赤い部分が全くなかったり、黄色のリング模様さえなかったりと、ときに他のヘビとの判別が非常に難しい場合があります。この場合は頭部の鱗の粗さや鱗のキールの強さなどで見分けるのがベター(※判別に自信がないときは触ろうと思わないでください)。

ヤマカガシの身体的特徴。全然色が違っていてもどちらもヤマカガシ
↑(左)と(右)で全然色が違いますが、どちらもヤマカガシ

 

ヤマカガシの住みかと主食

ヤマカガシは平野部、もしくは山間部の低い標高地域の水場に住んでいます。人間の生活圏に近い場所でいえば河川敷や田んぼなど。都心部ではなかなか見かけられませんが、田舎では普通に見かけるメジャーなヘビです。

水場に住んでいる理由は、好む餌がカエルや小型魚類であるためです。オタマジャクシも食べます。ほかのヘビと違ってあまりネズミなどは狙わないようです。あ、鳥の卵は食べるときがあるそうですが。

ヤマカガシの食事の大きな特徴は、毒を持っているヒキガエルさえ食べるということ。マムシやハブのような攻撃性の強いヘビでさえヒキガエルは避けるというのに、なんとヤマカガシは逆に好んでヒキガエルを狙う傾向にあります。しかもそのヒキガエルの毒を体内で取り込んで、自分の毒牙用の毒に使用するというから驚き(実際、ヒキガエルが生息しない地域のヤマカガシは毒を持っていないそうです)。※誤情報である可能性を指摘いただきました。すべての地域のヤマカガシが先天的に毒を持っていて、補助的な第二の毒の生成にヒキガエルの毒を利用するようです。

あと普通のヘビは獲物を頭から食べることが多いのですが、ヤマカガシは何故か獲物をお尻から食べることが多いようです。確かな理由はあきらかになっていません。食べられているカエルには気の毒ですがヤマカガシがカエルを飲み込んでいる途中の状態は、全く新しい生物みたいに見えて、見ため的にはちょっと面白いことになっています。

大きなヒキガエルを丸呑みにする途中のヤマカガシ
↑大きなヒキガエルを丸呑みにする途中のヤマカガシ

 

逆に天敵になるのは、人間、猛禽類、イタチ、テン、タヌキ、大型のヘビなどです。特に生息域が重なるシマヘビやアオダイショウなどの大型ヘビはヤマカガシにとっては脅威で、大型ヘビが多い地域ではヤマカガシは少ないと言われています。

アオダイショウVSヤマカガシ
↑大きなアオダイショウに捕食されるヤマカガシ

 

ヤマカガシの生活サイクルと繁殖

ヤマカガシは明るい時間に活動することが多く、夜間はあまり積極的には動きません。冬場は土の下などで冬眠をし、寿命は自然環境下では5年程度までと考えられています。

ヤマカガシは基本的に冬眠直前の秋頃に交尾をします。秋に交尾の機会に恵まれなかった個体は、冬眠から覚めた春先に交尾を行う場合もあります。そして妊娠したメスは夏に10~20個程度の卵を産卵します。

産卵場所は石や落ち葉などの下で、卵が孵化するのは30日~50日後。幼蛇は最初は20センチ程度ですが、3年ほどかけて約1メートルぐらいの大きさまで育ちます。

河原にいるヤマカガシ(左)、飼育下で産卵されたヤマカガシの卵(右)
↑河原にいるヤマカガシ(左)、飼育下で産卵されたヤマカガシの卵(右)

 

ヤマカガシの毒

ヤマカガシは毒を持つ部位が2箇所あります。毒牙と、首の付け根あたりの表皮です。

まずは毒牙のほうですが、実はこれは最近までその存在があまり認知されていませんでした。一般的な毒蛇は大抵、口の中で一番前にある大きな牙に毒腺がありますが、ヤマカガシは奥歯のみに毒腺があります。普通に人間に噛み付いたときにこれが皮膚に食い込むことはほとんどないため、ずっとヤマカガシに毒牙はないと思われていました。

その毒牙の知名度を上げたのは1972年の中学生の死亡事故です。指のような細い部位であればヤマカガシの毒牙が届いてしまうケースがあり、それ以降は30件以上の重症例と4件の死亡例があります。

ヤマカガシの毒は、マムシやハブと同じで出血毒です。毒牙によって毒を注入される危険性はほかのヘビよりも少ないものの、その毒性の強さは実は国内最強で、マムシの3倍とまで言われています。

毒が注入されても、しばらくは表面的な症状は出てきません。マムシと違って咬傷部は腫れませんし、ジンジンとくる熱い痛みもほとんどありません。しかし毒が体内を回り始めると、血管内の血小板に異常をきたして体内出血が起こります。全身に皮下出血、歯茎出血、内臓出血、腎機能障害、血便、血尿などが起こり、最悪の場合は死に至るケースがあります。

しかも困ったことにヤマカガシの血清は限られた場所にしかないため、処置が後手に回ってしまうことが多いです。血清が手に入らない場合は輸血や透析処置をすることになりますが、
それらは血清投与ほどの大きな効果は得られないのです。

ヤマカガシの牙と骨

 

次に、首の付け根あたりの表皮にある毒腺のほう。ちょうどこれは体色の中でも一番鮮やかな部分にあたります。派手な部分をあえて見せることで『自分は毒を持った生き物である』ことをアピールするのは毒を持つ動物ではよくあることで、自然界では常識になっていますね。

実際、ヤマカガシは威嚇の際にはコブラのようにこの部分を平たく広げて、なんと相手に背中を向けてこれをアピールします。ヘビの威嚇としてはかなり特殊な部類。普通のヘビの威嚇は『咬んでやるぞ!』ですが、ヤマカガシの場合は『毒あるぞ!』なわけです(笑)

この毒は、ヤマカガシ自身が力を込めることで液状の状態で多少の距離を飛ばすことができます。肌に付着するぐらいではとくに影響はありませんが目に入ったりすると、結膜炎や角膜混濁、最悪失明してしまう危険もあります。

イタチなどがヤマカガシを狙うときに誤ってこの毒腺部分に噛み付いてしまい、返り討ちにあって死んでしまうケースもあるため、ペットをヤマカガシがいそうな環境に連れて行くときは注意が必要です。

ヤマカガシの毒

 

ヤマカガシに咬まれないために

ここまでヤマカガシの毒の恐ろしさについて説明してきましたが、執拗に恐れすぎる必要は全くありません。この50年でヤマカガシによる死亡事故は5件程度。交通事故で死ぬ確率のほうがよっぽど高いぐらいです。

ヤマカガシは臆病な性格をしていて人間を見つけるとすぐに逃げていくこと、危険が迫っても積極的に咬みついてこないこと、咬まれてもそのほとんどのケースで毒牙が皮下にまで届くことがないこと、これらを考えるとヤマカガシの危険性というのは非常に低いといえます。

ただし、絶対に最悪の事故が起こらないとは限りません。それを避けるためのちょっとした心構えだけここで記述しておきます。

 

1.ヤマカガシがいそうな場所では警戒心を持つ

前述したとおり、ヤマカガシは水場にいます。田んぼや河川敷でヤマカガシに遭遇する可能性は十分にあります。

基本的には出会ってもヤマカガシのほうから逃げていくので問題ないのですが、怖いのは、誤って不意にヤマカガシを踏んでしまったときや、何気なくふと手を置いたところにヤマカガシがいたとき。この場合は咬まれてしまう可能性が極めて高いです。

