クロゴキブリとは?
クロゴキブリは、ゴキブリ目ゴキブリ科に分類されるゴキブリの一種です。
日本では非常によく見かけられる種類で、チャバネゴキブリと並んで知名度が高いゴキブリだと言えます。チャバネゴキブリと違ってクロゴキブリは主に屋外で生活をしている種類のゴキブリですが、温かい空間とエサを求めてどんな場所にでも積極的に侵入を試みるため、一般住宅にとっても迷惑な来訪者となることが多くあります。
クロゴキブリの身体的特徴
クロゴキブリは、ゴキブリの中でも大型の部類に入ります。成虫であれば体長は25~40mm程度。一般的に日本国内で見かける20mmを超えるような大きなゴキブリは、だいたいがこのクロゴキブリだと考えて間違いありません(例外として沖縄に生息するヤエヤママダラゴキブリは体長50mmを超える個体もいます)。
クロゴキブリは昆虫であるため、体の構成は頭部、胸部、腹部の3つに分かれていて、足は合計6本。足には細い棘のようなものが無数に生えており、これによりどんな壁や天井にでも吸着を可能としています。体色はクロゴキブリと言うだけあって黒色。でもよく見ると少し赤みもあって、どちらかというと黒に限りなく近い赤褐色といったほうがよいでしょうか。
ちなみに幼虫期初期には白い帯状の模様があります。あまりゴキブリに馴染みのない模様であるため、見かけても他の昆虫と勘違いしてしまう人も多いようです。さらに少し成長すると体色がやや茶色掛かってくるため、大きさやその色からチャバネゴキブリと間違えやすいです。
クロゴキブリの飛翔能力
クロゴキブリはその翅を使って飛ぶことができます(チャバネゴキブリは実は飛ぶことができません)。たまに「クロゴキブリは自分がいる高さより上に飛んでいくことは出来ない。高い位置からグライダーのように滑空することしか出来ない」なんて情報を耳にしますがそれは誤りです。ただし積極的に飛翔をすることが少ないのは事実で、基本的には地を這うように移動することがほとんどです。クロゴキブリはどちらかというと目的地に向かって飛びつくのが飛翔の目的で、蜂のように自由自在に空中を舞うような技術は持っていないと考えてよいでしょう。
また「ゴキブリと目が合うとこちらに向かって飛んでくる」なんて話もよく聞きますが、実はこれも誤りです。実はゴキブリは非常に視力が悪いため人間と対峙したとしてもその姿を認識できていません。たまたま次に移動しようと思った先が人間だっただけと考えられます。おそらくゴキブリが自分に向かってきた経験がある人が、その話を誇張して広めたのではないでしょうか。
クロゴキブリの触覚と危険からの回避行動
ゴキブリと言えば感覚が非常に鋭いというイメージを持っている人が多いでしょう。これは頭部についている長い触覚が優れているからというのももちろん理由のひとつですが、実はもうひとつ理由があります。それは尾角の存在。クロゴキブリの体をよく観察するとわかりますが、実はクロゴキブリのお尻の先端には尾角という2つの突起物があって、これも触覚と同じ働きをしています。
この尾角によりクロゴキブリは周囲の空気の変化を認識することができます。私たちが後ろから足音を立てずに接近していったにも関わらず気付かれて逃げられてしまうのは、この尾角による探知によるものなのです。この感覚器は非常に優れているため、ゴキブリについては後ろから接近して倒そうとするよりも、あえて前から接近したほうが撃退する確率が高くなるとも言われます。
また、クロゴキブリの本気の移動速度はとてつもなく早いです。特にフローリングなどの滑らかな床材の上であれば1秒間で1m~1.5mぐらいの速度で走ることができます。しかも一目散に何かの物陰に向かって隠れるように逃げていくので、倒し損ねるとどこにいったのかわからなくなってしまい、不安な夜を過ごさなければならなくなることもしばしば。
そして面白いのは彼らの逃走方向についての研究です。普通の昆虫であれば一目散に本能的に逃げるのがほとんどなのですが、最近の研究ではクロゴキブリはその個体それぞれに複数の逃げパターンを持っていることがわかりました。これはその個体が自身の経験を元にして有効な逃げパターンを確立しており、危険を察知した際にはそれを状況に応じて選択するというもの。闇雲に一直線に敵から逃げるより、状況によっては蛇行するように逃げたり、急な方向転換をして逃げたりしたほうが生存確率が高まることをゴキブリは知っているのです。なんてしたたかな生き物なんでしょう。