「そこにヤマカガシがいるかもしれない」という心構えだけは持っておきましょう。これはマムシやハブに咬まれないための認識にも繋がります。

 

2.ヤマカガシで遊ばない

ヤマカガシは滅多に人を咬みません。子供の頃に普通に素手でヤマカガシを掴んで遊んでいた人も多かったかと思います。しかし興味本位でちょっと捕まえてみようなんて思わないでください。

ちょっとした遊び心で咬まれて大事故になるのは損です。実際これまでに亡くなったのは、遊び心で自分からヤマカガシに接触した人ばかりです。

ヤマカガシに咬まれないための対策

 

3.ヤマカガシに咬まれてしまったら

まず何より大事なのは落ち着くことです。パニックになると冷静な判断ができませんし、血流が早くなって毒が早く回ります。とにかく落ち着きましょう。

最初に困るのは『毒が注入されたかどうか』の判断。仮に毒が注入されていたとしても、ヤマカガシの毒は自覚症状が出るまでには時間がかかります。しかし自覚症状が出てから処置をしたのでは、最終的に重症化する危険性が高まってしまいます。『咬まれたけど平気そうだ』なんて考えずに、毒が入ってしまったとして行動するべきです。

まずは咬まれたヘビの確認。咬まれて振り払ったときにはすでにヘビは逃げ始めていると思われるので難しいかもしれませんが、もしそのヘビがヤマカガシ(もしくはマムシ)であるとはっきり判断できたなら、その後の処置が非常にスピーディーになります。

次に毒の吸引。吸引器を持っていればそれを使いたいところですが、まず携帯していることはないでしょう。しかしヤマカガシの毒は、素人が口を使って吸い出すことはあまり推奨できません。流水で洗いながら血を絞り出すやり方で、少しでも毒を体外に追い出しましょう。後の症状が軽くなります。

さらに咬まれた場所から10cmほど心臓側の位置をタオルなどで強く縛ります。完全に血流を止めてしまうのかえって良くないので、指1本入るぐらいの余裕を持って縛りましょう。

そして病院へ向かってください。毒を受けているかどうかは病院で判断してもらえばいいことです。面倒くさがったり、恥ずかしがったりして判断を誤って命を落とすのは非常につまらないことです。

もし不幸にもヤマカガシの毒の症状がはっきり現れてしまった場合は、医者に相談の上でジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)に連絡してください。ヤマカガシの血清を常備している施設は日本でここだけです。必要とあらばヤマカガシの血清を輸送してくれます。
→ジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)HP

ヤマカガシ

カエルを丸呑みにしている最中のヤマカガシの動画:

 

ヤマカガシ対策アイテム

イヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット

ヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット
ヘビやムカデ用の忌避剤です。ナフタリン、木酢粒剤、硫黄などを使用しており、嗅覚に敏感なヘビやムカデを寄せ付けなくします。効果は一ヶ月程度。雨に濡れると効果が落ちてしまうためなるべく雨風の影響を受けにくい位置に散布すると長期間の効果を期待できるようになります。

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g
ヘビやトカゲ用の忌避剤です。大きめの固体錠剤タイプでヘビなどが現れる場所に仕掛けることでヘビの接近を遠ざけることができます。家の中への侵入路となりそうな場所にピンポイントで設置すると効果的です。天然成分を使用しているため健康面でも安心ができます。

ヘビレス

ヘビレス
ヘビ用の粒状をした忌避剤です。4種類の有効成分を配合しており、庭先に撒くことで1ヶ月程度の忌避効果が期待できます。粒状であるため雨にも強く、天候に左右されにくい効果が期待できます。

ヘビ捕獲棒

ヘビ捕獲棒
アルミでできているヘビ捕獲棒です。危険な毒ヘビに近寄ることなく捕獲作業を行うことができます。やや柄の長さが短めであるため、大型のヘビの捕獲を考えている場合はもう少し大型のタイプを購入したほうがよいかもしれません。

ポイズンリムーバー

ポイズンリムーバー
携帯用のポイズンリムーバーです。毒を持った生き物に刺されてしまった、もしくは咬まれてしまったときに毒を吸い出して被害を最小限におさえることができます。蚊に刺された場合でも吸い出すと効果があり、その後の炎症がかなり軽減されます。ただし圧力を下げて毒を吸い出す構造上、体の先端部の傷口に対しては容器がフィットせずに使用できない可能性があるため注意が必要です。

 

ヤマカガシ関連ニュース


ハブ

ハブ

ハブとは?

ハブは、クサリヘビ科ハブ属のヘビの総称です。マムシと並び日本ではとても有名な毒蛇。

 

ハブの種類

日本国内ではハブの仲間は沖縄のみに生息していて、ホンハブ、ヒメハブ、サキシマハブ、タイワンハブの4種類が確認されています。

 

1.ホンハブ

一番分布が広く、個体数も多いハブ。全長は大型になると2メートルを越える場合もあり、毒が強い。白~黄色地で、黒い細かい網目模様が特徴。特にネズミを好んで食べる。

 

2.サキシマハブ

八重島列島のみに住んでいたが、最近は本当南部や宮古島でも発見されている。 大きさは1メートル程度まで。体色は茶色く、鎖のような模様が入っている。毒は弱め。

 

3.ヒメハブ

全長はせいぜい80センチで小さいが、極端に胴体が太い。暗褐色で斑紋は比較的薄い。他の種よりも水辺を好み、カエルを主食にしている。ハブとしては毒性は最も低く、大きな事故になった前例はまだない。

 

4.タイワンハブ

元々は中国大陸や台湾に生息していた外来種だが、人により持ち込まれて本島の東部にて繁殖。最大1.2メートル程度で、灰褐色に黒い鎖の模様が入っている。牙が細長い上に毒も強いので、人間にとっては危険な種。ただし個体数は非常に少ない。ほかの種よりは木の上での生活を好む。

沖縄に生息するハブの種類
↑ハブ(左上)と、サキシマハブ(右上)、ヒメハブ(左下)、タイワンハブ(右下)

 

このページでは個体数が多くハブの咬傷事故の大半を占めるホンハブについて解説していきます。以下ここではホンハブのことをハブと称します。

 

ハブの身体的特徴

ハブは、全長は100cm~150cm、体重は1kg~2kg程度の大きさになります。ただし環境によりその大きさにはかなり違いがあり、2011年には全長250cm、体重3kgの個体が捕獲されてニュースになりました。天敵が少ない場所では大型の個体が育ちやすい傾向にあるようです。

ただし近年では小遣い目当てでハブを捕獲する人が多いため、駆除率が急速に高まり、あまり大きな個体は出現しにくくなったかもしれません(※捕獲すると県や市町村が報奨金として1匹4000円支払ってくれる)。

体色はお腹のほうが白~黄色で、黒い網目模様がついています。ウロコはほかのヘビに比べると非常に目が細かく、判別の際にはひとつの目安になります。

頭部はマムシと同じく鼻先が尖った三角形で、その槍のような形状から海外ではランス・ヘッド・シャークとも呼ばれています。目と鼻の間にあるピットという感覚器官は獲物の熱を感知することができ、餌を探す際にはレーダーのひとつとして使用して効率よく狩りをしています。

 

ハブの性格と攻撃性

ヘビというと比較的臆病な種類が多いのですが、ハブはどちらかというと気性が荒くて好戦的なほうです。もちろん積極的にハブが近寄ってくるようなことはありませんが、不用意に間合いに入ってしまうと、高い確率でその牙で攻撃を喰らうことになってしまいます。飛びつく間合いは全長の2/3程度でジャンプはしません。なので一般的には1.5メートルの距離をとれば安全だと言われています。

 

ハブの毒

ハブの特徴として見逃せないのが、その強烈な毒です。鋭い牙の先には毒腺があり、相手に噛み付いた際に直接その毒を体内に流し込みます。

毒の種類はマムシと同じく出血毒で、細胞を破壊して焼けるような強い痛みを相手に与えます。毒そのものの強さはマムシより弱いと言われていますが、注入される毒の量がハブのほうが多いため、結果的にはマムシに咬まれた場合よりも深刻な症状が出るケースが多くみられます。

血清が普及していない時代は、マムシの毒で亡くなる人の数は相当なものだったようです。1960~1970年ごろは毎年10人近くの人間の命がマムシによって失われていました。それだけ毒性が強く、危険なヘビだったということです。

近年では血清の普及やインフラの充実により、ハブによって命を失うケースはほぼなくなりました。1980年以降で死亡者はたった4人で、2000年以降は1人の死亡者も出ていません。しかし命こそ失わないもの、血清の投与が遅れた場合はその部位が壊死してしまったり、最悪切断するはめになってしまったりと、危険性の高い毒蛇であることは忘れてはいけません。

【追記】
2014年4月に男性が咬まれて死亡する事件が発生。奄美群島の加計呂麻島にて51歳の男性が手を咬まれ、1時間半後に血清治療をしましたが、その2時間後に死亡しました。

ハブの生態

 

ハブの生活サイクルと繁殖

沖縄の温かい気候もあってか、ハブは冬眠をせずに一年中活動を続けています。基本的に夜行性であるため、昼間はほとんど見かけることはありません。茂みの中や、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中などでじっとしています。

夜になると餌を求めて付近を徘徊します。行動範囲は一晩で約100メートル程度。

春頃にオスはメスを探して交尾を行います。1匹のメスを巡って複数のオスが巻き付き合いながら争うことも。無事に交尾に成功すると、メスは夏に卵を5個~15個程度出産します。そのメスが大きな体格をしていれば、それだけ多くの卵を一度に産むようです。

卵は一ヶ月半ぐらいで孵化し、30~40cm程度の幼蛇が誕生します。そして脱皮を繰り返して成長して、だいたい3年程度で1メートルを超す大きさになります。

ハブの大きさと頭部の様子

 

ハブの主食

ハブは肉食性です。普段はネズミ、トカゲ、カエルなどを食べていますが、大型の個体になるとなんとウサギやハト、ネコを食べた例も。

その中でもやはりネズミが一番の好物で、ハブの食事のほとんどはネズミであると考えられています。そのためネズミを追って家屋に侵入してしまうこともあり、人間に対しての咬傷事故の原因にもなっています。

ハブの主食

 

ハブといえばマングース

ハブといえば連想するのがマングースですが、マングースは元々1910年にインドから、ハブ駆除を期待して人間によって沖縄に持ち込まれたものです。

しかし夜行性であるハブと昼間に活動するマングースが遭遇することはほとんどなく、仮に出会ったとしてもマングースは強敵であるハブを避けて、狙いやすいヤンバルクイナやアミノクロウサギなどの天然記念物ばかり食べてしまうという皮肉な結果に。マングース投入作戦は、史上最悪レベルの失敗作戦であったと言わざるを得ないでしょう。ハブよりもマングースのほうが駆除の対象になっている現状はとても滑稽ですね。

一昔前は見世物で「ハブVSマングース」なんてものがやっていましたが、動物愛護上の問題から今では実施されていません。コブラさえも倒すマングースがハブに負けることはほとんどなかったようですが、前述したとおり、密室に閉じ込めでもしない限りマングースがハブを積極的に攻撃することはありません。「ハブVSマングース」というタイトルこそ知名度が高いですが、これは自然界ではありえない、人工的に作られた対決だったわけです。彼らは実はライバルでもなんでもなかったのです(笑)

ハブVSマングース

 

ハブに咬まれないために

血清が普及しているとはいえ、ハブが危険な生き物である事実は変わりません。沖縄に住むにしても、旅行に行くにしても、咬まれないための心構えだけは常に持っておきたいものです。

 

1.ハブのすみかに近寄らない

ハブは明るい時間は、茂みの中、木の根元、石垣の隙間、地面の穴の中でじっとしています。樹木の空洞や、放置されたゴミや木材の下、サトウキビなどの農作物の根元にいるケースもあります。そういった場所に不用意に近づかないようにしましょう。特に注意したいのは沖縄県内に非常に多い石垣。生活圏に近いうえにハブにとっては格好の隠れ場所です。

ハブは自分の間合いに入ってきた熱源に本能的に飛びかかります。ムチのようにしなるように素早く飛び掛ってくるため、飛び掛られてからでは避けることができません。怪しい場所に行くときには「この陰にはハブがいるかも」という心構えを持って、ハブより先にこちらが相手を目視・確認することが大切です。

 

2.ハブを自宅に近寄らせない

自宅の周辺からハブの住処になりそうなものを排除しましょう。草むらはこまめに手入れして、石垣は隙間をコンクリートで埋めるなどできればベストです。

後は1.5メートル以上のブロック塀を設置するのも効果的です。ハブはすすんでブロック塀を乗り越えようとしません。

手軽なのは照明器具の設置。夜行性のハブは灯りを避けるように行動しますので、ハブの通り道になりそうな場所を明るくしておけば寄り付きにくくなります。まぁ、そのぶん虫なんかが集まるようになってしまうので電撃殺虫灯なども必要になってしまいますが。

ちなみにハブが硫黄の臭いを嫌うっていうのは迷信です。科学的に実証されたガセネタですので、硫黄に頼ることはやめましょう。いまのところハブに対しての効果的な忌避剤というものは存在しませんので。

3.ハブに出会ったら

できればその場をやり過ごして立ち去りたいものですが、もし人家のそばで出会った場合は駆除するのが理想。
ここで逃がせばその個体が人や家畜に害を与える可能性が残ってしまうためです。「退治するなんて私ゼッタイ無理ーッ!!」って足がすくんじゃう人は無理しなくていいですが(笑)

一番無難なのは長い棒状のもので戦うこと。ハブ被害が多い奄美大島のほうでは家庭で常備していたり、道端に「用心ぼう」という棒が設置されていたりします。150cm以上の長さがあって、ある程度の重量があるものが理想です。

あらかじめ準備が必要ですが、ハブノックというハブ用の撃退スプレーも市販されています。これは遠い距離から噴射してハブを攻撃することが可能で、薬剤がかかったハブはすぐに苦しみ出し、数時間で衰弱死します。

ハブの毒と牙

 

4.ハブに咬まれてしまったら

まず何より大事なのは落ち着くことです。ハブに咬まれて死に至る確率はけっして高くありません。無駄にパニックになると血流が早くなって、症状を悪化させる原因になるだけです。