クロゴキブリの生活と繁殖
寒さに弱くて屋内を住みかにするチャバネゴキブリとは違い、クロゴキブリは寒さにある程度強く、屋外に住むことが多いゴキブリです。
基本的には湿った場所を好んでいて、ゴミ置き場や、ボイラー室、建物と建物の間の細い隙間の中、ドブの側溝、マンホールの中、下水道の中などを好んで住処を作っています。明るい昼間はそこでじっとして時間を過ごし、日が落ちて暗くなるとエサを探して活発に活動を開始します。夏の夜に繁華街を歩くとアスファルトの上を這うクロゴキブリをよく見かけるはずです。ただし彼らは夜通し活動するわけではありません。ほとんどの場合は日没後から深夜2時ぐらいまでで活動を終え、また薄暗い住処に引っ込んでいきます。
クロゴキブリは幼虫期として約250日、成虫期としておおよそ200日ほど生きます。つまり全体の寿命は450日程度ですね。おおよそ1年と3ヶ月程度の生涯の中で20回程度の産卵を行います。
1度の産卵で産み落とされる卵は20~30個。メスは卵を卵鞘の中に収納し、それを安全な物陰に唾液で固定します。孵化までの期間はだいたい45日前後。ただしこれは気温の影響を非常に大きく受けます。夏のように暖かい時期であれば孵化は早まり、秋に産卵されたものは、そのまま卵として越冬するため200日以上の期間をかけることになります。
このように年中が繁殖期で、産卵数が多く、そのサイクルも非常に短いことから、一度安定した繁殖サイクルに入るとかなりの速度でその数を増やしていくことになります。
クロゴキブリの食事
クロゴキブリはご承知のとおり雑食性です。昼間は比較的狭い場所に密集してじっとしていますが、夜になるとエサを求めて活動を始めます。
成虫のエサは、ハエなどの小さな昆虫全般、植物、人間の食事の食べ残しはもちろん、ペットフードや古本、人間の毛髪・垢・排泄物、自分達の糞まで食べてしまいます。さらにはダンボールや食用油、障子紙など、本当に何でもアリ。特に腐敗臭が強いものに惹かれて近づいていく傾向があります。
これはクロゴキブリの体内に住んでいるバクテリア「ブラッタバクテリウム」の消化能力によるもので、このバクテリアが何でも消化できる優れた能力を持っていることが、クロゴキブリの好き嫌いのなさにつながっているということが最近の研究にて分かりました。実際、このバクテリアだけを薬剤などで死滅させると、宿主であるクロゴキブリも死んでしまうとのこと。完全に共存共栄の状態になっているといえます。
この共存関係のすごいところは、飢餓に対してとんでもなく強くなれるところ。食べた物を分解した際に生じた老廃物を通常の生き物は糞尿として排出しますが、クロゴキブリはこれを体内に蓄積しておき、万が一飢餓状態になったときのバクテリアの非常食としています。これのおかげでクロゴキブリは食事なしでも数十日、水なしでも相当な期間を生存して活動することができます。
クロゴキブリの天敵
逆に天敵は、ネコ、鳥類、アシダカグモなどの大型クモ類、ムカデ、カマキリなど。天敵を自宅におけばゴキブリはいなくなりますが、ネコはともかく、アシダカグモやムカデと同居するのはなかなか厳しいですね(笑)
また、意外かもしれませんが猛暑も苦手としていて、35度を超える環境を得意としていません。これは前述したクロゴキブリが持っているバクテリアが35度以上の熱を長時間受け続けると死滅してしまう点からきています。
あとはハーブや柑橘類の成分も苦手としています。これらの中に含まれるd-リモネンという成分をクロゴキブリは嫌っているそうで、レモン汁をかけるだけでクロゴキブリは動けなくなってしまうなんて情報もありますが、殺虫効果まであるかどうかは正直眉唾。d-リモネンでゴキブリを殺したような科学的検証の情報は見つからなかったので、まぁ「どうやら苦手らしいよ」ぐらいの認識でいたほうがよいかもしれません。
クロゴキブリの侵入を防ぐための対策
家の中への侵入が嫌がられるクロゴキブリですが、実はクロゴキブリは「家の中に入ること」を目的として侵入してくるのではなく、「食べ物のニオイを追っていたら結果的に家の中に入った」「本能的にいろんな隙間に入っていったら結果的に家の中に入った」というパターンがほとんどです。そのため、とりあえずは食べ物のニオイ対策と隙間を無くす対策が最も効果的だといえるでしょう。