とりあえず相手がハブであるかどうかを確認しましょう。その蛇の見ためで判断がつく場合はいいですが、もし無理な場合は傷跡を見てください。ハブの場合、上顎の牙×2と、下顎の牙×2で、最大4つの穴状の傷跡がつきます(※咬まれ方によっては傷が3つ以下の場合もあります)。比較的早い段階で傷口からじんじんと焼けるような痛みが広がっていきます。

次に咬まれた位置より心臓側をタオルなどで強く縛って圧迫します。ただしこのとき力任せに縛り過ぎないように。指一本入る程度の力加減で縛るようにしましょう。

その後は、傷口に口をつけてできる限り毒を吸い出します。ハブの毒は口から含むぶんには人体にほとんど影響がありません。仮に飲んでしまっても、胃でその毒は分解されます。また口の中に傷があっても虫歯があっても構いません(多少炎症になるケースもあるようですが)。

そして走ったりせずにゆっくりと病院へ移動してください。ハブに咬まれたことを先に病院に連絡できれば処置もよりスムーズになります。甘くみずに、絶対に病院に行って血清を打ってもらってくださいね。血清を打たないと咬まれた部位から壊死して、本当に大変なことになりますので。

ハブに咬まれた人

 

ハブを生け捕りにすると報奨金がもらえる

先の項でもチラリと触れましたが、事実です。駆除して絶対数を減らすという面と、生きた個体で血清を製造するという面で需要があり、国や市町村が大きさに関係なく1匹あたり4,000円で引き取っています(2013年時点)。

不況もあってか、このハブ獲りは老若男女問わずで人気が出てしまい、報奨金の予算を使い切ってしまうほどの持ち込みがあって、大きなニュースになりました。たしかに1匹4,000円っていうのは大きなお小遣いですよね(笑) 生け捕りにするためには捕獲器具の準備も必要ですが、日常的にハブに接して暮らしてきた地元民にとって、器具の準備も捕獲作業自体も気軽で簡単なことだったようです。

このハブの報奨金については、スリムクラブの真栄田賢がトークのネタにしています。なんでも真栄田の父親がハブ捕りが上手いらしく、次々と市役所にハブを持ち込んで日銭を稼いでいたそうです。そうしたら、あまりの持ち込みの数の多さに市役所が怪しんで、「養殖してるんじゃないか」とあらぬ疑惑をかけられてしまったそうで(笑)

みなさん、間違っても養殖とかしちゃダメですよ。それで報奨金貰ってたら立派な詐欺罪になっちゃいますので(笑)

ハブVSマングースの動画:

 

ハブ対策アイテム

イヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット

ヘビ・ムカデ忌避剤 500g 2本セット
ヘビやムカデ用の忌避剤です。ナフタリン、木酢粒剤、硫黄などを使用しており、嗅覚に敏感なヘビやムカデを寄せ付けなくします。効果は一ヶ月程度。雨に濡れると効果が落ちてしまうためなるべく雨風の影響を受けにくい位置に散布すると長期間の効果を期待できるようになります。

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g

SHIMADA プロバスター ヘビを寄せつけない 400g
ヘビやトカゲ用の忌避剤です。大きめの固体錠剤タイプでヘビなどが現れる場所に仕掛けることでヘビの接近を遠ざけることができます。家の中への侵入路となりそうな場所にピンポイントで設置すると効果的です。天然成分を使用しているため健康面でも安心ができます。

ヘビレス

ヘビレス
ヘビ用の粒状をした忌避剤です。4種類の有効成分を配合しており、庭先に撒くことで1ヶ月程度の忌避効果が期待できます。粒状であるため雨にも強く、天候に左右されにくい効果が期待できます。

ヘビ捕獲棒

ヘビ捕獲棒
アルミでできているヘビ捕獲棒です。危険な毒ヘビに近寄ることなく捕獲作業を行うことができます。やや柄の長さが短めであるため、大型のヘビの捕獲を考えている場合はもう少し大型のタイプを購入したほうがよいかもしれません。

ポイズンリムーバー

ポイズンリムーバー
携帯用のポイズンリムーバーです。毒を持った生き物に刺されてしまった、もしくは咬まれてしまったときに毒を吸い出して被害を最小限におさえることができます。蚊に刺された場合でも吸い出すと効果があり、その後の炎症がかなり軽減されます。ただし圧力を下げて毒を吸い出す構造上、体の先端部の傷口に対しては容器がフィットせずに使用できない可能性があるため注意が必要です。

 

ハブ関連ニュース


セアカゴケグモ

セアカゴケグモ

セアカゴケグモとは?

セアカゴケグモは、セアカゴケグモはヒメグモ科に分類される毒グモの一種です。

日本名は「背中が赤い後家グモ」という意味。後家グモの呼び名の由来は、その毒によって咬まれた男性が死亡すると未亡人(後家)が増えるというところからきています。

海外でもネーミングセンスは同じで、「Red-back widow spider(背中が赤い未亡人蜘蛛)」と呼ばれています。戦闘機オスプレイの別名「Widow Maker(未亡人製造機)」と若干ニュアンスが近いですね。

ただしこのクモは交尾が終わるとメスがオスを食べてしまうことがあって、後家グモの呼び名の本当の由来はこちらではないかという説もあります。旦那を食べて自ら未亡人(後家)になるって・・・ああ、おそろしや(汗)

セアカゴケグモの大きさの特徴

 

日本に入ってきたセアカゴケグモ

元々はセアカゴケグモは日本には生息していませんでした。原産地はオーストラリアで、むこうでは極めて一般的に見られるクモの一種です。

日本で最初に発見されたのは1995年に大阪府高石市で。輸入木材などにくっついて日本国内に入ってきてしまったと考えられています。それ以後も大きな港や空港がある地域で発見が相次ぎ、現在では港町に限らず全国各地でその姿が確認されています。

しかも残念ながらセアカゴケグモは日本の気候に適応してしまい、越冬、繁殖に成功して生息域を広げているのが現状です。県や市が特定危険外来種として積極的に駆除に当たっていますが、日本国内のセアカゴケグモを一匹残らず絶滅させるというのはさすがに不可能でしょう。

2015年に新たに北海道でも十数匹のセアカゴケグモが発見されたことにより、いまの時点ではセアカゴケグモは41都道府県にて存在が確認されています。新たな場所で確認されるたびに市区町村が発表したりしていますが、福岡市ではここ4年間で8000匹以上が発見・駆除されていたにも関わらず市民に公表されていませんでした。パニックを避けたかったということですが、最低限の注意喚起はしてもらいたいものですね。

セアカゴケグモの巣

 

セアカゴケグモの生態

セアカゴケグモは、オスが体長3~5mm、メスが体長10~20mmぐらいの大きさです。オスはメスに比べてかなり細くて小さく、体色も薄め、背中の模様も赤ではなく茶色系の色をしています。逆にメスはかなり胴体部分が大きくて体色は真っ黒、背中の模様は鮮やかな赤い色をしています。たまに足が茶色と黒のツートンカラーになっている個体なんかもいたり。

元々温かい気候が原産地のクモなので、雨風をしのげる暖かい場所を好みます。建物、排水溝、ブロック塀などの隙間や、プランターの陰、ベンチの下、ガードレールの支柱裏、あとは自動販売機の裏やエアコンの室外機の隙間などの人口的な熱源のまわり。不規則で乱雑な糸の張り方で巣を作り、そこでじっと獲物がかかるのを待っています。

基本的に攻撃的な性格ではないので、クモのほうから積極的に人間に咬みついてくることはありません。危険なのは、たまたまセアカゴケグモが巣を作っている場所に手足を入れてしまうケース。細い隙間の清掃や、プランターの手入れ、屋外に放置していたヘルメットや長靴の装着時などは注意が必要です。セアカゴケグモの繁殖が確認されている地域では「もしかしたらここにクモが巣を作っているかも」という、万が一の想定はしておいたほうがよいでしょう。ちなみに毒がある牙は短いので、長袖の服や軍手を着用するだけでもかなりリスクは減らせます。

セアカゴケグモのオスとメス
セアカゴケグモのオス(左)と、メス(右)

 

セアカゴケグモの食事と天敵

セアカゴケグモは三次元上に不規則な網を張ってターゲットを狙う肉食系のクモで、巣にかかった小さな昆虫を主にして食べています。巣の形状がチョウやガのような飛翔する生き物よりも、地上を歩く生き物を捕らえるのに適した形をしているため、アリやハサミムシ、ゴキブリなどを捕らえて食べることが多いようです。それほど大きな体格をしていないクモなので、ターゲットになる昆虫も必然的に小型なものが中心になります。

逆に天敵は、ベッコウバチやハナバチのような寄生蜂。あとは未確認ではありますが、クモ全般を主食とするような鳥類、トカゲ、小型哺乳類、ムカデなども天敵になるのではないかと考えられます。毒グモとはいえ、自身の肉に毒が含まれているわけではないので普通に捕食されてしまいます。

ベッコウバチとハナバチ
↑ベッコウバチ(左)、ハナバチ(右)

 

セアカゴケグモの繁殖方法

セアカゴケグモは元々温かい地域が原産のクモですので、活動が活発になる夏が繁殖期になります。交尾を済ませたメスは真ん丸で白色の卵嚢を1度に数個作り出し、そこからだいたい15日程度で100匹前後の幼体が生まれてくるようです。幼体は3~4ヶ月ぐらいで交尾可能な状態に成長するので、天敵が少ない快適な環境であればかなりの勢いで数を増やしていくことになります。

 

セアカゴケグモの卵
セアカゴケグモの卵嚢(左)と、卵嚢から出てきたばかりの幼体たち

 

セアカゴケグモの毒とその症状、対処

一般的に出回っているセアカゴケグモの写真はほとんどメスのものです。なぜなら毒グモとして騒がれているのはこの「メス」のみだから。オスは毒を持っていません。この点があまりニュースなどで紹介されていないのがちょっと不思議。

セアカゴケグモの毒はα-ラトロトキシンという名の神経毒です。咬まれると、針で刺されたようなチクリとした痛みがあります。その後咬まれた部分が毒の影響で赤く腫れあがり、30分後ぐらいからどんどん痛みがひどくなっていきます。これだけの症状で済んでここから回復する場合も多いのですが、抵抗力が弱い子供や老人などの場合は痛みが全身に広がり、発熱・発汗、頭痛、嘔吐、下痢、発疹などの症状に発展する場合があります。血清が普及する前のオーストラリアでは死亡例も少数ながら存在します。

もし咬まれた場合、もしくはその疑いがあるときは、まず傷口を綺麗な水で洗い流します。出血がある場合は毒を体外に出すチャンスとみて、止血はしないようにしてください。そしてとにかく速やかに病院へ直行。セアカゴケグモの毒に対して個人で行える効果的な処置は存在しません。冷やして患部の痛みを軽減するぐらいのことはできますが、根本的な治療にはなりません。

それととにかくパニックにならないこと。このクモが普通にウヨウヨいる原産地オーストラリアでもここ200年で死亡件数は13件程度。その13件も、他の病気と合わせた合併症で亡くなったケースがほとんどです。医療設備が普及した近年ではもう50年以上死亡者が出ていません。マスコミが「殺人グモ」みたいな感じで煽っていますが、過剰に恐怖を感じて取り乱す必要は全くありませんので、もし咬まれても落ち着いた対処をしましょう。

 

セアカゴケグモ

 

セアカゴケグモとその卵嚢の駆除

もし成虫を発見したならば、繁殖されても厄介なのでなるべく駆除するようにしましょう。叩き潰すか、一般的な殺虫剤で駆除することができます。ただしセアカゴケグモは何らかの外的な刺激を受けたときに擬死行為(死んだふり)を行う習性があります。死んだふりに騙されずに確実に仕留めるようにしましょう。

卵嚢の場合は外皮に邪魔されて殺虫剤の効果が薄い場合があります。叩き潰すか焼却するなどして対処してください。

その後は速やかに最寄の警察や保健所に連絡をしてください。殺した死骸や卵嚢を一緒に提出すると話が早くなってよいでしょう。

 

セアカゴケグモは飼育できない

セアカゴケグモのような話題の生き物を、ぜひ自分の手元で飼育したいという人もいるかもしれませんが、ここで忘れてはいけないのが、セアカゴケグモは特定外来生物に指定されている生き物だということ。生体も、その卵も、個人が飼育・保管・運搬することは禁じられています。

特に販売目的で飼育した場合は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金と非常に重たい罪が課せられます。絶対に飼育しようなどとは考えないでください。

 

セアカゴケグモの危険性を訴える動画:

 

セアカゴケグモ対策アイテム

殺虫スプレー クモフマキラー

殺虫スプレー クモフマキラー
フマキラーのクモに特化した殺虫スプレーです。速効殺虫成分イミプロトリン配合。駆除効果だけでなく予防効果も備えています。成虫はもちろん卵にも効果があり、外来の毒グモであるセアカゴケグモにも効果があります。逆さでも使用できるので、狭い奥まった場所でも使用しやすいのがメリットです。

アース製薬 アースガーデン クモの巣撃滅

アース製薬 アースガーデン クモの巣撃滅
アース製薬から発売されているのクモ駆除スプレーです。セアカゴケグモ、ジョロウグモ、コガネグモ、クサグモ、タカラダニに効果があります。クモの忌避効果もあるため、よく巣を張られてしまいがちな場所に事前にスプレーしておくことで2~3ヶ月はクモが近寄ってくることを防ぐことができます。

プロケミ クモルスストレート 1kg

プロケミ クモルスストレート 1kg
クモ用の忌避剤です。よくある一時的に効果がある簡易的なものではなく壁に塗装して忌避コーティングをするもので、長期間効果が継続されます。モルタル、木材、プラスチック、クロス、コンクリートなど多くの材質に塗布が可能です(ガラスへの使用は曇ってしまうため推奨されません)。

エクストラクター ポイズンリムーバー 強力型

エクストラクター ポイズンリムーバー 強力型
毒を持った生物に刺されてしまったときに傷口から毒を吸い出す器具です。2018年にモデルチェンジした新しいバージョンで、カップもどんな傷口の箇所にも対応できるように4サイズが用意されています。やや耐久性に不安があるようなので、いざというときに使う消耗品のつもりでいたほうが良いかもしれません。

 

セアカゴケグモ関連ニュース


マダニ

マダニ

マダニとは?