まずはクロゴキブリの屋内への侵入経路を塞ぎましょう。クロゴキブリは3mm程度の平たい隙間があれば平気でそこを通り抜けてきます。窓のさん、ドアの隙間、天井裏、床下、エアコンダクトなど、ゴキブリの侵入の可能性がある隙間を洗い出し、パテやテープなどで塞いでいきましょう。
あと可能性が高いのは下水からのルート。排水管の内側は虫やゴキブリの侵入を防ぐために通常「返し」がついていますが、長期的に使用していない場合は返し部分の水がなくなってしまい、ゴキブリが素通りできる状態になってしまいます。もし普段使用していない水道がある場合は定期的に水を流すようにしましょう。あと盲点なのは配水管の外側を這って登ってくるケース。もし排水管の外側に侵入できそうな隙間がある場合はガムテープなどで完全に塞ぎましょう。
さらには、クロゴキブリを引き寄せてしまう環境を排除することが大事です。彼らは室内に篭った食物の匂いに惹かれてやってきます。特に好むのはおいしい出来たての料理の匂いではなく、食べ物が腐った腐敗臭。つまり生ゴミやキッチンのサイドポケットが一番ゴキブリを引き寄せやすいニオイと言うことになります。部屋の中はこまめに掃除して、可燃ごみや生ゴミを長期間置くようなことはしないようにしましょう。食事の食べ残しは必ず密閉容器に入れるか、冷蔵庫の中にしまうように。ペットフードもしっかりと密閉し、ペットの糞の始末もこまめに。キッチン周りは、夕食後はなるべく水分を布巾で綺麗に拭きとっておくとよいでしょう。このようにクロゴキブリが侵入したくなる理由を排除していけば、彼らとの遭遇率は格段に低くなります。
もしクロゴキブリの侵入を許してしまったら
もし室内にクロゴキブリが入ってきてしまったら、一刻も早く退治しましょう。屋外での繁殖力についてはチャバネゴキブリほどの脅威ではありませんが、クロゴキブリでもやはり嫌なものは嫌です。一度侵入してしまったクロゴキブリがわざわざ自分から外へ出て行くことも稀ですので、やはり退治する方向で検討するようにしましょう。
◎目の前のクロゴキブリと戦う!
いざゴキブリを目の前にするとどうしていいかわからなくなるものです。特に女性はゴキブリというだけで萎縮してしまう人も多いことでしょう。
しかしそのとき逃がしてしまった個体は確実に部屋の中のどこかに住み続けるわけですし、屋外を好むクロゴキブリとはいえ、室内で繁殖して数を増やす可能性もゼロではありません。勇気を出して確実に始末しましょう。
遠距離からでも殺せるのはゴキジェット系のスプレータイプ。最近は毒ではなく冷却によって殺すタイプが多く、その場合はキッチンのようなデリケートな場所で使うのにも抵抗がないのでおすすめです。
もしポットがあって熱湯がすぐに手に入る状態であれば、それも立派な武器。ゴキブリは自分の体温が50℃以上になるとすぐに死んでしまいます。カップ1杯の熱湯をゴキブリにかけてやれば、瞬時に息の根を止めることができます。
ほかには食器用の洗剤をかけても殺すことができます。ゴキブリの呼吸口には油の膜があって、これが水の浸入を防いでいるのですが、洗剤の界面活性剤によってその油膜が取り除かれ水が呼吸口に入り、呼吸困難を起こすというわけです。度数が30%以上のアルコールでも同様の効果が期待できます。
手元に殺虫剤も熱湯も洗剤もない場合は仕方ありません、打撃戦です。スリッパなり、丸めた雑誌などで叩いて殺しましょう。前述しましたが、尾角があるため後から近寄るのは得策ではありません。前方からそっと近づき、一瞬でカタをつけましょう。
よく潰した後の死骸のことを考えて手加減してしまいがちですが、それで逃がすと必ず後でものすごく後悔します(筆者談)。思い切って渾身の一撃を叩き込むことをおすすめします。
◎クロゴキブリに逃げられた・・・部屋のどこかにはいるはず、どうしよう(涙)
残念ながら逃げられてしまった場合。タンスや冷蔵庫の隙間に入られてしまうとさすがに手が出せません。隙間から出てくるのをじっと待つわけにもいきませんし、このまま住み着かれて繁殖されても困ってしまいます。そういう場合は何かしらゴキブリ退治アイテムに頼りましょう。
1.ゴキブリ忌避スプレー
細い隙間に逃げられてしまったときでも、忌避スプレーがあればあぶりだすことができます。ゴキブリにこっちに逃げてきてほしいという方向を決め、そちらに追い立てる方向から忌避スプレーを噴射します。驚いたゴキブリは想定どおりの方向から姿を現すと思われますので、そこをうまく直接攻撃で撃退しましょう。
ただしゴキブリの忌避スプレーには殺虫成分が含まれていることもあります。スプレーをやりすぎると手が届かない隙間の中でゴキブリに死なれてしまい、ゴキブリの死骸を回収できなくなってしまうこともありますので、そのあたりは上手く加減をしましょう。
2.ホウ酸ダンゴ
お手軽なのはホウ酸ダンゴの設置です。ホウ酸ダンゴは海外でも「ジャパニーズ・ホウサン・ダンゴ」として知られるほどにゴキブリ対策としては世界的に有名な手段となっています。
市販品でも十分な効果が期待できますが、ホウ酸の含有量を増やせば、それを摂取したゴキブリの糞にもホウ酸の効果が得られたり、誘引物質を増やして(タマネギやジャガイモ)引き寄せる効果を高めたり、その家のゴキブリに対してカスタマイズをすることができるため汎用性が高いです。ゴキブリの通り道になりそうな場所に設置してやりましょう。
ただし老人や幼児、ペットが同居する家では誤飲の可能性もあるのでその点だけは十分に注意しましょう。
3.コンバット
仕組みとしてはホウ酸ダンゴと全く同じです。誘引剤でゴキブリを引きつけて毒のエサを食べさせて、巣に帰ったそのゴキブリが死亡、その死骸や糞を食べたほかのゴキブリも死亡、という原理。プラスチックケースの中に収納されているので誤飲の心配がないのがメリットです。その効果もかなり信頼性が高く、ゴキブリ対策としてはかなり安定した方法になります。
4.バルサンなどの煙霧剤
一度でゴキブリの成虫を全滅させるという点では最良の手段だといえます。ついでにダニやノミまで退治できるので害虫殲滅能力としても最強。ただし食器や電子機器にラッピングをする必要があり、ペットに魚や昆虫を飼っている場合は数日間外部に撤去しなければいけないなど、使用するためには一手間かかるのが難点です。
またバルサンの煙は卵には効果がありません。一度の使用で成虫を全滅させても卵が残ってしまうので、孵化するであろう20日後に再びバルサンを炊く必要が出てきます。
5.ゴキブリホイホイ
捕獲したゴキブリの姿がはっきりと見えて、退治している感は一番強いです。しかし捕まるのは活動的に動き回る成虫が多く、コロニーでじっとしていることが多い幼体はそんなにはかかりません。ゴキブリの数は減らすことができますが、根絶には繋がらないのでこれだけの運用はおすすめできません。場所もとりますし、ビジュアル的にもちょっとアレですしね(苦笑)ホウ酸ダンゴやコンバットの合わせ技として使っていきましょう。
クロゴキブリ対策アイテム
コンバット ゴキブリ駆除剤
ベイト型のゴキブリ駆除剤としては有名どころですね。テレビCMでもよく見かけます。1cmのプラスチックケースの中に毒餌が入っていて、それを食べたゴキブリはもちろん、そのゴキブリの糞を食べたゴキブリも死滅する2段構えの仕組みになっています。レビューでの評判も高く、ゴキブリ対策を始めるならまずコレから試してみるべきというぐらいの信頼性です。
ゴキジェットプロ ゴキブリ用殺虫スプレー
ジェット式のスプレー殺虫剤です。いろんな害虫に効き目はありますが特にゴキブリ用として特化されています。「速攻!一撃必殺!」をキャッチフレーズにしており、チャバネゴキブリであれば2秒程度、大きなクロゴキブリであっても7秒程度吹きかければほぼ確実に駆除することができます。
ゴキブリがいなくなるスプレー 200mL
忌避剤、駆除剤として使えるスプレーです。ゴキブリの侵入経路と考ええられるポイントに事前にスプレーしておくことでゴキブリの接近を防ぐことができます。私も玄関や窓のさんの部分に使用していますがゴキブリが侵入したことは1度もありません。ゴキブリに直接かけて駆除を行うこともできますが、クロゴキブリであれば10秒程度吹きかけなければならず、やや遅効性ではあります。
バルサンプロEXノンスモーク霧タイプ
霧タイプの殺虫剤です。従来のバルサンでは火災警報器が検知してしまいますが、このノンスモークタイプはその心配がいりません。1匹1匹の駆除にはほかのスプレータイプが適していますが、ゴキブリが家の中で繁殖してしまっている場合にはこちらのほうが殲滅力が期待できます。
ハエタタキ
オーソドックスなハエタタキです。叩き終わった害虫をすくいやすく設計されており、さらに大きめのピンセットも持ち手側に内蔵しています。原始的ですが、薬剤などに頼りたくない場合には手元にあると心強いアイテムです。
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