マダニは、クモ綱ダニ目マダニ亜目マダニ科の節足動物の総称です。全世界ではダニの仲間は40,000種程度が分類されており、その中でマダニは650種程度、さらにその中で日本に生息するマダニは約50種程度とされています。

私たちは「ダニ」と聞くと、まず家の中の畳やカーペットに住む小さな生物を連想します。ほこりや布製品の繊維の隙間に紛れていて、掃除を怠ると繁殖してしまいアレルギーの原因になる厄介な微生物というイメージ。

ですが、マダニはそれらダニとはかなり性質が異なる生き物です。同じダニの仲間には違いありませんが、ダニとマダニは生息地もその生態も全く違います。英語でもダニは「mite」 、マダニは「tick」と呼び分けがされているぐらいです。

アレルギーの原因になるダニも十分に人間にとっては厄介な存在ですが、このページではそれ以上に厄介な存在、マダニについて解説していきます。

マダニの通常の大きさ

 

マダニの身体的特徴

マダニはクモに近い節足動物の仲間です。体は顎体部と胴体部のふたつに分かれ、胴体部に4対、計8本の足がついています(ただし幼虫期は6本足)。長い前足1対が比較的前方に突き出されているので触角のように見えがちですが、触覚はこれとはまた別に顎体部についています。

マダニはほかのダニに比べて非常に体が大きく、通常時でも2mm~3mm程度はあって肉眼ではっきりと見えます。これは小型のテントウムシやシバンムシぐらいの大きさです。しかしこの大きさはまだ序の口で、驚くのは吸血後の大きさ。宿主の血を長期間に渡って吸い続けた後のマダニの体は、まるで水風船のようにパンパンに膨れ上がり、なんとその体重は吸血前の100倍以上になります。その全長は1cmを超えるぐらいにまで大きくなります。

吸血後のマダニとの大きさの比較
↑吸血前と吸血後のマダニの大きさの比較

 

マダニの生活サイクル

マダニは山の中の茂みや草むらに住んでいます。

活動が活発になるのは5月~9月頃。普段は植物の葉っぱの先などに身を隠して待ち構え、それに触れた動物にくっつきます。このときマダニは動物の身長を考慮しているのか、だいたい80cm以下の高さの葉っぱに潜むことが多いようです。

マダニはノミのようにジャンプしたりはしません。動物が直接植物に触れたときにうまく乗り移るのです。ちなみに『巨蟲列島』という漫画で巨大なマダニが風を受けて飛ぶような描写がありますが、実際にはそういった行動は確認されていません(笑)

マダニ
↑葉っぱの先端に待機して宿主を待ち構えるマダニ

 

うまく宿主を見つけ、1週間以上に渡る吸血を済ませたあとは一度宿主の体から外れ、休眠期間と呼ばれる成長と脱皮の時間を自らに設けます。その後成長したマダニは再び宿主を見つけて吸血し、それが終わればまた休眠。この吸血と休眠のサイクルをマダニは生涯で合計3回繰り返します。

3度目の吸血の際に成熟したマダニは生殖活動を行っています。宿主の体の上で恋愛してイチャイチャするとは何たるふてぶてしさ(笑) ただし、ほとんどの種のマダニの雄には生殖器が存在しません。精子が入った袋を体内から取り出し、それをメスに渡すことで生殖を行います。なお一部のマダニは単性生殖が可能なためこういった生殖活動が必要ない種類もいます。

生殖活動に成功したマダニは寄生主から離れて地上に降り、一度に数百個から数千個の卵を産みます。このとき産卵した母ダニはそのまま死亡。命を次の世代に繋いでその生涯を終えます。卵は1ヶ月から2ヶ月の期間をもって孵化し、すぐに宿主探しの行動を始めていきます。

基本的には以上がマダニのライフサイクルです。冬は落ち葉の下に潜ってサイクルを休むマダニが多いですが、種によっては逆に季節などおかまいなしに年中を通して活動し続けるものもいます。

血を吸って膨れ上がったマダニとマダニの卵
↑吸血後のマダニ(左)と、産卵したマダニ(右)

 

マダニの吸血方法

マダニはハーラー器官と呼ばれる感覚器官を持っていて、これは動物の体温、振動、二酸化炭素、匂いなどを感知する器官で、宿主探しの際にセンサーとして役立ててています。

うまく宿主の体表に乗り移れたマダニはまずその動物の皮膚が薄くて吸血しやすい部分を探します。一般的な哺乳類だと頭部や目・鼻・耳の近くを選ぶことが多いようです。

吸血場所を選んだマダニは鋭い歯で咬みつき、ノコギリのような歯を皮膚の奥に差し込みます。そこから出血してくる血を吸い続けるわけです。ここから数時間~24時間の吸着を続けた際に「そこが安定して血を吸える場所」だと認識した場合は唾液腺よりセメント性の物質を分泌して接合部を完全に固定。簡単に宿主から離れない状態を作り上げ、それから1週間以上の時間をかけてゆっくりと血を吸い上げていきます。

それ以後は、唾液に混ぜて「血液の凝固を防ぐ成分」や「炎症・充血を促す成分」を傷口に流し込むことによって安定した吸血を続けていきます。この長時間の吸血中は同時に体内で摂取した血液の濃縮作業も行っており、その濃度は3倍程度。つまり実際にはマダニが膨らんだ見た目ぶんの3倍の血を吸っていることになります。量にしてだいたい1ml程度。

吸血し終わったマダニはセメントを溶かす成分を分泌したあとに自ら接合部から牙を抜き出し、宿主の体から離れていきます。脱着したマダニは基本的にあまり横移動を行わないので、付近の安全な場所に身を隠して休眠期間に入り、またそのすぐ近くで再び宿主の待ち伏せ行動に入ります。

動物に群れで寄生する野生のマダニ
↑血を吸ってパンパンに膨れ上がるマダニ(左)、野生のシカの顔にびっしり寄生するマダニ(右)

 

その他、マダニが動物に大量に寄生している画像(※かなり強烈です。閲覧注意!)
その1 その2 その3 その4

 

マダニの天敵

マダニの天敵となるのは、昆虫を主食とするトカゲなどの爬虫類、小型の鳥類、ほかにはクモやムカデやアリなどが考えられます。最近では森林総合研究所がカニムシの中でも大型の種であるオオヤドリカニムシもマダニの天敵になるのではないかと発表をしました。オオヤドリカニムシは森の中の土壌の中に生息しており、体長が5mm程度でしっぽがないサソリのような姿をしています。実験では同じぐらいの体格のマダニにも積極的に襲いかかっていく性質が確認され、マダニの天敵候補として研究が進められています。でもオオヤドリカニムシもなかなか怖いビジュアルをしているので、これを大量に野に放たれてもちょっと怖いですよね(汗)

 

人間からみたマダニの危険性

ようやく本題へ。マダニの人間に対しての危険性についてです。

マダニは野生動物だけでなく人間も寄生対象としています。マダニは山の中に限らず、そのへんの公園や河川の草むらにも潜んでいる可能性があります。ですので山登りはもちろん、河川敷を散歩したり、公園で遊んだりしているうちに知らないうちにマダニに咬まれることがありえます。最初は体が非常に小さいので、どこかで傷を受けたそのカサブタかなぐらいにしか思わないことが多いようです。しかし日にちが経つにつれてそれはどんどん大きくなっていき、そこでマダニの寄生に初めて気がつきます。

ここでやっかいなのが、発見までに時間が経ってしまっていた場合、マダニはセメントのような唾液で体を固定しているという点です。無理に引き抜こうとするとマダニの体がちぎれてしまい頭部(正確には顎部)や差し込まれている牙が体内に残ってしまうのです。マダニを強く掴むとマダニの体液の逆流を招くこともあり、感染症などのリスクが高まってしまいます。無理に引き抜くことは推奨できません。

まず一番確実な取り方は病院にいくことです。診療は皮膚科が適しています。ただし最悪の場合メスを入れて切開することになる場合があるのでその覚悟はしておきましょう。

次に自力でなんとかする場合。よくいわれるのは、アルコールをかける、タバコや線香の火を近づける、氷で冷やすなどの手段です。嫌がる刺激を与えてマダニが外れるのを期待するやり方。特に線香の火でマダニのお尻に刺激を与える方法は有効なときが多いようです。ただしこれらをやり過ぎるとマダニが外れる前に死んでしまい、結局死骸が丸ごと残ったままになってしまいます。そうなると結局病院へ行くことになりますのでご注意を。

いろんな情報を総合してみると、一番安全で確実性が高いのはアルコールでしょうか。べンゼンやイソジン、もしくは虫除け(DEET成分を含むもの)でも構いません。脱脂綿などに染み込ませてそれをマダニに被せ、しばらく放置します。その後、さらに綿棒などでやさしく突っついて刺激を与えます。マダニにとって「わ、何!?おちおち飯食ってる場合じゃねぇ!」という状況を作り出すのです。そこからは根気勝負、マダニが自らその牙を外すまでいじめ倒します。やりすぎて殺さないように。。。

どうしても外れてくれない場合は、毛抜きピンセットで接合部を軽くつかんで丁寧に引き抜きます。アルコール攻めをした後だと、普通の状態で引き抜くよりもかなり簡単に引き抜くことができるそうです。アルコールで顎の力がなくなっているからでしょうか?

マダニ

ここでうまくマダニを引き抜けたとしても、病院には必ず行くようにしましょう。傷口に牙が残っていないか、また何かの感染症の症状が出ていないか確認はするべきです。後述しますが、大きな病気で命に関わる場合もあります。

 

人間の皮膚に頭を突っ込んでしまうマダニ

 

マダニを媒介にした感染症

「人間を一番多く殺しているのは蚊である」という話は有名です。これは蚊がいろんなウイルスや細菌を吸血行動によって人に感染させるためですが、同じことがマダニにも言えます。とくに重症化を引き起こす感染症が多く存在する南米などでは、マダニの危険性はかなり認知が進んでいます。

1.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

最近媒介が確認されて話題になったSFTSウイルスによるものです。野生下のマダニのSFTSウイルス保有率は5~15%程度とみられています(愛媛での調査では6~31%)。嘔吐、下痢、頭痛などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。

近年になって日本でも死亡例の報道が相次ぐようになりましたが、これは原因がマダニであると最近解明されたためであり、重症熱性血小板減少症候群は昔から日本にあったとされる病気です。マダニによるSFTS感染が原因とされる患者数は324人で、そのうち61人が亡くなっています(2018/4時点)。

 

2.ライム病

ネズミやシカなどが持っている病原体のボレリアが感染することによって起こる病気です。マダニが吸血を始めてから48時間以上が経つと感染リスクが高まるとされています。傷口近くから赤い斑点が現れ、全身の倦怠感、寒気、頭痛、嘔吐、発熱、関節痛などの症状が現れます。欧米では年間に何万人レベルで感染が報告されており、社会問題となっています。最近では歌手のアヴリル・ラヴィーンが、マダニに咬まれたことによりライム病にかかり病床に伏せました。半年近く寝たきりに近い状態になり、彼女はその症状の重さに一時は死も覚悟したそうです。

アヴリル・ラヴィーンがライム病にかかる

 

3.日本紅斑熱

日本紅斑熱リケッチアという病原体の感染によって引き起こされます。症状は風疹に似ていて、発疹や発熱の症状が起こります。毎年50~100人程度の感染が確認されており、いままでに4件の死亡例があります。日本紅斑熱リケッチアを保持したマダニは産卵を行うと、そこから生まれる子供マダニも日本紅斑熱リケッチアを保持した状態になるため、拡大が懸念されています。

 

4.ツツガムシ病

その名のとおりツツガムシに刺されて感染する病気ですが、マダニに咬まれたことによりウィルスが体内に入って発症することもあります。感染してから2週間程度の潜伏期間を経た後、強烈な悪寒と高熱の症状が現れます。ほかには頭痛、筋肉痛、倦怠感が感じられ、さらに皮膚には紅斑や紫斑が見られるようになります。治療を受けずに放置すると脳炎や心不全の合併症にて死に至ることもありえます。もしこれらと類似の症状が現れたときには、マダニやツツガムシからの感染を疑う必要があります。

 

5.ダニ媒介性脳炎

フラビウイルスによって引き起こされる感染症です。潜伏期間は1週間~2週間で、悪寒・高熱・頭痛・嘔吐などインフルエンザに近い症状が現れます。そこから悪化すると、めまいや自律神経失調、歩行困難などかなり重篤な状態になる場合もあります。また回復後も神経不調の症状が長期間に渡って残る可能性があります。

 

6.野兎病(やとびょう)

細菌によって引き起こされる感染症です。野生のウサギを触った際に感染することが多いことからその名前がついていますが、マダニの唾液からの感染してしまうこともあります。感染力は非常に高く、目などの粘膜はもちろん、皮膚の接触でも感染の可能性があります。潜伏期間は1週間程度で、発症すると突発的な高熱に襲われます。治療法は病院で抗菌薬の処方が中心となります。

 

マダニに咬まれないための対策

基本的に茂みや草むらに立ち入らなければ良いのですが、ペットの散歩や、キャンプ・登山などのアウトドアは楽しみたいもの。これらを全て生活から排除するのはなかなか難しい話です。しかし最低限でもよいので、マダニのリスクを少しでも下げる心構えだけは持っておきましょう。

アウトドアの際のマダニ対策

1.肌の露出を防ぐ

マダニは基本的には衣服の上から吸血することはできません。長袖の上着や、丈の長いパンツを履いて肌の露出を少なくしましょう。これはマダニ以外の虫に対しても効果的です。人間がマダニに咬まれた場合、場所はくるぶし付近のケースが多いようです。できればくるぶしが露出しない長めの靴下を着用するようにしましょう。

 

2.虫除けスプレーを使用する

主に蚊を寄せないために使用されることが多い虫除けスプレーですが、これに含まれるDEET(ディート)という成分はマダニの忌避剤になることがわかっています。虫除けスプレーの効果は大体2時間程度が限界と言われているので、定期的に全身に吹きかけてマダニを寄せ付けないようにしましょう。

 

3.草木にむやみに接触しない

マダニの宿主への唯一の接触方法がこの草木を介するものです。20cm以上の草であればマダニがいる可能性は十分にあります。あと笹には特に注意。マダニは「笹ダニ」と呼ばれるぐらい笹で待ち構えるのが好きだとされています。

 

4.動物が通る道には特に注意する

マダニは宿主から吸血し終わって外れた後、ほとんど横に移動をしません。つまり日常的に動物が通る道は、マダニが再び待ち構えている可能性が高い場所だと言えます。生い茂った獣道などは最もマダニに注意しなければいけない場所です。

 

5.帰宅後は全身をチェック

万が一刺されてしまった場合でも、発見が早ければそれだけ感染症によるリスクを減らすことができます。屋外でのレジャーなど、マダニが生息していそうな場所から戻った後はいちおう全身を軽くチェックしておきましょう。小さなお子様であれば特に頭部に注意が必要です。マダニの潜む葉っぱと子供の頭の高さが近いことから、子供の場合は頭部を咬まれてしまう事例が多く報告されています。

マダニに刺されてしまっていてもその唾液に含まれる成分の麻酔効果により自覚がないことがほとんどです。帰宅直後にすぐにシャワーに入れば発見しやすく、吸血前のマダニはもちろん、すでに吸血状態にあるマダニであってもセメント物質を出し始める前であれば水で流せることもあるためおすすめです。

シャワーに入った際には、脱いだ後の衣服にもマダニがいないかチェックしておくとよいでしょう。家の中にマダニを生きたまま持ち込むと、その後から刺されるリスクが増えてしまいます。

 

ペットをマダニから守る

マダニの危険性から守りたいのは自分の体だけではないはず。大切なペットも例外ではありません。SFTSは人間だけの病気ですが、人間以外でのSFTS発症は稀ですが、代わりにバベシア症などの病気の危険性があります。何より血を吸う虫が愛するペットの体表にくっついている状況が、飼い主としてはいたたまれないことと思います。

ペットへのマダニ対策

 

しかしペットの多くは屋外の散歩を必要としますし、草木に触れないようにしつけることはまず不可能です。ここは飼い主が意識して守ってあげるようにしましょう。

対策の1つ目としては、マダニがつかないように忌避剤でペットを守る方法。有名な忌避剤ではフロントラインというものがあります。これはノミやダニが嫌がる薬剤を動物の表皮に塗布するもので、マダニには約1ヶ月弱程度の効果があります。実際に使用した方の感想を見る限りでは効果が確認できるそうです。しかし薬剤1回ぶんにつき1,000円程度の値段になるので、継続を考えるのであればそこそこの出費は覚悟しなければいけません。

またマダニ避けの首輪なども市販されていますが、こちらは環境によって効果はピンキリの模様。効果があればラッキーぐらいで考えていたほうがよいかもしれません。

あと把握しておきたいのは、ついてしまったダニを安全に取り外す方法。これについては人間における場合と同様で、マダニの体を圧迫しないように、さらにダニの頭部がちぎれてペットの体に残らないように慎重にピンセットで取り除く必要があります。このときアルコールを併用すると良いでしょう。ウィスキーを使って愛犬のマダニを取り除いた方のブログがあるので参考にすると良いかもしれません。
→ブログ 『ミックス犬(パピヨン×コーギー)@犬マンガ。時々チワワ』

 

マダニに咬まれた動物からのSFTS感染も注意?

2017年7月 野良猫に咬まれた女性がSFTSに感染して死亡

弱っていた野良猫を看病しようとして咬まれた50代女性がSFTSに感染して亡くなりました。この野良猫はおそらくマダニを介してSFTSに感染していたと考えられます。国内ではマダニ以外の動物からヒトへのSFTS感染が確認された初の事例となりました。これまでは犬や猫からのSFTS感染はほぼないとされていましたが、この件を受けて厚生労働省は注意を呼びかけています。

2017年10月 徳島県で飼い犬から40代男性にSFTSが感染した疑い

体調を崩していた飼い犬の看病をしていた飼い主の男性がSFTSに感染しました。男性は犬に咬まれたわけではありませんが、看病中にSFTSに汚染された唾液に接触したため感染したと考えられています。男性の体調は回復しているとのことです。

 

マダニの唾液の成分でがん治療の研究が行われている

マダニの唾液の中には血液の凝固作用を防ぐたんぱく質が含まれていて、ブラジルではこの成分にがん治療の可能性があるということで研究が進められています。マウス実験では、2週間以上投与したマウスのがん細胞が縮小を始め、42日目の段階で完全に消滅したとのことです。正常な細胞には影響がありませんでした。まだまだ実用化には至っていませんが、皮膚がん、肝臓がん、すい臓がんなどの特効薬になる可能性があるとして期待がされています。

 

最近の国内のマダニに関するニュース

北海道内のマダニから致死率が高い極東型ウイルスが見つかる

マダニが介する感染症のひとつに「ダニ媒介脳炎」があります。2018年5月に北海道大学の好井健太朗准教授の調査により、札幌市内のマダニからダニ媒介脳炎ウイルスが発見されました。それも致死率が高いと言われる極東型で、1995年の道南での発見以来になるとのことです。極東型ウイルスはほかの型にくらべて致死率が非常に高く30%に及ぶこともあり、夏の行楽シーズンに向けて警戒を呼び掛けています。

 
吸血して膨れ上がったマダニの歩行シーン:

 
参考: マダニの新たな天敵を発見 -森のネズミと暮らすカニムシはマダニを捕食する-(森林総合研究所)

 

マダニ対策用アイテム

マダニ用ピンセット

ダニ取り ティックツイスター 2サイズセット
体に取り付いてしまったマダニを外すための専用ピンセット。肌に吸着しているマダニの横から滑り込ませるように挿し込み、そこから数回ピンセットを回すだけで、マダニの頭部や顎部が皮膚に残ってしまうことを避け安全に取り除くことができます。マダニのサイズに合わせてピンセットは2つのサイズの使い分けが可能。本来はペット用として製造されたものですが、人間が使っても問題はありません。

マダニ撃退用スプレーのヤブ蚊マダニジェット

アース製薬 ヤブ蚊マダニジェット 屋外用 480mL
ヤブ蚊(ヒトスジシマカ)とマダニの両方に効果がある駆除スプレーです。ヤブ蚊やマダニが潜んでいそうな庭木や草むらにスプレーすると殺虫効果と忌避効果の両方が望めます。これらの虫が潜んでいそうな場所で屋外作業をするときに、事前に噴射しておくことで刺されるリスクを減らすことができます。水性タイプで植物にも優しい成分を使用しています。

スキンベープ 虫よけスプレー ミストタイプ 爽快シトラスマリンの香り 200ml(約666プッシュ分)

スキンベープ 虫よけスプレー ミストタイプ
総合的に様々な害虫に効果がある虫除けスプレーです。成分にディートを使用しているのでマダニに対しても忌避効果が望めます。ほかにも蚊、ノミ、トコジラミ、イエダニ、サシバエ、ブユ、アブなどへの効果があり、屋外でのレジャーや農作業の際の虫除けに適したスプレーです。約660回プッシュぶんの容量が入っています。

フロントライン

フロントライン プラス 大型犬用6ピペット
世界的にも有名なペット用のマダニ・ノミの駆除剤です。こちらはゴールデンレトリバーなどの大型犬用。犬の肩甲骨のあたりから薬剤を垂らしてブラッシングすることで吸着しているマダニやノミを駆除できるだけでなく、今後の吸着からも守ることができます。効果は1ピペットで1ヶ月程度続きます。

 

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